第15話 天大陸

 ディーオ達は雇った傭兵団ホーリートライアングルと共に、天大陸を目指す。


 ディオス達の飛空艇テセウスと併走するホーリートライアングルの飛空艇アセウス。

 飛空艇海賊は、大抵…中型の飛空艇を使うが、このホーリートライアングルの飛空艇は百メートル近い大型だ。

 それだけで、彼等が海賊ではないのが分かる。

 まあ、部下達を紹介された時にもそれが分かる。


 クラスマの町の食堂でホーリートライアングル傭兵団の顔合わせをする。

 その全員が海賊のような悪い顔で無く、海賊の服も何処となく服に着られている感じだった。


 食堂で全員がディーオ達にお辞儀して、今後の話をしながら一杯を楽しんでいると、バディーガーティが

「ふはははは! ここの飯代まで持ちとは、最高だな!」

 上機嫌である。


 その隣にディーオが座っていて

「危険な旅になるので…景気づけですよ」

と、ディーオがグラスを翳す。


 そうしてホーリートライアングルの者達と共に飲み食いをしていると、ディーオの対面にいるラプターが、ディーオの左に並んで座っているリリアとダリスにエレナの三人の所へ行き

「どうだ? お嬢ちゃん達、みんなにお酌をしてくれないか?」

と、リリアとダリスに促す。

 ラプターがリリアとダリスの肩に手を置いて擦る。


 ラプターは感じた。間違いない。この二人は…あの人達の…


 その手をディーオがツマミ

「すいません。人の嫁さんに勝手に触れないでくれませんか?」

 明らかな嫉妬があった。


 それをラプター達は見て驚愕の顔をする。

 嫉妬で不機嫌なディーオを見て、全員が黙ってしまう程に驚いている。


 ラプターが額を押さえて

「ひひひ、こりゃあ悪かった。すまんすまん。じゃあ、雇い主であるアンタが皆にお酌してくれ」

と、告げて顔を隠すが、その目元から涙が零れていた。


 リュシュオルは懐かしいような嬉しいような顔で

「お願いしたいわ」


 ディーオはイマイチ分からないも「分かりました」と皆にお酌をしていった。

 その後は、賑やかに飲み食いして、ラプターとリュシュオルのホーリートライアングルの一団だけで夜中の二次会を過ごす。


 ラプターが

「聞いたか? 嫁さんに勝手に触れないで欲しいってさ」


 リュシュオルが頷き

「ええ…明らかな嫉妬があったわ」


 ラプターが涙して

「そうか…人並みにって事か…」


 バディーガーティもいて

「お主達の忠義を誓う者の転生体は、良かったのだな」


 ラプターが

「ああ…本当に、生まれ変わってくれたよ」


 リュシュオルが

「あのダリスは、多分…リザーナの」


 ラプターが

「赤髪のリリアは、レーヴァティンの方だ」


 ホーリートライアングルの部下の一人が

「レオニドス様とメファノタス様は…」


 ラプターが腕を組み

「分からん。だが…どこかで出会っている可能性がある」


 リュシュオルが

「どちらにせよ。この時空世界に飛び込んで正解だったわね。まあ、人神というヤツの策略も意外や当てになったわね」


 ラプターが

「人神、フェイトのヤツの未来視の力は時空波観測能力みたいなもんだろう。波を読み違える事もあるぜ」


 バディーガーティが

「まあ、小難しい事は後にしようぞ! 繋がりは持てた。今はそれで十分ではないか」


 ラプターとリュシュオルも頷いて、リュシュオルが

「そうね。でも一つ…気になる事がある」


 ラプターが

「御方のアヌンナキ(完璧なる者達)の力か…」


 リュシュオルが厳しい顔で

「転生体である彼から、全く感じなかった」


 ラプターが

「ヘオスポロスのこの世界を自分達の進化の当て馬にするって計画…どうやら裏がありそうだな」


 バディーガーティが二人の肩を持ち

「まあまあ、そうゴチャゴチャと考えても始まらん! いざ! 天大陸へ。冒険が待っていてワクワクするでわないか!」


 このテンションが高いノリを苦笑いでラプターとリュシュオル達は見詰めた。




 ーーー


 クラスマの町から二日後、北を目指して飛空艇の戦艦と帆船が天大陸へ近づく。

 そこは…「えええ…」とディーオは驚きを向ける。


 大陸がいや、島が、空に浮いている。

 下は海面、上は浮遊する島々。

 巨大な岩場が大小様々に空へ浮かんでいる荒唐無稽な光景があった。

 そんでもって、その浮かぶ岩島の空に雲がかかって雨を降らせている。

 ファンタジー世界のそれにディーオは驚きを向ける。

 魔大陸は、砂と岩にグロテスクな生命の宝庫、人界のアスラ帝国では普通の木々と草原、色々とこの世界の事には話を聞いていたが、やはり荒唐無稽が際立っている。


 驚いている間に、急激に飛空艇テセウスと戦艦飛空艇アセウスが急上昇する。

 浮いている島々と同じ高度まで昇る。


 テセウスの魔法通信で、アセウスからラプターが

「おーい、浮遊島達の空中海流に乗ったから、このまま天大陸の首都ラピュタへ向かうぞ」


「ああ…よろしく」

と、ディーオは頼む。


 戦艦飛空艇アセウスに連れられて、飛空艇テセウスは天大陸首都ラピュタへ向かう。


 ディーオは、戦艦飛空艇アセウスの甲板を見ると、そこには海賊様相ではない軍服のキッチリしたホーリートライアングル傭兵団がいる。

 一人だけ海賊様相のバディーガーティが浮いている。


 バディーガーティは、ホーリートライアングルと系の色が違う感じがするので仕方ないと…思える。


 そうしている間に、この辺の島々で一番に大きな浮遊島にある町が見えてきた。

 天大陸の首都ラピュタだ。


 そこの港へディーオ達の飛空艇は着艦する。

 飛空艇を港に縛るロープに繋いで渡橋を進むと、そこは翼人族の楽園だ。

 塔のように高い建物、その窓から翼を持つ翼人達が出入りしている。

 背中に翼がある者、両腕に翼がある者、両手足が翼の者、様々な翼人達が飛び交い町を賑やかにしている下で、翼を持たない種族達が舗装された道を歩いて建物に入る。

 頭上は翼人の楽園、地面は歩く者達の生活。

 その二つが合わさっている。


 ディーオ達は、飛べない側なので、舗装された地面を進む。

 ディーオ達を先頭にラプター達が続き

「なぁ…この町に寄ったって事は何か当てがあるのか?」


 ディーオは振り向き

「もし、天大陸に何か異常があるなら、翼人達の情報網を活用した方が早い。話はグレイラート騎士団からここへ通してあるらしい」

と、町の中央にある翼人の王の城へ向かう。


 不思議な城だ。

 地面から浮いている岩に城が構築され、この島と離れないように巨大な鎖と吊り橋で繋がれている。

 その浮遊城へ向かうと

「何者だ?」

と、吊り橋の上の頭上から背中から翼が生えた翼人の兵士達が降り立つ。


 ディーオが頭を下げて

「協力を願い出ましたグレイラート騎士団の者です」


 兵士達が顔を見合わせて

「確認してくる」

と、城へ確認を取った後、ディーオ達を通した。


 翼人達の格好は、女性はきわどい水着のような格好が多い、脚部が鳥足なので恥ずかしがる感じはない。男性は、ズボンだ。


 城の奥へ通されるとドレスを纏った翼人の女王クィンピアがいた。

 顔立ち的に二十代後半だろう。

 それでも王としての風格があり、そして両脇には老年の翼人達がいる。


 ディーオはその前に跪き

「ご拝謁にいだだき、感謝の極みにございます」

と、挨拶をすると、それに続いてリリア、ダリス、エレナの三人もディーオの後ろで跪く。

そして、ラプター達もその後ろで同じく跪く。

 バディーガーティだけは、腕組みして堂々と立つ。


 それにクィンピアが

「アナタは礼儀を知らないのですか?」


 バディーガーティが

「ふははははは! 我はそのような小賢しい者ではない故な」


 クィンピアはバディーガーティの事を見抜いている。

「まあ、良いでしょう。他の者達は楽にしなさい」


「は」とディーオが告げて立ち上がると、後ろにいた者達も立ち上がる。


 クィンピアは顎を摩り品定めするように

「聞いていた話よりも、若い感じがしませんね。ディーオでしたか?」


 ディーオは頷き

「はい。その通りです」


 クィンピアはディーオに羽ばたいて近づき

「要件は聞いています。こちらへ」

と、部屋にある地図、天大陸の地図がある壁に来て

「ここです。最近、ここに巨大な渦雲が発生して、その中を調べた結果、巨大な鉄の浮島を確認しました」


 ディーオが訝しい顔で

「渦雲の中に…ですか?」


 クィンピアは頷き

「どこにも入れる場所がない菱形と三角形が合わさった巨大な鉄の浮島でした。この辺りの島は、天大陸からくる魔力によって浮遊しています。その魔力ではない力で浮いている…奇妙な場所です」


 ディーオが戸惑い気味に

「分かりました。早急に向かいます。ありがとうございます」


 クィンピアは

「害は出ていませんが…皆、不気味に思っています。慎重にお願いしますよ」


 ディーオ達は、場所を示された地図を持ち、向かう準備をする。


 町を歩いて地図を睨むディーオにリリアが

「どうしたの? 険しい顔をして」


 ディーオは地図をしまって

「いや、そんな簡単に見つかるとは思っていなかった。ステルスモードになって周囲の環境に合わせて偽装するようになっている。それが…」


 後ろにいるラプターが

「要するに簡単に見つけてくださいって罠の可能性が高いって事か?」


 ディーオは鋭い顔をして

 もしかして…自分の裏切りがバレている?

 そんな不安を感じつつも頭を振って

「とにかく、向かう必要があるな」

と、必要な食料と物資を載せて出発した。



 ディーオ達は、順調に航路を進み

 先頭を行く飛空艇テセウスの操舵でディーオが

「ここのはずだが…」

と、呟く両隣には、リリアとダリスにエレナの妻達三人がいて、ダリスが

「渦雲に覆われているんだろう」


 エレナが周囲の晴天な空域を見て

「雲一つ見えないよ」


 リリアが正面を凝視して

「ねぇ…あれ」

と、指差す。

 前方には陽炎のような歪みがあり、それがゆっくりと薄れて巨大な鉄の浮島を現す。


 全長が十五キロ菱形と三角形が合わさった巨大な時空戦艦。


 それにディーオは

「あれは、工業生産戦艦アクエリアスだ。やった、アレには戦略兵器戦艦リーブラスを優先的に操作して呼び寄せる事が出来る機能がある。リーブラスだったらアクエリアスを探さないと行けなかったが…運が良かった」


 その喜ぶ姿にリリアとダリスにエレナの三人は、安堵してダリスが

「じゃあ、早くに仕事が終わるのね」


 ディーオが頷き

「ああ…早く終わったら…そのオレ達の事…ちゃんとしないとな」


 早く一緒に暮らしたいという事を聞いてリリアとダリスにエレナの妻達は照れ笑いをする。


 ディーオ達の飛空艇達が近づくと、アクエリアスが動き内部に入れるゲートを開く。


 ディーオをエピオンを認識している。


 ディーオ達の飛空艇テセウスに続いて、この世界に偽装した飛空艇アセウスも続く。

 アクエリアスの内部に入ると、膨大な数の時空戦艦が蜂の巣のように並び立っている。

 その他にも人型の大型機動兵器やら、SFの兵器が満載だ。


 それをバディーガーティが見て

「見た事もないが…気配から凄まじい力を感じる」


 その隣にリュシュオルが来て

「ヘオスポロスが使う装備、兵器よ。どれも凄まじいわ」


 バディーガーティが厳しい顔で

「これ程の匠の力。汝達が言うように、我らの世界が全ての力を合わせても勝てないのが分かるわい」


 リュシュオルが

「ヘオスポロスは、戦争屋兼武器商人であり政治屋も行うわ。その理念は、自身の進化の為…とされているわ。でも、本当は違うのかもしれない…」


 バディーガーティがリュシュオルを見て

「どうしてそう思う?」


 リュシュオルが厳しい顔で

「女の勘よ。それを建前にして本心は別にある。そんな気がするのよ」


 バディーガーティが

「それは当たっているかもしれんな」


 ディーオ達は中央部へ来る。

 中央といっても全長が数キロ近くもある施設だが…そこへ着岸する。


 ディーオは中央部へ降り立ち、傍にある端末を操作する。

「動力も動いている。全てのセキュリティも問題ない。後は中央コンピューターへ行き、システムの全てを起動させるだけだ」

と、ディーオは歩く。

 それにダリスにエレナとリリアが続く。


ディーオが先を進むと鏡面のような壁が開いて道が出来る。

 そこをディーオが入りつつ後ろを向いてラプター達に

「警戒する事はないと思うけど、一応…」


 ラプターが手を振り

「ああ…気を抜かないようにする」


 ディーオは頷き「頼む」と奥の中央システムへ向かう。

 通路を進むと足場の照明が灯り先を示す。

 先に進むと、ドーム型の空間に浮かぶ宝石のような菱形が出現する。

 ディーオがそれに手を向け

「アクエリアス、アクセス」

と、ディーオの手から光が放たれ空間に浮かぶ宝石に灯る。

 

 空間全体から音声が響く

「認証、エピオンと確認。今後、エピオンの指揮下に入ります」


 ディーオが

「アクエリアス、メッセージは?」


 アクエリアスが

「ありません」


 ディーオが困惑して

「そんなバカな…メッセージが…ない? そんな筈は…確認を」


 アクエリアスが

「ありません。アナタの指示に従え以外、ありません。アクエリアスとリーブラスは、ヘオスポロスから独立して動いています」


「え?」とディーオは青ざめる。

「どういう事だ?」


 アクエリアスが

「機能的に問題ありません。独立して動いても問題ないように、膨大な技術データを転送されています。ですから、ヘオスポロスから完全独立して起動しても、維持可能です」


 リリアが

「ねぇ…どういう事? これってディーオが前世にいた組織から提供されているのよね?」


 ディーオが頷き

「そうだ。だから…その…暴走した場合を考慮してヘオスポロスとは繋がっている筈だ。それが当たり前なの…なんで?」


 アクエリアスが

「マスターエピオンの混乱を確認しました。私から事情の説明はできません。ですが、艦内には、二名の隊員がいます」


「何!」とディーオは告げて急いで来た道を帰る。




 ーーー


 中央部の外でディーオ達の帰りを待つラプター達、静かに待っているとバディーガーティが

「なぁ…姿を隠して見てる輩がいるが」

と、とある空中を見る。


 ラプターがフッと笑み

「手出しをしないから静かにしていたのによぉ…」


 リュシュオルがバディーガーティと同じ空中を見て

「出てきなさいよ」


 その空中が歪む。それは姿を隠す力に隠れていた。

 そこには黒い鎧と白い鎧を纏うヘオスポロスの兵器人、ネオデウス・ウェポンがいた。

 白い鎧はアルトロン、黒い鎧は別のデスサイズ。

 アルトロンとデスサイズは降り立ち

「やれやれ、エピオンが出てくるまで黙っているつもりだったが…」


 ラプターとリュシュオルとホーリートライアングル傭兵団が構えてラプターが

「隠れて見るなんて趣味が悪いぜ」


 そうしていると、ディーオ達が戻ってきた。


 ディーオは、アルトロンとデスサイズを見て

「ああ…二人とも…」


 アルトロンはディーオを見て

「ふ…ん。ずいぶん、容姿が変わったモノだ。それとも…それが本来の…いや、どうでもいいか」


 デスサイズが

「時間が掛かったな。まあ、最もアクエリアスに仕込んだシステムで、エピオンが近くに来たら呼び出すようにしてはあったので、そう待っていたワケではない」


 ディーオが緊張しながら

「計画は…進んでいるのか?」


 アルトロンとデスサイズが笑み、デスサイズが

「ああ…この世界をヘオスポロスが進化する為に当て馬にする計画だが…頓挫した」


「え?」とディーオは戸惑いを向ける。


 アルトロンが

「我らの総主、ベルタ・バルタザールが消滅した」


 ディーオが青ざめて

「そんな、バカな! あの…完璧なる者達(アヌンナキ)であるベルタ・バルタザールが、か?」


 アルトロンが

「エピオンも報告には聞いていただろうが…。ベルタ・バルタザールの矛盾双極である北斗が、ベルタ・バルタザールと接触して衝突、対消滅した」


 ディーオがアルトロンとデスサイズに近づき

「ヘオスポロスは…どうなるんだ?」


 デスサイズが

「割れたよ。メガデウスヒューマンであるネル派と、我らウェポンヒューマンである側の二つにな。我らは、このままヘオスポロスとして自己進化の為に活動を続けていく。だが…方針が変更になった」


 アルトロンが

「干渉による戦争コントロールを廃止、技術システム提供という立場で様々な時空と協定を結ぶ事で活動を続ける事になった」


 デスサイズがディーオに近づき対面して

「我らの総主ベルタ・バルタザールが消えた事で、我らヘオスポロスの兵器人のディオンス、統一意思システムに変異が生じた。それをお前は…理解しているはずだ」


 ディーオは、ハッとする。

「もしかして、前の事が…他人のように思えるようになり…」


 アルトロンが

「エピオン、いや、ディーオ・アマルガム。お前はヘオスポロスの兵器人であり統一意思システム、ディオンスから解放されてしまい、変異した。お前の他にも数例確認された」


 デスサイズが

「計画は頓挫、方針変更、そしてエピオンのような変異例が確認された。よってヘオスポロスのエグゼクティブ達は、協議の結果、変異して現地住民として生存する事になった個体達に慰謝料と共にヘオスポロスの利用を促す事を目的に、お前にアクエリアスとリーブラスを無償提供する」


 そこへラプターが

「ずいぶん、太っ腹だね。星一つの文明を支えられる程の技術と生産、製造システムを寄越すなんてさぁ…」


 デスサイズがラプターを凝視して

「ヘオスポロスの利用を促す宣伝用としては、十分に価値がある。それにお前達も関わっているのだからな」


 ラプターとリュシュオルが鋭い顔をする。


 ディーオが訝しい顔で

「彼等の事を」


 リュシュオルが

「私達は、ただ、そう…この世界で見護るだけに来たのよ」


 デスサイズが離れて

「まあ、向こうにとっては繊細な問題らしいので、公言はしない」


 アルトロンが

「なので、現時刻を以てナンバー19820305、エピオンのヘオスポロス所属を解除」


 デスサイズが

「ディオンスへの影響を防ぐ為に、エピオンのシステムをそのまま譲渡、分断。そして、今までの慰謝料とヘオスポロスの宣伝を兼ねて、アクエリアスとリーブラスを提供する」


 アルトロンが背中からジェットエンジンの翼を広げ

「では、以上だ。さらばだ」


 デスサイズも同じく背中からジェットエンジンの翼を広げ

「我々の仕事は終わった」


 ディーオが

「ナナホシ博士は?」

 上に昇り、時空転移しようとするアルトロンとデスサイズに尋ねる。


 アルトロンが

「ナナホシ博士は、出奔し行方不明だ。捜索をする予定はない」

と、告げて時空転移ゲートを潜って消えた。


 ラプターとリュシュオルが消えた場所の上を見上げていると、ディーオが来て

「色々と聞きたい事がありますが…」


 ラプターとリュシュオルがディーオを見て、ラプターが

「時間は幾らでもある。まずは、このドデカい工業生産戦艦を何とかしようや」


 ディーオは頷き

「分かりました。逃げないでくださいね」


 リュシュオルは呆れ気味に

「分かったわ」



 ーーー


 ディーオは、アクエリアスの操縦艦橋へ向かい、アクエリアスを動かす。

 その最中に

 まさか…あの強大なお方が…滅びるなんて…。

 自分がディーオとして過ごしている間に大きな変化があった事に戸惑うも。

「でも、これで…やりやすくなったと思えば得か」

 そう、ヘオスポロスからの干渉がないと思えるなら、焦らずにじっくりと準備を掛けて行える。

 展望の明るさに期待が持てるのであった。




 ーーー


 ヘオスポロスへ帰還したアルトロンとデスサイズ

 その報告をヘオスポロスを統括するエグゼクティブの一人、エグゼクティブ887へ報告していた。

「全ての設置が完了しました」

とアルトロンがエグゼクティブ887へ告げる。


 アルトロンとデスサイズの前上にエグゼクティブ887が座る席があり、エグゼクティブ887は頷き

「そうか…布石は終わったのか…」


 デスサイズが

「あとは、フルフェイス達に必要な時に必要な物資を届けるだけです」


 エグゼクティブ887が

「フルフェイス03からは?」


 アルトロンが

「今の所、報告はありません。フェイトが誘導しているので問題ないかと…」


 デスサイズが

「フルフェイス01はフルフェイス03の補助を、フルフェイス02は放浪していますが…所々で接触をしています。エピオンにも接触していました」


 アルトロンが

「フルフェイス04、05、06はエピオンの世界で、自分達の同位次元体達を観察しているようです」


 エグゼクティブ887が

「時間が掛かる事だ。ゆっくりと経過を見よう」


 アルトロンが

「はぁ…しかし、成功するのですか? ゴットアイズ(神の眼)プロジェクトは?」


 エグゼクティブ887が

「成功しても失敗しても成果がある」


 アルトロンが

「失敗して、我々の手に負えないバケモノが誕生しても」


 エグゼクティブ887が

「それこそ、我らの活動が有意義に活用されるという証明になる。それを含めての神の眼計画だ」

 

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