第14話 魔大陸
ディーオ達は、何処までも続く荒野と砂漠の魔大陸を飛空艇テセウスで進む。
ディーオは、操舵をリリア達に任せて砂漠の魔大陸を双眼鏡で見詰める。
「全く、どこまで行っても砂漠と荒野なんて…」
と、呟いている次に、砂漠のど真ん中からミミズの大型魔物ワームホールが飛び出る。
全長数十メートルのミミズのバケモノを見てディーオが
「あんな巨大な魔物…どうやって生きているんだ?」
そう呟いた。
ディーオ達の飛空艇テセウスに牽引されているシモンの飛空艇からシモンが渡って来てテセウスの船首、ディーオがいる所まで来て
「おーい、どうするかね? 避けるかい?」
ディーオが呆れ気味に
「避けられると思いますか?」
巨大ミミズの魔物ワームホールは、ディーオ達に向かって来る。
シモンは呆れつつ
「じゃな。どうする?」
ディーオが甲板を見て
「リリア!」
と、操舵しているリリアを呼ぶと、リリアが
「操舵は任せて! 上手く避けるから」
ダリスとエレナがディーオの所へ来て、ダリスが
「アタシ達三人で片付けよう」
シモンが
「すまんの…ワシ、飛べないもんで…」
ディーオが
「シモンさんは、リリアに航路を示して下さい」
シモンが頷き
「分かった。上手く誘導させるさ」
ディーオが頷き
「ダリス、エレナ。いくぞ」
と、甲板から飛び出し、エピオンの翼を広げる。
ダリスとエレナも続いてエピオンの翼を広げて飛び出し、ディーオを先頭に迫るワームホールへ向かう。
シモンが操舵するリリアへ向かい
「あそこへ向かおう」
と、荒野の山を示す。
リリアが
「あそこに何があるの?」
シモンが
「浅い部分に固い岩盤がある。それにワームホールが足を取られるのを嫌って来ないはずじゃ」
「了解」とリリアは、テセウスの先をそこへ向ける。
シモンは後ろを見ると、エピオンの翼を広げてワームホールに立ち向かうディーオ達を見る。
「いいのう…飛べるのは…」
ーーー
ディーオ達は、巨大ミミズに攻撃を放つ。
エレナは、後方から大量の爆撃魔法フレアバーストを放ち、業火にワームホールを包む。
その隙に、ディーオとダリスが両手に持つ剣から光の巨大剣を伸ばしてワームホールへ斬りかかるも
「くそ! 弾くか!」
と、ディーオとダリスの斬撃が弾かれる。
ダリスが
「地面の中を進むからやっぱり外皮が硬い」
砂漠の海を鯨のように縦横無尽に動くワームホールにディーオは
「作戦を変える」
と、別方向へ飛ぶ。
それにダリスも続き
「ディーオ、どういう作戦をするの?」
ディーオは、砂漠を一望するように飛んで地形を調べ
「あの巨大な砂漠ミミズは、恐らく…砂漠を液状化させて泳いでいるんだ。なら、その砂漠の流動性を変えてしまえば良い」
エレナも追いついて飛び
「具体的にどうするの?」
ディーオが念話でリリアに呼び掛ける。
”テセウスの方はどうだ?”
リリアは岩山の傍に飛空艇テセウスを静止させ
”岩盤が浅い所に来たから、あの巨大ミミズは来なくなったわ”
ディーオは頷き
”上々、なら…”
と、次を言う前に、例の巨大ミミズ、ワームホールがディーオ達に向かって来た。
ディーオは
「コッチに向かってくれて好都合」
ディーオとダリスにエレナの三人は並んで飛びながら、ダリスが
「砂漠の流動性を変えるってどういう事?」
ディーオが「こういう事だよ」と頭上へ急上昇した後、右手に巨大なエピオンの尾を出現させ、それに高震動を纏わせ
「砂漠をもっと液体にさせてやる!」
と、砂漠へ突貫した。
ディーオがぶつかった衝撃で、砂漠が一時的に固まり、次に砂漠へぶつけた巨大なエピオンの尾の高震動が砂漠を揺さぶる。
まるで、津波のように砂漠が吹き出した瞬間、砂漠の固さが変わった事で、ワームホールが泳げなくなり、砂から浮き上がる。
それにディーオが
「丸焼きにしてやれ! エレナ!」
エレナが「了解!」と爆炎魔法をワームホールへ叩き込む。
膨大な爆炎に包まれるワームホールは暴れて悶えるが、やがて動かなくなり、砂漠の上に倒れた。
巨大な砂漠ミミズを仕留める。
ディーオは確実にトドメを刺す為に、丸焦げになったワームホールの上に来ると、光の巨剣を伸ばして真っ二つにした。
そこへ飛空艇テセウスが来て、シモンが甲板からワームホールを真っ二つにしたディーオに
「そこまでせんでも良かったじゃあないか?」
ディーオが鋭い視線でシモンに向いて
「この形態の生命は、死んだふりをしている可能性が高い。レッドドラゴンとて、第二の脳を持っています。巨大な生命ほど、その巨体を維持する為に第二、第三の脳、コアを持っているかもしれない。なら、確実に」
と、ディーオは数十メートルもあるワームホールを細切りにして
「これで再生する事はないでしょう」
シモンが呆れ気味に
「お前さん、まだ…十代半ばじゃあろう。その冷徹さ…どこで憶えた?」
それを言われてディーオがフンと鼻で笑う。
ディーオとして転生して、ディーオとして引っ張られているが、こういう戦闘に関しては、未だにエピオンの性質が出てくるのが皮肉だ。
テセウスの甲板にダリスとエレナが戻り、ダリスが
「ディーオ、これ…どうする?」
と、細切りになったワームホールの亡骸を指差す。
ディーオも甲板に戻って
「何か…換金できるとか…」
と、シモンを見るとシモンが微笑み
「ほぉって置け。コイツは肉も美味くないし、まあ…この死骸を喰いに他の魔物達が集まるだろうから、それが面倒じゃわい。さっさと去るに限る」
ディーオは頷き
「そうですね。じゃあ、目的地へ向かいましょう」
ディーオ達は、シモンのお陰で現在位置が判明いる。そこから近い町へ向かっていた。
魔大陸北西、クラスマだ。
シモンと出会えた事が僥倖だった。
シモンは魔大陸の地図に詳しく、正確な距離も知っている。
もし、正確な地図が無ければ食料の心配をして彷徨う事態になったであろうが…まあ、その時は、この世界の遙か上空まで上がって宇宙から見れば良いが、目立つ事はしたくない。
とにかく、シモンのお陰で中央の海に面しているクラスマの町が近いというので向かう。
おそらく、そこでルーデウス達と連絡が取れるだろう。
ーーー
飛空艇テセウスにシモンの飛空艇を引かせて一日、海岸線と町が見えてきた。
テセウスの甲板からエレナが町を指差して
「もう、着くねディーオ!」
「ああ…」とディーオはテセウスの操舵を握っている。
その隣にはリリアがいて
「ディーオ、ルーデウスさん達と連絡が付いたら」
ディーオは頷き
「北の方角、天大陸へ」
リリアが真剣な顔で
「でもまさか…飛ばされた先で探査物資の反応を探知するなんて…」
ディーオは飛ばされて直ぐに、シモンの地図の説明を聞きつつ探査のエネルギー波を放った瞬間、北の方角、天大陸とされる距離に派遣された探査物資の反応を感知した。
二つある内のどっちなのかは、分からない。
だが、反応があった。
だからこそ、クラスマの町へ行き、ルーデウス達と連絡を取りたい。
そして、その探査物資捜索の準備をしたい。
そういう思惑を秘めてディーオ達は、町へ到着した。
クラスマの町には…
「あった!」とディーオ達は、グレイラート騎士団の派遣所があった。
派遣所に入ると、そこにいる魔族の受付嬢に説明する。
「少々、お待ちください」
と、受付嬢が部屋の奥に行くと、通信用の魔導水晶を持って来て、その魔導水晶からルーデウスの映像が飛び出して
「おおお! 無事だったか!」
連絡が取れてディーオと後ろにいるリリアとダリスにエレナは、ホッと胸をなで下ろす。
そして、一緒に来てくれたシモンが
「よかったのう…」
ルーデウス達がクラスマの派遣所にある転送魔法陣でここに転移する。
派遣所の奥からルーデウスが
「いや…良かった良かった」
と、ルーデウスを先頭に後ろにオールステッドとアルスが付いてくる。
ディーオ達は、ルーデウス達に駆け寄り
「ご心配をおかけしました」
と、ディーオが頭を下げる。
ルーデウスはニコニコと
「いや、本当に無事で良かったよ。クリスタルヴァイドが発生した時に、発生した空間の穴へ飲み込まれたと聞いて生きた心地がしなかったよ」
ディーオ達から少し離れた場所でシモンは見ながら、去ろうとするがディーオが
「この方のお陰で無事にここへ」
と、シモンを示す。
そこは、シモンが背を向けた所だった。
その背にオールステッドが
「ああ…技神ラプラスか…」
ルーデウスとアルスが「え?」と声を驚きの声を放つ。
シモンが立ち止まり、オールステッドがその前に立ち塞がり
「久しいな」
シモンは…いや、技神ラプラスはオールステッドに微笑み
「久しいですな。龍神様…」
ディーオがそこへ近づき
「お知り合いなのですか?」
オールステッドは静かにシモンを見詰める。
シモンは微笑み
「ああ…ちと、技を教えた間柄だ。じゃあな」
と、オールステッドの脇を通り過ぎる。
オールステッドが
「オレの所へ来ないか?」
シモンは歩きながら
「悪いな。ワシにはやらんといけん事があるのだよ」
オールステッドが去って行くシモンに
「それが終われば…また…」
と、それに答えるようにシモンは手を振って去った。
オールステッドにディーオが近づき
「本当に技術を教えた間柄なのですか?」
オールステッドが振り向き
「色々とあるのだよ」
ーーー
ルーデウス達と合流したディーオ達は、近くの食堂で、天大陸に探査物資の一つがあると報告して、その探索の為の援助を申し出る。
ディーオ達は、グレイラート騎士団の大型飛空艇に乗って向かうと思っていたが
「すまん、突如、発生したクリスタルヴァイドの対応に追われていて、部隊の派遣が出来ないんだよ」
アルスが
「必要な物資をこちらで提供するから、君達だけで…探し出してくれないか?」
ディーオは、ダリスとリリアにエレナの三人と視線を合わせて、ディーオが
「分かりました。ですが、やはり、何があるか分かりません。この現地で協力者を雇いたいのですが…」
オールステッドが
「問題ない。その経費はこちらで用意する」
こうして、ディーオ達は天大陸へ向かう傭兵を選定する作業をする。
ディーオは、彼女達三人、エレナとダリスにリリアと共に
「さて…どうするか?」
ダリスが
「ギルドに行って、使える人材を見繕って貰うのが楽じゃあない?」
リリアも頷き
「賛成、グレイラート騎士団の名前を使えばそれなりに良い傭兵が手に入るはずよ」
エレナがディーオの腕を抱き
「なら、善は急げね」
と、引っ張って行く。
その道中で、「捕まえてくれーーー」と叫ぶ声が。
前から数人の男達が何かを抱えて走って行く。
それを追いかける魔族の者達。
どうやら、盗みの現場らしい。
ディーオ達はそこへ遭遇すると、盗みは働いた男達の真上から降り立つ者達がいた。
窃盗の一人の背中に跳び蹴りを浴びせる。
それは、ラプターだ。
「ウチの船で盗みとは、良い度胸だ」
ラプターの跳び蹴りを受けた窃盗犯は地面に打ち付けて滑り気絶する。
その後、ラプターが残りの窃盗犯を追跡する。
その早さ、疾風だ。
瞬く間に二人目の背中に蹴りを放ち気絶させる。
残り二人。
だが、店の屋根伝いに一人の女が、リュシュオルが飛んで渡り残り二人の前に立つと、瞬く間に抜刀して二人を吹き飛ばした。
窃盗犯は気絶して空を飛び店前に突っ込む。
リュシュオルが剣をしまうと
「峰打ちよ。安心しなさい」
ラプターが店前に突っ込んだ窃盗犯の二人の懐を探り
「返して貰うぜ」
そこへ、ターバンをして片目を隠したバディーガーティが来て
「ぬはははは! 見事であるな! あっぱれ!」
その一連の動作を見ていたディーオ達は、彼等が相当な使い手だと感じる。
窃盗犯達が起き上がると、一目散に逃げて行く。
バディーガーティが
「逃げるぞ、良いのか?」
ラプターが
「無用な争いをするためにいるんじゃあね。ここの問題は、ここで片付けさせるのが道理だ」
「あの…」とディーオが声を掛ける。
ラプターとリュシュオルがディーオを見ると、驚愕した顔をする。
「御…いや」とラプターは何かを飲み込む
「なんだい?」
ディーオが訝しい顔をして
「もしかして、何処かであった事がありますか?」
ラプターとリュシュオルが気まずい顔をする。
動揺しないつもりだったのに、動揺してしまった。
ターバンで片目を隠したバディーガーティが
「お主達、ドラゴンイーターであろう」
ディーオはそれで分かり
「ああ…」
ドラゴンチェイン街にいたんだな…と勘違いする。
バディーガーティの誤魔化しによって、その場を取り繕いラプターが
「その有名人がオレ達に何の用だい?」
ディーオが
「自分達を知っているなら話は早い。仲間を募集しているんだ」
リュシュオルが真剣な顔で
「私達は、傭兵団から…依頼内容と報酬で受けるわ」
ディーオが訝しい顔で
「にしては…海賊っぽい格好だよね」
ラプターが
「依頼によっちゃあ、海賊もするからな」
ディーオは納得する。
成る程、荒事専用の連中か…。
「て、事は…今さっき」
リュシュオルが
「ええ…海賊を狩る為に海賊に偽装して、海賊を狩ったのよ。それで得た海賊のお宝を」
バディーガーティがグハハハハハ!と笑いながら
「我らの噂を聞いて賊に入られて盗まれた…という事さ」
と、告げた所にラプターが回収したお宝を見せる。
ラプターが
「オレ達は、この海域の海賊を狩ってくれと海の者達、海族から依頼されて、終わった後なのさ」
ディーオが
「それなら、ちょうどいい。こっちの依頼を受けてくれないか?」
ラプターとリュシュオルが視線を合わせて、リュシュオルが
「その依頼は?」
ディーオ達の依頼を聞く。
天大陸にあるとある存在の調査だ。それの調査と護衛を頼みたい…と。
ラプターが
「相当な経費が掛かるぞ」
ディーオが微笑み
「グレイラート騎士団で持ってくれるから、大丈夫さ」
ラプターがリュシュオルと視線を合わせた後、頷き合い。
「良いだろう。受けるぜ」
と、ラプターが答える。
バディーガーティがディーオの肩を持ち
「フハハハハハ! ようこそ、太っ腹な依頼主よ! 我ら…我ら…」
リュシュオルが
「ホーリートライアングル傭兵団よ」
バディーガーティが
「はははは! そう、そうだった! よろしく頼むぞ! 因みにワシはバディさんだ!」
ディーオはバディーガーティの独特の勢いに押されて
「ああ…はい。どうも」
ラプターが
「オレは、傭兵団の上を一応やっているラプターだ」
リュシュオルが
「私は、副官のリュシュオルよ」
ディーオがラプターに
「上を一応…やっている? 他に上がいるんですか?」
ラプターが頷き
「ああ…幾つもあってな。全体の上はアシュリードってヤツが兄貴の御方様から受け継いでいる」
それを聞いたディーオ達は視線を合わせて、リリアが
「もしかして、どこか有名な貴族の騎士団から…」
リュシュオルがフッと笑み
「その辺りは嗅ぎ回らないでね。今は、純粋に雇われの傭兵団よ」
ディーオは鋭い顔をする。
なるほど、何処かの貴族か国の関係か…グレイラート騎士団は巨大な組織だ。
それが何かをやっているなら気になるが…まあいい。
協力してくれるならして貰うまで、もし問題になれば…。
バディーガーティが
「フハハハハハ! そう気難しい顔をするな! 本当に、そう偶然に出会い我らは共に旅する仲間となったのだ! それを祝して今日は、宴を開こうぞ!」
リュシュオルが
「そうやって酔い潰れるなら、この町に捨てていくわよ」
バディーガーティが
「そんなつれない事を言うな! イイ女よ」
リュシュオルは頭を抱えた。
ラプターが
「とにかく、依頼主と兵団の顔合わせをしたいから、よろしくな」
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