第11話 ドラゴン狩り

 おはようござます。ディーオです。

 目的地の竜の下顎までもう少しです。

 多分、今日の夕方前には到着します。

 そんな事はどうでも良いんだよ。

 朝、起きるとぼくは、裸です。

 決して裸族とはではありません。隣には裸のリリアとダリスにエレナの三人がいます。

 出発して三日目です。

 出発した夜に結ばれた僕たちは、毎晩毎晩、致しています。

 若いって恐ろしいです。

 三人の美女と好き放題三日間も致しまくっていれば、萎える日だってあるのに、全くの元気なマイサンです。

 昨夜も頭が悪いくらいにやりました。

 何度でも三人を往復して、暑い夜を過ごしたのに、朝にはマイサンが元気になります。

 また、三人と致したいと元気に立ち上がります。


 昨晩は、思いっきりやりすぎたので、三人は疲れていると思うので朝食は、ぼくが作ります。


 ディーオはキッチンに行き、簡単な炒め物の料理とスープにパンを用意する。

 昨日の昼間に森に下りて取ったアク抜きした山菜と、食べられる山菜を湯通しをして殺菌して料理、茹で野菜と並べて四人の朝食を準備する。


 そこへ「あ、おはよう」とエレナが起きてくる。

 それにつられてリリアとダリスの「おはよう」と来る。


 ダリスが

「ごめん、アタシとリリアが当番だったのに」


 リリアも

「ありがとう。ディーオ」


 ディーオは微笑み

「良いよ。その…疲れているみたいだから…」


 ダリスとリリアは気恥ずかしい感じで視線を背ける。

 エレナが

「ディーオは強すぎ。もう少し考えてね。これじゃあ…冒険の途中で赤ちゃんが出来ちゃうよ」


 ディーオは微妙な顔で

「ああ…うむ…」

 まあ、そうなったらそうなったで、途中でこの試験の冒険は終わりだな。

「そうなったら…早めに終えて家を買おう事にしよう」


 エレナが微笑み「賛成」と手を上げて、リリアとダリスは気恥ずかしい感じで「う…ん」と頷いた。


 四人の朝食が始まり、色々と話す。

 途中で獲物を見つけたら、食料確保、そして、夕方に到着する竜の下顎の街の事について、どんな依頼が待っているのか? そんな話を続ける。


 そして日中、風の向きが変わるので、それに合わせて帆を動かして進む。

 けっこう、風を読むのは至難の業で、前方の雲の流れを見て予測したり、凪に出会ったら両脇にあるプロペラ推進器を使わないといけない。

 移動だけでも色々とある。

 まあ、それが面白いのが冒険だ。


 そして、夕方頃、目的の竜の下顎の街の前に来た。

 多くの飛空艇達が停泊で下りていく。

 海岸線にある山脈の終わり、その断崖の前にある街ドラゴンチェン。

 城壁が囲む城塞都市。

 ここは、下の大陸とアスラ帝国との境であり、沢山の人達が行き交っていた。


 飛空艇テセウスを停泊港に入れて、ディーオ達は街中を歩く。

 ルーデウス達の話だと、飛空艇が出来た頃から色んな地方の人達、種族が国々を行き交うようになって、顔ぶれが豊かになったらしい。

 まあ、確かに人族だけしか見なかった城塞都市ノアより、魔族や獣人とされる人達が多くはいるが、それでも、人族の方が多い。

 魔族は、色んな種族がいる昆虫人、爬虫類人、馬や動物みたいな顔の人、獣人は人族に近くて尻尾や獣耳なので人族に近いので警戒は薄くなる。

 まあ、その前に、前の前世で様々な時空を渡った事があるので、多種多様な種族に違和感はない。


 停泊港での受付をするのでリリアとダリスにエレナの三人が受付に向かい、ディーオはリリアが

「私達が停泊の受付を済ませて置くから、先にルーデウスさん達と合流して」


 ディーオは「分かった」と頷いてルーデウス達を探しに行く。

 停泊港から出ると直ぐに町内なので、沢山の人で賑わっている。

「どこにいるのかなぁ…」

と、周囲を見渡すと

「あれ?」

 見た事がある人物がいた。

 青髪に低い背丈、魔導士のとんがり帽子、間違いない。

 ディーオはその女性に駆け付ける。

「ララ先生!」


 青髪の魔導士、小さい魔族の女性は反応しない。

 その前にディーオが立ち

「ララ先生。まさか、こんな所で出会えるなんて、世間は狭いですね」

と、微笑むが、青髪の魔導士であるララだろう人物は首を傾げる。

 

 ディーオは微笑みながら

「ララ先生、そんな数日前にお別れしたんだから、風貌なんて変わりませんよ」


 青髪の魔導士は暫し考えた後、ハッとして

「ああ…どうも」

と、お辞儀した。


 ディーオは朗らかな微笑み

「ララ先生。ありがとうございます。先生が残してくれた言葉で勇気を貰いました。思い来て三人、リリア、エレナ、ダリスに告白して受け入れてくれました。本当に…ありがとうございます。この試練の冒険の後、四人で暮らす家を探そうと…思っています。ララ先生が教えてくれた事、大事にしてがんばって行こうを思います」


 ララであろう青髪の魔導士は微笑み

「そうですか…それは良かった」


 そこへ「ロキシーーー」とルーデウスが来る。

 ディーオと話している妻の一人ロキシーにルーデウスが

「あれ? ロキシー ディーオくんと知り合いなの?」


「え?」とディーオはルーデウスを見詰めて、口を開くほどに驚き

「まさか…」


 ララと思われた青髪の魔導士は微笑み

「ララはチャンと、教師をしていたみたいですね。ララの母のロキシーです」


 えええええええええ!

と、ディーオは驚きを放ち、ルーデウスはそれを見て察した。

 ああ…ララとロキシーを間違えたんだな…。


 ルーデウス達と合流するディーオ達。

 ルーデウスは、妻の三人を連れていて、エルフのシルフィーと、小人の魔族魔導士ロキシーに、人族のエリスが並び、シルフィーが笑いながら

「あははははは。ララとロキシーを間違えるなんて…」


 ルーデウス達の後ろにいるディーオ達、間違えたディーオは額を抱え、リリアとエレナは呆れ笑みで、ダリスが

「大丈夫だよ。誰でも間違いはあるって」


 ルーデウスが皆をとある宿屋のレストランへ招くと、そこの大きなテーブル席にオールステッドと、赤い髪の騎士アルスが並んで座っていた。


 ルーデウスがアルスに近づき

「アルス、オールステッド様の護衛、ありがとうな」


 アルスは父ルーデウスに微笑み

「構いませんよ。自分はオールステッド様の臣下で家族ですから」

 

 それを聞いて、オールステッドは強面の顔に笑みを浮かべた。

 オールステッドの胸元には、オールステッドから放たれる魔力の威圧を外へ向けない魔道具の魔石がペンダントとしてかかっている。

 これがなければ、オールステッドが放つ周囲を圧倒する呪い、まあ、龍族の威圧によって周囲の警戒があがってマトモに話が出来ない。

 始めてオールステッドとあった時には、これを外していて、それによってディーオがどんな存在、この世界の理から外れているか?を調べた。


 オールステッドが腕組みして強面の顔で

「全員、座るがいい」

と、言ってルーデウス達、ディーオ達も席に座る。


 オールステッドはボスの風格を出しながら…まあ、銀髪で金眼の三白眼はどこぞのマフィアのボスのような威圧感が抜群だ。

「さて…」

と、オールステッドが告げると、右隣にいるアルスが手慣れた手つきで地図を広げて、書類を取り出す。

 アルスは、慣れている。

 かれこれ、このマフィアのボスのような社長に仕えてウン十年という手際の良さだ。

 オールステッドの左にいるルーデウスは、息子が立派にオールステッドに尽くしている姿に成長したなぁ…と涙を拭いていると、オールステッドが

「ルーデウス、いちいち息子が成長した姿を見て泣くな」

 アルスは涙を拭く父ルーデウスに微妙な顔だ。


 それをニコニコと見詰めるルーデウスの妻達シルフィーにロキシーとエリス。

 ディーオは、何だ?この茶番は?と首を傾げる。


 リリアとダリスにエレナは、静かに平静な顔だ。

 オールステッドの龍族の威圧を消す魔道具のお陰で異常な恐怖を感じていない。


「んん」とオールステッドが咳払いして

「では、お前達にやって貰う事は…」


 ディーオが手を上げて

「あの…一つ…聞いて良いですか?」


 オールステッドは強面の顔を更に怖くして

「なんだ?」


 ディーオが

「あの、オールステッド様に仕えるという事は…グレイラート騎士団に入るという事ですよね」


 オールステッドがルーデウスを見ると、ルーデウスは小さく頷きオールステッドが

「ああ…そうだ」


 ディーオが

「そのグレイラート騎士団に勤めた場合…どれ程のお給金が貰えるのでしょうか?」


 オールステッドが顎を摩り

「給金の話とは…どういう事だ?」


 ディーオは左にいるエレナ、ダリス、リリアの三人を見て

「ぼくは…彼女達三人と一緒に暮らすつもりです。この冒険が終わった後、家を買って彼女達が安心して暮らせるようにして…その…僕たちの子供も…安心して育てたいので…」


 ルーデウスとオールステッドにアルスが渋い顔をして、話を知っているロキシーは澄まし顔、シルフィーとエリスは驚きの顔だ。


 ルーデウスが

「ええ…つまり、その…ええ…君達は…結ばれて…」


 ディーオ達は四人ともホホを染めて頷いた。


 稲妻のような衝撃がルーデウスを襲う。

 えええええええええ! この四日間の間に何があったの?


 アルスは最初、驚きを向けるも、ああ…と納得した顔をする。

 自分もかつて、アイシャという女性と結ばれる時に経験した事だ。

 簡単な話だ。愛する女を家族を守りたい。

 それだけだ。


 オールステッドは真っ直ぐとディーオを見詰めて

「お前の態度次第だ」


 ディーオは真剣な顔をして

「全てを…話します。お気づきでしょうが…ぼくの目的は、前の力を取り戻す事ではありません」


 ディーオは全てを暴露した。

 とある宇宙での時空戦争での時空爆弾によって死んだ事にして、この世界の転生した。

 その目的は、エピオンにした組織ヘオスポロスの目的を達成させる為に…。

「表向きは、この世界への侵略ですが…。本当の目的は、この世界を使ってヘオスポロスにいるネオデウス兵器人達の能力を上げる為に仮想敵…当て馬にする事です」


 ルーデウスが首を傾げて

「なんで、そんな事をする必要性があるんだい?」


 オールステッドが腕組む真剣な顔で

「お前の能力を加味すると、お前の本来の戦闘力は、我ら龍族以上だろう」


「え!」と驚きをルーデウス達がオールステッドに向ける。


 ディーオは無言で頷く。


「えええ…」とルーデウスは驚きを漏らし、他は無言で驚く。


 アルスが

「だったら尚更、この世界が君の前世の組織の当て馬になれるとは思えない」


 ディーオは静かに淡々と

「この世界は、ヘオスポロスが最重要注意とする文明と似た技術を持っています。高度に発達した魔術がそうです」


 オールステッドが

「つまり、その文明と対等に渡り合う為に、その前哨戦としてこの世界を選んだ」


 ディーオは頷いて

「はい、その通りです」


 ルーデウスが頭を抱えて

「いや、ちょっと待って、君は…ディーオくんの本来の力であるエピオンは、龍族であるオールステッド様以上の力を持っているんだよね?」


 ディーオは渋い顔で

「はい。正確には、この世界、この六つの世界全てを一夜で破壊できる程の戦闘力を持っています」


 オールステッドとアルスの顔が鋭くなる。

 シルフィーとエリスは話がついて行けない。

 

 ディーオの左にいるエレナとダリスにリリアは苦しそうな顔をする。

 話は、全てディーオから包み隠さず聞いていた。


 ルーデウスが困惑しながら

「君って特別だったの?」


 ディーオは首を横に振って

「いいえ、ぼくは…私は…ヘオスポロスの超兵器達の中でも通常レベルの大量にいる者達の一人です」


 ルーデウスが頭を抱えた。

 ウソだろう。通常? 大量にいる? この世界を完膚なきまで破壊する存在が大量に?

 信じられなかった。

 

 オールステッドが

「だが、その超絶な兵器人達は、こちらへ攻めてこない。理由があるのだな」


 ディーオは頷き

「はい。ヘオスポロスは…時空を飛び越える力を持った文明の傭兵や戦略活動の代行をする組織です。協定のようなモノがあり、その協定に従って兵器の提供、時空間戦争の操作をしています」


 アルスが

「その協定によって…この世界が…直ぐにでも攻められる事はないんだね」


 ディーオは頷き

「はい。その通りです。ですから…私を派遣してその協定にある交戦可能域まで、この世界を持ってくる。それが任務です」


 オールステッドが

「では、今ここでディーオ、お前を殺せば計画が瓦解する事は…」


 それを聞いてリリアやダレスにエレナが鋭い顔をオールステッドに向ける。

 オールステッドはそれを見て、渋い顔をする。

 彼女達はそうなった場合、何が何でもディーオを守る為に動くのが見えた。


 ディーオは鋭い顔で

「無駄ですよ。ぼくとヒトガミ=フェイトのリンクが切れた時から、おそらくバックアップのプランが動き出して、ぼくが死んでも何れは…」


 ルーデウスが頭を抱える。

 将来における魔神ラプラスと人神への対処、それに加えてこの世界で最強の龍族されも越える存在達の巣窟からの干渉。

 なんで、こうなった?


 オールステッドがディーオに

「ディーオ、お前がそれを話すという事は…対処する方法があるのだな」


 ディーオは頷く

「はい、あります」


 ルーデウスは顔を上げて「マジで!」と叫んでしまった。

 息子アルスが「父さん、静かに」

「ああ…うむ」とルーデウスは控える。


 ディーオは真っ直ぐな視線で

「この世界を創ったシステム、いや…大規模な創造装置、神の庭…エルガルザドを人神から奪還する事です」


 オールステッドが自分の後ろにいる黒髪の少女に向いて

「ナナホシ、ディーオが言っている事は合っているか?」

 

 オールステッドの後ろの席で聞き耳をしていた仮面を被ったナナホシがアルスの隣に座り

「ええ…合っているわ。この」

と、異世界転移した金属板、スーパーパソコンを取り出して

「この中に入っている情報と同じよ。人神は、無の世界にある創造主の力、神の庭、エルガルザドにいるって。この記録だと、魔神ラプラスを倒して、本来の魔龍王ラプラスが復活して、そのラプラスが五竜将の秘宝を発動させる為に身を犠牲にして、そのエルガルザドの道を作り、私や秋人を含むオールステッド達のみんなが乗り込んで、エルガルザドにいる人神を倒すけど、人神はエルガルザドと深く繋がっているから、エルガルザドに縛り付けて永劫の大封印したって…それで、オールステッドのループも解除されて…私と秋人も帰れるようになったって…」

 ナナホシがディーオに

「人神の正体は…分からなかったらしいけど…ディーオくんは…」


 ディーオは頷き

「人神の正体、この人の世界を維持していた人神は、そのエルガルザドにいた精霊のような存在に乗っ取られてしまったんです。それが…ヒトガミ=フェイトの正体です。

 フェイトは、創造主が作り出したエルガルザド神の庭を維持管理する為の製造された精霊達の一体です」


 オールステッドが目を見開く。

 人神の正体を正確に知れた事に驚愕が隠せない。


 ディーオは続ける。

「私は、幾つもの時空戦争に関わって来ました。無論、この世界と似た世界を幾つもです。この世界を創った創造主の一族、その一人でしょう。彼…彼女…かは、分かりませんが。

 その創造主は、おそらく寿命を迎えていた。

 そこで、自分の後継者を育てる為に、この世界を創った。

 この龍、魔、獣、海、天、人の六つの世界が繋がった世界、その世界に各々の対応した管理維持する神達を置いて、この六つの世界から何れ、その神の庭へ至る者を選定させ、創造主の力を継承させる。そうして、新たな創造主達を生み出し、新たな世界を創り続ける。

 その一族を、私達は…ユグドラシルの民…と呼称しています。

 皆様が、人神と呼んでいる存在、確かに人の形はしていますが…存在が薄い白い影のような感じは、姿を隠している訳ではありません。姿がないのです。エルガルザドを維持管理だけの魔力で作られた人形精霊。それが…フェイトの正体で、そのエルガルザドを維持管理する人形精霊の何体かの一体が、バク、変異を起こした」


 ルーデウスが驚きで

「つまり、神の庭を維持する人形精霊のバグった個体が…あの人神…」


 ディーオは鋭い顔で

「変異する理由があります。エルガルザド、神の庭は、この世界の情報を絶えず収集している。この世界の隅々にある魔力の流れを使って観測しているのです。その観測を請け負っていた人形精霊が…自分も創造主のような事をしたい…と変異した」


 オールステッドは、ふ…ははははははは!と笑い

「つまりだ。本来の主の目的を忘れ壊れて暴走した人形が、我らを苦しめていると! 滑稽だ! そして、舐められたモノだ!」

 笑いから怒りの顔になる。

 それに周囲はドン引きする。


 ディーオだけが冷静に

「複雑な装置になれば成る程、異変が生じやすいのです。その修正する主は、亡くなっている。その異変が拡大して、このようになっているのです」


 ルーデウスが色々と考える。

「人神は未来を見る。その力は…未来を見た予言じゃあなくて、この世界を観測した結果を演算予想して…筋が通る。人神の予言が微妙にずれたり、当たらなかったり、ハッキリとした未来でなかったりしたのは、そういう事か…」


 アルスが

「ちょっと待って、もし…この世界の全てを見えているなら、オールステッド様の事が見えないなんて、いや、オールステッド様に関係する者達も見えなくなる理由が分からない」


 ディーオが

「順位があるんです。創造主は、おそらく…この六つの世界を創る際に、龍族の方達がその創造主に近い順位にいたから創世の技術、魔法によって観測できない。それに…乗っ取った人神は、あくまでも人の神、人と繋がれる優先権があるが、それ以外は難しい」


 ルーデウスの頭の中で色々と符合する。

 オールステッドに関わると人神から見えなくなる。

 ディーオの言っていた、創造物の順位、創造主に近い種族である事、その叡智、技術がある事、人神を乗っ取ったので優先的に人に影響を与えられる。

 だから…他の神を全員、殺したんだ。

「オールステッド様」


 オールステッドは怖い顔を更に怖くさせ

「納得いった。そういう事だったのか…神々を殺し合わせた事も、他の世界を滅ぼさせた事も…」


 ディーオが

「全ては人神である自分の手の内で管理させる為にです」


 オールステッドのテーブルの上にある両手が固く握られ

「今すぐ…人神の下へ行き殺してやりたいが…」


 ナナホシが

「でも、行くには…五竜将の秘宝が…」


 重い沈黙が訪れる。

 ルーデウスが

「オールステッド様、五竜将の秘宝が出現するには…」


 オールステッドが厳しい顔で

「あと…五十年ほど…先だ。五竜将の転生体が出現するまで…な」


 ルーデウスが

「それ程の年月が掛かると、その外の世界の連中の干渉も…」


 そう、長い年月を掛ければ掛けるほど、付け入る隙を与えてしまう。

 

 ディーオが挙手して

「五竜将の秘宝ってなんです?」


 ルーデウスが細かく説明する。

 かつて、人神に殺された龍神の魂で出来た五つの秘宝で、その五つの秘宝を転生して持ち込む龍族達がいる。その五人を集めて、五竜将の秘宝を発動させて人神がいる場所へ、つまり神の庭へ行ける。


 それを聞いたディーオが

「ああ…エレメンタルジェネレーターの小型版なんですね」


 それを聞いた全員が、ルーデウスが

「は? エレメンタル…なんだって?」


 ディーオが平然と

「それが無くても、その無の世界の、神の庭…エルガルザドへ行けますよ」


 全員が驚き、ルーデウスが「えええええ!」と叫んで立ち上がる。

 その袖をシルフィーが引っ張り

「ルディ、座って」


「ああ…うん」とルーデウスは座り直す。


 ディーオが

「説明しますと、この世界を維持するエレメンタルジェネレーター…」

と、告げた瞬間、全員の顔が、なにそれ?って顔だ。


 ディーオは苦悶して考え

「つまり、この世界の環境を維持している…神殿ですね! 神殿、世界を維持管理する力…えるるるる、あああ! 魔力です。世界を満たす世界を維持する魔力を操縦している神殿があるんですよ! ソイツを使えば、無の世界の神の庭へ行けます」


 オールステッドが

「その方法は?」


 ディーオが

「この六つの世界達の何処でも良いですけど…。まあ、人の世界のを使えば近いので…つまり、一つの世界を維持管理している神殿が六つあって、それはお互いの放つ世界維持の魔力を放っていて、その干渉具合をお互いに独立して調節して世界を維持しています。

 その六つの神殿を繋げる事です。どこでも良いです。

 最初に確保した神殿を始めとして、次々と残りの神殿を押さえて繋げていき、それによって連動した六つの神殿は、エルガルザドと繋がります。それでエルガルザド、神の庭へ行けます」


 ルーデウスが驚きで「マジで?」と尋ねる。


 ディーオが困惑気味に

「ええ…マジです。私はこの世界と似た世界を十…ああ、いえ、幾つも攻略…いえ、戦略的に関わっているので、その構造を熟知していますから…」


 ロキシーが

「つまり、五竜将の秘宝とは、その機能を持つ神殿を模倣して小型化した魔道具…という事なんですね」


 ディーオは頷き

「はい、それで間違いないです。だからこそ、エルガルザドに繋がります」


 アルスが

「まって、その世界を管理する神殿って、つまり神の力だよね。そんなの発見できるの? っていうか…そんな重要なら変な事をさせない為に隠しているのでは?」


 オールステッドが

「アルスの言う通りだ。だから人神は神々を殺した、来られないようにする為に…」


 ルーデウス達はオールステッドが言わんとしている事が分かる。

 世界を維持管理する力の神殿なら、それはきっと各世界にいた神々の下にあった筈だ。

 もし、ヒトガミの真実が分かった時に、どこかの世界の神がエルガルザド、神の庭へ来てヒトガミを乗っ取った人形精霊を殺すだろう。 

 それをさせない為に、遙か昔に神々を殺し合わせて潰させ合った。


「はぁ…」とルーデウスが「結局は、振り出し」


 ディーオが

「なんで勝手に深刻になっているんですか?」


 ルーデウスが

「だって、神々の遺産を見つけられたとしても、そう簡単には」


 ディーオは首を傾げて

「え? 問題なく見つけて、連結できますよ」


 オールステッドが

「ディーオよ。神の力の遺産は神でしか使えない」


 ディーオがオールステッドを見て

「オールステッド様は、半神の龍族ですよね」


 オールステッドが頷き

「そうだ。父が龍神で母が人族のハーフだ」


 ディーオが頭を掻いて

「あの…すいません。色々と説明を端折っているので、伝わっていない事も多いですが。その…世界を維持する神殿は、その神々の子達、つまり神との半神人、デミゴットでも使えるので、人の世界にある六つの神殿へ龍神と人族のハーフであるオールステッド様が行って、操作すれば簡単に繋げられますよ」


 全員がディーオを凝視して、アルスが

「それを早く言ってよ」


 ディーオが困り顔で

「ええ…なんか皆さんで勝手に結論を付けているので…こっちが困るんですが…」


 オールステッドが鼻息を荒げ

「その手段は分かった。だが、どう見つけるか…」


 ディーオが

「あの…それを見つける方法も私が…持っています」


 周囲が、ああ…やっぱりという顔だ。余りにもディーオが万能過ぎて驚かなくなる。

 

 ディーオが

「先程、話した。この世界を交戦可能域まで上げる為の物資、探査物資達が五年前に、この世界へ送られています。それを使います」


 アルスが

「探査物資達ってどんなのだい?」


 ディーオが淡々と

「全長十五キロの工業生産戦艦アクエリアスと、戦略兵器戦艦リーブラスの二つです」


 ルーデウスが眉間を寄せて

「今、なんて言った? 全長…十五キロ?」


 ディーオは頷き

「はい。全長十五キロの戦艦、その二つを使えば、簡単にこの世界に散らばる六つの神殿を見つける事は簡単です」


 ルーデウスが額を抱え

「それって凄い装備じゃないの?」


 フッとディーオは笑い

「まさか…ヘオスポロスの本来の時空間戦争や、時空間戦略だったら…惑星級の兵器が支給されるのが普通で、かなり少ないですよ」


 もう、ディーオの口から出てくる規模の話に追いつけないので、尋ねる事を止めて

「でだ」とオールステッドが

「その二つの戦艦を得て、六つの神殿を繋げて人神がいる神の庭へ行き、人神を倒した後…どうすれば、お前達の組織からの侵攻を防げる?」


 冷静な最も的確な問いをオールステッドが告げる。


 ディーオは平静に

「神の庭へ行き、人神を倒した後、おそらく人神は、神の庭のシステム…いえ、創造装置の暴走を行って世界を破滅するのを防ぐのを引き換えに、自分の生存を優先するでしょう。その結末は、ナナホシさんが持つ端末の歴史の結末と同じになりますが…。

 私がいます。私は…二人ほど…ユグドラシルの民の知り合いがいます。

 黄金獅子神のレオニドスと、白銀鎧龍神のメタノファスという方達です。その二人と連絡を取って、その二人に一時的に神の庭の仮の管理者、仮創造主になって貰い、人神と神の庭との繋がりを切って、人神を倒す。その後、この世界でゆっくりと神の庭、エルガルザドを受け継ぐ人を探せばいいですよ。

 そして、ヘオスポロスの協定には、ユグドラシルの民を攻撃しない事が明記されていますが…余程の例外がない限り、それは破られません。

 そして、仮でなってくれた二人から本命になった人が、そのユグドラシルの民として繋がれば同じと協定に規定してありますので、それで終わりです」


 そこまでのハッキリしたルートの話がされると、ルーデウス達は呆然としたが、オールステッドが強面の顔に笑みを浮かべ

「ふふ…なるほど、長い歳月待たずに人神を倒せるか…」


 アルスが身を乗り出し

「まずは、その二つの戦艦を見つける事だが、どのくらいの…」


 ディーオが

「その二つの戦艦が放っている発信波を感じませんので、おそらく、今いる場所から二千キロ以内にはありませんね。多分、この世界の半分くらいを回るというか、今、ここで、この世界の半分の位置にいて発信波を感じないという事は、北と南の端に落とされた可能性が濃厚ですね。北端と南端に行けば…発信波を感じられる筈です」


 ルーデウス達の脳裏に今後のやるべき事が明確に想像できた。

 今まで試行錯誤だった事が多かったけど、まさか…これ程までにどうすれば良いか分かってしまうと、ハッキリとその未来が見えてしまい、迷いがない。


 オールステッドが不気味に笑っている。

 今まで苦渋と辛酸を舐めさせられた相手を確実に倒せる事が分かった。

 嬉しさで武者震いのような怖い笑いをしている。

 

 その後は、食事を交えながら色々な事を話した。

 オールステッドはお酒を飲む人物でないに、今日はやたらに飲んで、人神に勝つ前祝いだ!と大蛇の如くラッパ呑みする。

 アルスが心配そうだ。

 

 ナナホシは、自分がどうすれば帰れるのか?と、ディーオに聞くと、ナナホシを召喚したであろう人物は、人神が仕組んだ戦争によって死ぬ人物、篠原秋人を助ける為の手助けをする為に召喚されたから、人神を倒してその戦争を起こさせないようにすれば、自然と篠原秋人が出現して、その召喚したであろう少女と遭遇して、その少女を救って帰れると…。


 ルーデウスは、ディーオに色んな話を聞いた。

 超兵器となった時にどういう風に、生きて来たとか? ヘオスポロスの事とか。

 ヘオスポロスの話を聞いて青ざめてもいた。


 リリアとダリスにエレナの三人は、ルーデウスの奥方達に、一夫多妻でどうやって家庭を維持するのかの秘訣を聞いていた。


 


《ルーデウスの視点》


 今日、到着したディーオ達と共にオールステッド達と色々と話した。

 ディーオが話したヘオスポロスという、とんでもSFな連中の事。

 その兵力、技術に関して…正直、頭を抱えた。

 自分が持っているオタクの知識をフル動員しても、その規模が想像できない。

 一兵卒がドラゴンボールのフリーザなんて一撃だろうってくらいに強いのは分かった。

 正直、そんな連中と戦争…いや、当て馬になんかにされられたら…こっちの身が持たない。

 早々に、人神を倒して色々とすまそう。

 オールステッドは、人神を完全に倒せる事に喜んで、今までにないくらいに酒をバカ飲みして、息子のアルスに面倒を見て貰っていた。

 アルスもこんなに上機嫌なオールステッド様は見た事が無い…と言っていた。

 オールステッドは酒を飲みながら酔っ払い。

 人神を倒す前祝いとか、滅んだ他の世界の復興とか、あと…奥方を娶って、龍族の復興をする! そして、オレの方を抱いて、お前と一緒に人神が倒せるぞ!

 本当に、今までにないくらいに上機嫌だった。


 正直、ディーオ達四人で冒険させたのは成功だったらしい。

 その成功がなければ、これ程の事が聞けなかったはずだ。

 ディーオは、前世でも恋人や妻はいた事なく、三人の妻を持ってどうすれば、彼女達三人を幸せに出来るのか?と、先輩であるオレに聞いてきた。

 オレはまず、ディーオが言っていた四人で暮らすチャンとした家を持つ事を押した。

 そして、嫁さん達以外に浮気しない事だ。

 あと、親達を頼るとか、頼れる人を頼るとか、そんな事を言って

 ディーオは真剣に頷いていた。


 オレは、ディーオが前世でも恋人や妻がいなかったので、DTだったの?って聞いたら。

 風俗でDTは捨てたらしい。

 オレはそれを聞いて少し戸惑うも、今世の操は妻にした彼女達に捧げたらしいので、良しとした。

 そんで、血筋的には、エレナと異母兄弟には…なるが。

 その辺りは、この世界の風習に馴染んでいるらしく、問題ないらしい。

 因みにダリスの両親も、異母兄弟の姉と弟らしい。

 まあ、自分達、地球での倫理ではアウトだけど、この世界はその辺はルーズなので、仕方ない。

 息子アルスの事もあったし、どうしようもない。


 そうして、この世界で妻達三人と生きて行くと覚悟したのか、色々と喋ってくれる。

 ヘオスポロスの事。

 そのヘオスポロスから派遣された時空での戦争の事。

 時空間の戦略とか。


 ヘオスポロスは、一言で現すなら、戦争屋という感じだ。

 様々な時空間戦争の代理や技術開発、その開発した技術の売買。

 その売買される品の交換ツールは金品ではなく、売却した先の時空に関する様々な権利らしい。

 売却交換に金品でないのは、ピンとこないが。

 その時空内に関する権利を使って、色んな事をしているらしい。

 ディーオが言うには、株式と似たような事らしい。

 前世で株をやっていないので、理解できないが…。


 そして、ディーオのヘオスポロスでの経験の豊富さに驚愕もした。

 流石、前世では兵器人となって百年以上は生きているだけあって色んな時空の世界構造や、仕組み、その戦いかに関してベテランだった。

 この世界に関しても似たような世界を幾つも経験している。

 下手をしたら自分より経験値はあるかもしれないと思ったが。

 男女、夫婦に関してはまるで素人なので、そこは長年…三人の妻達と暮らしているオレにアドバンテージがあるな!


 ある程度、飲んだり騒いだりして、アルスは泥酔したオールステッドを部屋に連れて、オレ達とディーオ達もそれぞれの部屋に消えた。

 因みに、宿はお互いが隣り合うように三つの部屋を取って、真ん中はオレ達の部屋だ。


 部屋に戻ってシルフィーやロキシーにエリスと話した。

 三人とも、ディーオの妻達リリアやダリスとエレナに色々とアドバイスをしたらしい。

 アドバイスを聞き入る三人を見て、昔の頃を思い出した、とか楽しげだ。


 四人で話していると、この宿の壁の向こう、ディーオ達がいる部屋からディーオ達の愛の囁きと営みが聞こえた。

 どうやら、四人で致しているらしい。

 若い、本当に若い。

 二時間も、がんばっている。

 音を上げる女の子達の甘い声が聞こえたりしていたら、こっちもなんか…ねぇ。

 なるでしょう!

 四十代半ばでもオレのムスコは現役なんですもん。

 若いディーオ達に乗せられて、こっちも愛の営みをしてしちゃいましたよ。




 ーーー


 翌朝、宿屋の掲示板の前でディーオ達はオールステッドを前に、ここでする事を聞く。

 その隣にいるルーデウスは、少し腰を撫でている。

 どうやら、頑張りすぎて祟ったらしいが、とにかく、毅然と勤めるようにしている。


 ルーデウスは、ディーオとリリアにダリスとエレナの四人を見る。

 平然としている。

 昨晩、もの凄く愛し合ったのに、何事も無かったかのように平然として、その朝も少しお互いに楽しんだのに、疲れている様子はない。

 むしろ、リリアとダリスにエレナは艶々としていて、ディーオはしっかりとした眼光で今日も頑張るぞ!という気合いが見える。


 ルーデウスは天井を見上げて、若いって良いなぁ…と思った。

 

 オールステッドが

「ルーデウス、説明を」


「ああ…すいません」

と、ルーデウスが掲示板の地図を示し

「君達には、レッドドラゴン退治をして貰う」


 ここ最近、この街の近隣集落へレッドドラゴン三頭の群れが出現するらしい。

 それを、これから組む冒険者達と共に、そのレッドドラゴン三頭を退治するという任務が与えられた。

 

 ディーオ達は、ある程度の戦闘経験を積んでいるのでCランク、中の下くらいの実力がある事は証明されているが…。

 それは、あくまでも経験を積ませる訓練であって、不測の事態の実戦は未知数だ。

 それに、どこまで四人がエピオンの力を使えるのか?

 エピオンの能力も未知数。

 それを知る為に、レッドドラゴンへぶつける。

 無論、他のS級冒険者やルーデウス達も加わるので、問題はないが…。

 とにかく、ディーオ達の実力を知る為に、レッドドラゴン討伐へ向かわせる。


 大型の飛空艇の二隻に現場へ向かう。


 ルーデウスは、甲板にいるディーオ達に向かう。

 きっと、緊張していると…思っていたが。

 ディーオが他の冒険者達に、レッドドラゴンについて聞き回っていた。

 情報収集に余念がない。


 レッドドラゴンの体長は十メートルくらいで、滑空する翼竜タイプ、獰猛で攻撃性が高い。

 赤い鱗の体皮は分厚いが、魔法攻撃は通じる。

 その習性と諸々を聞いて頷く。


 ルーデウスに近づく他の冒険者が

「ルーデウスさん。アイツ等…なんです? もの凄く情報は聞くし…若い冒険者みたいな浮ついた感じがないんですけど…」


 情報を集めたディーオ達は、一カ所に集まって話し合う。

 どう、対応するには?と会議を始める。


 ディーオ達は、ディリーナをリーダーとした黒き牙のチームだった。

 ディリーナは、共に魔物を狩らせて訓練をさせていた。

 ルーデウスは、ディリーナから色々と聞いていた。

 ディーオは、様々な魔物に関する戦闘経験がある…おそらく、前世でそれと近い存在と戦っていたので、対処を知っていると…。


 真剣に話し合っているディーオ達に入る隙を失うルーデウスの隣をオールステッドが通り過ぎて

「お前達…どうだ? 行けそうか…」


 ディーオ達がオールステッドに真剣な目を向ける。

 エレナが

「跡形もなく粉みじんにしては…」


 オールステッドが

「ダメだ。素材として回収する」


 ディーオ達は頷き合ってディーオが

「分かりました」



 飛空艇は、目標のレッドドラゴン達を見つける。

 空を飛ぶレッドドラゴンの三頭は、それに気付きこっちへ向かって来る。


 飛空艇にいる全員が遠距離攻撃を構える。

 そこへ、ディーオ、ダリス、リリア、エレナの四人が並んで甲板の境の手すりに乗り上げ

「では、行って来ます」

と、ディーオが告げると四人のの背中から赤い鎧の翼が伸びる。

 エピオンの力の一つだ。

 その赤い翼から爆発のような推進力が吹き出して、四人は飛んで行った。


 それを見てルーデウスは青ざめ、なんでそんな装備があるの?と驚いている。

 オールステッドは鋭く凝視している。


 レッドドラゴンより速い飛翔で、ディーオ達四人が迫る。

 

 ディーオ、ダリス、リリア、エレナの四人は四方へ散会すると、エレナが

「唸れ! 光の雨! 全てを貫く槍とならん!」

 シャイニング・ブラスト!

 エレナの魔法が炸裂する。

 膨大な数の光の槍の攻撃がエレナから放たれる。

 帝級レベルの攻撃魔法が吼える。


 無数の光の槍に打たれるレッドドラゴン達、そこへディーオとリリアにダリスが向かって来る。

 一頭がディーオに向けて顎門を開いて業火を放つも、ディーオは右手に剣を握り左手にエピオンの盾を構えて、盾にある金属の尾を業火に向けると、業火を金属の尾が包み込み弾き返した。


 自分の攻撃が帰って来たレッドドラゴンは怯んだそこへ、ディーオはドラゴンファングを付加させた剣を構え、その出力を最大にさせ、レッドドラゴンを頭部から尻尾の先まで真っ二つにした。


 それに、飛空艇で見ていた冒険者達は唖然とした。


 リリアとダリスの方は、同じく左手にエピオンの盾を装備する。


 リリアをかみ殺そうとするレッドドラゴンだが、リリアはタイム・リープを使って動きを巻き戻し噛む前にした次に、エピオンの盾にある金属の尾、エピオンクローでレッドドラゴンの首を巻き取ると、そのままエピオンクローが鋭い尾を伸ばしてレッドドラゴンの首を刎ねた。


 ダリスは、レッドドラゴンが火炎でも噛みつきでもなく突進して急反転して死角から襲おうとするも、それ以上の急反転でダリスは動き、左手にあるエピオンクローと右手に剣でレッドドラゴンを切り刻む。

 頭部から後頭部の頸部、それから胴体に向かって切り刻む。

 レッドドラゴンの首が皮一枚で繋がる程になます切りにされた。


 倒されたレッドドラゴン三体は下の森に墜ちた。


 それを見届けたディーオの所に彼女達三人も集まり、リリアが

「想定より弱いわね」


 ディーオが

「まだ、だ…。話によると首を落としても動いた話がある。おそらくだが…あの巨体を支える為に第二の脳があるのかもしれない」


 ゆっくりとディーオ達は、倒したレッドドラゴンへ向かう。

 地上に降りた瞬間、頭部だけが飛んだレッドドラゴンが襲ってくる。

 素早くディーオ達は散会、背後へ向かい。翼の付け根と両足と脚部の付け根、腰を切り刻む。

 そこに第二の脳がある可能性が高いからだ。

 そこを破壊されたレッドドラゴンは、今度こそ、地面に落ちて死んだ。


 ディーオがそれに近づき

「なるほど、腰に第二の脳があるのか…」

と、体内にある魔石と一体化している脳のような部分を見つけた。


 倒されたドラゴンに向かって飛空艇の二隻が近づく。


 そこに乗っていた冒険者達は、あっという間にレッドドラゴン三頭を倒したディーオ達を驚愕で見詰める。


 ディーオ達は、レッドドラゴンが生きていないか…確かめる為に何度か剣で刺して確かめて死んでいると確認したら、話し合いが始まる。

 リリアが

「呆気ないわね」

 ダリスが

「群れからはぐれた個体だから、弱いのかも」

 エレナは

「動きも悪かったし、疲労していたかも」

 ディーオは

「とにかく、無事に終わって良かった。今後も気を引き締めてやっていこう」


 レッドドラゴン三体の死骸は、飛空艇二隻に吊らされてドラゴンチェン街に運ばれ、一躍のディーオ達の話が飛び交った。

 龍神の右腕ルーデウスが目を掛けていた小僧達が、レッドドラゴン三体を倒した話が一気に広がり、冒険者組合のギルドでルーデウスが諸々の事をしている後ろにいるディーオ達を見てヒソヒソと話をする。


 ルーデウスは受付をしながら、もの凄く視線が突き刺さっているのを感じていた。

 理由は分かる。十代後半の小僧達がレッドドラゴンを倒した。三体もだ!

 一体でも倒すのに多くのパーティーや、上級の戦士達が必要なレッドドラゴンを、しかも三体を!それも飛んでいて火を吐いたドラゴンを倒した。

 その話で街中は持ちきりだ。

 その証言にウソはない。

 ルーデウスが応援を頼んだS級の冒険者達が見ていた。

 彼等がウソを吐く理由なんてない。


 ディーオ達の後ろにいる龍族オールステッドがディーオ達に

「合格だ。今後、一週間…この街にいて赤竜山脈に登ってドラゴン狩りを続けて経験値を積め」


 ディーオ達は「はい」と返答した。


 その後、オールステッドは帰ったが、ルーデウスが残ってディーオ達に経験値を積ませる。

 飛空艇二隻で赤竜山脈へ昇り、ドラゴンの群れ、十頭くらいを目安…とは行かずに、レッドドラゴン達は即座に向かって来る。


 そこへ飛び立ったディーオ達が向かい、エレナの帝級魔法ニュークリアの大爆発をぶち込み。

 大爆発で乱れた所を、両腕を鬼骸エピオンに変えたディーオとダリスにリリアが突っ込むレッドドラゴンの首を刎ねて落とす。

 

 それに残りのレッドドラゴンは驚き逃げて行く。

 首を刎ねたレッドドラゴンの腰を切り刻んで第二の脳を破壊するディーオ達。

 飛空艇二隻ではレッドドラゴン十体の素材は回収できず、無線の魔道具で応援の飛空艇を呼んで回収した。


 連日、運ばれるレッドドラゴン達によってディーオ達の噂が拡大していく。

 アイツ等は、オールステッドと同じ龍族だから出来るとか。

 男の方は、ルーデウスの隠し子で、女の方はオールステッドが妻を迎えて産ませた龍族の娘達で、その四人が結ばれて、ついにルーデウスとオールステッドは、名実ともに一族なったとか。


 三日目も、ディーオ達が倒したレッドドラゴン十体の素材が運ばれる。

 

 何時しか、ディーオ達の事をドラゴンイーター竜を喰らいと周囲は呼ぶようになった。  

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