青少年期

第9話 飛空艇

 ディーオは自宅にある鍛冶場で、剣の整備をしていた。

 ドラゴンファングの力は便利だ。

 直したい剣にドラゴンファングの力を送ると、活性化して形を保ったまま材料を加えて直せる。

 お手軽、マインクラフト並に修理が出来る。

 いっそ、装備を直す鍛冶屋にジョブチェンジしようかなぁ…。

 本気で考えている。


 修理を終えた剣を並べて、出来具合を確認するディーオの背中に

「調子はどうだ?」

 ディリーナが呼びかける。


 ディーオは後ろにいるディリーナに

「ええ…終わりましたよ」


 ディリーナはディーオの隣に来て、修理が終わった剣を手にして

「良い出来映えだ。修理される前より上物になったな」


 ディーオが

「ドラゴンファングで、結晶の構造や密度を調節しましたから…。前よりは強度が上がっているはずですよ」


 ディリーナが頷き

「それと…これをクリフ殿とザノバ殿からの手紙と、預かり物だ」

と、手紙と片手に握れる金属の板を置いた。

  

 ディーオは、直ぐにその金属の板を握り魔力を込めると、縦に伸びたり横に伸びたりして動く。

 マジか…本当に作れた…ウソだろう。


 ディーオは、前世にあった知識をルーデウスの知り合いで魔道具や魔導鎧を開発しているクリフとザノバと出会って、色々と意見を交わした。

 クリフとザノバは、ディーオから提供される分子サイズの世界の技術を参考に、魔導金属素材で人工筋肉を作り出した。


 本当に作れるとは思ってもいなかった。

 この世界は、誰しもが魔力を持っていて、その魔力が動く事で様々な動きが生じる。

 つまり、この魔導人工筋肉素材を使えば、伸縮自在な魔導鎧を作る事も、その力を数十倍にもアップする特別な装甲を作る事も可能だ。

 魔法の世界はズルい。

 そう、思った。

 この素材を作り出す為に、地球ではどれくらいの技術と労力が掛かったのかは、押して計るべし。

 だた、コンセプトと仕組みを喋っただけで再現したのだ。


 だからこそ、エグゼクティブが…この世界を選んだ理由なのだ。


 ディーオは手紙を見ると…ザノバからだった。


 ディーオくん、ありがとう。

 君が教えてくれた技術のお陰で、今まで作成不能とされた闘神鎧と同等の魔導鎧が作れそうな可能性が出て来た。

 今後とも、君との交流を楽しみにしている。

 つきましては、何時、会えるのだろうか?

 クリフ共々、楽しみにしているよ。


 ディーオは微妙な顔だ。

 オールステッドの配下のルーデウスの知り合いに恩を売っておけば…そんな算段もあったが、二人の技術を得たいという真摯な姿勢に、色々と話してしまった。


 これは…敵に塩を送ってしまったのだろうか…?


 ディーオは考えていると、ディリーナが

「ディーオ、修理された剣を運ぶから手伝ってくれ」


「あ、はい」

と、ディーオは手紙を置いて、ディリーナが運ぶ手伝いをした。

 

 ディリーナの馬に剣達を乗せて、ディリーナは運んでいった。

 それを見送るディーオ。


 ここに転生して十四年が経過している。

 体も元の人の時の身長に戻り、訓練も積んでそれなりに、この世界で生きて行ける経験値を積んだが…未だに旅は許されていない。

 その理由は、自分が疑われているのが原因だ。

 エピオンの力を元通りに戻したいが本来の目的ではなく、別の目的があると気付いている。

 だからこそ、五年前にリリアとダリスにエレナの三人が自分の力を封印してコントロールする者達として選ばれて、その鎖に繋がれた。

 ディーオは、自分の両腕にある呪紋の入れ墨を見詰める。

 これがある限り、リリアとダリスにエレナの三人がエピオンの能力の優先権を持っている。

 何か、この呪紋を解く方法がない限り、永遠にリリアとダリスにエレナの三人の支配下にいる。

 死ぬまで…。

 それは、リリアとダリスにエレナの三人も同じだ。

 どうして、彼女達は一生、縛られるような事に手を貸したのか?

 その理由を聞いていない。

 いや、もしかして…エピオンの力が魅力的だったから…。

 結局は、使われる道具くらいなのだろう…。

 そう、ディーオは思った。

 彼女達から真意を確認する事はしないで…。



 ディリーナが、ディーオの家から修理された剣達を持って来て、それを領主の城の兵士達へ渡した。

 全員が、修理を依頼した領主に兵士達だ。

 早速、兵士達は、簀巻きの木で試し切りをして

「すげ…前より切れ味が上がっている」


 兵士がディリーナに

「ありがとうございます。切れ味が落ちて、研ぎ直しに出したら…亀裂があって捨てないといけないって言われていたんですよ」


 ディリーナが微笑み

「腕の良い鍛冶屋がいてな。壊れてもある程度は直してくれる」


 兵士が

「また、お願いしても…」


 ディリーナが頷き

「ああ…頼んで置けるようにする」


 兵士達が再度、お礼を言って去って行くと、そこへ簡素で動きやすいズボンのリリアが来て

「また、ディーオに頼んだの?」


 ディリーナが

「アイツは腕が良い。私の剣も何度か、直して貰った。それと…グレイラート騎士団関係かの手紙をモノを渡したんだが…。私には何のことか…さっぱりだった」


 リリアは何処か嬉しそうに

「そう、流石…ディーオね」


 ディリーナが

「そのディーオと二日後には、簡単な外泊の訓練をするんだ。変な病気になって取り止めはナシだからな」


 リリアは頷き

「分かっているわよ。ダリスもエレナも来るんだから…問題はないわ」


 ディリーナは笑み

「一応、付き添いで私も来るが…ディーオが変な気を起こさないように監視はする」


 リリアは、顔を背けて

「心配なくても、そんな事には、ならないわよ…。ディーオは…」

と、何かを言おうとする前に何処かへ立ち去っていた。


 その背にディリーナが

「正直に言ったらどうだ? チャンと話し合わないと伝わらない事だってあるぞ」


 リリアは無言で去って行った。


 リリアは、城の廊下を歩きながら溜息を漏らす。

 その理由は…

「私って魅力がないのかなぁ…」

と、自分の胸を持ち上げる。

 その胸はしっかりと育っている。


 ルークは、妻達からリリアが最近、憂鬱な時がある事を聞いていた。

 その理由は、分かっている。

 ディーオの事だ。

 ディーオは成長して、十四歳になる。

 そろそろ成人が近い。

 リリアは、成人の十五歳だ。

 大人になるという事は、恋心もしっかりと出てくるという事だ。

 まあ、その前に年頃になれば、そういう事も自然と…とはならないのディーオだった。

 

 ルークは自分が十五の時を思い返す。

 同年配のアスラ帝国の女帝アリエルの臣下であり友人として、ラノア大学へ行き、女の子達をブイブイと言わせていた。

 ルークの血筋、グレイラートの血を受け継ぐ男児は、たくさんの女の子と遊びたいという衝動を持っている。

 弟のルディーオも、兄達も女性関係は華やかだったが…ルディーオだけは、息子から女関係で蔑まれていると知って、妻のウルティア以外に手を出さなくなった。


 ルディーオは長女と次女のエレナ、そして三女、四女とウルティアの間に恵まれたが…男児は、外の妾のレディスのディーオだけだった。

 その唯一の息子に疎まれているのだ。

 落ち込み具合は、途轍もない。


 甥っ子でもあるディーオは、修行僧のようだ。

 この世界とは違う世界の前世というのを持つ特別であるのもそれを加速せる要因だろう。

 それでも…好意を持っている相手、女性を前に手を出さないのは…いただけない。

 それが娘リリアとしてもだ。


 リリアと同じくダリスもエレナも、ディーオに好意を持っている。

 だから、誰か一人、ディーオが手を付ければ…なんて、甘い望みを…。

 父として娘リリアの恋路をどうにか成就させたい。

 リリアには、いや、ダリスとエレナも、ディーオの中にある力と繋がる事を選んだ理由は、ディーオと共にありたいと本気で願っての事なのだ。


 どうすれば…?とルークは悩んだ時に、かつて、女性恐怖症であった男を思い出した。

「ルーデウスに相談してみるか…」




 とある日、馬に装備を載せての訓練に向かうディリーナ、ディーオ、リリアとダリスにエレナ。

 四人が乗る馬達はのんびりとした足取りで、城塞都市ノアから離れて森へ向かう。


 ディリーナが

「いいか、森の中で出会う獲物を狩って、それを食料とする訓練をする。各員、気を引き締めろ」


「はい」とディーオにリリアとダリス、エレナの四人は返事をした。


 ディーオとダリスを先行に、リリアとエレナが続く。

 ダリスが

「足跡がある」


 ディーオが来て

「蹄の感じから…普通のイノシシだね」


 リリアとエレナも来て、リリアが

「狩りましょう。早めに食料を手にするに限るわ」


 エレナが

「一頭なら、相当な食料になるね」


 ディーオとダリスは、右肩と腕、胸部と脚部の膝と足に軽装の鎧を纏い左腕に手甲に繋がる盾を持つ前線兵士の様相。

 リリアは、上から下まで軽装よりもしっかりした騎士の鎧。

 エレナは、両手に槍の刃が付いた魔導杖と魔術師が付ける頑丈なコートに内側には楔帷子と上部と膝と肘に鎧の当て子といった魔術師の鎧。

 戦う為の完璧なチームだ。

 

 身を低くしてディーオとダリスは進み、その後をリリアとエレナが続くと、川辺にいるイノシシを発見した。


 四人が草むらに隠れて会議する。


 リリアが

「イノシシをこちらへ誘導しましょう。エレナの魔法で行き先をアースニードルで塞ぎ」


 ダリスが

「こっちへ向かわせて、三人で仕留める」


 ディーオが

「作戦は決まり、中央は、オレが行く。両脇を…」

 

 リリアが「左は私」とダリスが「右がアタシね」


 ディーオはエレナに

「じゃあ、頼む」


 エレナはグッと腕を上げて

「任せて」


 ディーオとリリアにダリスは三方向へ移動、ある程度、イノシシに近づくと、イノシシが気付いた。

 こちらを警戒している間に


 アースニードル

 エレナは、地面から土の槍柱を伸ばす魔法を発動させ、イノシシの退路を塞ぐと、イノシシは三人へ向かって行く。


 ディーオが迫ると、イノシシが突進して来る。

 それにディーオは剣を構える。

 イノシシがディーオに迫る瞬間、両脇にいたリリアとダリスも動いて、ディーオ、リリア、ダリスの三人は同時に剣先を突進するイノシシに向けて、ディーオはイノシシの眉間、リリアとダリスはイノシシの肋骨の間へ剣を通して串刺しにした。


 一発で、三人は仕留めた。

 エレンが「やった!!!!!」と喜ぶ。


 遠くからそれを見ていたディリーナが満足する結果に頷いた。


 その後、川辺で四人してイノシシを捌いて肉の固まりにすると、それを担いでキャンプする場所を探す。

 キャンプに最適なのは、水が確保できる川辺で、見晴らしが良く高い場所か、背後が守れる岩がある窪んだ場所。

 丁度良い窪んだ岩場を見つけて、そこをキャンプ地とする事にした。

 背後からの襲撃を大きい岩によって防ぎ、防御を正面に出来そうな場所は、最適なキャンプ地だった。


 火を焚く為の木材を探し出し、二つのテントを張る。

 一応、周囲に他の獣が来ないようにトラップの線をはる。

 この線には、痺れる電撃の魔法が付与されていて、それに触れた瞬間、痛みで熊でさえのたうち回る。


 トラップの線を貼り終わったディーオとダリス、リリアとエレナが火を焚く。

 ディリーナは…手伝いたいような感じだが、そうしては意味が無い。

 四人にやらせる。


 ディーオは、本当に電撃のトラップ線が動くのか? 確認する為に、線に水を掛けるとバチバチと電撃を放った。効果は抜群だ。


 設置場所に来る間に、色んな食べられる山菜を摘まみ、たき火の鍋を囲んで料理をする四人、ディリーナは無難に一日を熟した事に満足して、四人と共に食事を取る。


 森の中なので、夜の水浴びは危険だ。

 汲んだ水で手や顔を洗って、装備を傍において張ったテントの中で就寝する。

 因みにテントの下は、地面に接すると害虫が来るので、沢山の木を組んで高床にしてある。

 夜、静かな森を前に薪を火にくべるディーオ、薪の木は横に大量にある。

 木を切って伐採して山積にしてある。

 これなら訓練の間は持つだろう。

 その前に、明日は午前から散策と、食糧確保、午後は、夜の薪の支度と水を煮沸して貯める。

 三日くらいは、こんな生活を続ける訓練をして次に三日は馬車での寝泊まり訓練だ。

 マジな野生のテント暮らしだ。

 それでもディーオには不満が無かった。

 何というか…この四人でいる事に、居心地の良さを感じている。


 日々の訓練の目的は分かっている。

 オールステッドの配下として使う為だ。

 オールステッドは、人神への復讐をする為に色んな人達を部下として登用している。

 獣人から人族、魔族まで、相当な数の部下がいるらしい。

 このアスラ帝国でも、強力な軍団を形成している。

 そこへ、ディーオは組み込まれるだろう。

 まあ、軍団に入れば、色んな場所へ仕事として出向くだろうし、それを使ってこっちに来ている探査物資達を探すのも悪くない。


 じゃあ、その探査物資達、アクエリアスとリーブラスを発見したとして…この彼女達が制御する魔術の呪紋が…

 後ろで気配がしてディーオは振り向くと、エレナとリリアにダリスが眠るテントからリリアが出て隣に座る。

 ディーオは

「まだ、見張りの交代じゃあないよ」


 リリアが満天の夜空を見上げて

「星が綺麗ね」


 ディーオは薪をたき火に投げて

「ああ…そうだな」


 言葉が続かない。


 二人して無言の時間を過ごすのに、ディーオとリリアに気まずい感じはない。

 ディーオが

「なぁ…聞きたかった事があるんだ…」


 リリアは膝を抱えて

「なに?」


 ディーオが夜空を見上げて

「どうして…オレの力を封印する為の人柱になったんだ?」


 リリアが

「何でだと思う?」


 ディーオは夜空を見上げたまま

「色々と考えた。まずは、使命とか…オールステッド達に従わされてとか…そして、オレのエピオンの力が欲しかったとか…。同情なんてのも思った」


 リリアが呆れ気味に

「全部、外れ…」


 ディーオは一番、思いたくない結論に到達した。

「オレのどこが良いんだ?」


 リリアが

「じゃあ。ディーオは、私達の良い所を答えてよ。そしたら、教えてあげる」


 ディーオはフッと笑み。たくさん言った。

 リリアは、しっかりして来て、いい女になったとか、ダリスは真っ直ぐな感じで綺麗とか、エレナは太陽のように暖かくて優しいとか、細かい事を思い出してそれを褒めたり、良かったり、とにかく、五年間で沢山見た、ダリスとエレナにリリアの良い所を言い続けた。

「そんな良い子達だからこそ、幸せになって欲しい。オレなんかに縛られないで…」

と、ディーオは左にいるリリアを見ると、リリアは恥ずかしさで顔を膝に隠していた。

「恥ずかしいか?」

と、ディーオは告げる。


 リリアは呼吸を整えて、顔を上げて

「ディーオって前の前世で…結婚とかしていた?」


 ディーオは首を横に振って

「全然、そんな必要性を感じていなかった。なんで結婚するんだろう? 恋愛をするんだろう? その意味を…ただの生殖活動として考えていた。だから…それが出来る人と出来ない人がいるのが当然だと…。でも、みんな違っていた。誰かと幸せになる事が人生の意義のように…」


 リリアがディーオを見て

「今もそう思う?」


 その問いかけを、テントで聞くエレナとダリスに、別のテントにいるディリーナ。


 ディーオは、薪を投げ入れて

「たぶん、こっちに引きずられているんだと思う。そうは思っていない。いや…もっと時間を掛ければ…そうなってくるかもしれない。今は…若いだけで…」


 リリアがディーオに近づき、それにディーオが顔を向けると、リリアが額を合わせて

「ディーオ、私は、アナタと共に生きていきたい。ダリスもエレナも…本気でそう思っているわ。だから、あの時、私達はディーオと繋がれる離れない糸を手に入れたの。それに後悔はないわ」


 ディーオの瞳を真剣にリリアは見詰める。


 静かに近距離で見つめ合う二人、ディーオは目を閉じて離れて

「すまん。考えさせてくれ」


 リリアは頷き「分かった」と告げてテントへ戻っていった。 


 ディーオが後ろにあるテントに

「ダリスもエレナも聞いているんだろう。近い内に…必ず答えを出す。必ずだ」



 その後、ディーオ達は、一週間の外泊の訓練を終えた。


 ルークが娘のリリアに

「お帰り…」


 リリアが物憂いげな感じで「ただいま」と答えて装備を外しに行った。


 ルークは娘の感じに、何かマズい事が起こったと思ってディリーナに尋ねる。

 ディリーナから詳細を聞いて

「成る程…」


 ディリーナが

「どうにか…できないモノか…」


 ルークが腕組みして

「私だったら、もう、寝所へ運んでドレスの袖を脱がせて、愛を囁いているよ」


 ディリーナが頭を抱え

「アンタは、どうしようもない女タラシだからな。参考にならん」


 ルークは考えて

「ルーデウスから話があったんだ。四人で実験的な旅をさせてみたいって」


 ディリーナはルークを見て

「旅とは?」


 ルークが立ち上がって空から運ばれてくる十五メートルのヨットのような飛空艇を見詰め

「最近、開発されたヨット型とされる飛空艇があってね。少人数、一人でも操縦できる帆船型の飛空艇なんだが…。それに四人を乗せて旅を…ここから、南の竜の下顎まで行き、北へアスラ帝国の首都へ行き、東へフィアット領の城塞都市ロアへ行き、こちらへ帰ってくるとする一ヶ月くらいの旅を四人にさせてみるという…」

 

 ディリーナが考え

「まあ、問題は…ないだろうが…」


 ルークが

「それで何も起こらなかったら…どうしようもない」


 ディリーナが

「起こって欲しいのか?」


 ルークは頷き

「これでも…子供達の娘のリリアの幸せは叶えてやりたいとは思っているんだよ。父親として…」



 数日後、ディリーナが新たな訓練をいや、テストだろう。

 ルーデウスから、四人だけで飛空艇で旅をする事を与えられた。

 ここから南下して竜の下顎まで行き、グレイラート騎士団から依頼を受ける。

 それで何件か熟して、北上、アスラ帝国の首都で同じく依頼を熟し、東へ向かいフィアット領の城塞都市ロアで依頼を熟して、帰ってくる。

 一ヶ月の旅だ。


 それを領主の城で聞く、ディーオ、リリア、エレナ、ダリス。

 説明するディリーナにも分かるように四人の雰囲気が硬い。

 あの時の訓練で話した事、ディーオの答えを彼女達三人は待っている。


 そして、今回の旅。

 間違いなく、答えを聞ける。


 各々で準備を始める。


 その前にエレナ達は、ララと別れる事に…。

 ララからは、「がんばってください」とエレナは励まされ、ダリスとリリアもお礼を告げると、「大丈夫です」と胸を張って言われた。


 ディーオにはララが

「相手の気持ちを分かっているのに応じないって残酷な事で、一番に酷い行いですよ」

 一番、パンチがあった。


 ララは再び、冒険者として世界を回る旅へ向かう。

 どこかで出会えるような予感があった。


 ディーオは、小冒険への旅立ちの日

「じゃあ、行って来ます」

と、ディーオは祖父ゼロスと祖母レリスに母レディスに告げる。


 祖父ゼロスは「ムリはするな」

 祖母レリスは「お嫁さん達が来ても大丈夫よ」と微笑む。


 ディーオは額を抱える。


 母レディスは「ディーオ、アナタは相当に強くなったわ。上級の騎士くらいにね。大丈夫よ」


 ディーオは微妙な顔で

「リリアやダリスは、剣神流の…光の太刀…使えるくらい…強くて、オレは…」


 母レディスは

「アナタの強さは他にあるわよ。がんばって来なさい」


 こうして見送られてディーオは出て行くと、同じ村にいるダリスと一緒にエレナを迎えに行って、リリアがいる領主の城へ向かう。

 その途中、ダリスが

「楽しみだね」


 ディーオは頷き

「ああ…」

どこか緊張している。


 エレナが微笑み

「大丈夫だよ。私達四人がいれば…どこでも大丈夫だから」


「うん…」とディーオは緊張気味に答える。

 なぜなら、絶対的にこの旅で、四人の関係は変わる予感しかしない。

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