第7話 この世界にプライバシーは存在しない

 本当にこの世界にプライバシーは存在しない。

 ディーオの独白からの、ディーオの能力を確認する為に、誘拐事件と同じ事をさせられた。

 領主の城の広場で、リリアとダリスを同じように両脇に抱きしめて鬼骸エピオンを発動させて、話していた事が真実と認定された。


 はぁ…とディーオは、溜息交じりで家の庭で蹲っていると、その背中をディリーナが叩き

「何をぼさっとしている! 修行だ!」


 落ち込んでいるのにディリーナは、尻を叩く。

 場所が場所なら、完全にパワハラだが、そんな事なんて、この世界にはない。


 ディーオは黙々と、剣の型を振り続ける。

 運動する事で、他の事を考えなくても良いから静かに黙々と続ける。


 その隣にリリアとダリスにエレナの三人がいるが、あの事件の後、口を聞いていない。


 三人が帰った後、祖父ゼロスが

「ちょっと来なさい」


「何ですか?」とディーオは、祖父ゼロスと共にテーブルに座る。


 ゼロスが

「あの子達が悲しんでいる」


 ディーオは直ぐに分かった。

「リリアとダリスにエレナの事ですか?」


 ゼロスが頷き

「自分達が原因だと悔やんでいる。許してあげなさい」


 ディーオは呆れで頭を振り

「ずいぶん、上から目線なんですね」


 ゼロスは厳しい感じで

「前世の事は関係ない。お前は、この家で産まれた孫、ディーオ・アマルガムだ。前世の事は忘れなさい。ここで人として生きて人として幸せになって死ぬ。それがお前の人生だ」


 ディーオは、椅子から降りると全速力で二階に駆け上がって自分の部屋に籠もる。


 ゼロスは項垂れる。

 どうすれば良いのか? 全く分からない。


 母レディスが帰ってくると、テーブルに俯く父親のゼロスがいて

「父さん」


 ゼロスは項垂れながら

「ワシにはどうする事も出来ない」


 部屋にディーオは考える。

 もう少しで十歳になる。

 一人で行動して…いや、その前にこの世界での実戦経験がない。下手に外に出て…生きて行けるか?

 そして、無事に生き残ってもここへ送られる調査物資達を回収できるか?

「クソ…」

と、唸る。

 どっちにせよ、詰んでいる。

 従うフリをしても、怪しまれているから下手な行動が出来ない。

 そう、考えながら眠る。


 あの夢へ入り

「おい、フェイト…」

と、エピオンがフェイト…人神を睨む。


 フェイトは焦りながら

「いや、何とか…探しているんだよ手段を…でも、アイツ等が結構、潰していて」


 エピオンは頭を抱え

「もう、いい」


 フェイトは焦り

「あああ! 待って!」

 フェイトとのリンクを切った。


 ヘオスポロスのエグゼクティブと繋がり

「申し訳ありません。完全に詰みました」


 エグゼクティブは肩をすくめて

「予定通り、君が十歳相当の肉体になった時に、こちらか探査物資達を送る。リーブラスとアクエリアスは送る。まあ、時間をかける事だな。全てを暴露しても構わないぞ。その方が…」


 エピオンが

「プランが変更されるだけですか…」


 エグゼクティブは

「我らヘオスポロスの目的は、変わらない」


 目が覚めたディーオは、木窓の隙間から指す朝日を見て、窓の外を見る。

 小麦と牧場の家畜達がのんびり暮らす風景。

 牧歌的すぎる風景に「はぁ…」と溜息を漏らして

「まあいい。何とかやるか」

と、二階から下りると、朝食のテーブルがあった。

 何時も祖母のレリスが用意してくれる朝食。

 それを家族と食べて、午前中は家の掃除、そして昼少し前から剣の訓練。

 午後は、ダリスにエレナとリリア、そしてリリアの護衛兼剣術の先生ディリーナと、ララの家庭教師が村の子供達も集めて文字や算学を教える。

 二時間くらいの読み書きの授業が終わると、子供達が解散して、ディーオ達は剣術と魔法の稽古をする。


 稽古の前にディーオが

「リリア、ダリス、エレナ」

と、呼びかけると三人が怯えたようにディーオを見詰める。


 ダリスが

「私達の事…嫌いに…」


 ディーオが微笑み

「嫌いにならないよ。だって、ぼくの為にしてくれた事が分かっているから」


 リリアとダリスにエレナの三人が泣きそうな顔になる。


 ディーオが微笑み

「三人と友達で良かった。三人の事、もっと好きになりそうだ」


 うあああああああ、とリリアとダリスにエレナの三人がディーオに抱きついて泣いた。


 その三人の額にディーオは軽くキスをしていった。

「仲直りの印」


 こうして、四人は仲直りをして、それを微笑ましくララやディリーナは見詰めた。

 そして、四人は帰り際に、約束した。

 何時か、飛空艇を持って世界を見て回る冒険をしよう…と。

 その為に勉強を訓練を続ける…と。


 とある日に、ディーオは母レディスと共に領主の城へ行くと

「よう」とルーデウスがいた。


 ルーデウスがディーオに近づき

「ちょっと、話をしないか?」


 領主の城の広い庭園が見えるテラスにルーデウスとディーオは並んで座り話をする。


 ルーデウスが

「俺も、君と同じ前世持ちなんだよ」


 ディーオが

「知ってますよ。ナナホシ博士から聞いていましたから…」


 ルーデウスが驚きの顔で

「ええ? どういう…」


 ディーオがルーデウスの驚く顔を見詰め

「七星 静佳 博士、僕たちヘオスポロスにセブン理論っていう技術を与えた人です」


 ルーデウスが驚きで口を覆い

「ええ…つまり、君は…ナナホシが帰還した後の…」

 

 ディーオは広い庭園を見詰め

「どう、帰還したのかは…知りませんが。そのセブン理論のお陰で、我々のヘオスポロスはネオデウスを作る事に成功しましたから…」


 ルーデウスが困惑で頷き

「本当…なのかい?」


 ディーオは呆れ笑みで

「ウソを言ってどうするんですか?」

 そう、自分はナナホシ達が帰還するのを見た事がある。まあ、それを言っても仕方ない。

「ナナホシ博士と一緒に、篠原博士も研究に加わっていましたけど…」


 ルーデウスが

「篠原って、篠原…秋人…」


 ディーオはルーデウスを見て頷き

「はい。二人して、この世界について話してくれましたよ。まあ、最初は信じていませんでしたが…。転生して来てみると…その通りだと」


 ルーデウスが

「そ、そうか…」

 驚きの情報が飛び出して黙ってしまう。


 ディーオが呆れ気味に頭を掻いて

「何かがあるから、こうして話をしに来たんですよね?」


 ルーデウスは難しい顔で

「その…協力して欲しい。無理強いはしたくない」


 ディーオは渋く眼を閉じ

「何を…するんですか?」


 ルーデウスが

「君の力をこちら側で制御しつつ、人神との繋がりを切る」


 ディーオは頭を抱えて

「方法は…あるから言うんですよね」


 ルーデウスが残念そうな顔で

「ああ…」


 ディーオは溜息を吐いて

「どうせ、拒否してもするんですよね」


 ルーデウスが

「だから、強制は…」


 ディーオは空を見上げ

「ちょっと話をしませんか?」


 なんとなく、意味もなく脊髄反射で話したのは、本当に久しぶりだ。

 自分は、まだ、ヘオスポロスが侵略する前は俗に言う。

 子供部屋おじさんの部類で、実家住まいの派遣社員が会社の派遣切りで無職になった時に、ヘオスポロスの侵攻があって世界が激変とまではいかないも、あっという間に落ちた…と。

 独裁的な支配が始まるのか…と思いきや

 ヘオスポロスは遠くから監視しつつ技術を提供するアドバイザーみたいな感じだった。


 そんなもの凄い技術を提供されても、結局は人間が支配する世界は、欠陥が生じて、引きこもりの8050問題、就職氷河期世代、といった諸々の解決手段としてヘオスポロスが、その者達、まあ…男性ばかりだったが、ヘオスポロスの人員補充の為に提供された。


 日本にいた引きこもりの推定100万人の内、90万人近くがヘオスポロスへ向かい。

 それが引きこもりや8050問題や、就職氷河期世代の解決手段とされた。

 自分もその一環として、ヘオスポロスに行き、超兵器の兵士として改造され、ヘオスポロスの兵士として行動していた。


 人間から、人間外への変貌。

 元の人間としての機能を保持しつつ、人間外のシステムを組み込んだサイボーグというより、漫画アームズに近いナノマシン人間という感じだった。


 それから、ヘオスポロスで真面目に、戦闘員として。

 ヘオスポロスは様々な時空の組織と繋がっていて、その戦闘員として活動していた。

 超兵器の兵士となってからは、寿命というのは数十万年単位になり、着実に成果を上げて超兵器としての機能を更新して。

 その時に、ナナホシ博士達と会って、セブン理論というナナホシ博士達が作った理論を元にデウス型ナノマシンを作り、それによって更に進化した超兵器、ネオデウスになったと…。


 そこからは、話がぶっ飛び過ぎて理解できないだろう…とディーオは、ルーデウスを見るも、以外や例えを出して、それが的確だった。

 ルーデウスが、スーパーサイヤ人みたいな惑星兵器?

 凄く、的確だった。

 ルーデウスの前世は、部屋に引きこもるクズニートだったらしいので、その当たりのSFの知識は抜群だった。


 その後は、どんなアニメが流行ったのか?や、どんなフィギアがあるとか、ガンダムの話とか、まるで故郷の地球での話をしているようで楽しかった。


 ディーオが

「帰れるなら帰りたいですか?」


 ルーデウスは腕組みして見上げて

「そうだな…クズニートだった頃の兄貴や姉貴や、弟にあって、無事に…まあ、一回死んでいるけど、家族を持って頑張っていますって挨拶だけは…一回したい。すごく…迷惑を掛けたから…」


 ディーオは同じく空を見上げ

「ぼくには…私にはないですよ」

と、ルーデウスが見るディーオの顔は、子供というより、長い歳月を生きた人のような顔だ。


 ディーオは

「前世では、弟と妹が、無事に結婚して、両親には孫を見せてくれましたから…。地球に後悔も何もない。今、あるとすれば…任務の続行が…」


 ルーデウスが

「その…生まれ変わればさぁ…考えも変わるだろうし、新しい幸せも見つかるって、大丈夫だよ」


 ディーオは鋭い顔で

「私は、前世で、人間の醜さを嫌という程、見てきました。どんなに優れた技術や力を持とうが…所詮、サル擬きだった。それから外れる事が出来た、ヘオスポロスには感謝しています。でも…また…」


 ルーデウスが

「君の事を大切に思ってくれる人達まで、サル擬きと思うのかい? 母親や、祖父母、リリアちゃんやダリスちゃんにエレナちゃん達もかい?」


 そうだと言いたいが、ディーオの口からそれが出ない。

 言いたいのに、口が動かないのだ。なぜだ…。


 ルーデウスが

「君の話を聞いていて、思ったんだ。そんな機械みたいに生きていて幸せだったの?」


 ディーオが皮肉な笑みで

「幸せ? そんなモノ、存在しません。生きるという事は、絶望、失望、裏切られる。その地獄の中で、どう生きるか? その知恵を得る事が生きるという事です」


 ルーデウスが悲しげな顔で立ち上がり

「やっぱりダメだ。君は…受けるべきだ。処置を…。人生は地獄なんかじゃあない」


 ディーオは渋い顔をして

「いるんでしょう? 柱の影に」


 二人のいるテラスの柱達の影から、二つの影が現れる。

 一人はオールステッドと、一人は十代後半の黒髪に仮面を被る少女ナナホシだ。


 オールステッドが

「ルーデウス、もう良いな」


 ルーデウスは頷き「はい、待って頂きありがとうございます」


 ナナホシが近づき

「その…君の力にリミッターを設置する処置をするね。ごめんね」


 ディーオはナナホシに飛びかかろうとするが、その襟首をオールステッドが掴み上げた。


「クソォォォォォォォォォォ!」

 ディーオの悲鳴のような怒りが響いた。


 ナナホシを人質にして逃げようとしたが、オールステッドに読まれていた。



 ディーオは、領主の城の広場に設置された幾つもの魔法陣の上に縛られて置かれ、その魔法陣の周囲の三カ所にある魔法陣にリリアとダリスにエレナの三人が座っていた。


 ディーオは、それで全てを察した。

 リリアとダリスには、一時的に繋げた時の痕跡がある。

 二人のエピオンに繋げた痕跡を辿って、エピオンのシステム本体に魔法でアクセスして、リリアとダリスにエレナの三人に繋げる。

 この三人は、恐らくだが…ディーオとの相性が良いのだ。


 ディーオは、涙しながら「クソ、クソ、クソ…」と呟く。

 

 それをリリアとダリスにエレナの三人が悲しげに見詰める。


 それでも構わずにオールステッドが魔法陣を発動させるルーデウスと、調整するナナホシに

「始めろルーデウス、ナナホシ」


 ルーデウスが魔力を魔法陣に込めて

「ごめんね。でも、君には必要だ」


 ナナホシが胸元に仕舞う赤い宝石の首飾り、デウスの至宝を握り上げて

「ネオデウス、発動!」

と、掛け声をすると、デウスの至宝から七色の光の線が放出され、魔法陣の発動と合わさって、リリアとダリスにエレナの三人が光の線で繋がれる。

 それは、エピオンのシステムが発動した光のリングと同じだった。


 そこから、ディーオへ向かって光の線が延びて、ディーオの体、両腕と背中、胸部に光の線が入り、ディーオの魂から繋がるエピオンのシステムに接続される。

 縛られて魔法陣の上に横にあるディーオの上にエピオンのシステム画面のリングが現れ

《システム、エピオン。接続を確認。システムの接続上位書き換え、リリア、ダリス、エレナの三名に変更、システム、エピオン本体、ナンバー19820305の接続権限を、上記の三名の許可なしに発動しないように制限開始》


 ディーオの両腕と胸部、背中に、リリアとダリスにエレナの三人と繋がる魔法陣の入れ墨が入り、ディーオは三人の許可がなくてはエピオンを発動不能にさせられた。


 それと一緒に、支援者であるフェイトのリンクも切断された。


 術式が終わって、ルーデウスがディーオの縄を解くと、ディーオはその場に蹲って泣いていると、そこへリリアとダリスにエレナの三人が来て、ディーオを慰める。


 オールステッドが来て

「これからキサマは、我らの下に入る。まだ、成長途中ゆえに、働きはさせないが…十五歳までに、それに見合う実力を付けたら、早期に戦力として使う。早めに戦力となって我らの手足となれば、それなりに信用を得て、元の力を戻せる事になるやもしれんぞ」


 ディーオはオールステッドを睨み上げる。

 そんなのウソだと分かっている。

 やもしれんぞ…と、言った。

 前の文面を読み取れば、早めに戦力となれば、元のようにさせてくれると思えるが…最後にやもしれんぞと、考慮すると言った。

 つまり、これは布石だ。

 考えはするが、行動するかは、こちらの気分次第という。

 気分次第は、何時だって叶わない。


 ボロボロと涙するディーオが、恨めしそうにオールステッドを睨み上げる。

 オールステッドが怪しげに笑み

「いい顔だ」

と、悪人のボスのように告げた。



 その一週間、ディーオは泣いていた。

 ディーオは領主の城にいて、泣いていた。

 泣いても食事は喉を通るし、トイレは行く。

 リリアとダリスにエレナの三人も一緒にいて、傍にいる。

 泣くと無言で背中をさすったり膝を貸して泣かしてくれる。


 そして、一週間が終わる頃。

 もう、仕方ない…とディーオは吹っ切れた。

 そして、家に帰った。


 それから普通のように日々を過ごす。

 リリアとダリスにエレナと一緒に訓練を過ごす。


 ディーオが吹っ切れたのを影でオールステッドが確認して、その後ろにナナホシが

「あんな事を言って大丈夫なの? オールステッドが、人神みたいに復讐されるかもよ」


 オールステッドが背を向け

「それならそれでいい。俺は負けないがな」


 ナナホシが肩をすくめて呆れる。


 オールステッドが

「復讐でも何でもいい。何かの目的があれば…生きられる。ヤツが力を取り戻す以外の目的が出来れば…生き方も変わる。そうなれば、ルーデウスのようになるかもしれん」


「はいはい」とナナホシは仮面の顔で頷いた。

 不器用なんだから…。


 ディーオは、ヘオスポロスの任務の事を考えるのを止めた。

 もう、出来ないのは確定だ。

 だったら現状に合わせて行動するのが楽だし、得策だ。


 でも、やっぱり思い出して落ち込む事があると、リリアとダリスにエレナの三人が察して慰めるように膝枕や抱き締めてくれるようになった。


 まあ、十歳と九歳の女の子が慰めてくれる事に、なんか…微妙だけど。

 とにかく、気分は紛れる。

 

 そうして、ディーオとエレナは十三歳、リリアとダリスは十四歳になった。


 その四人が、とある森で

「リリア! エレナ! そっちに向かったぞ!」

 ディーオが叫ぶ。

 その隣にはダリスがいる。

 二人は武装していた。


 木々の間を素早く駆け抜ける黒い影、それが騎士として武装したリリアと、魔術師のエレナの前に出る。


 イノシシの魔物、ターミネートボアだ。

 エレナが、無詠唱で大火球とストーンキャノンを連射、リリアが剣を抜いて

「ライトソード!」

 光の魔法を剣に掛けて、攻撃で怯んだターミネートボアに斬りかかるが、ターミネートボアが捨て身の張り手を放つ。

 それにリリアがとある力を使う

”タイム・リープ”

 リリアを中心に、半径数メートルの時間が巻き戻る。

 張り手を放ったターミネートボアの動きが逆回しのように戻り、その中でリリアだけが進む。

 ターミネートボアが張り手を放つ寸前に戻った時には、リリアはターミネートボアの足下にいて、光剣でターミネートボアを切り刻んだ。


 細切れになるターミネートボア。

 だが、他の魔物、犬型のアサルトドック達が迫るも、森の向こうから伸びる深紅の金属触手達エピオンクローが素早く伸びてアサルトドック達五匹を締め上げるとバラバラに切り刻んだ。

 そのエピオンクローを伸ばすのは、左手にエピオンクローが伸びる盾を持つディーオとダリスの二人だった。


 四人は、この森で生じていた魔物達を退治している。


 その様子をエレナから少し離れた所から見るディリーナとララの二人。


 ダリスとディーオが、リリアとエレナの下へ来て

「これで終わりかな?」

と、ダリスが話す。


 リリアが

「でも、確認された頭数よりは、少ないわよ」


 エレナが

「どうする? サーチライトの魔法を使って広範囲を探査する?」


 ダリスが

「アタシ達四人、一緒になるギガンティス・エピオンになって探索しながら潰そうよ」

と、三人して話しているがディーオが

「いや、止めよう。もう…暗くなる」

と、午後が終わり夕方が近い空を見上げる。


 リリアが

「そうですわね。時間を掛けて倒しましょう」


 ダリスとエレナも納得して

「わかった」

「うん、そうだね」


 そうして、四人のパーティーは、ディリーナとララの下へ行き、リリアが

「ディリーナ先生、ララ先生、今日はここまでにします。ムリをして追い詰められるよりは、余裕がある方がいいです」


 それを聞いたディリーナとララは頷き合いディリーナが

「その通りだ」

 ララが微笑み

「よく決断しましたね」


「はい」と四人は元気よく返事をした。


 ディーオは身長が百八十を少し超える長身で、次にリリアが百六十五でダリスが百六十四だが、リリアが私の方が少し高いと威張る。エレナは百五十八くらいだ。


 ここ最近、ディーオ達四人は、ディリーナとララが付き添って魔物を狩らせている。


 祖父ゼロスの仕事は、家がある周辺の駐在員みたいな感じで、主に村の近くで発生する魔物を狩る仕事をしている。

 無論、祖父ゼロス以外にも魔物を狩る程の腕前の者達はいるが、祖父ゼロスはそれを纏める騎士の頭でもある。

 

 その伝手を使って、こうしてディーオ達に魔物を狩らせて戦闘経験値を積ませている。


 ディーオ達、四人はバランスが良いチームだ。

 近中距離のダリスとディーオが先行、遠距離で火力が高い魔術師のエレナがリリアに守られながらダリスとディーオへの支援攻撃を行う。

 なぜ、リリアがエレナの守りなのか?

 それは、リリアが最近になって覚醒させた、ある程度の領域の時間を巻き戻すタイム・リープという力によるモノだ。

 敵や魔物が、唐突に現れてもこのタイム・リープを使えば、攻撃前まで戻せる。

 まさに時間を巻き戻すチートだが、あくまでも攻撃する寸前までしか戻せない。

 それでも、十分な程だ。

 敵の近距離攻撃も然る事ながら、どんな攻撃、飛んで来る魔法攻撃や、火矢、爆発でも巻き戻せる。

 その効果範囲は、リリアを中心に直径十メートルくらいだ。

 だからこそ、支援攻撃をする砲台のエレナの守りに最適だった。


 そして、何よりこの四人は、ディーオのエピオンを介して繋がっている。

 範囲は狭いが、ダリスにエレナとディーオの三人にも遠隔で、リリアはタイム・リープを貸せる。

 それはディーオの力であるエピオンも同じだ。

 リリアとダリスにエレナの三人も先程のようにエピオンクローを自在に使える。


 そして、この四人が共に抱き合って円陣を組むと、四十メートルの巨大な鎧のエピオン、ギガンティス・エピオンを召喚して動かせる。

 だが、これがかなりの強力すぎて、扱いに困るので滅多な事では使わないようにしている。


 ディーオ達は帰って行く。

 魔物を狩り終えるまで、ディーオの家で皆が過ごす。

 ダリスにエレナとリリアは一緒の部屋、ディーオは男という事で小さな自室だ。


 横になるディーオは暗闇の天井を見詰めて

 もう、十四になる事を噛みしめる。

 それは、この世界に転生して十四年も経つという事だ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る