霊感少年とストーカー魔女
ムネミツ
霊感少年とストーカー魔女
ヤバイ、気付かれた! やっぱりこっち見てるよ!
最悪だ、またストーカーされてる。
ご丁寧に一定の距離を保ってこっちに付いて来る、ついて来るな!
「何で警察は怪奇事件の事案は対処してくれないんだよ~!」
俺は家路を走った、頭が半分掛けてる白ワンピの女の幽霊に追われながら。
事の起こりは下校中、踏切を渡ろうとした時だった。
踏切のそばに備えてあった花束を見かける、視線を元に戻すとそこに頭が半分欠けた女性がいらっしゃいました。
こう言うのは大抵地縛霊、追いかけて来ないはず!
そう思っていた時期がありました、何故か無くなったであろう場所から離れて俺の後を付いてきました。
「勘弁してくれよ、生きてる時より元気なんじゃねえか!」
俺が走れば相手も走る、ゾンビも幽霊も走って来るなよ!
だが、もうすぐこちらのゴールだ。
俺の目の前に、ブロック塀に囲まれた離れになってる共同風呂付き木造二階建てアパートが見えて来た。
「やった、ラストスパート!」
俺は心臓に無茶をさせてダッシュで突っ込む、俺を追っていた幽霊は入り口前で何かの力で弾かれた!
「やった、勝ったよ母さん」
何故か母に感謝した、二階では住人の一人であるエーリッヒさんがギターを弾いている。
俺が真ん中の自分の部屋のドアに辿り着くと左隣の部屋のドアが開く。
「あら~♪ ミエル君、お帰りなさい♪」
小豆色のセーターに黒のスカートと言う出で立ちで現れたのは黒髪ロングで白い肌で胸が大きい閉じた垂れ目のおっとり美人、大家の摩耶さんだ。
「……お、大家さん! 助けて下さい、変な霊が!」
俺は摩耶さんに助けを求めた、この大家のお姉さんはどうやら俺より霊能力があるらしく度々助けてもらっていた。
「まあ、ミエル君に付きまとうなんて許せないわ! お姉さんが、綺麗にお掃除して来るわね♪」
摩耶さん、立てかけてあった竹箒を取ると入口へと向かって行き箒を一閃!
俺を追いかけていた幽霊は霧散した。
「大家さん、すげえけど何か怖い」
一瞬だが摩耶さんが幽霊を払う時、彼女の体から黒いオーラが見えたのが怖かった。
ルンルンと笑顔で戻って来る摩耶さん、美人で良い人なんだけどちょっと怖いかな?
「片付いたわよ、お夕飯作ってあげるからお風呂入って♪」
「うっす、ありがとうございます♪」
家賃以上の面倒を見てくれる大家さん、ありがてえ。
俺は急いで部屋に入ると着替えを用意して共同風呂へと向かった。
「彼は私の物、誰にも渡さない♪ 恋のおまじないは私の血♪」
「他の住人達への根回しは良し、彼がお風呂から出たら残り湯を回収しなきゃ♪」
俺が風呂から出て部屋に戻ると、すき焼きと張り紙がされた黒い鉄鍋と丼に盛られた炊き立てのご飯がテーブルの上に置かれていた。
「マジか♪ いただきます♪」
俺は摩耶さんに感謝してすき焼きと丼飯を貪った、味は絶妙だった。
「ごちそうさまでした♪」
「お粗末さま♪」
気が付くといつの間にか俺の向かいで摩耶さんが微笑んでいる。
「じゃあ次は私がミエル君をいただきます♪」
摩耶さんが呟くと、彼女の両目が開かれて赤い瞳が光を放つ。
俺は彼女を見つめたまま、身動きが取れなかった。
摩耶さんの頭に山羊の角が生え、彼女の美しい黒髪が触手となって俺を絡め取る。
そして一糸纏わぬ裸形の人外となった摩耶さんは俺に告げた。
「あなたは、お姉さんのお婿さんになるのよ♪」
摩耶さんの甘い言葉が俺の脳を浸す、もはや俺は彼女に抗う事は出来なかった。
俺はこの後、彼女と狂熱的な一夜を迎えて摩耶さんと結ばれた。
「……お、俺の頭にも山羊の角が!」
摩耶さんと結ばれた俺は彼女の眷属であるサテュロスになっていた。
「素敵よ♪ 子供は最低でも千匹は作りましょうね♪」
俺はサテュロスになった事で、摩耶さんが、シュブ=二グラスの化身である事を知ってしまった。
俺の人間としての人生は終わり、人外の生が始まった。
霊感少年とストーカー魔女 ムネミツ @yukinosita
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