第2話

僕が宇宙飛行士を目指したのは、二十九歳の時だ。大学の工学部を出て、微生物の研究センターで六年働いた後、仕事を辞めて宇宙飛行士になろうと思った。特にきっかけなんてものはなかったけど、強いて言うなら、微生物達を顕微鏡で観測する時、彼らは観測している僕の事に全く気づかないで食事をしたり増えたりしていて、僕もそうなのかなと思った事がきっかけかな。試験も面接も医学検査も体力テストも、僕は良好な成績を残した。約八百人が応募して、受かったのは僕とアメリカ人のマシューの二人だけだった。マシューは戦闘機の元パイロットで、歳は僕の一回り上だった。彼は退屈な時自分の首からぶら下げたドッグタグを右手の親指と人差し指で擦る癖があった。正式に機関の一員となってしばらくして、最初の仕事が与えられたが、僕たちの最初のミッションは最初で最後のものだった。数年前に行われた宇宙探査「アルテミス計画」の事は知っているかい?あれはアポロ計画を発展させた月面探査計画で、初めて女性が月面に立ったんだ。ニュースで見たことあるだろう。月面に於いての基地の設営が主な目的だった。僕たちもその計画に参加したんだけど、それはメディアには公表しない側のミッションだった。

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