SF文学
@lil-pesoa
第1話
彼の職業は宇宙飛行士だった。だが、熱烈にそうなりたいと願って選んだ職業ではなかった。フリーターが次のアルバイトを探すくらいの感覚で宇宙飛行士になったと言う。とは言っても、私はそんな大した情熱すら持たないままで、厳しい訓練や試験をクリアして宇宙飛行士になれるのか疑問だったし、先程から彼の貧乏ゆすりが激しくなってきているのを見て、嘘をついているんじゃないかと思った。
「どうやら、信じていないようだね。」
彼は特徴のない顔をしていた。頬杖をついて水の入ったグラスを眺めている。
「信じていないわけじゃないけれど、何かもっと信じられるような物を見せてくれよ。なんか免許証とか、あるんじゃないの?」
「財布に携帯できるようなものはないよ。大きい合格証書ならもらったけど、もうどこにいったかわからなくなってしまった。そういう紙は僕にとってあまり重要じゃなかったから。」
「なら、何か話を聞かせてくれよ。ディナーの料理が来るまではもう少し時間がかかりそうだし、その話次第じゃ、君のことを信じられるかもしれない。」
彼はそうだなと呟いて、貧乏ゆすりをやめて話しだした。
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