第22話
異世界でブラック・ウルフを使役したその翌朝。
俺は登校路をゆったりと歩きながら、ブラック・ウルフを今後どのように飼っていくかを考えていた。
「餌は…何を与えたらいいんだろう?一応、あの小屋の周辺にいるように命令したけど…食料はちゃんと自分で確保できるのだろうか…?」
ニーナたちの住んでいる村を出た後。
俺はブラック・ウルフに、次に俺がここへ来るまで小屋の周辺にいる様に、という命令を出した。
ケノスによれば、一度使役したモンスターは主人には絶対服従とのことだったので、逃げることはないだろう。
心配なのは、餌についてだ。
一応これまでは野生のモンスターだったわけだし、腹が減れば自分で食料ぐらい調達するだろう。
だが、普段ブラック・ウルフが餌を調達している狩場が小屋の周辺にないことも考えられる。
そうなった場合、ブラック・ウルフは餌が取れずに飢えてしまうだろう。
なので一応、今日の放課後に餌になりそうなものを一通り異世界に持っていって与えてみるとしよう。
ドッグフード…は流石にないか。
見た目は完全に肉食獣だし、肉類であれば食べてくれそうだ。
ひとまず、冷蔵庫にしまってある冷凍肉を解凍して与えてみるとしよう。
「それからあとは、名前だよな…何かかっこいい名前を考えなきゃな」
使役したからには、俺はあのブラック・ウルフと相棒として末長くやっていきたい。
犬型のブラック・ウルフは素早いし、人間の俺より嗅覚も優れているだろうから、きっとモンスターとの戦闘でも大いに活躍してくれるだろう。
となれば、指示を出すときに名前があった方が便利だ。
「かっこいい名前…かっこいい名前…ウルフ…だから…ウルガ、とかどうかな?」
ウルガ。
パッと思いついた名前がそれだった。
呼びやすいし、かっこいい。
他にいい名前が思いつかない様なら、ウルガ、で行くことにしよう。
そんなことをかんがえながら歩いていた矢先。
「は、離してくださいっ」
「げへへ」
「やだよー」
「俺らと遊ぼうぜ?」
そんな会話が聞こえてきた。
見れば、数人の男が同じ高校の制服の女子に絡んでいた。
通学路を歩いていたら絡まれたと言ったところだろうか。
運が悪い。
「遅刻しちゃいますっ!!離してくださいっ」
「いーじゃん、ちょっとだけだから?」
「学校なんてつまんないべ?」
「俺らと遊んだ方が絶対に楽しいから!な?」
見た目の怖い男三人に囲まれて、その女子はほとんど涙目だ。
可哀想なので助けに入ることにした。
「おーい、お前ら。やめてやれよ」
声をかけると、男たちが一斉にこっちをむいた。
「「「げっ」」」
「あっ、お前ら…」
俺は目を細める。
ナンパしていた三人の男たちは、以前深夜のコンビニで俺に絡んできた奴らだった。
どうやらこの辺りがテリトリーらしい。
「何やってんだ?俺と同じ高校の生徒に手出すなよ?」
「「「すみませんっ」」」
俺がちょっと凄むと、三人は謝罪とともに一目散に逃げ出した。
「えっ、ええっ?」
後に残された女子は、何が起きたのかわからないと言った表情で俺と逃げていった三人組を交互に見ている。
俺はそんな彼女に声をかける。
「大丈夫だったか?」
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