Chapter11.幸木に言祝がれ

GM:さて、宿屋兼酒場『幸木に言祝がれ粛然と萌動せし蘖亭』では人間の店主が君たちをもてなしてくれる。

門番:「うわあ人間だ!交易共通語わかります?」

店主(GM):「おうあたりめーよ!最近冒険者が多いなあ!ま、ゆっくりしてきな兄ちゃんたち!」

レド:ふふ、よきにはからえ丸耳の者よ。

門番:気に入っちゃった!?


GM:君たちが食事を注文すると…。熱々の巨大なキノコのソテーや、薬草や木の実を使ったシチューなんかがドーンと運ばれてくる。

ヴォックス:やっぱエルフのお膝元だから肉はないのかな?


ルカカフィーネ:「幸木に言祝がれ粛然と萌動せし蘖亭って良い名前ね。私が今お世話になってるところは麦粥亭って言うのよ、ダサいと思わない?」

ヴォックス:「おいフィーネ!言って良いことと悪いことがあるぞ!!確かに麦粥亭はだっせーけどなぁ!飯は一流なんだぜ!名前はだっせーけど!」

ルカカフィーネ:「じゃあ名前を変えなさいよ」シチューを食べます。

ヴォックス:「…それを言うとマゴラが怒るからなあ」


店主(GM):「いやあ、元々はウチも『木の枝亭』だったんだけどねえ」と言って苦笑いします。


GM:すると別のテーブルで食事をしていたエルフが席を立ち店主に声をかけます。

エルフの客(GM):「ウム、店主よ、よい食事であったぞ、会計はこれでよかろう」


エルフの客(GM):「ところで店主よ。この間相談された店の名前だが、どうだろう『幸木に言祝がれ粛然と萌動せし“甘露を湛えた”蘖亭』がいいのではないだろうか?」

ヴォックス:はあん?


店主(GM):「あ、ああー!旦那、良いと思うんですがね!別のエルフの旦那が違う案を出してくれてまして…!どっちがいいか考えるんで30年くらい待ってもらえやすかねえ!」

ナージェンカ:30年!


エルフの客(GM):「そうか。では30年後またくるとしよう」と言って去っていきます。


店主(GM):「ま、こんな感じでさあ」

レド:「なるほどな…」30年も待ってたら寿命だぜと思いながら。


店主(GM):「あのエルフさんは、この間って言ってたでしょう?ありゃウチのひいじいさんの時の話でねえ。ひいじいさんが安易に店名の案を募集なんかしたもんで、めでたく幸木に言祝がれ粛然と萌動せし蘖亭になってきたってわけよ」

ナージェンカ:「異文化〜」エルフの寿命は最大500年…たしかに長いものね、などとリルドラケン的には考えることでしょう。


レド:ひいじいちゃんか…。

ヴォックス:「つい最近みてえな口ぶりだったけど…。まあ名前なんかなんでも良いんじゃねえの」


バイナル(GM):「で、明日からどこをどうやって探すんだ?母ちゃんの友達を探すにしてもよ」

ヴォックス:「さあなあ!さっぱりわからねえ」肉が欲しいなと思いつつも飯をバクバク食べてます。「う、水…!水…!」


ナージェンカ:「思ったんだけど…やっぱりお母さまの友人って、“木”なんじゃないかな」

レド:「ほほう」

バイナル(GM):「じゃあこんな森林の中から1本の木を探すってのかよ…!木を隠すなら森の中って言葉をしらねーのか」

ナージェンカ:「たしかにねえ…でもなあー…」


レド:「バイナル、確かに普通の人にとってはそうだ。だが森の中から木を見つけられる人間がいるとすればどうだ。お前なら少しくらいはヒントが聞けたりするんじゃないか」

ヴォックス:「おお、バイナルに探させんのか?」


バイナル(GM):「俺の力じゃ…結局しらみ潰しとあんま変わんねーよ」

ヴォックス:「なんか目星くらいはつけらんねーのかよ」


店主(GM):「あいよ、ドングリのアヒージョ!」ドーンと机に追加の料理を置いていきます。

レド:ウワア〜ドングリダア〜!

門番:「わあすごい、お洒落な食べ物…」


店主(GM):「キノコのソテー!」ドーン!

レド:ウワア〜キノコモキュモキュ。


ヴォックス:「なあところでおっちゃん、さっき冒険者が多いって言ってたけど他にも冒険者泊まってんの?」

店主(GM):「ああ、今日は泊まってねえけど、最近何組か来たよ。どいつもこいつも雨に濡れると色づくもの知らねーかとか言ってよお。なんのことだかわかんねえけど」

ヴォックス:「へえー」バクバクモグモグ。


門番:「ちょちょちょちょちょっと待って!それってなんか僕たちと…ねえヴォックスくん」

ヴォックス:「ああ、どうせあれだろ。(背中に)落書きっぽいのしてたやつだろ…」


GM:ヴォックスの対応はすごく正しいですね。ところで実は1つおっきなヒントが出されているんですが…。セッションの経験点が変わるくらい大事なヒントなのでそれがなにか考えてみてください。私はちょっとお手洗いに…。


レド:アレですかね。

ヴォックス:アレでしょうね。

門番:ソレとはまた違う話だけどバイナルくん、この街と話したりできないかな〜。

ルカカフィーネ:なるほど?あるかもね。

PL一同:けんけん!ごうごう!



GM:はい、戻りました(トイレに行ったあと飲み物をこぼして拭いていた。たぶん涙も少し拭いた)


ヴォックス:では「なあおっちゃん、この飯ってどうやってあっためてんだ?」

GM:はい!まさにそこですね。この街において火を使えるのは巨大な岩の中だけのはずなのに、この食堂では熱々の料理が出てくる。


店主(GM):「ああ?そんなのも知らねぇのかよ。じゃあ坊主ついてきな」と言って炊事場に連れて行ってくれます。

ナージェンカ:おお、楽しみ。


GM:やはり木でできた炊事場へ行くと、かまどがあるわけではなく、ええと形状としてはIHのコンロが近いかもしれません。人間のヘソほどの高さの台の上に何かが埋め込んであって、そこにフライパンを直接乗せるとみるみる熱されていきます。


GM:その埋め込まれているものは大きな魔晶石であることがわかります。MP20点分くらいの。(冒険者が魔力の代替として使う魔晶石は3〜5点程度のものが多いので、やや大型のものと言える)


門番:熱そう。

レド:とりあえず驚いておくか「なんだこれは!?」

ヴォックス:「なんだこりゃ?魔晶石を熱に変換してんのか?」


GM:はい、店主が説明してくれます。この赤く光る魔晶石は“カロリア”というものです。エルフに伝わる技術で、“カロリア技師”という特殊な技術者がいないと作ることができません。高温に熱した魔晶石に妖精の力の片鱗を宿すことで生み出しています。


PL一同:ほお〜。


GM:このフレジスファ原初都市の岩場には炎の妖精が多く住まう場所があって、そこで数日かけて炎でカンカンに熱した魔晶石を炎の妖精に与えると、その妖精が魔晶石の周辺で遊ぶ。するとまあ妖精の鱗粉のようなものが魔晶石に宿り、熱を発する。これがカロリアを作る技術。


ナージェンカ:「それは…マギテックのようなものかしら…」

ヴォックス:「いやフェアリーテイマーじゃねえの」

ルカカフィーネ:「エルフの御業であることは間違いないわね!」


門番:この店主さんがカロリア技師なのかい?

GM:彼はカロリアを購入して、その上にフライパンを乗っけてるだけのようですね。


ヴォックス:「で、カロリア技師はどこにいるんだ?」

店主(GM):「さっきも言ったけどよ、この都市が呑み込んだ岩山にいるぜ」

ヴォックス:「なあるほどな!いや〜

良いことを知ったぜ」

門番:「唯一火が使えるところでこんなものを作ってたんだね…!」


GM:では皆さんは再び席に戻ります。


ヴォックス:「なあ、バイナルの母ちゃんが持ってた魔晶石クズと顔料の量が一致してたんだよな?…つまり、カロリア技師んとこに持ってってその儀式かなんかしてもらって…魔晶石を顔料に変換してもらったんだよ!」

レド:「ふむ、その可能性はあるな」


ヴォックス:「つまり友人ってのはカロリア技師!まあもしくは儀式で呼び出す妖精に違いないぜ!」

バイナル(GM):「わかんねえけど、ヴォックスお前バカかと思ったら意外と頭いいんだな」

ヴォックス:「へっ!俺は超一流の冒険者にして超一流の策士と呼ばれた男だからな!」


バイナル(GM):「ああやっぱりバカなんだな…。どう思うレド?」

レド:「ああ、行ってみる価値はあるだろう。魔晶石という点でも符合しているし。アステリアと妖精の鱗粉というのも奇妙に繋がっている気がしてならない」

門番:「…それに、僕それ欲しいなお土産に。へへ」

ナージェンカ:かわいいこと言ってる。


GM:では君たちは翌日。『幸木に言祝がれ粛然と萌動せし蘖亭』で得た手がかりをもとにカロリア技師を訪ねてみることにした。

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