ミステリの書き方講座
本庄 照
悪いこと言わないからホラー行け
別にライバル減らしたいとかじゃないですよ。これはKACの性質の問題です。ミステリはやはり短編でも一万字くらいは欲しくて、それより短いとどうしても内容が薄くなるからです。四千字じゃかなり難易度高いです。慣れてる人は別ですけどね。あとトリック考えるのが二日じゃキツいんです。
ちなみに自分は過去にKACでミステリやったことがありますが、結構キツかったです。
「ホラー」or「ミステリー」、これ両方入れろって解釈してる方もいますが、自分は片方でいいでしょってことにしてます。ホラー無関係のミステリが来たらめちゃくちゃ評価します。まあ今回はホラーとミステリを比較して、できればホラーに行け、それでもミステリを書きたければこれを読めって内容なので、両方入れないとダメとか言われても、これはセーフでしょ。
ではなぜ片方でもいいかと主張しているかというと、ミステリとホラーは全然違うからですよ。自分はミステリめっちゃ好きですけどホラー苦手ですしね。実は相性そんなに良くないんですけど、なんかカクヨム君にしても他サイトにしても、やたらひとまとめにしたがりますね。あれよくない風潮だと思いますよ。
ちなみに筆者はミステリ書き仲間が欲しいです。色んな方にいっぱい書いてほしいです。念のため。
しかし今作はタイトルの通り、ミステリの書き方講座です。ホラーに行けと言ってなお、ミステリを書きたい人向けの。かなり基礎だと思ってください。上級者からの重箱の隅的指摘は受け付けておりません。これを見たら、まあ簡単なミステリは、少なくとも四千字に収まるミステリは書けるようになるでしょう。間に合うかどうかは分かりませんが。そもそもこれが世に出るのが遅いと思いますしね。
初心者が二日でミステリを書くにはどうすればいいかと言うと、トリックを使わないことです。トリックではなくロジックで片をつける。これが重要になっていくわけです。
トリックではなくロジック、これはどういうことかというと、伏線を張って回収しろということです。うまくやれば、トリックがなくてもトリックに見えます。有名なミステリでも、メインのトリックはシンプルで、ロジックをうまく使っているものなんてザラにありますよ。好き嫌いはありますが。
あと、初心者の方がミステリをやるなら王道をやったほうがいいです。王道を外すと、かならず警察がやってきますから。ということで三大王道をお教えしましょう。「キャラミス」「
キャラミスというのは、キャラクター性の強いミステリです。栞子さんシリーズや掟上今日子シリーズとかが有名ですかね。
ミステリの難しいところは序盤の説明です。どうしても説明的になって、間延びして暇になってしまいますから。それをキャラで引っ張っていけるのがキャラミスの大きな魅力です。それにキャラはどのジャンルの小説でも重要ですから、ミステリに慣れていない人でも小説を書いてきた人なら、ある程度強いキャラは必ず書ける。魅力的だと思いませんか?
ちなみに自分の好きなキャラミスは「TRICK」です。ん? あれはキャラミスじゃない? うっせぇうっせぇうっせぇわ。
クソみたいなギャグはさておき、続いては
最序盤で語り手(あるいは主人公)が犯人であることがわかり、探偵がサブキャラ的なポジションで現れて推理を披露し、最終的に犯人が崩れ落ちて終わるパターンが多いです。ちなみに語り手が犯人なのに、それがわからないまま進むのは倒叙ではないので注意してください。
倒叙の何がいいかというと、要点を絞れることです。犯人は分かっているがトリックはわからない。犯人は序盤で読者に自分が犯人であると自白してくれますが、肝心のトリックは喋ってくれません。それを探偵がするすると明かして追い詰めてくるという展開です。つまり、事件の要点を
これは短編にオススメですね。ミステリはどうしても字数を食うので、せっかく考えたトリックを四千字に落とし込みたい方は倒叙がいいでしょう。
あと、単純にシンプルな構成の方が初心者向けです。
最後は日常の謎ですかね。これは、殺人などが出てこない、日常にごくありふれた謎です。なぜ七階に住んでいる彼はいつも五階で降りるのか。消えるはずのない大時計はいったいどこに行ったのか。殺人どころか犯罪にすらならない軽い事件を軽く解いていくというのが日常の謎系ミステリです。
長所は単純、事件が軽い分、字数を抑えて軽いテンポの作品にできることです。探偵も登場人物も一般人にできます。色んなキャラ付けができます。キャラミスとも相性がいいですね。トリックを思いつきやすいのもあって、初心者向きだと思います。
ああ、あと
それは、アンチが非常に多いところです。実は自分も叙述トリックは嫌いです。叙述というだけで叩かれることもままあります。ですので初心者にはおすすめしません。どうしても他にトリックが思いつかないとか、これは珠玉の叙述トリックだと思うとかなら話は別ですが。
まあ叙述トリックが許される環境も、実はあります。それでも嫌いな人は叩きにきますが、多くの人を味方につけることができますよ。
その方法は──。
ノートはそこで途切れていた。
「ここまで書いて力尽きたということっすかね」
死体の横で、後輩が先輩の手元を覗き込んで呟いた。ノートの最後、叙述の話をしはじめたところから急に字が乱れている。
「こいつは、必死にこれを書いていたところを襲われた、というようにも見える。だが事実は違うな」
先輩は血溜まりの側からノートを救出する。未だ死体からは血がダラダラと流れていて、もう少しでノートが血に浸かるのは明らかだったからだ。
「ノートに血がつくと俺が困るのでね」
「さすがっす、先輩っ」
後輩はすかさず先輩を褒めた。
「先輩、さっき言ってた事実って何すか? 教えてほしいっす」
「お前、このノートの最後の一文を見たか?」
「『その方法は──。』っすよね? ここで襲われたことを示す証になるっす」
「違う。最後の句点を見ろ」
「はぁ……」
我ながら名推理だと思ったらしい彼は、不思議そうな顔で先輩の顔を見た。
「お前、襲われていまにも息絶え絶えだという瞬間に、『その方法は』まで書いて、ご丁寧に『──』まで付けて、挙げ句の果てに『。』なんて書き添えるか?」
「あ……」
自分の推理ミスに気づいた後輩はそこでポンと手を打った。
「しかし、字の乱れがあるのは確かだ。これを書いている途中に襲われたのは事実だろ?」
「はいっす!」
「つまり、これはダイイングメッセージということになるな。こいつが最後の力を振り絞って残した暗号だろう」
先輩はノートをつまみ上げてヒラヒラとやる。
「じゃあ、この暗号を解けば犯人がわかるということっすか?」
「そういうことだ。俺たちには都合がいいな。なにせ、これを見たらトリックや証拠はともかく、犯人を名指ししてくれているのだから格段に捜査がやりやすくなる」
そして先輩は、ノートを部屋の奥に置かれていたシュレッダーにかけ、スイッチを入れた。バリバリと音がしてノートが吸い込まれてゆく。
「俺たちは犯人だ。ダイイングメッセージがあっては困るんだよ」
犯人であるところの先輩、そして共犯の後輩は、血も止まって硬直しはじめた死体を後にして部屋を出たのだった。
ええ、これで終わりではないですよ。これは結局、ミステリの書き方講座なんです。看板に偽りはありません。
これが「物語の登場人物を騙すわけではないが、読者を騙す」トリックである
他に大きなテーマがあった場合です。たとえば、ミステリの書き方を教えるみたいに。わかりました? これがロジックですよ。トリックを思いつかなかった時に使える最大の武器です。
どうしてこの構成になったか。それは簡単です。
ジャンル見ました? これ、ジャンルがミステリなんですよ。ミステリジャンルで創作論なんかやっちゃダメでしょ。ロジックはジャンルの時点から既に仕込んであるんです。
さあ、これで教えられることは全て教えましたよ。これがミステリです。
ホラーを書くか、ミステリを書くか。選ぶのはあなたです。
ミステリの書き方講座 本庄 照 @honjoh
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