【物語は】
主人公の家がダンジョンと呼ばれ、勝手に人が入って来ることとなった経緯から始まる。両親に愛され過ぎている主人公はある日、魔物を家に連れ帰る。初めは驚いていた母だったが、魔物が自分の息子に懐いているのを見て、早とちりしてしまう。この早とちりが、主人公の運命を大きく変える最初の出来事だった。
【舞台・世界観・物語の魅力】
本編に入ると、主人公の境遇について語られていく。人は愛され過ぎると不幸になってしまうのだろうか?愛しい我が子が、魔物を友達にしているのを見て特別な子なのだと思い込んでしまう両親。それも致し方ないのだろうか。この世界では、魔物を従える能力を使える人は稀なのだから。そして両親が、親バカぶりを発揮した結果、トラウマを抱えてしまう主人公。
これは愛され過ぎたゆえの不幸、としか言いようがないのではないだろうか。子供はなかなか計算して生きることは出来ない。無邪気で純粋。自分の力を隠しておくことが出来たなら、トラウマになる様な事件が起きなかったかもしれない。これは現実にも起こりうることであり、主人公が不憫でならない。
この物語の世界では、誰でも魔法が使える。もちろん能力の差はあるが。
ある授業のようなものにより、この世界の魔法がどんなものなのか明かされていく。その部分を読み感じたことであるが、考え方がとても科学的である。魔法が出てくる物語として、斬新なのかも知れない。
魔法の出てくる物語には、魔法の強さや威力についての概念はあるものの方が多いが、魔法の性質と威力について、こういう方向で設定されているものは、意外と希少なのかもしれない。魔法はあるけれど、考え方、設定が現実的である。
【登場人物の魅力】
主人公は無邪気で純粋な少年であった。しかし、その能力が大賢者と同じだと言うことが分かると、本人の意志とは関係なく、広く知れ渡ってしまう。その後、自分の処遇などが、あれよあれよという間に決まっていく。主人公は自分の能力が凄いという事を知り、喜ぶ場面もある。しかし、あらすじからは、彼に欠陥があることが分かっている。つまり、どんどん噂は広まっていくのに、主人公はただの人となってしまうのだ。とてもいたたまれない事態に陥ることは想像に難くない。
その時主人公は、一体どんな反応を示すのだろうか。
この物語は、登場人物が多めである。しかし、主人公を取り巻く彼らは、個性的ではあるがそこまで主張をしていない。そのため、物語の全体が掴みやすい。都度、役柄もセットで書かれているので、分からなくなるという事もない。
そして、多視点であることの活かされた物語であるように感じる。主人公抜きで、どんどん大人たちが話を進めてしまう所や、勝手な思い込みで主人公を過大評価してしまうところなど。噂の怖さなどもしっかりと描かれている。
【物語の見どころ】
現在の読了部分では(10話)主人公の能力の欠陥が、どんなモノかまだ明かされていない。しかし、人の思い込みによる、期待の怖さなどがすでに伝わってくるのだ。この物語は、かなり丁寧に描かれているため、どんな風に魔力の判定をするのかや、どんな風に鍛えるのかなども分かりやすい。
主人公が学校に通うまでの物語も詳細に描かれている。その部分から、両親の特徴や主人公に勉強を教えてくれるようになった者の特徴も掴みやすい。人物一人一人について丁寧に描かれていると感じた。
あなたも是非お手に取られてみませんか?
まだ物語は始まったばかりです。山あり谷ありで、自分自身の能力や人生に振り回されてしまっている印象のある主人公。期待というものが人生を狂わせてしまう。そんな彼が探し求めた真実のマイホームとは?
主人公の行く先をその目で是非、確かめてみてくださいね。お奨めです。