第176話 プラトニックセックス


 2番目に名乗りを上げたナンバー2もラインに綺麗に身体を掃除した事により、その後も順調にマーモット達は全身を掃除してもらっていく。


 セシル達はラインの身体に浮いている消化しきっていないウンチが消えてからやってもらうつもりだ。


「ラインちゃんの負担大きすぎない?」

「たしかに……一気にウンチの処理が増えるしね。ライアにも肉食してもらうかな~」

「2匹ともウンチだけの食事になりそうで可哀想じゃねぇか?」

「ん~ライア、ライン、ウンチばっかりは嫌?」


 2匹ともフルフルと顔を横に振る。


「食べられればなんでも良さそう感あるね」

「スライムに味覚は無いのかな? 栄養的にはラインちゃんを見る限り、肉食の方が身体も大きくなるし強くなりそうだよね」

「じゃライアもこれからお願いしようかな。早速だけど僕たちの身体も掃除して貰おうか」


 ライアは身体を光らせているためピーと返事はせず、身体を一度上下に揺らし返事をするとセシル達の身体を綺麗にしていった。


 ライライお風呂が終わると次はマーモット達の水分補給の為に手分けして水を入れた木皿を数枚地面に置く。


「マーモット達がどんだけ飲むか分からんけど、備蓄の水がほとんど無くなったぞ」

「ん~やっぱり水の確保が一番問題ありそうだね」

「とりあえず明日は朝一で水汲み行こう。余裕があれば洞窟の奥の水源を1ケ所確保しに行こう」

「ああ分かった。魚っさんかミニ魚っさんと戦争だな」

「それとマーモット達が寝る部屋用意しないとね。今から荷物置きの部屋少し整理しようか」

「はーい」


 

――――お皿やロープなどを仕舞っている部屋を整理し、少し窮屈だがどうにか入れるだろうくらいにはなった。


「よし、これで大丈夫でしょ。今日はもう寝よう。マーモ、空いている部屋にマーモット達を案内して。ちょっと狭いけど入れるでしょ? 狭いようだったら申し訳ないけど何匹かは廊下の端で寝てね」

「ナー」


「なあ、今日は魔物避けの魔力補充をしなくていいのか?」

「あぁ~すっかり忘れてた。ん~どうしようかな……」

「どうしようかなって魔力補充する以外に選択肢ないんじゃないのか?」

「いや、明日洞窟の奥の水源確保しに行くでしょ?」

「ああ」

「そしたらほら、魔物避けの残り香があるとマーモ達が通れないでしょ? それならあえて今日は魔物避けを付けない方が良いかも?」

「ん~でもほんとに今夜は大丈夫か?」

「大丈夫でしょ。あいつら目が無かったから、嗅覚が発達していると思うんだよね。残り香でも結構効果あるんじゃないかな。それにもし、夜の内に侵略してきてもマーモット達がたくさんいるから近付いて来たのすぐ分かるでしょ。あいつら臭いし」

「たしかに……」

「ねぇ、魚っさん達は嗅覚優れているのなら自分たちの体臭も臭くないのかな?」

「たしかに……」

「たしかに……」

「そもそもあいつらの見た目的に、いつも水に浸かっているタイプの種族だよね? どう見ても魚だったし。水に浸かっているのに何で臭いの?」

「たしかになんでだ……」

「たしかになんでだ……」

「水から出て、生乾き状態が一番臭いのかな?」

「それだ……」

「それだ……」

「ねぇ。適当に返事してないよね? ちゃんと頭使って話聞いてる?」 

「ん~ユーナの説が正しい気がするし。聴覚が優れているのかな? でも魔物避けが効くって事は多分嗅覚はあるはずだし。どうなってんだろうね? まあどうでもいいじゃん。ハハッ」

「もうっ適当な事ばっかり言って!」

「よーし、寝るぞー! 念のため、武器は近くに置いといてね」

「はーい。おやすみー」

「おやすみ」


 ようやくそれぞれの部屋に移動していく、いつものようにヨトとユーナで1部屋。

 セシルはライライとマーモと一緒。そのほかのマーモットは先程用意した2部屋に適当に入って貰う。


 セシルがようやく終わったとワイバーンの敷布団の上にゴロンとした所で部屋に数匹のマーモットがやってきた。


「え? 何?」


 マーモがやって来た数匹とナー ナーと何か話し始める。


「ナー」


 マーモが申し訳なさそうな顔をする。


「えっ!? さっぱり分からん――」


「ヨト―! ヨトー来て!」


 セシルは別の部屋に入っているヨトを呼び出す。


「なんだよ。もう寝るんじゃなかったのかよ。こっちは明かり無いんだから用事あるならそっちからこいよ」


 ヨトはぶつぶつ言いながらも壁を伝ってやってくる。

 ユーナも1人は心細いので後ろにくっついて来た。


「それが――――。って感じなんだけど、どういうことだと思う?」

「あー。あー。あれじゃないか」


 ヨトが若干言いにくそうだ。


「何?」

「……あれだよ。交尾だよ」

「あっあ~そう言う事。あ~どうしたら良いかな?」

「そんな事言われても……もう部屋の余りないだろ? あ~、部屋じゃないけど、この前隠し通路作っただろ? それか2階とか? そこならどうだ?」


 魔物が家に侵入して来た時に備え、メインの通路の裏と天井裏に隠し通路を作っていた。

 天井裏はまだ作り途中であり、通路裏よりさらに狭く天井も低い。

 新しくマーモット達が加わる事を想定していなかった事もあり、階段もマーモットだけでは上がるのが難しい角度になっている。


「あ~。2階はマーモ達だけで登るのはちょっとキツイと思うから隠し通路の方が良いかな。マーモ、狭いけどそこで大丈夫?」

「ナー」


 マーモが頷くと1匹のマーモットに近寄り鼻と鼻を当ててクンクンすると歩き出して行った。鼻を突き合わされた1匹が付いて行く。

 おそらくは以前からちょこちょこ見つめ合っていたメスだろう。

 他の選ばれなかったマーモット達は元の部屋に戻っていくようだ。


「わぁ~ついに恋が叶ったのね!」


 ユーナは絵物語で見たような『群れの違う2匹の儚い悲恋が、遂に成就した』ことに目をハートにして喜んだ。


「ヨト助かった。ありがと」

「おう。今度こそ寝るぞ」


 そう言ってまた壁伝いに部屋に戻ろうとしていると、マーモと選ばれたメスによる


 ナッ! ナ”ッ! ナハーッ!

 

 と言う嬌声が洞窟に響き渡る。


『もう始まったのかよ。早すぎだろ。まだ俺ら部屋まで辿り着いてないぞ』

『……洞窟だから凄く響くね』

『これ、あれかな。毎日続くのかな?』

『なんか……良く言えないけど、イメージと違ったんだけど……もっとさ、「今までどうやって生きて来たの? とか、ずっと君の事見てたよ。」とか、そういう甘い時間から入るんじゃないの?』


 ピュアな恋物語を脳内で作り上げていたユーナはショックを隠し切れない。


『まあ、これは種を残すための本能だから仕方ないさ。ただ、もうちょい静かにならねぇかな』


 マーモットも野生で事を成す場合、無防備な状態で目立つ声を出せないのでそこまで大きな声は出さ無いはずなのだが、隠し通路の作りが悪いのか家全体に嬌声が反響してしまっていた。




『……隠し通路がこんなに音漏れるならダメじゃん!!』


 セシルは耳を抑えながら通路の作り直しを決意するのであった。


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