第6話 魔力測定


「では測定を始めようか」


「セシルがんばれー!」

 両親の声援にセシルは赤面するが、横を見るとトールも両親からの声援を受けて赤面していたのでホッとする。


「ではまず魔力を動かす練習からだ。私が君たちの手に触れて、私の魔力を君たちに流す。

それで魔力と言う物を感じて欲しい。最初だけゾワッとしてそれ以降はほぼ感じなくなってしまうので、最初に集中するように」

「「はい」」

「では一人ずつやるよ。トール君と言ったかね?リラックスして手を出して。そうそう。目を瞑って身体の中に魔力が入るのを感じ取るのだ。魔力がどういう物か分かったら自分の魔力が体内にあるのを探して欲しい。人によって魔力の質は違うが、おおよそ似たような物だ。ゾワッとしたら『来た』と言ってくれ」


 ルーレイが膝を付いて手を合わせる。


「はい……あっ来た!」

「よろしい。そのまま目を瞑ったままで自分の身体にあるトール君自信の魔力を探して待っていてくれるかな? おへそに集中して探して見てくれ。では次はセシル君だね」


 そう言って一連の作業を行う。


「来ました!」

「よし。ではセシル君もトール君と同じようにおへその辺りから自分の魔力を探してくれ。見付かったら目を瞑ったままで良いから、手を挙げて」


 まずはトールから、そして次にセシルが手を挙げる。


「よし2人とも見付かったね。手を下げて良いよ。次だ。その魔力を利き手の手の平に集まるようにイメージしてみてくれ。ゆっくり、ゆっくり。掌に来たと思ったら、声に出さなくていいので反対側の手を挙げて」


 2人が同じくらいのタイミングで手を挙げる。


「順調だね。2人とも今挙げた手は降ろして、目も開けていいよ。魔力が集まっている手のひらを上に向けてごらん……そうそう。まずは引力の魔法から計測する。今から計測器を手に置くから自分の魔力に、周囲の物を引き付けるイメージを追加してご覧。計測器は2つあるから2人一緒にやるよ」


 計測器はメモリが扇形になる様に書かれており、その真ん中に針が一本立っていた。

 2人が集めるイメージをするとじわじわと左側に針が移動していく。


「うむ。二人とも引力の力みたいだね。念のため斥力も測る決まりになっているから、続けて計測するよ。手をそのままに、魔力に周囲の物を弾くようなイメージを追加してごらん」


 するとトールの針は真ん中に戻り、セシルの針は右側にゆっくり振れ始めた。


「なんだとっ!?」


 ルーレイが立ち上がり、周りの騎士たちも集まってきた。

 セシルがビクッとした後、えっ? えっ? と慌ててしまい手に集めていた魔力が霧散して針が元に戻る。


「すっすまん。驚いて大きな声を出してしまった。隊長殿、この計測器で引力と斥力それぞれ試してみてくれんか?」

「ハッ」


 騎士の隊長がセシルが持っていた計測器を受け取り、まずは引力を与える。

 すると針が左に振れる。では次は斥力と言い力を籠める。

 左側からジワジワ戻って来た針は真ん中で止まり動かなくなった。


「計測器に問題は無さそうですな。一応、複数人にやらせてみましょう。おい、お前たち交代で計測して見ろ」


 騎士たちが交代で測っていくが、特に問題は起きない。

 斥力持ちの騎士は右側に針が振れ、左には触れる事はない。

 逆に引力持ちの騎士は左側に針が触れ、右に触れる事は無い。


 村人は何か起こったのか? とざわざわし始める。


「……これは。セシル君、トール君が使っていた計測器でもう一度測ってみてくれたまえ、最初は引力からだ」

「はい」

 セシルは戸惑いながら、トールから計測器を受け取り引力の魔力を出す。するとまた同じように左に針が振れる。


「よし。では次は斥力だ」


 セシルが反発する力をイメージして魔力を出す。

 すると、針が真ん中に戻りそこから右に針が振れ始めた。


「「……」」


 絶句するルーレイと騎士達。


「どうやら間違いないようだな……とりあえずこの話は後だ。魔力量の測定を先にやってしまおう」


「は……はっ!」

 我に返った騎士2人が透明の丸い珠を1つずつ持ってきてトールとセシルにそれぞれ渡す。

こぶし大くらいの大きさの魔石だ。


「これは魔力が空になった魔石だ。魔力は基本的に透明で目に見えないが、魔石に魔力が入ると色が黒くなる。理由はまだ分かっていないが、とりあえずそういう物だと思ってくれ。今からこの魔石に魔力を込めてくれ。ゆっくりでいい。何となくでも良いのでほとんどの魔力を使ったなと思うか、途中で眩暈や頭痛などの症状が出たらすぐ止めるように。どちらにせよアバウトにしか魔力を測れないので、ギリギリまで無理しても意味が無い。絶対無理をしないように」


「「はいっ」」


「では魔力を魔石に移すようなイメージで魔力を出してくれ。引力も斥力も付けないように。ゆっくりゆっくり」


 2人がじわじわと魔力を出していくと、透明だった魔石に黒い煙のような物が少しずつ充満し始めた。

 しばらくするとトールが眩暈してきましたと自己申告した。


「お疲れ様。もう今日は魔力を出さぬように。ではその魔石を受け取ろう」

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