リディアがダンに話す配下になった理由1
「ダン様、何点か確認させて頂きたく。お許しを願います」
「……はい。どうぞ」
「今後ダン様の仰る内容は全て
「……出来ましたら。明日オレステとウバルトの対処を話す場合は貴方から説明をお願いします。
それと、丁度良いので私も幾つか。これは今後のため正直に答えて頂きたいのですが、リディアさんは現状でご自分の名を広め、高めたいとお考えですか?」
「―――出来ますれば我が名は隠しとうございます。カルマの今後は未だ不透明。生き残った後どのような行動に出るかも分かりません。現状でカルマの臣下として名を知られる不利、ダン様ならご理解頂けるかと。御意に沿わないのでしたらどうかお許しを」
「よく分かります。だからこそ聞いたのですし。でしたらこの戦いに勝てたならば、世間に対しては全てグレースさんの考えだったとしてしまいましょう。今後何かあっても全て。貴方は、トーク姉妹の配下として言われるがままに働いてるだけ。
必要が産まれるか、リディアさんが望むまでは出来るだけ貴方とアイラさんの名前を出さないようにし、トーク姉妹の名前のみが広がるようにしませんか?」
「……
「リディアさん、この通り無能無才の身ですが。いえ、だからこそ私は貴方に感謝し、貴方について考えています。そして幸せになって欲しいとも。これは本当です」
今までは大変頼りになった。これからも頼りになるだろう。
だが、最後まで私に従ってくれるかどうか分からない。
人は少し意思疎通を失敗しただけで恨む。
これから来る時代を考えれば、小さな恨みが殺し合いになる事もあり得る。だからこそ、出来る限り自分が良い環境に居ると感じられるよう配慮しなければ。
「ダン様のお言葉有り難く頂戴致します」
「所で、何故さっきから様付けを? 非常に怖い物を感じているのですが」
「今はそうすべき時と感じたので。ご安心を。何も致しません」
……あ、はい。
勿論これ以上文句を付けて、不興を買うような真似はしませんとも。
えーと、話、聞きたい事……何か……ああ、前にも聞いてるが、やはりもう一度は。
「それにしてもやはり分かりません。どうして私の配下になろうだなんて? 貴方は貴族。そして本当に有能で立派な方にお育ちになられた。誰もがもろ手を挙げて歓迎するでしょう。そんな人材が庶人で、全ての能力において劣る者の配下になど。人は言語道断……いえ、一笑に付すはずです」
この有能さ、慎重さ、忍耐力。これ以上何を付け加えたら良いのか思いつかない程だ。
そんな人が私の配下にと自分から来るなんて奇奇怪怪。
「過分なご評価です我が君。大きな理由は以前申し上げた通り、貴方様に他者への妬心が薄いからです。
十代の小娘の言葉とすれば失笑ものだな。
しかし彼女の場合……。
「……どうしてそう思ったのですか?」
「残念ながら王都で働いた際に体験しております。若い人間が、己より優秀であれば無上に人の神経を逆撫ですると知りました。
加えて
聞いてるだけで涙が込み上げてくる話だコレ。
「それは又……若いのに苦労されたんですねぇ……。心より同情申し上げます。とは言え、それだと私も同じではありませんか?
「まず
忍耐力があり、疑いだけでは危害を加えない方と見ました。これら全てが
おや、私が立派なお方だと仰いますか。つまり、
「いやはや。買いかぶられてるとしか思えませんが、お言葉通りの人物になれるよう努力しますよ。それともしかして、なのですが。トークに来て留まられた理由は、辺境の地である此処なら、他所に知られる事無く働き経験が積めると考えられたから、とか? カルマが時の人となってしまったので、この利点は大分消えてしまったように思いますが」
「我が君、
ぬぁっ。……咄嗟にだと益々隠せんな。
「一方でトークの利点は御明察。ここ数か月、国中の耳目を集めておりましたのも仰る通り。されど今現在トークはケイの全ての者から攻め滅ぼされると確信されておりますので、数多の者と一緒に他所の間諜も逃げ出しました。
今回を生き延び、帰って来る者たちを厳重に調査すれば。此処トークはケイでも有数に他所へ何も知られずに済む地となりましょう。
どうかご期待くださいませ」
へ? ほ、ほーう。そうなのか。それは……実に……考えていた通りな気がする!
凄く、嬉しい。いやはや。よくぞ滅亡しかけてくれてるなカルマ。こうなると益々オウランさんへの土下座にも気合が入る。
……ジョルグさーん。お願いだから助けて。末永く良い事あるから。多分。
「入り込んでた人達を追い出せそうですか。それは、有難い。よろしくお願いしますねリディアさん」
ふぅ……必要な確認はこんなもんだろう。お見送り、したいのだけど。
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