******一応のご連絡******

 続きを書くのはもう良いかなー等と思ったり更新日程が確定で伸びると感じた場合は更新した際に書きます。

 それ以外で更新が伸びた場合は、体調不良。書き直したら文章が壊れて脳みそ崩壊。交通事故で突然死。等ですので、お気になさらず。

 カクヨムはフォローされてる方に更新がやたら分かりやすく通知されるちょっと邪魔な気もする仕様がありますので、そちらで把握されても良いかと思います。

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 城門の所にやたら姿勢の良い金髪の娘さんが見える。ラスティルさんか。急ごう。


「お待たせしました。案を使う場合は決定権を頂けるよう願いはしましたが、結果はまだですラスティルさん。今日、閣下たちは領地の状態を確認なさり、明日案を聞いてくださるそうです。なので、賭けの結果は明日という事にして頂ければ」


「まず……お主の後ろに居る方々にお聞きしたい。リディア殿、アイラ殿。ダンからはこのトークの動きを己が決めたいという話と、その協力者が居ると聞いているのだが。

 お二人がその協力者で良いのだろうか?」


「主君に臣下と認められず、協力者などと表現されてしまう程に能も信も無い身ではありますが。是。と申し上げます」


 うーわ……。


「僕も臣下……になったんだと思う。……だからもう少し力を出して欲しいけど」


 えー……。無理。


「……早くも臣下に不満を抱かせてるようだな、ダン」


「理の当然と思ってます。お三方には諸事情でそーなって頂く感じでお願いしましたが、何とかお望みの達成に微力を尽くして、我慢できる範囲で融通できるように諸事情を調整して……お付き合い願おうかなって」


 臣下的に動いて欲しいのは期間限定だからね。問題にならない限り適度に当たるよう頑張る感じで行きますよ。ラスティルさんとアイラなら何とかなると思う。リディアは考えても無駄。


「いや、混ぜっ返してしまったが度肝を抜かれたぞ。明日まで待たずとも良い。リディア殿とアイラ殿が付き従ってるのならば十分信用できる。お主……傑物だったのだな。一介の下級官吏が何をどうしたらこの二人を配下に出来るのやら。

 このラスティル・ドレイク。貴方様に槍を捧げましょう」


 ラスティルさんが、膝をつき頭を下げる。

 あー……いや、ラスティルさんだからな。嫌々やったりはしないだろう。


「お立ちください。ラスティルさん、私は自分が貴方に命令出来るような者では無いと知っています。それでも、貴方にとって役立つ人間にはなれると考え、身の程知らずなお願いをしました。……あの、何かご不満が?」


「……謙虚なのは、良いとしよう。しかしだな。臣下に立つよう言うのなら、自分の手を貸して立たせてこそ謙虚な主君ではないか?」


 は? 「嫌ですよ。貴方みたいな美人相手に軽々しく触るのは。面倒の元です」


 あ。完全に脊髄で喋ってしまった。……いやー。この故郷の男女共通の鉄則、完全に骨に染みてたのね。


「……面倒の元? ……意味が分からぬ。酷く遠まわしに侮辱したのか?」


「いえ。違いましょう。……中々、深い」


 え、深いの?


「……リディア殿。何が深いのか皆目見当が」


「私見ですが。ごく当然の話として、美しい異性と親しく出来るのを喜ばぬ者は居りませぬ。そして美しい者はそれを承知しております。故に、相手が己より異性として劣ると考えた場合、見返りを期待する。

 我らの俸禄が今後もトーク家からとなりましょう。故に我が君はそういった与える見返りの少なさを気にしておられる。なればそういった物事を出来る限り減らそうと。

 付け加えますれば、臣下は皆女。誰かと親しい所を見せて嫉妬を招かぬようにと先を見たお考え」


「―――ほ……う? 深い。と言える……のか? 臣下の礼を立たせるだけで、こうも面倒に考えたのかダン。……失礼した。ご主君」


 待って。少し頭が痛い気がするから。


「あー……とりあえず、ダンと呼んでください。で……はい。前半は何時も通りの明察で。

 ただ後半は。だーれが皆さんみたいな方々からの嫉妬を危惧する精神異常自意識過剰男ですか。お二人が私の正気を疑う前に撤回をお願いします。百年先を見てもそんな心配しませんから」


 一般的な主君ならば、そりゃ男女としての差なんぞ何の意味も無いから嫉妬を考えて当然だけども。


「……当てたリディア殿に敬服する。しかし……臆病と言うにも度が過ぎておるような。拙者、早くも主君選びを失敗したかと感じ始めておる」


「ラスティル殿。それは槍を振るう者の考え。大きな判断を下す者としては、度が過ぎるほどに慎重で良いのです。わたくしは『成程。其処からか』と感心しております。……勿論、臣下でなければ少々言いたいことも御座いますが」


 言って良いのよ。真面目なのか冗談なのかも分からないけど。とりあえず弁護有難うございます。


「大して賢くも無い身としましては、せめて慎重にと思いまして。緊急の時にはリディアさんの言う通り動こうかなと。

 さて、これからアイラさんの家で懇親の食事会をしたく思います。夕食の時間になりましたらお越し頂けませんかラスティルさん」


「ぬ? 話が、飛んだな。だがそれはよい。酒はあるのだろうな?」


「はい。リディアさんも参加して頂けますか?」


「勿論でございます。して料理ですが宜しければ家の者に準備させましょうか」


「いえ、結構です。せめてもの感謝を込めて私が作ります。アイラさんが三人前として、大目に作って八人前程度なら大丈夫でしょう。あー、やはり汁物を人数分お願いしても良いでしょうか?」


「御意のままに。しかし料理までお出来になったとは。楽しみでございます」


 目出度く皆様参加となったので、アイラを連れたまま天ぷらの食材を買いあさり、必死になって食事の準備をする。

 かの伊達政宗も人心掌握の為か配下に料理を振る舞った。ダンも。かく、ありたい。

 しかし八人前は流石に多い。下準備をしたら宴会に備えて昼寝。

 そして仕事終わりを告げる鐘の音から暫く。来てくださった皆様を熟慮の上で、最も上座にリディア。対面に私。ラスティルさんがリディアの隣でアイラを台所の一番近く。という席へ案内してから最後の仕上げをし、務めて平坦にした表情で我が天の料理をお出しする。

 謙虚な私は格が違う料理を出そうとも、自信に満ちた顔をしてはならぬのだ。

 

 あ、ラスティルさん……私が地道に調べ集めた値段の割に美味しいお酒をカッパカパ。

 本当にお酒好きなんだな。って飲み過ぎちゃうんかこれ。


「うーむ。酒自体も中々。何より酒がすすむ料理だ。実に美味い。感服したぞダン」


「はい、有難うございます。……何時もこれ位お飲みになるんですか?」


「うむ? いいや。何時もはこの六割程度か。今日は宴だ。少しは羽目を外さぬとな」


「はい、そうですね……」


 いえ、六割でもヤバイっす。にっこり笑われても頬が引き攣るだけです。

 ……この人確実に酒で体壊す。何時か休肝日を持つようお願いしないと。


 すぅー。はぁー。

 正面の人を見たく無い。ずっと天ぷらを一つ一つねっちょり確かめて食べている人を。

 お前本当やめて。単に美味しく食べられないのか。


「料理を詳しく調べた事は無くとも……珍しい上にこれ程の味ならば噂に聞くであろうに。むぅ……奇怪な」


 ……。

 君、それ、さり気なくあからさまに私へ言ってますよね?

 やはりフジヤマゲイシャと同格の料理を出すべきでは無かったのだろうか。いや、でも。アイラのために作り続けていれば何時かは知られる。なら隠さずこうして媚びを売ったほうが。と、思うのだが。


 そのアイラは……うむ。当然いつも通り。

 完全に安定してる。

 安定した喜びの気配を全身から出して、食べてくれている。

 ……色んなもしもの時、守ってくれよアイラや。でないとその天ぷら無くなっちゃうぜ?


「はむっはむっはむっ……モグ、モググ、モグッモグ……」


「アイラさん一応申し上げますが、貴方の分は他の人の三倍で終わりですからね? それ以上食べられてしまうと私達の分が無くなってしまいます」


「………………分かってるよ。でも、ダンが食べきれなかったら何時でも言って」


 彼女がかなりの裸族なお陰で、見えるほどに贅肉が付いた事が無いとはっきりしている。

 この圧倒的食いしん坊で何故? 私は必要な栄養を上げません! してるのだろうか。

 ずっと悩んでるんだよなぁ。少し食わせる量増やしてみるか?


「いえ、十分食べられますので」


「……残念」


「ダン一つお尋ねしたい」


 お願いだから尋ねないで。

「はい、何でもどうぞ」


「何故この料理を我が家に居た時は作ってくださらなかったのか。父も喜んだでしょうに。我が家の扱いに何かご不満が?」


 何そのヤベー言葉選び。私をこれ以上無い恩知らずと貶める気なの。


「……えーと。これはアイラさんと親しくなるために苦心惨憺した結果作り上げた料理であの頃は……あ。ごめんなさい嘘です。

 ほら、国の中心部で目立って広まったら嫌じゃないですか? 特に……力ある方の噂になるような真似は……ね?」


「つまり、我々もこの料理について誰にも話してはならぬと?」


「はい。おねがいします。ちょっと、ラスティルさん聞いてますか? 秘密ですよ? 何かで知れ渡ったと思ったらもう作りませんからね? 珍しい食事の話は人を狂わせるんですよ? 私が酷い目にあったらどーしてくれるんですか?」


「うむうむ。聞いているぞ? だが月に一回はこの料理が食べられないと、約束をど忘れするかもしれんなぁ」


「ほぉ。それは良案。道理を知る我が君ならばわたくしをのけ者にしたりはしないでしょうな?」


 料理には絶対の自信があっても、真面目に美味しいのが食べたくて言ってるのか、乗ってくれてるのか、それが筋ってだけの発言なのか分からないねこのお嬢さん。

 何にしても定期的にコミュニケーションの機会を作るのは良い事。有難い提案だ。喜んで料理させて頂きます。……次は調査を兼ねてリディアに好みの食事を運んで貰うけど。


「で、だ。ダンよ。お主が過分と感じてるはずの臣下となった美しき槍使いは、ずっとどうやって今の危機を乗り越えるつもりか話してくれてるのを待っているのだが。それともこれが最後の宴なのか?」


「最後の宴になりそうなら逃げるので……はい、承知しました。一番は……草原族の援軍ですね。直接は殆ど戦わせられませんが、トーク軍が戦う前に嫌がらせをずっとして頂いて、敵軍の士気と体調を最低に出来る……と思います。そうしたら、倍の兵数でも勝てるんじゃないかなーって」


 本当に『多分』くらいしか確信が持てないのが大いに不本意だ。リディア曰く真面目に働いてくれれば十分疲弊させられるそうだから、取次の兄ちゃんの態度的には大丈夫なはずなんだけど。


「は!? お前、そんな大ぼらをカルマ殿たちに言ったのか!? ど、どうするのだ。敵は本当に攻めて来ると商人たちからも聞いたぞ?」


 おう? 大ぼらって何が?


「ラスティル殿、お言葉には同意しますれど、直近の四氏族へ金銀と一緒に送られたビビアナからの書状を我が君へ届けるくらいには、草原族の者は話す用意があるのです」


 え、え、え? ラスティルさんが大口を開けておられる。そんな驚く話なの。私全然ついていけないんですが。


「……理解出来ぬのだが。あの、武勇以外全て無価値と言いかねん獣人ども……いや、アイラ殿の事では無いぞ。とにかく、あの話のしようがない奴らを援軍? 正史を見ても精々別の方面から襲わせる程度が限界の奴らではないか。しかも四氏族……どうやって話を付ける。……ダンよ。何か、勘違いをしてるのではないか?」


 ……え。マジ? いや、勘違い要素は……抜いて……たような……。でも……え。そんなに? ―――自信がサラサラとキューティクルヘアな感じに流れて……。


「我が君。我が君」


「は、はいリディアさん。……あの、大丈夫、と思うのです。えっと、オウランという方の氏族に頼み込んでですね。交渉次第で、長い付き合いを作る為にはって話があって、トークが誠意を見せればと。聞いて……他の氏族も、何とか、」


「ご安心を我が君。あの書状の捏造は余程の貴族でなければ不可能で御座います。獣人からあれが送られてきたのはそれこそ重要な誠意の証」


「リディア殿、誠にか? 拙者には、どうしても獣人の援軍という言葉が理解出来ない。強ければあるかもしれぬ。しかし追い詰められたトークだぞ?」


「……ラスティルは、前居た所の炎の部族で考えてるのがあると思うよ。あそこは特に武勇を重要視して言葉より先に矢が飛んでくる所が多いんだ。僕が覚えてる小さい時はそうだった。

 オウランは前から話の出来る獣人だったし、可能性は……あると思う。それでも、僕も少し信じられないけど」


 えええ。めちゃんこ話ツルッツルだったんですが……。故郷の超偉そうな電気会社と下請けの関係を思い出すくらい下手に出てくれました。

 ……私の命ぶっこんだ誠意が通じてるのかなーとか思ってたが、やはり何か勘違いがあるのかしら。不安になってきた。


「かの伝説の外交家チーギも獣人相手だけは嫌がったと申しますな。頼みごとの面倒さも含めれば、わたくしも無茶な話と考えますが、他に方策も無く。

 何、至極当然の仕儀にてオウランとやらが手のひらを返そうと、トークの滅び方が変わるだけにて。我が君の手落ちでは御座いません」


 ふ、ふおおお。

 横ピース♪ でもしてお茶らけたい。中々の動揺だ。震度六。大丈夫。私は地震には強い民族。慣れてる。だから大丈夫。


「ご、ご安心ください。私が地面に額を擦り付けた時、きちんと話し合うと……言ってくださったのです。オウランという方……いえ、オウラン様は、今まで、手のひら返しなんて……されてませんから」


 連絡の兄ちゃん相手に精々普通のお辞儀くらいしかしてません。

 私、偉そうだったかもしれない。こ、これが終わったらせめて兄ちゃんの所へ行って足舐めるべきなのか? ……駄目でしょ。今の私はトーク家から見張られてる可能性高いでしょ。大体全部終わるまで、私と彼らの結びつきが強いと思われるような行動は控えないと。下手な動きは万病のもとよ。……あれ? 何か違うような。


「我が君、今更動揺なさるのも面白くはありますが、確かオウランの所から使者が来るのでしょう?」


「え、ええ。ジョルグという方が、此処から四日ほどの所に来ておられて、兵の準備も……していると。聞いてます」


「ジョルグ? 確か……その名は草原族の高名な勇者では無かったか?」


「うん。彼が来るんだ……。ならオウランは相当力いれてると思う」


「その者がトークまで来れば仕事は十二分に果たされております。後はトークが我が君を受け入れるか。そして使者との話し合い次第。トークのお二人も草原族との付き合いは長い。下手な交渉はせぬでしょう。思い煩われますな」


「え、ええ。……来て、くれるはずです」


 ……オウランさんたちどんな近い時でも此処から十日は離れた所に居るんだもん。直接話せねーし。他にどうしようもなかったし。

 ……これ、来てくれなかったら私詐欺師となって、此処に居る三人からこそ首狙われるのでは?

 ジョルグウウウウウさーーーーん! お願い! お願いだから来て! そして妥協して! 大事なの。ほんとーに大事だと思うの! 貴方方の為に! だからタスケテー!


「……ちょっと、皿洗ってます。皆さまは宜しいようにご歓談ください。お見送りは……又の機会という事で」



 ―――――――――。

 お湯に、天ぷらの脂汚れが溶けていく。

 キュッキュッキュ。ほれキュッキュッキュ。とね。

 うむ……単純作業は心を落ち着かせる。主催者としては駄目だが、下手な事口に出す前に逃げたのは英断だったと今なら分かる。

 何度考えても人事は尽くしてる。能力の限界だ。もー知らん。私は今夜スッキリ寝て見せる。


「ダン様。少し宜しいでしょうか」


 ……ごめん。さっきの所為で貴方がより不吉に思えるの。家に帰ってくれます?

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