ラスティルとの再会
出てきた当主たちのコルノの乱終了直後の超概略位置関係図。それぞれの間には子爵くらいの領主がいたりします。
マテアス・スキト ジョイ・サポナ(真田)
カルマ・トーク | ビビアナ・ウェリア(首都ゴルド)
黄河
ザンザ(王都ランド)| イルヘルミ・ローエン
オラリオ・ケイ(カメノ州)|マリオ・ウェリア(ニイテ家吸収)
長江
江東地域(辺境)
強さランキング(支配している領土の広さと収穫できる食料のランキング)
1ザンザ 2ビビアナ・ウェリア 3マリオ・ウェリア 4マテアス・スキト(国境線守備軍なので基本ケイの動きに関与出来ない) 5オラリオ・ケイ 大領主>>>>>中領主 ジョイ・サポナ、カルマ・トーク、イルヘルミ・ローエン。上の5つと比べれば団子。
王都ランドとビビアナ・ウェリアが支配する首都ゴルドが、皆の憧れる大都会になります。豊富な衣食住に加えて文化その他ナウい物が殆ど此処で産まれます。
芸能人、有能と言われる人、高位貴族の一族が殆どこの二つの都市に住んでいましたが、今はランドが色々不穏なので特にランドでの利権を持っていない多くの人がビビアナ・ウェリアの所に移住してます。
*何故黄河や長江がそのまんまの名前なのかと言うと……元から黄色い川と長い川というそのまんまの名前だからです。
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レスターに帰ってきて四か月。カルマの出世を喜んでいた街も落ち着きを取り戻している。
コルノの乱では上手く立ち回った領主が居れば、失態をおかしたのもコルノ党と戦って死んじゃったのも当然いるわけで。
その分の領地を功績が在った者に配分され、カルマは伯爵となった。
ここ暫く街の話題はコルノの乱で活躍した人々の話だらけ。
主にザンザ、イルヘルミ、フォウティといった名前を聞く。
特にフォウティ・ニイテという人の名声は凄まじい。
何でも戦いの度に軍の先頭に立って突撃し、立ち塞がる者は武器防具、人、砦の区別なく真っ二つになったという話だ。
軍の長が毎回先頭で突撃なんて頭おかしいし在り得ない。
しかし民の評判ではそうなっていて、他の人間よりも明らかに頭抜けた評判を得ている。
その武器まで名が知れ渡っているのだ。
他の人の武器の名なんて聞いた覚えがないっていうのに。
当然だよね。領主ならば一度も武器を振るって無い人が殆どだろう。
一説では魔術を用いて作られたとも言われている。
全てを斬り裂く剣、フォウティが全力で振るえば山をも斬り裂くであろうですと。
ほほぅ、川ではなく山を斬り裂けるのならエクスカリバーより上。エヌマなんちゃらとどっちが強いのだろうか?
この地形に住む人本当話盛り盛りしちゃうの好きだな。
地球でも赤兎馬は一日千里を駆けるって……それ414キロメートルだって分かってんのかね?
ロシアのドン種は284キロメートルを一日で走ったと言う記録があるそうだがその二倍。馬をサイレンススズカしてしまう気なのか。泣くぞ。
白虹の剣は多分凄く出来の良い鋼造りなのだろう。
私たちが相手をしたコルノ兵士の殆どは粗末な武器、つーか農具の奴も居た。
フォウティが相手をした連中も同じようなもんのはずだ。その差によって凄まじい力を発揮したのだと思う。それでも先頭になって突撃を毎回なんてありえない。
やったとしても一回でしょ。あまり盛るのは感心しないね。
こんな逸話よりも私にとって重要だったのは、フォウティのあだ名『江東の虎』だ。超聞き覚えがあった。三国志序盤無双のお人、
すんげー戦いが上手くて、大活躍して、確か史実でも董卓相手に孤軍奮闘……あ、曹操も戦ったんだっけ。
とにかくその時スゲー強かった董卓をビビらせたお人だ。
ただかなり無謀な性格な為、色々無茶した挙句に若くして死んじゃうはず。
しかし彼の遺志は孫策孫権に受け継がれ三国志の一国が建国される。夢と浪漫があるね。出来た国は三国志で完全空気だけど、最後の二強なんだから立派なもんよ。
一応娘のテリカがフォウティと一緒に戦ったとは聞いた。
が、それ以外の子は耳に入って来ない。家族にまで人々の興味が移ってないのだな。
うーむ……どうなんだ? こいつ孫堅しちゃうのか?
とにかくニイテ家の皆様は要チェック。私の知識通りなっちゃうと、三代に渡って若い頃から超有能のアカンご一家となる。
三代目が一番優秀なんて世の法則に反してる。名家三代続かずってことわざを知らんのかね?
どうなってんの? 司馬家なの? あっちもっと酷いけど。
反省した方が良い。私の計画の為に。
何にしろ江東地域に戦争の上手な奴が大領地を得ちゃうと困る。
江東は長江の隣だ。でっけぇ川で水軍を鍛えられちゃうと対処が思いつかない。
まぁ、この一家で一番重要な三代目孫権の可能性を感じる名前が聞こえてこないので、こっちだとどうなるか五里霧中なんだけど。
居るんですかねあの地味有能君主。
殆どの作品で空気の癖に、蜀より呉を長生きさせやがったコウモリ男。
……孫権的な人が居ても絶対本人の前では言わんがな。怖い人なのは間違いないのだから。
さて、コルノの乱は首謀者コルノがケイ帝国の導きにより各地の群雄に囲まれ、袋叩きで殺され終結した。と、ケイ帝国は主張している。
本当は殺す前に病死してしまったらしい。実際は自殺なのかもしらんが。
まー、偉い皆さんも自己解決出来ずに落ちまくった国の威信を取り戻そうと必死なわけだ。
無理っぽいけど。
だって既にあっちこっちで領地の奪い合いが起こっていると私の耳にさえ入ってるんですもの。イルヘルミなんてかなり無茶してるという話だ。
王軍は独力で反乱を抑えられないと知られた上に、その反乱を対処する為に兵力が減ってしまった今力を付けたいって訳だな。皆やってるなら俺もやらねば理論である。
で、群雄たちの領地が増えると王軍として兵を徴集出来る領地が減る。
ザンザが諸侯に王軍へ協力させて王軍を作り直し、それによって帝国を再興しようとしてるなんて聞くが……。
再興が目的なのか、自分の権力を増すのが目的なのか分からない。
ま、私は川を流れる葉っぱ人間。世の動きを待つのみよ。
不変によって万変に応ずるのだ……。イカす表現ですねぇこれ。
よって私は今日も倉庫で兵糧の管理である。
きちんと管理しないと古いのがどんどん奥に入ってしまう。最終的には捨てる羽目になる。
それは許されん。食料を捨てるよりも罪深い行いは早々あるまい。
そう思って仕事をし続けていた私だが、ついさっき客人が来たと言われて外に出ると其処に居たのは、
「ラスティルさん! 来てくれたんですか!」
「久しぶりだなライル。いや、ここではダンだったか? 名前が違うから探すのに苦労したぞ。お前の見た目を聞いて回って何とかだ。……背が幾らか伸びたな」
「ラスティルさんのお陰で何とかかんとかやっております。探させてしまいましたか。申し訳ありません。文に書くのを忘れておりました」
書かなかったのは遠方で名が出ないようにわざとだが、迷惑を掛けてしまうのは考えていなかった。
こうなるのは当然だったな……わるい事をした。
「レスターには今日おつきになったのですか?」
「いや、三日前にはついていた。さっそく文に書いてあったアイラ・ガン殿を紹介してもらいたいのだが、何とかなるかな?」
「一応個人的な知り合いなんですけど……そうですね、ラスティルさんはもしもアイラ様が望みの方ならば、前の所みたいに客将としてでもトーク閣下の所に留まる気はありますか?」
「ああ、それは考えていたぞ。出来れば他の二将軍とも手合わせしてみたいからな」
「分かりました。それではグレース様に紹介して、軍が訓練する場所を案内するのが良いかと思います。少し待っていてください。上役に許可を得て来ますから」
そのまま直ぐにグレースの所へ向かい、ラスティルという人を紹介したいと言って取次を願うと五分も待たされずに通された。
あれ? 思ったよりずっと早い。
しかも部屋の中に入るとグレースが立って待っていた。
なんか意気込みを感じる……。
「ダン、その方がラスティル殿?」
「はい。少し前までジョイ・サポナ閣下の所で客将をされていたそうです」
「会えて嬉しく思うグレース殿。拙者はラスティル・ドレイク。ここにはダン殿から貰った文に興味を引かれて参った。是非、アイラ・ガン殿と手合わせしたい。許可を頂けないだろうか?」
「―――その後、カルマ閣下の配下になって貰えるのかしら?」
「アイラ殿や他の将軍の方々が楽しい相手であれば客将にはなりたいと思っておりまする。しかし配下になるかはカルマ閣下次第としか。不義理をせぬつもりではありますが」
「十分よ。客将になってくれると決まったら、又あたしの所に来て頂けないかしら。軍の訓練場へはそこのダンに案内させます。ドレイク殿、申し訳ありませんが少しお待ちください。ダンと話がありますので」
「承知した。よろしくお願い致す」
……なんかトントン拍子でいった。なんで?
私の信用によってじゃないのは確定的に明らか。兎に角ラスティルさんの退室と、美女上司様のお言葉を待つと、
「貴方、よくラスティル・ドレイク程の者と知り合えたわね。どうやって知遇を得たの?」
あれ、又不審『物』を見る目で見られてる……。
今回は本当に何も無いのに。
「私が旅の途中困っていたところを助けて頂きました。その際、競えるような強い人を探していると仰っていたので、ここに来てアイラ様を知り文でお知らせしたのですが……グレース様もラス……ドレイク様を存じだったのですか?」
おっとあぶね。貴族様は家名で呼ぶんだったな。
ただドレイクなんて家名初耳である。後でどう呼んだら良いか確認しよう。
「サポナ領は同じ辺境だし知ってて当然じゃない。火族相手に凄まじい働きをした槍のラスティルと言えば有名よ。とにかくよくやったわ。逃がさないようにしなさい。貴方の手当も増やしておくからね。期待してる」
え、えー……いや、私も留まって欲しいけど、私の努力次第では無いような……。
「わ、分かりました。非才の限りを尽くします。あ、でも駄目だった場合に罰せられるくらいでしたら手当は結構です。正直自信がありません」
「―――貴方って本当に水を差すわね。駄目でも処罰なんてしないわよ。とにかくドレイク殿を不快にさせないよう努力なさい。良いかしら?」
「はっ。全力を尽くします」
頑張りますとも。殺したくないケイ人ナンバーワンの御方だしね。
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