第6話 矛と盾
「どう足掻いても盾となる運命は変えられなかったか」
ニュースを見て男はそう言った。
「ただ、矛から守り抜けるぐらいの盾にしてやることはできたか」
テレビを消して部屋を出た男は
韓国 ソウル 日本大使館
「こちらは日本国陸上自衛軍第十七連隊です、アメリカ軍との共同作戦をもって邦人救出に参りました」
第十七連隊がアメリカ海兵隊と共についに仁川国際空港からソウル市街に到達したことによって日本大使館に避難していた人々は救出された。
他のすぐに朝鮮半島へすぐに救出部隊を送れない国々の人々も第四十六連隊などによって救出され仁川国際空港から一旦対馬へ輸送された。
一方ソウル市街地にて妨害攻撃を行っていた海兵隊などのアメリカ軍は日本国自衛軍による各国の国民の救出が完了すると大韓民国陸軍第一軍団を残して撤退した。
アメリカ及び日本その他同盟国の判断は既に大統領が脱出しているソウルを放棄し、要請のあったすべての国家の国民の救出後陸上戦線は釜山まで撤退するというものであった。
撤退中、そして一定期間は航空攻撃により朝鮮人民軍を撃滅し、その後機甲師団を用いて朝鮮半島全土を電撃制圧するというプランであった。
だが中華人民共和国が日本国との戦闘状態に入ったことにより後方基地たる日本国が三自衛軍に対し防衛出動命令を出したことによって朝鮮半島の反攻は後回しにされることになった。
一方、沖縄。
奇襲攻撃によって尖閣諸島は占領されたものの、その後の与那国島への上陸は第十五旅団によって阻まれた。が、宮古島と久米島のレーダーサイトは巡航ミサイルによって破壊され空では中国側が主導権を持っていた。
「はい、ですから第十五旅団の奮戦によって敵の上陸は阻止されたものの、近海には敵空母艦隊が展開され、巡航ミサイル攻撃によってレーダーサイトが破壊されたので航空優勢の確保は航空自衛軍単独では不可能です」
「第五護衛隊群は」
「現在佐世保にて待機中です、敵の第一次攻撃終了後の投入を統合幕僚本部及び護衛艦隊は検討しています」
あの時から自衛軍を強化してきたものの、ダメなのか。
そういう思いが顔に現れている閣僚を前に総理は言う。
「アメリカは何をやっているんだ」
「どうか、増派をお願いします」
「ミスターカシバラ、そう言われてもホワイトハウスは貴国政府の態度を疑っているのです」
在日アメリカ大使館でやり取りをするのは前日本国内閣総理大臣 柏原雅也である。
戦後初の防衛出動まで出したんだ、疑う余地はどこにある。
そう思う柏原は決定的な言葉を口にする。
「敵第一次攻撃終了後、第五護衛隊群が出撃します」
「トサの艦隊ですか」
「ええ」
大使の顔が少し悩むような顔になった直後、電話が鳴る。
電話に出た大使はそのまま言う。
「カシバラ、お待たせしました。我らが大統領は同盟国の窮地を救うため最強の矛をお送りしますよ」
霊南坂とは帝国時代でのアメリカ大使館の呼び方の一つです。
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