第5話 尖閣諸島
7月30日 朝鮮戦争再開から一週間後
朝鮮半島での戦火は止まることなく拡大するばかりだった。米軍を中心とした国連軍は自国民の日本への避難を完了させると北朝鮮に対し空爆を開始、だが既に大韓民国首都ソウルは市街戦の末陥落しており趨勢は分からないままだった。
そんな中、国際社会が注視しているのは世界の大国の一つ、中華人民共和国の動静だった。
この国は朝鮮戦争再開後も非難声明を出すわけでもなく、北朝鮮に援助するわけでもなく、ただ、不気味な沈黙を貫いていた、、、
7月31日 早朝 日本国 沖縄県石垣市 尖閣諸島周辺
海上保安庁巡視船 くだか
「中国海警局の船舶が民間漁船に接近中、船長、どうしますか」
「警告と共に阻止行動に入る、面舵一杯」
「面舵一杯」
それはいつものように行われる行動のはずだった。
「中国海警局の船舶なおも当方に近づく」
「警告を繰り返せ、これ以上の接近を行った場合、当方は警告射撃を行う」
いつもと何かが違う、そう船長が感じた時だった。
海上保安庁第十一管区所属巡視船 くだか は中国海警局の船舶に銃撃を受け船長以下艦橋に居たほとんどが即死、残った一名が第十一管区本部に通報後死亡、同時に警戒任務に当たっていた付近の巡視船のほとんどが機関砲による砲撃を受け撃沈された。
第十一管区本部はすぐさま霞が関の本庁に通報、これを受け海上保安庁長官が有事の発生を内閣府及び防衛省に通達し、緊急閣議が開催された。
その時既に尖閣諸島近辺の漁船は拿捕され、魚釣島には中国人民解放軍の兵士が上陸しようとしていた。
「現在我が国は中華人民共和国軍による攻撃を受けている、これに対する我が国の対応は防衛出動しかないと考えています、防衛大臣、準備は」
「もちろん出来ています、現場もあの時の無念を果たすべく全力を尽くすでしょう」
よろしいというように総理大臣は頷いた後に各々に指示を出し、国政の最高権力者の
意思を伝える。
「国会への通達は自衛軍法に基づき後日行うものとし、三自衛軍に対し防衛出動を命令する。外務大臣、国際連合及び米国を始めとする諸外国に対し我が国が自衛権を発動する旨通達せよ。そして米国に対しては日米安全保障条約の履行を求む、そう伝えて欲しい」
「了解」
「こちら第五護衛隊群司令、現在我が護衛隊群は訓練海域に向かって航行中、
・・・了解、一時呉に帰投する」
「群司令から艦隊各艦へ、訓練中止、繰り返す、訓練中止。我が護衛隊群は呉へ帰投する。そして各艦に達する、日本国政府は緊急閣議において中華人民共和国の侵攻を確認し、防衛出動を三自衛軍に発令、これにより正式に我が国は交戦状態に入った」
一息置いた後、覚悟を決めたように発する。
「我々が一時帰投するのはそのための準備である、準備完了後既に我が方の航空優勢下にある海域を通過し佐世保に進出する」
「第五護衛隊群の力を見せる時が来たのだ、日本国民の怒りを、無念を晴らす時が来たのだ、訓練どうりの力を諸君が発揮することを願う」
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