十二話 殲滅の六肢/『その一』
「.......どっせーーい!!」
「よーーっと。」
「_______『暗黒ブラスト!』」
森に千体以上も居たエデンの残党達は、ヒグマ達や、アライグマ達の増援によって少しずつ数を減らしてきていた。だが、何より減っていた要因が。
「.......アイツ。またセルリアンを斬った。......なんなんだ一体。」
ヴィズルナーラに向かうセルリアンは尽く、奴の持つ短剣により斬り伏せられていた。
何体斬っても、何百体斬っても全く切れ味が衰えない。どんなに硬そうなセルリアンや岩すらも全て斬る。
いや。何より摩訶不思議なのはヴィズルナーラが増殖した事だ。花を持つ手を振れば、花弁が地面にひらりと落下した。するとそこからもう一体のヴィズルナーラが生まれたのだ。今は合計13体もヴィズルナーラが居る。
『________________
13体いるヴィズルナーラの内の一体が法螺貝を持つ手を上に上げる。誰も吹いて居ないのに、法螺貝が吹かれる音が聞こえた。
____________すると。
『_____________________!!!!!!!』
ヴィズルナーラの周囲の地面が長方形の形に光り、その個体が消滅した。否、ヴィズルナーラのみではなく。ヴィズルナーラと光った長方形にあったもの全てが消滅した。更地の地面以外は完全に何も残さず消えたのだ。
「「「「「_________________________!!!!」」」」
『ちぃ.......。バケモノめ......』
『_______
『_______
再びヴィズルナーラが増え、13体に戻る。周囲のセルリアンにヴィズルナーラ達は気を取られており、こちらには目もくれない。
「アクジキ、ただいま来た。................あいつは!」
アクジキがタイミング良く到着した。奥の方で暴れているヴィズルナーラを見つめる。
「........私がアクジキ、君を呼んだのはね。私はアイツが分からない。けど.......アイツは多分、キミの言っていた記憶を奪われている存在でしょ?なんとなく分かるんだ。」
かばんさんが少し汗をかきながら言う。焦っているんだ。
「.......うん。アイツは私の仇、『ヴィズルナーラ』だ。.........倒そう。絶対に。」
アクジキも動揺に汗をかきながら言う。
「............ボクが懐に潜り込んでチャンスを作ります。皆はその内に........」
焦りにより、無謀な作戦を伝えようとする。
『待て、小僧。アイツの攻撃方法知らねぇだろ。今はラッキーな事に同胞に攻撃の手が向いてる。アイツの攻撃方法を知らねぇと一瞬で斬られておしまいだ。』
.......過去、殺された相手に今、救われたかもしれない。
『一つ目は短剣だ。オレの手槌なんて簡単に斬りやがる。恐らく斬れねぇものはねぇ。物質的に斬ってるんじゃあなく、「斬った」という結果を対象に押し付けてやがるんだ。だから何でも斬れる。』
『モノ』が槌同士をコンコンとぶつけあいながら言う。オイナリサマの技でも破壊出来なかった『モノ』の槌を簡単に........。
『二つ目は光線だ。アイツが手に持つ円盤があるだろ?アレは中心から光線が出やがる。今は無ぇが、奴は鏡を出す。その鏡に光線は反射する。』
光線と、短剣。正に遠距離と近距離。隙がない。
『だが何より奴が厄介なのは、物理法則がこことは違う星から来たせいで能力が異空間に干渉しやがる事だ。そこが俺らと奴が別種たる最大の理由だ。知ってたか?奴は同種じゃねえ。俺らを真似た別の星からのエイリアンだ。』
「異空間に干渉するとは一体どういう事だ?」
キングコブラさんが問う。
『......俺も詳しい事は何百回奴と戦っても分かんねえが、攻撃が当たる瞬間、時々奴は"別の層"に移動する。』
『アイツは増えるだろ?あの増えた奴らはこの場所に居るが別の"層"に居る。見えているが干渉しあえない。それが"別の層"。オレらは"レイヤー"と呼んでいる。』
『だが問題なのは、"別のレイヤー"に行く方法が無い、あるいは分かんねぇって事だ。アイツは一体残せば"鵜像霧像"でどんどん増えやがる。』
___________奴に勝てる方法は、あるのだろうか。
『弱点という弱点でもねえが、アイツらは性質上俺らと"同じレイヤー"に居るのは一体だけだ。逆に言えば、攻撃を当ててく』
_______________ジュインッ!!!
『.......るのは.......』
『モノ』の頭部。額の辺りに直径3センチほどの光線が貫通する。
『......一体......だ......け........』
『_______脱層・反転。』
_______すると、ボク達の目の前にヴィズルナーラが背中を向けて現れた。瞬間移動して現れた。元々そこには垣根があったはずなのだ。だが、その垣根は何故か元々ヴィズルナーラが居た場所にあった。
「______ッ!!皆離れて!!近距離は私がやるッ!アクジキとキュルルくんは距離を取って触腕を!!」
『_____ビーストモード・獄獣!!』
かばんさんの手に火が纏う。虹色の閃光が瞬き、足元からは黒い淀みが走っている。本気のかばんさんだ。
『ぐっ....!!』
額に穴を開けられたくらいではくたばらない流石の『モノ』。『モノ』もヴィズルナーラの背後から近距離戦を仕掛ける。
「うおおおおおおおおお!!!!」
『りゃああああああああ!!!!』
ボクとアクジキが触腕を仕掛ける。
『フンッッッ!!!』
「だっっっっ!!!」
『________脱層。』
.......しかし、皆の攻撃は当たっているのに当たっていなかった。攻撃を外したというより、ヴィズルナーラはそこに居るのに、奴の身体をすり抜けたに近い。これが、"別のレイヤー"に逃げるということなのか。
『この個体は"別のレイヤー"に行った!!オイお前ら!!逆にここに居る13体のうちどいつかが"俺らのレイヤー"に来やがったぞ!!』
『_______
すると、ボクの3m程右に居た個体が円盤から光線を出した。光線は、ボク達が攻撃を仕掛けていたヴィズルナーラに向けて飛んでいく。
『________
すると、ボク達が攻撃を仕掛けたがすり抜けたヴィズルナーラが鏡を出した。そして、鏡に光線が反射した。反射した光線は遠くにいるアクジキに向かう。
「アクジキッ!!」
『グッ.......!!ナッ!?』
アクジキの身体を光線はすり抜ける。ダメージがあった訳では無くただすり抜けたのだ。つまり"別のレイヤー"に居る個体からの光線だったのだ。
「しまった!これはフェイ.......ク.......!!」
『_______幻誤楼。』
アクジキの更に後ろにいるヴィズルナーラが鏡を出す。そして、アクジキをすり抜けた光線はそのまま______後ろに居るヴィズルナーラの鏡に反射する。
『あっ!!がっ!!ぐぁっ!!』
超スピードで、それが『モノ』に当たる。_______どういう事だ、分からない。右に居る個体が光線を出して、それが一度反射し向きが変わり、アクジキの身体をすり抜けた。すり抜けたはずの光線が更に鏡に反射して『モノ』には当たったのだ。
『おごッ!!あがッ!!.......がッ!!.......................』
「『モノ』!!」
光線は一瞬の内に『モノ』の肩から上と下に焼き切る。..........こいつに嫌悪感を抱いた。それにボクはこいつに一度殺された。だが少し、かわいそうだとも思った。逆らえない存在に命令されバケモノと戦わされ、挙句の果てには仲間と共に異星に置いてけぼりにされる。
『_________脱層・反転。』
アクジキの後方に居たヴィズルナーラから声が聞こえ、振り向くと再びこちらに背を向けて『モノ』の目の前に瞬間移動したのだ。
________この瞬間移動も、ヴィズルナーラが住む星の物理法則なのだろうか。
『_________
すると、そのヴィズルナーラは残っていた『モノ』の身体を短剣でバラバラに斬り伏せた。
『...........おまえ......ら........たお......せよ.......こいつ..........』
.......それが、最期に聞いた『モノ』のセリフだった。あの最強かとも思えたセルリアンが一分も経っていない内に殺された。_______コイツは。ボク達で本当に勝てるのか。
《________皆!!今は!!『モノ』を斬ったコイツが!!『モノ』に攻撃を当てたって事はコイツが!!"同じレイヤー"に居るって事だよッッ!!》
かばんさんが火を纏うような拳でそのヴィズルナーラに殴り掛かる。
『__________脱層・反転。』
「ッ.........!!!ぐっ.......!!」
《!?なッ!?》
「キュルルッ!!!」
その時、ボクの左腕が_______無音で千切れた。
ボクの左腕は何故か遠くの方へ瞬間移動した。そして、さっきまで手前のヴィズルナーラの方を向いていたはずのかばんさんが身体ごと奥側へ向いている。
摩訶不思議、過ぎる。なんなんだ、コイツは_______________。特別巨大でもない、ボクよりも少し身長が高いくらいの人型のこいつに、勝てる気がしない。
「キュルルッ!!大丈夫か!!」
ダイアウルフさんが駆け寄ってくる。
「ぐっ.......!!皆!!コイツはダメだ!!一度退こう!!退いて作戦を立て直すッ!!コイツは強過ぎる!!!」
「「「ッ........了解ッ!!!」」」
かばんさんがビーストモードを解除し、皆がその場を離れた。ボクも急いで千切れた左腕を回収し、その場から離れる.............
ヴィズルナーラ達は退くフレンズ達に興味が無さそうに、エデンの残党のセルリアンに襲いかかっていた。
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「あれ!?ヒューゴさんが居ません!さっきまでベッドで寝ていたはずなんですが.....!皆さん知りませんか!?」
アリツカゲラが呼びかける。
研究所。以前ジャパリ・ギンザに襲撃があった時にこの研究所も狙われた為、護衛で数々のフレンズ達が待機している。
怪我をしたヒューゴ、サーバル、イエイヌは鳥のフレンズによってここに戻っていた。
待機しているフレンズが皆首を横に振る。しかし、ヒューゴは危険な予知を感じ取り、再び戦場へ向かうのだった。
「........ふぅ。あ、一声かけた方が良かったかな.......。まあ、傷は治ってるし大丈夫か。さてと。森で何者かが動いてる。今度はフレンズさんにも警戒しよう。」
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「ぐぅ.......ぐッ!」
「キュルルくん!大丈夫かい?左腕が......!」
エデンの使徒もおらず、ヴィズルナーラが追って来れない程遠くの場所に距離をとる。アムールトラさんが心配して声を掛けてくれる。
「だい......じょうぶ.......!腕の方はなんとか........!!それから.........!」
肘から先の無くなった左腕から、セルリウムの長刀を生やす。本当は左腕を生やしたいが、セルリウムで創るものは全て"オリジナル"が必要だ。
例えば、剣や長刀など単純な構造をしているものは"脳内イメージ"が反映される。
だが、"腕"や人体部位など複雑なパーツを創るには"脳内イメージ"だけでは創る事が出来ない。一度セルリウムに取り込ませ構造を解析させる必要があるのだ。
ボク自身も、何千年とかけて"ヒトの少年"という複雑なものを女王のセルリウムが解析して再現されたのだ。
この場合では、ボクがさっき急いで回収した左腕をセルリウムに取り込ませる必要があった。だが。
「少しだけ、アイツの技が分かった........。と思う。皆、これ見て。」
千切られた左腕を皆に見せる。しかし。
「........!?!?キュルル、これは!?」
キングコブラさんが違和感に真っ先に気付く。ボクが千切られたのは左腕_________のはずが。
「そう。この千切られてる腕、右腕なんだ。変なんだよ。これだと両方右腕になっちゃう。これはアイツの短剣にやられたわけじゃない。いきなり切れた。かばんさんの身体の向きが変えられた瞬間に切れたんだ。」
「.............あのセルリアンは空間ごと左右反転させている。という事か........?お前の左腕は反転の境界に巻き込まれて、右腕に変わり、そのまま千切れたと。」
キングコブラさんが言う。皆が皆、驚きを隠せずにいた。
「..........恐らく、それで確定だと思う。だってかばんさん。」
「.......?」
「.......かばんさん、モバイルラッキーさんを元々、左腕に付けてませんでしたか?」
かばんは、自身の右の胸に手を当てた。心拍数の鼓動は、右側から聞こえていた。じわっと悪い汗が滲む。身体が、左右反転していたのだ。
「........ほん、とうだ.......。信じられないけど、アイツは確かに、一部の空間を、中にあるもの含めて全て反転させてるんだ........。」
かばんは、絶望のあまり顔に笑みが出ていた。
「.......それは多分、奴の瞬間的な移動手段です。奴が瞬間移動する時に必ずこちらに背を向けているのは、自分を含めて空間を反転させて移動をショートカットしているんです。反転の境界に巻き込まれたらボクのように片方だけ反転させられたり......。でも、やっぱり詳しい事は分からない。"どの範囲まで"反転させているのかとかは......」
『.......私ガ、奴ノ細胞ヲ少シデモ食ベラレタラ。完全ナ答エガ得ラレルハズ。ソレト....』
アクジキが口を開く。
「確かに......。だけど、真っ当に攻撃を当てようとしても"脱層"で逃げられてしまう」
かばんさんが言う。
「だったら不意打ちだろうな。奇襲すれば奴の身体に少しぐらいはダメージが入れられるんじゃないか?」
続いてダイアウルフさん。
「.......でも、セルリアンは限定的ではありますが未来予知をします。ヒューゴは特にその精度が高い。奴も.......」
と言いかけた所でハッとした。
「そうだ。モノも言っていたが奴は厳密に言うなら"セルリアン"ではないのだろう?だったら可能性はある。やってみる価値はありそうだが」
「.........。」
皆が頷く。
「.........決まりか。じゃあ問題はどんな不意打ちをするかだな。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ブラックバックさん!後ろ!」
ジャインッ!!バジィンッ!
『____________ッ!!!』
ぱっかーん!
「おお、助かった........。ありがとう、我が友よ。そなたの電撃を纏う攻撃も不思議なものだ..........」
「あははは、自分でもなんでこんなことが出来るのか分からないけどね........」
地面に尻もちを着いたブラックバックに手を差し伸べる。
「うおおおおおおおおおあああああ!!」
ばっかーーーん!!ぱっかーーーん!!
「....ぅくッ!!しかしタスマのあの声によるセルリアンの破壊も凄まじいものだ!同時に数体を破壊する!」
その時、オオカミのフレンズの遠吠えが聞こえた。
『わおおおおおお~~~~~ん!!!!!』
「......きゃっ!何!?」
「近いな。ピンチかも知れぬ。行こう、皆の者よ」
その場を後にしようとした時。ブラックバックはただならぬ気配を背後から感じ取っていた。
「.............。こいつ、は........。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なんだよ、コイツは.......!!キンシコウ!リカオン!かばんに通信を送る!」
ヒグマ達の前には、青白い四本の手を持つ人型が現れていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
アライグマ&フェネックの前にも。
「どっっっ!?どわわぁーー!!一体なんなのだ!?コイツわぁ~~~~~!!」
............これは。まずいかもだねぇ~。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「タイリクオオカミ.......こいつは無理だよ!逃げて!!私の事はいいから!」
「..........。」
遠吠えを出し、タイリクオオカミは負傷したニホンオオカミを守るため生命を削る程の本気を出していた。
『_______脱層。』
ヴィズルナーラの持つ法螺貝が音を立てた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『かばん!!居るか!?妙な奴が現れた!白い四本の手を持つセルリアンだ!!コイツはなんだ!?攻撃がすり抜けるし、向こうの攻撃もすり抜ける!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「........ヒグマさん!!そいつが"脱層"って言ったら注意して!!詳しい事は難しくて説明出来ないけど、"脱層"と唱えたら両者の攻撃が当たるようになるんだ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『脱層!?........分かった!!引き続き戦闘を続ける!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ギリリとかばんさんが歯軋りをする。
「フレンズさんの方へ行ってしまった......!くそ.......!それだけは阻止したかったけど!」
「皆!それからアイツを観察してて分かったことがある!アイツの攻撃について!短剣の攻撃は"夢惨劇"!光線の攻撃は"乱光華"!"レイヤー"に関することは"脱層"だ!!それから鏡を出す時は"幻誤楼"!!これが来たら光線の軌道が読みづらくなる!」
かばんさんが叫ぶ。アイツは確かに、技のトリガーがあるんだ。強いて言うなら、奴の弱点はそれを聞けば技を事前に把握出来るということか。
『サッキ言イカケタケド、キュルルト私ハ、"脱層・反転"で反転スル地面ノ長方形ヲ見ル事ガ出来ル。』
「えっ?」
思わず口を開く。
『コノ仮面。コレヲ出セバ、同ジレイヤーにいるのはどの個体か、それから反転する地面の長方形を視認する事が出来るよ。」
「何っ!?それ本当!?」
かばんさんが問い詰める。
「うん。言う機会が無くて申し訳なかったし、光線も来てたから。ただ、どの光線がフェイクなのかまでは判別できない。」
「そうか..........!キュルルくん、その仮面は出せる!?」
......アクジキが、ヴィズルナーラはインビジブル・リッパーに似た性質と言っていたのはこの事か。
『.......出せますッ!!』
「.......必ず、奇襲を成功させよう。奴の細胞を少しでも手に入れられたら、一度退こう。答えを出してから、もう一度立て直す。」
日は完全に落ち切り、夜になっていた。
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ヴィズルナーラは、13体全てがヴィズルナーラだった。13体以上は増えず、13体までは増える。「オリジナル」という概念はなく、増えた個体と元の個体に差異は無い。森にはヴィズルナーラが各所に散っていた。タイリクオオカミ、ヒグマ、ブラックバック、フェネックの所にそれぞれ一体ずつ。その他の9体は、先程までかばん達と戦闘していた場所で時々"こちらのレイヤー"に姿を現しながら"増えすぎた"セルリアンを狩っていた。
今は、タイミングが悪く通信機が壊れたタイリクオオカミの戦闘班の所にいる個体が"同レイヤー"に居た。
『_________乱光華。』
「はああああああああッッ!!」
タイリクオオカミは光線を木に登り避けながら接近した。木は光線に焼き切られる。更に短剣がタイリクオオカミに向かい振りかぶられる。
『___________夢惨劇。』
「ぐぅッ!!」
それを間一髪。身体を下に下げて避けながらヴィズルナーラの懐に潜り込み、腹に拳を叩き込む。
『_____________。』
「ふっ飛べぇええええええッッ!!!」
ばあああんッッ!!!
ヴィズルナーラの身体が吹き飛び、木にぶつかる。腹に拳により開けられた大きな穴が空いている。穴からは、ヒトに非常に似ている臓器のような物がドロリと垂れた。ヴィズルナーラ自身の硬度はそこまででは無かったのだ。
『_________
するとヴィズルナーラの短剣が光った。
「.....ぐぅッッ!.....えッ!?!?」
ヴィズルナーラに空いた穴がギュルギュルと塞がっていく。まるで時間が巻き戻っているかのように。
「ま、巻き戻っッ......!?」
『__________乱光華。』
続いて光線がやってくる。
『__________幻誤楼。』
それが鏡に二回も三回も反射する。アクロバティックな動きでそれを躱し、光線が止んだ所でタイリクオオカミは改めて気合いを入れ直す。
「くっ!.....あなたは_________!!ここで倒す!!私の命を懸けてでも!!この子は守るッ!!」
タイリクオオカミは、気を失っているニホンオオカミの前に立つ。
『ビーストモード解放!!群れの王!!』
タイリクオオカミの身体が10体に増える。オオカミアニマルガールのビーストモードの技だ。どの個体からも虹色の光が瞬いており、足元からは黒い淀みが走っている。ヴィズルナーラを円形に囲む。
『このパークに!!あなたは相応しくない!!私たちの明日は!!奪わせない!!』
空気が揺れた。既に傷だらけのタイリクオオカミは、今宵の満月に死線を見ていた。
十三話に続く。
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