十一話 森へ/『エデン』
かばんさんの研究所に、例によって集まってもらっていた。
「今回は『エデン』を倒す作戦を考えさせていただきました。キュルルです。」
目の前にいる沢山のフレンズ達に怖気づかないようにする。今回は、ボクが仮の隊長だ。
「まず、『エデン』を直接叩く班。実行場所は『エデン』の居座ってる森です。ボクとアクジキがセルリウムゴムで大きい発射台を作ります。パチンコって言うそうです。」
「 ダイアウルフさん、アムールトラさん、ボク、アクジキが飛び、『エデン』のコアを叩きます。その際はジャイアントペンギンさんにサポートしてもらいます。」
「あたしか。いいだろう。」
「分かった。重役だね」
「.......了解。」
「ん!角度の調整は任せな!」
「次に空からの偵察班&コアを叩いた後に落下するボク達をキャッチする鳥のフレンズさんがハクトウワシさん、アリツカゲラさん、博士さん、助手さんです。お願いします。」
「おーらいっ!偵察と、キャッチね!」
「や、やってみます!」
「「了解なのです」」
「発射台を準備している時に、復活した『エデンの使徒』達による妨害が予想されます。なのでそれと戦う戦闘班が。」
「一グループ目がタイリクオオカミさんとニホンオオカミさん。東を見てください」
「任せて!」
「うんっ!」
「二グループ目がヒグマさん、キンシコウさん、リカオンさん。西をお願いします」
「やってやるか。任せろ」
「分かりました。」
「オーダー、了解ですよ」
「三グループ目がかばんさんと、キングコブラさん。北の方面を。多分、ここに一番敵が集まりやすいです。」
「うん!了解!」
「戦闘は任せろ。」
「この組み分けでお願いします。それから、この前のように結界が張られても大丈夫なように索敵班が。」
「ヒューゴ、サーバル、イエイヌさんです。南方をお願いします。退路に敵が居ないかを索敵して下さい。」
「ん、任せて。後方の索敵だね。」
「分かった!」
「了解です!」
「結界はラッキーさんの通信を通さないので、索敵班の人は戦闘班の人とは違い、結界の中に入らないくらい後方で戦って下さい。もし結界が張られてボク達が孤立した場合は、研究所で待機してるフレンズさん達に連絡して下さい。」
「結界は外からなら入れます。増援と一緒に畳みかけるように結界内に来て下さい。作戦は以上です。.......質問は無いですか。」
皆が納得した顔をしてくれた。良かった。伝わったみたいだ。
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「ふふ、しかし皆がこうして歩いているとまるでピクニックみたいだね」
アムールトラさんが笑う。一行は、エデンの居る森に向かって進んでいた。
「(.........。)」
しかし、ボクの気分は晴れやかでは無かった。この作戦はボクが立てた。つまり失敗したら全てボクの責任だ。だから探検隊のビデオや紙の資料を何回も見て勉強した。.......だが、初の指揮なのだ。緊張で胃に穴が空きそうだ。
「.......キュルルくん、安心して。私が居るよ。きっと作戦は成功するさ。」
アムールトラさんが、ボクが考えていることを見透かしたように手を取って笑う。猛獣のような手が優しく感じた。その笑顔は明るく、つい安心した。
「ところで.........」
アムールトラさんがボクの耳元に口を近づける。いわゆる、こそこそ話だ。どうしたのだろう。作戦についてだろうか。
「.....あの.......前を歩いてるヒューゴっていう男の子とつがいってダイアウルフから聞いたんだけど、ホントなの?応援してるよ。」
「.......ばふッ!!!」
思わず口から妙な声が出てしまう。
「.....ん?どうしたの?」
「大丈夫か。」
色々な子が歩を止めてこちらに振り向く。
「だ、大丈夫です、大丈夫ですから!進みましょう!.......」
ボクもアムールトラさんの耳元に口を近づける。お互いがお互いにするこそこそ話だ。
「.......ちょ、ちょっと!本人ここに居るんですから!それと彼とはつがいじゃないですって!......」
「......そうなの?てっきりつがいなのかと.......。毎日あの子と同じベッドで寝ているんでしょう?......それに抱き合って。ダイアウルフから聞いたよ?」
「......み、見られてた......!?それは寝る時勝手にヒューゴが潜り込んで来てるだけで......それとなんか......抱き心地良いんですよ!セルリアンだからヒヤッとしてて........寝苦しい夜に寝やすいんです!」
「......うむ。もはやお前からはアイツの、アイツからはお前の匂いしかしないぞ?このパークのつがい同士の中ではかなり濃いな。」
ダイアウルフさんがこそこそ話に参加する。.......ちょっとまって。よく考えたらこのこそこそ話が聞かれてないの、かばんさんとヒューゴとアクジキくらいじゃないか。皆耳良いんだから。
「(.......キュルルくん.......私には聞こえてるよ......。か、母さんはう、嬉しいよ......り、りっぱな、つ、つがいをもってくれて.........)」
.......ヒューゴとアクジキ以外は皆、赤裸々な暴露に赤面していた。かばんは心の中で動揺した声を出していた。
.........そうこう言っていると、20km程も離れた『エデン』の居座る森の手前まで来た。近くで見るとより大きい。作戦は昼間に実行された。
「.......皆、準備はいい!?」
「「「「「おーーーーーーー!!!」」」」」
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『......こちらかばん。北方に見る限りセルリアンは居ない。』
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『......、あ、こうかしら?タイリクオオカミよ。東にもセルリアンは居ないわ』
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『......ヒグマ。西のこっちにも居ないな。』
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『......空から見ても居ないわね。オーバー』
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「了解!南はどうかな?」
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『.......こっちはヒューゴ。あの大きいの以外は反応無し。発射台作り始めていい思うよ。』
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ボク達は、各班の代表一人の腕にモバイルラッキーさんを付けて通信しあっている。ジャパリ・ギンザは奇襲に近かったが、今度はボク達が攻める番だ。
「了解!じゃあやろっか。アクジキ」
「うん。始メヨウ』
ボクとアクジキは手を繋いだ。そして、お互いの腕をゴム化。溶け合わせて離れる。腕の太さ程もあるゴムは離れても千切れなかった。
「これは驚いた。皆から話は聞いてたけど......二人は本当に半身がセルリアンなんだね。」
「はっはっは!アムールトラ、しかもこの坊主はかばんでさえ倒せなかったセルリアンを倒したんだぞ?かなりやる!」
「はい、はいはい!そーだねー、この木と、その木にゴムを巻き付ける感じで!」
ジャイアントペンギンさんが監督してくれている。こういうのはなんとなく生まれつき得意だそうだ。
指示に従って発射台、パチンコを作る。しっかりと巻き付けたあと、手をゴムから元に戻した。便利な身体になってしまったものだ。
「よぉーし!!これで、あのコアが見えるね?狙いはあそこ!じゃ、引っ張るよぉ!皆集まってー!」
しかし、やはり計画はそう順調にはいかなかった。
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『......タイリクオオカミよ!セルリアンが来た!戦うわ!』
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『ヒグマだ。目の前でセルリアンが無から現れた!戦っていいんだな!』
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『かばんだよ!急にセルリアン達が現れ始めた!交戦する!』
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『こちらはヒューゴ。反応がどんどん増えてる。今この森の中には1,000体程は居る。予想以上だ。』
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「了解!!ボク達は本体の破壊を急ぐよ!空の偵察班の子達!準備はいい!?」
次々と通信が入る。だが本体を破壊してしまえばセルリアンの生産は止まる。急ごう!
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『おーらいっ!皆準備はいいわね!?』
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「......よおし!皆集まって!飛ばすよー!」
アクジキがアムールトラさんを、ボクがダイアウルフさんを。空中で更に投げ飛ばし、勢いを付けて叩いてもらう作戦だった。
つまり、『エデン』のコアを叩くのはダイアウルフさんとアムールトラさんの二人。ボクとアクジキはいわゆる空中での加速装置だ。
アクジキは、本人から見て右に居るアムールトラさんの腰を、ボクはすぐ左に居るダイアウルフさんの腰を掴み、準備する。並び順で言うと、
アクジキ|アムール|ダイア|ボク だった。
「キュルル、しっかり頼むぞ。」
「アクジキさん、よろしくね。」
「じゃ!!引っ張るよぉおおーー!!」
グイグイとゴムが引っ張られていく。身体をゴムに押し付ける。
「.......行ってらっしゃい!!叩いてくんだよ!!」
四人の身体が凄まじい勢いで発射された。
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「キングコブラさん!そっちは任すよ!」
「任せろ。命令ならば従おう。」
ぱっかーん!
『かばん........と.......最後まで残ってた蛇じゃねえか。また会えるとはなァ。嬉しいぜぇ。』
セルリアンと戦っていると、『モノ』が再び現れる。復活するとは聞いていたものの、やはり目の前で見るとショッキングだ。緊張が走る。
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「すごいですね........ヒューゴさんの索敵。会うセルリアン全部が孤立してます」
イエイヌが、ヒューゴの同種を探知する機能に感嘆の声を漏らしていた。索敵班は孤立しているセルリアンを減らしつつ、ずっと後方で待機していた。
「僕達索敵班はがっつり戦う事よりも、結界が張られたら真っ先に逃げて助けを呼ぶ。それが役目だ。あまり戦いに集中しすぎてもダメだから、難しい役回りだね。」
既に森に居るセルリアンは2000体を超えていた。危機を感じ取った『エデン』が半狂乱になってセルリアンを作っているのだ。
「みゃあ!頑張ろう!.....あれ、フレンズの足音。これフォッサかな?」
「んむ!確かに、フレンズさんの匂いがします!」
「んん?僕には分かんないや」
するとサーバルの言葉通りフォッサが木の上に現れる。言葉も交わさず、ヒューゴの真後ろに着地する。
「ん?キミは何のフレンズ.......」
『.......ひゅーご。逆らわないで』
ヒューゴは驚愕した。何故見ず知らずの子が自分の名前を知っている。それに、こいつは........この、気配は。
直後、ヒューゴの両耳に指が入れられる。
「あっ......!!がっ.........!!!にっ.......、逃げ........みんな逃げてぇえええええええ!!!!!」
「ひゅ、ヒューゴちゃん!?」
「ヒューゴさん!?ちょっとフォッサさん!何を.....!」
フォッサは追う暇もなくその場を立ち去る。
『くふっ......かはっ.......あはっ.......。サーバルさん、イエイヌさん。逃げてって言ったのに。どうして逃げてくれないの?ねえ?』
ヒューゴが、『キャサリン』を出す。ニヤリと恐ろしい笑みを浮かべていた。
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勢いを付けて発射された四人は、ちょうど『エデン』のコアの目の前を飛んでいた。
お、重い!!セル触腕で支えてもダイアウルフさんがすごく重い!!でも、ここでこの子を投げ飛ばさないと!!ボク達に勝ちはない!!
「いくよ!!ダイアさん!!」
『アムールトラ!!投ゲル!!』
「任せろ!!」
「うんっ!来て!」
『「はあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」』
ボクとアクジキは二人をセル触腕で更に勢いを付けて投げ飛ばす。もはや時速何キロか分からない速度のまま、ダイアウルフさんとアムールトラさんの身体は_________________
「「ビーストモード!!」」
二人の身体から虹色の光が閃いた。ダイアウルフさんの身体が五つに分身した。オオカミの子ならビーストモードで分身するのか。
__________合計"六人"の拳は。
__________『エデン』のコアに
__________深々と突き刺さった。
「「だっりゃああああああああああ!!!!」」
ビシビシッ.......!!
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『あぁ?エデン様が........』
その場にいた者達全てが上を向いた。
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........破壊、出来なかった!!
ボク、アクジキ、ダイアさん、アムールさんは鳥の子達に抱き抱えられていた。しかし...........。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なんだありゃ?エデンが飛んでいくぞ?」
ヒグマが上を見て呟いた。
「ホントですね。空に帰っていくようにも見えますが」
「うーん、これはどうなんでしょう。作戦成功なんでしょうか?」
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「ニホンオオカミ!油断しちゃいけないわよ!」
「うん!飛ぶエデンに見とれちゃダメだね!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『エデン様が帰っちまった。俺らの星に。緊急撤退だとよ。俺ら置いてけぼりじゃねえか、おい』
「......は?」
しかし、かばんは思い出していた。普段奴らは宇宙に住んでおり、この星に来たのは侵略の為だという事を。それをダイアウルフ達が殴り、怖じ気づかせたのかもしれない。
『.......なんだこれ。オレもう復活出来ねえじゃん。お前らと戦う意味もあるのか?』
「......こちらかばん。『エデン』は自分の星に帰ったそうだ!作戦は成功!南方の索敵班!退路は大丈夫?皆、準備が整ったら撤退するよ!」
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『....................。』
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「索敵班?おーい!応答して?......ダメか。なんかあったのかな」
「........かばん。とても危険な、匂いがする。」
『.......!!オイ!!おめえら!!死にたくなかったらここから離れやがれ!!"奴"が来やがる!!オレと同様エデン様に置いてけぼりにされた仲間が斬られてる!!ちっ!!』
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「わおーん!作戦成功だって!やったね!逃げる準備しよう!」
「そうね......きゃっ!」
「タイリクオオカミ!?大丈夫!?」
「私は大丈夫だけど通信機が壊れて.......!ニホンオオカミ!!後ろ!!」
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「成功か!アイツらやったな!!あのデカブツを星に帰したんだな!」
「ナイスですね!私達はこのまま残党を倒しましょう!」
「オーダー、了解ですよ!」
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「エデンは星に帰ったみたい!!やったやった!!ダイアウルフさん、アムールトラさん!!ありがとう!!作戦成功だよ!」
同様に空に飛んでいる皆と祝福し合う。
「はっははは!!あたしにとってはあんなもの!!」
「うん。力になれて、良かった」
するとまたかばんから通信が入る。
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『こちらかばん!!.....こいつは.......!!ッ.............!!撤退したいけど後方の索敵班と連絡が取れない!!空にいる子の一部は索敵班の方に行って!!残りの子はこっちに!!それから.........ヒグマさん班とオオカミさん班はそのまま残党の討滅を続けて!!絶対にこっちに来ちゃダメだよ!!』
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『索敵班ハ.....ヒューゴ!何かあったのかな。それには私が行くよ。姉だから。」
「残りの子はこっちにって言ってたか?ならあたしらはかばんの方に向かうか。もちろんキュルル、お前もだぞ?」
空で笑いながら肩を組まれる。本当にダイアウルフさんは元気だ。しかし、かばんさんの切羽詰まった通信は心配だ。行かざるを得ない。
「なら、私とアクジキは索敵班の方へ向かうわね。みんな、グッドラック!」
アクジキを抱えているハクトウワシさんが言う。そのままボク達は別れて行動した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『ふんっ!ふんっ!!母さん!そっち!!』
「うぅっ!ヒューゴさん!!目を覚ましてください!!母さんは大事な人なんでしょう!?ヒューゴさん!!」
本気のサーバル、イエイヌと『ヒューゴ』、『キャサリン』の実力は同等だった。『ヒューゴ』は何者かに洗脳されてしまっていた。
「ヴ~~~~~ッ........!!!みゃあああああ!!!!」
ガァンッ!!!
サーバルの自慢の爪は『キャサリン』の持つフライパンに弾き返された。高い木々を伝い、攻防戦が繰り広げられる。
『そこだっ!!!!』
弾かれた瞬間『キャサリン』がそのままフライパンでサーバルの身体を吹き飛ばす。
「み"ゃあああああッ!!」
数メートル吹っ飛び、サーバルが木から落下する。
そして、イエイヌが木から木へと飛び移る瞬間、ヒューゴの腕が巨大なコンセントのように変形しイエイヌの身体に突き刺さった。
「ぐっ.......!!!」
『キミの輝き!!貰うよッ!』
「うっ.....ぐぅ......!!!やめてください!!ヒューゴさん!!やめ.......!!!」
「待ちなさい!!」
その時、ヒューゴの後ろから閃光を瞬かせ、ハクトウワシから降りてセルリウム性のジェットエンジンで滑空飛行するアクジキが飛んできた。そのままアクジキが右腕でヒューゴの胸を背後から貫く。
..........ドズッッッ!!!
『がはっ........あっ........姉......ちゃん.......あり.......がとう........」
ヒューゴはそのまま宙に上げられる。
「.......ヒューゴ。お前がそんな事する子だなんて思わなかった。何か事情があるの?」
「......ワーオ.....自分の弟にも容赦ないわね.......」
ハクトウワシが思わず声を漏らす。
「ぼくは........かはっ.......変な子に......耳に......指を入れられてそのまま.......多分.......洗脳されて.........気付いたらこうなってて........目を覚まさせてくれて.......ありがとう........」
「はぁ......はぁ......本当です!アクジキさん!さっきフォッサさんが急に現れて、ヒューゴさんの耳に指を入れたんです!そしたらヒューゴさんがいきなり.......」
アクジキは思い出した。『エデン』はそう言えば、この地に来て侵略するつもりだったが何者かに洗脳されて『ヴィズルナーラ』と戦わされていた。もしかすると。
「みゃあ......そうだよアクジキちゃん!ヒューゴちゃんは多分、操られてたんだと思う!目が変になってたもん!今は普通だけど!」
アクジキはズボリと腕を抜く。
「ヒューゴ。あんたならそれぐらい治るよね?キュルルから聞いたけど頭無くなっても回復したんでしょ?通信機貸して」
「だい.......じょうぶ.......。これくらいは.......」
アクジキがヒューゴの腕を取り通信機にアクセスする。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『こちらアクジキ。索敵班のヒューゴが何者かに洗脳されてイエイヌ、サーバル、ヒューゴが負傷。だけど、目を覚ました。鳥の子達に研究所に連れていってもらうのが良いと思う。』
「........こちら、かばん。.....................博士、助手、アリツさん。アクジキの指示通り、負傷した索敵班を連れて研究所まで逃げて....................。その際、周りにいるセルリアンを片付けるフレンズが少し来てくれると嬉しいな.......。あと、アクジキはこっちに来て。」
『.................................。』
_____________________現れたのは。
『ちっ.........!!思ったより早かったか!こうなったら奴の"層"からは逃げられねえ。お前ら協力しろ。でねえと俺らは全滅だ。エデン様が帰っちまったせいで俺は再生出来ねえから後もねぇ。』
少し青みがかった真っ白の身体に、真っ黒の腰まである髪。四本の腕に、短剣、円盤、花、法螺貝を持っている。腕や身体中には、虹色の模様が走っているセルリアン。大きさは160cm程の男性的な人型。私とあまり変わらない体長だった。......."袈裟"?に近いものを着ているように見える。
何故、このタイミングで現れた。とかばんは思った。
「..........どうする。倒すのか?アイツを?」
キングコブラさんが重たげに口を開く。その口ぶりは、倒せない事が前提のようだった。
「........かばんさん!キングコブラさん!!到着しました!!」
「大丈夫か!?何かあったのか!?」
「何か.....重苦しい雰囲気を感じる。なんだ、これは。なんなんだ。」
キュルルくん、ダイアウルフさん、アムールトラさんが到着した。
『続々と来たな.........。奴にとって人数不利なんてものは全く関係ないが、やはり多い方がいいか。.......行くぞ。奴の攻撃は全て避けろ。当たれば一撃で持っていかれる。』
『...................
『ヴィズルナーラ』は、目の前で臨戦態勢になっている者達を見詰めて、自分も準備した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「.......でも良かったです、ヒューゴさんが目を覚ましてくれて」
「.......そ、そうだよヒューゴちゃん!私達あんまり重症じゃなかったし、元気だして!」
「はは、元気だしなって!洗脳?されてたんでしょ?仕方ないよ!そんな時もあるよ!」
「....................本当に、申し訳ない.........。」
ヒューゴはアリツカゲラに。
サーバルは博士に。
イエイヌは助手に。
ジャイアントペンギンはハクトウワシに。
空に抱き抱えてもらい、研究所に向かっていた。
「いやーー......しかしキュルルっち、絶対私のその後考えてなかったな~.......。ま、作戦立てるの初めてだししゃーないか!」
ジャイアントペンギンは皆を発射させた後、自分が一人になった事に気付いた。そしてたまたまハクトウワシに発見され、こうして救助されたのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
数分後、研究所にて。
「むむ......むむむ.....むむむむむ.......!!!!」
「おやおや、どうしたんだい?」
張り詰めた火山が噴火するような勢いで、言葉が流れ出てくる。
「アライさんが空気のような気がするのだ!!ジャパリ・ギンザ襲撃の時アライさんはぐーすかぴーしていたのだ!!それにパークに『エデン』?が現れて!!明らかにパークの危機なのに!!アライさんがこうして研究所で待機してるのが信じられないのだ!!」
手をわなわなさせて、アライさんは言う。
「まあまあアライさーん。今はかばんさん達が『エデン』を退けてる所だからさー?気長に待とうよ~。きっと出番が来るって~」
研究所のドアがガラリと開き、アリツカゲラさんが入ってくる。おやおや、アリツさんは作戦に行ってたはずじゃなかったのかな。これは何かありそうだね~。
「皆さん!!エデンを退けるのは成功しました!!ですが、想定外のトラブルが発生したので何人かフレンズさんが来て欲しいとかばんさんが........!!」
気付けばアリツさんの目の前にアライさんが胸を張って立っている。やっぱりアライさんはすごいやー。
「アライさんが行くのだ!!もちろんフェネックも来てくれるのだ?」
「まあアライさんだけだと明後日の方向に全力疾走だもんね~。私も行くよ~。」
ザワつくフレンズの中で名乗りを上げたのが。
「ふっ。私達も行こう。頼みとあらば。」
「仕方ねー。そう言うなら行ってやんよ!」
「わ、私も着いていく!」
「あ、あなた達は.........」
..........一波乱ありそうな気がするね~。
日は少しずつ、暮れかけていた。
十二話に続く。
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