十話 邂逅・反復練習/『▅▅▅』
「あー......ホント......サーバルちゃんに看護してもらえるなんて......僕は幸せだなぁ......」
「みゃみゃっ!!私も久しぶりに長く喋れて嬉しいよ!かばんちゃん!」
かばんは全身に追った傷や骨折を治す為にベッドで安静にしている。横の椅子にサーバルが座り、話をしていた。襲撃事件の時に、サーバルは街ではなく研究所で戦っていた為傷は深くなかった。
「かばん。お前が一番傷が深いのです。ゆっくり治すですよ。」
助手がドアを開ける。フルーツバスケットを持ってきたのだ。
「あ~~~.......ありがと~~~~.......。ミミちゃん、助かるよ~~~.........。」
「.......しかし、キュルルやアクジキに聞いたのです。かばん、お前というフレンズは.....!!」
ミミちゃんがフルーツバスケットを荒々しく置いた。まずい、怒ってる。
「自爆を図ったですと!?ふざけんななのですよ!!かばん!お前はいつも.....!!もっと自分を大事にするのです!!お前が居なくなったら......私は.......!!」
ミミちゃん助手が手を握り、ポロポロと泣き始める。
「こんな.......傷で、済んだからいいものの!おまえが、消えたら......沢山のフレンズがかなひむのです!!それに!!わらひが悲しいのです!!」
ミミちゃんが涙を流して、発音もままならないまま訴えかける。
「........。そうなの?かばんちゃん。自爆って......敵と一緒に倒れるって事だよね?」
サーバルちゃんが悲しそうな目で僕を見る。
「........ごめん。サーバルちゃん。ミミちゃん。」
「........怖かったんだ......。自分が倒される事よりも、皆が、このパークがセルリアンの恐怖に陥れられる事の方が。」
「........だから。許して、とは言わないけど.......。もう、こんな無茶はしない......。皆を悲しませたくないから.......」
場にそぐわず、窓からは気持ちの良い光が射し込んでいた。
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イエイヌさんは重症を負っていた。襲撃事件に最初から居て、尚且つイエイヌさんの性格だ。張り切り過ぎてくれたのだろう。
.......元はと言えば、ヒューゴに拉致されたボクを助けに来てくれたのはイエイヌさんだ。襲撃事件がショッキングで時間が無かったが、礼を言わなくては。
「アクジキさんは、どうしてこのパークに来たんですか!?」
イエイヌさんがベッドで横になりながらアクジキに尋ねる。久々にヒト........ヒト?と、会えたから嬉しいんだろう。厳密に言うならセルリロイドだが。
「.....どうだったっけ.....千年以上昔の事で......うーん......。あ、そうだ。確か、父さんがここの職員で、それに着いていく形だったはず。父さんの事は忘れちゃったけど」
今は、アクジキが「ジャパリ・ギンザ襲撃事件」についてのレポートを、かばんさんが重症の為代わりに書いている。
「......キュルル。キミは死亡したけど女王により生き返ったって扱いでいい?」
「......正しくそんな感じかな。あの人には感謝してもしきれないよ.......。」
「分かった。もうすぐ書き終わる。書き終わったら、少し話そう。」
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キュルルとアクジキは、二人で近くの湖畔にあるベンチに座っていた。日が高くて風が気持ちいい。アクジキが口を開いた。
「......『エデン』はセルリアンというよりも、セルリアンを生み出し続ける施設のような存在に近い。」
「うん......確かに、アイツが動くのは想像しづらい。」
今も遠く離れた場所からも見える全く動かない『エデン』を見る。
「代わりに。誰が呼び始めたのか『S級のセルリアン達』、もとい『エデンの使徒』を無尽蔵に生み出す。状況を整理すると」
「今この星では『ヴィズルナーラ』VS『エデン』となっている。だけど『エデン』は『ヴィズルナーラ』に勝てず、自身のパワーアップの為に私達の輝きを狙った。」
「それがあの襲撃事件。『エデン』を放置しておけば、またあんな事件が起きる。そもそも『エデン』と『ヴィズルナーラ』が争う理由は.........」
それは確かに疑問だった。何故同じ生命体で争うのだろうか。
「......『ヴィズルナーラ』もまた、別の星から来たから。私が先程見た記憶の中に、太古の昔の研究員のものがあった。『エデン』の末端が隕石として飛来した時の事。その『エデンの使徒』を解析している研究員の記憶。」
「『エデン』は宇宙に住んでるけどちゃんとセルリアンだそうだ。だが、『ヴィズルナーラ』に関してはセルリアンの性質を真似た別の何かだそうだ。」
「ジャパリパークから人類が消え去ろうとしている崩壊間際に突如現れ、『ヴィズルナーラ』は鏖殺の限りを尽くした。"セルリアン"を主に。だがヒトやフレンズへの被害もゼロでは無かった。ただでさえ命を奪うセルリアンなんて少ないというのに......」
アクジキが悔しそうに言う。
「斬られたセルリアンに付着している成分を研究していると、『ヴィズルナーラ』はセルリアンとは別の存在である事が分かったらしい。『エデン』が"何者か"に洗脳されてるのもあるけど、それで『ヴィズルナーラ』と争ってる。」
思わず口を開く。
「迷惑な話だよね......両者とも元はこの星を侵略するために来たんでしょ?『エデン』に関しては勝てないからってボクらを狙うなんて.......」
「.......厳密に言うと『ヴィズルナーラ』がこの星に来た目的は分からない。奴に関する記憶は、奴の深層に入り込めた者が居ない為に、どこにも無かった。」
「その気になれば、奴ならこの星の生命を根絶やしにして侵略するのは簡単なはず。だけどそれをしない。」
「つまり?」
「優先度的に言うなら『エデン』を先に倒すべき。奴は確実に私達を狙っている。」
アクジキの長い髪が風に揺られてサラサラとなびいた。
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「いててて......こんな状態じゃ、漫画も描けそうにないね......」
タイリクオオカミがろっじのベッドで寝ていた。横にはアミメキリンとニホンオオカミが居た。
「安静にしてください先生!私があ~んしましょうか!?」
「そうだよ!わおーんと治そ!タイリクオオカミ!」
「情けない......私が、こんな、事に......うぅ.....おなかが痛い.......」
ゴリラが同ジャパリろっじのベッドで寝ていた。横にはヒョウ達とワニ達が居た。
「お、親分はいっぱい戦ってたからやん!そんな落ち込まんとってや!」
「そうだよ親分!親分が来てくれなかったら私達は今頃........!」
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とある洞穴。
「アフリカニシキヘビ。大丈夫か」
「うぅ~~~ん.....なんとかね.......キングコブラが傍に居てくれたらきっと早く治るわぁ......」
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温泉施設。
「ぎ、ギンギツネ、大丈夫?ボク、何か出来ること、ある?」
「大丈夫よキタキツネ。アナタは傍にいるだけで嬉しいもの」
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「あのセルリアン達は強力だったね.......」
「私達がこんな目に遭うくらいにはね......もうセルリアンなんてコリゴリよ!」
チーターとプロングホーンは研究所のベッドに並んで寝ていた。
「だっ.....だから結界が壊れた時に負傷した子を連れて逃げようって言ったじゃないか.....」
「何を!アンタあの時既にボロボロだったじゃないの!逃げられる訳ないでしょ!?」
「そ、それはチーターを庇って......!」
「あっそ!私が悪いってわけね!ふんっ!」
「ち、チーター......そうじゃなくて.......そ、そういえばチーターが倒れた時、私になんて言おうとしてたの?『.......プロングホーン、す.........』で終わってたけど」
「......忘れなさい」
「え?」
「それは忘れなさいって言ってるの!!アンタなんて何とも思ってないんだから!!」
「えええええ!?」
~~~~~~~~数日後~~~~~~~~~
「戻ってきたね......」
「うん。やっぱり今見ても悲惨な状態。」
アクジキとキュルルはジャパリ・ギンザに戻ってきていた。弟であるヒューゴに会うためだ。
「ホントにここのホテルの一室にヒューゴが居るの?」
「うん。居るはず」
二人は街を歩く。街には戦火の爪痕が深く刻まれていた。
「この、高級そうなホテルで.......前は会ったよ。」
以前ヒューゴがここに居ると言っていたホテルに着く。少し外観が傷付いている。
「こんな所にヒューゴが.......キュルルはどうしてここを?」
「えっと.......うーん。ヒューゴに拉致されて......。」
「.......キュルルはよく拉致されて大変だね。」
「最初にボクを拉致したのはキミだけどね!?ヴィルヘルム家の人間は拉致しないと気が済まないのかな!?!?」
「......そういえば、アクジキ。キミも本名があるはずでしょ?なんて言うの?何・ヴィルヘルム?」
以前『キャサリン』と戦ったフロントを歩く。
「......『ヴィズルナーラ』に奪われて、自分の名前は忘れてしまった。ちなみに言う機会がなかったけど________________」
エレベーターを呼び戻すボタンを押す。
「____________キュルル。キミとはずっと昔、私がまだ人間だった頃。友達だったはず。」
「____________え?」
エレベーターの扉が開く。
「_________いや、忘れて。そんな記憶も全て、『ヴィズルナーラ』に奪われてしまったから。」
「......ごめんね。ボクも、全く分からない。」
エレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押す。ゴゴゴと音を立て、エレベーターが上がっていく。
「.......私はね。もう何も覚えていないんだ。父さんも母さんも、他の家族の事も親戚も、何人居たかすら。」
「千年以上生きて本当に忘れてしまった記憶と、ヴィズルナーラに奪われた記憶。それをすり抜けた、唯一覚えている家族がヒューゴなんだ。あの子は本当に凄い子だった。サッカーが上手くて、頭も良かった。優しくてカッコよくて、非の打ち所がない子だった。」
アクジキが下を向きながら、嬉しそうに微笑む。
「.........。」
段々と階が上がっていく。
確かに、人間だったのにいきなり未知の生物のセルリアンとして再度生まれて、急にああやって戦えるのは異常な運動神経と学習能力と言わざるを得ない。
「ヒューゴはキュルルみたいに人類として再現されてたの?」
「い、いや......言いづらいんだけどセルリアンとして。でも、ヒューゴは人間と変わらない普通の子だったよ。ボクと一緒にセルリアンと戦ってくれたし」
子気味よく音を立て、最上階に到達する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「これは.......。キュルルくんともう一人。フレンズさんじゃない......キュルルくんと似た性質を感じる。誰だ?キュルルくんの言ってたかばんさん?」
『............。ー.........。.....シャ..........』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ここの部屋。」
キュルルは、以前招かれた部屋に訪れた。ノックをする。
「ひゅ、ヒューゴ?居る?遊びに来たよ~」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぐっうっ.....!なんとか動けるようになったね........」
「いや~かばんも元気出してね?ラッキーな事に『エデン』の被害はここ数日確認されてないけど、いつ動くか分かんないからね~」
ジャイアントペンギンがかばんのお見舞いに来ていた。
「そうだね......ぐっ!あ~~......キュルル君やアクジキが羨ましいや......傷の治りが.....」
「そいえば、キュルルっちはどこ行ったの?今は旅止めてこの研究所に住んでんだよね?」
「キュルルくんはアクジキの所に一旦預けたよ。アクジキは信用出来る。セルリロイドとしての修行をつけてもらってるよ」
「なぁるほどねぇ~。で、例の作戦はかばんが完治したらやるんだっけ?」
「うん。『エデンの使徒』達に妨害されることが予想されるからね。その時は監督頼むよ!ジャイアントペンギンさん!」
「はっは~~~任せなって!!『エデン』にでっっかいパチンコ見せてやっから~!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
_______________ガチャリ、と扉が開いた。
「やあ、久しぶりだねキュルルくん!待っ..........」
いつもお喋りなヒューゴが固まった。
「あっ、えっと........つ、連れてきた。」
アクジキは........泣きそうになっている。どうやら本人に間違い無かったようだ。
「..................ヒューゴ..............。」
「えっ、っっ、と..............あえっ.......と。ね、姉ちゃんだったっけ........?............名前は思い出せないけど..........えと、今、何年?そういえばここ何年後?」
あのヒューゴが思いっ切り動揺している。アクジキは完全に泣いていた。
「.........ああ......そ、そう......だよ.......!!ヒューゴ!!!会いたかったよぉ!!!ずっと会いたかったよ!!ヒューゴぉ......!!」
アクジキが身長差のあるヒューゴを抱き締める。左腕から触腕が出て優しくヒューゴを包んだ。感情が揺さぶられたのだろうか。
「ちょ、ちょっと姉ちゃん......キュルルくんが見てるよ.....」
ヒューゴが苦笑いする。
「......どうでもいい!!ヒューゴ!!覚えてる!?私の事!?会えて嬉しい!!ヒューゴ!!セルリアンでもなンデモ.....ウウ.....』
こ、興奮しすぎて仮面が出てる.....。でも、ボクもカラカルとまた会えたらきっと、こうなるのだろう。
......数千年越しに再会出来たみたいで良かった、本当に。
~~~~~~~~数日後~~~~~~~~~
『ドール!右のセルリアンbeatでよろしく!』『マイルカとミーア先生はactionで!』『待機するよ~~~ぐーー......一休み.......』『待機するわね!』
「.............。」
ボクは今かばんさんの研究所で、かつての探検隊の活動を記録したものを見て勉強している。
すごい。探検隊の映像をもう何本も見てるけど、特に二代目隊長の、ヒトの隊長さん。格が違う。ボクも大体セルリアンの性格/相性が分かってきたが、この人はオーダーを本当に外さない。もしこの隊長さんがジャパリ・ギンザの時に居たならば、あの数を一掃していたかもしれない。
二代目の探検隊の初期メンバーはドールさん、ミーアキャットさん、サバンナシマウマさん。その時に撮られた写真は今も残っている。少し緊張気味にドールさんの横ではにかむ、おさげ髪の隊長さんだ。
時代に抜けがあるものの、初代から九十九代まで探検隊の写真がある。隊長さんが変わり、探検隊を結成すると代替わりということで写真を撮るそうだ。でも、九十九代でパークからヒトが退去。探検隊はそのまま無くなったそうだ。
「.......何を見てるの?」
アクジキが右肩の後ろの方からにゅっと現れる。思わずビデオを一時停止する。
「ああ、アクジキか。探検隊のビデオだよ。隊長になるために勉強してる」
「流石はキュルルくん、勉強を常に絶やさない。素晴らしいね」
ヒューゴが反対側の肩から現れる。
「探検隊?......もしかしてジャパリパーク保安調査隊のこと?」
「えっ?なんでアクジキが知ってるの?......って、そうか、キミはその時代から生きてたのか」
「うん。写真はある?」
「ここに.......。」
傍にあった分厚い写真集を手に取る。中には、時代順に探検隊結成時の写真が並べられている。
「......この子、知ってる。私がまだ人間だった頃に見た。他は知らないな。」
アクジキが九十九代目の隊長さんの写真を指差す。.......詳しくは写真が古ぼけていて分からないが、けもの耳が生えてる様から九十九代目の隊長さんはどうやらフレンズのようだ。
「.....そういえば今更なんだけど........姉ちゃん今何歳なの?姉ちゃんの名前も昔の見た目も忘れちゃったけど、あの時から随分成長した感じがするね...........」
ヒューゴが問う。
「......うーん......百年過ぎた辺りから数えるの辞めたけど、千年以上は確実に生きてる。もう立派なおばあちゃんだよ。でも私は半分セルリアンだから老化が遅いんだろうね。」
そう言うアクジキの見た目はどう見てもかばんさんより歳下の、まだ"少女"と言っても差し支えない歳に見えた。......多分、これかばんさんに言ったら怒られるな。
「アクジキはどうしてセルリロイドになったの?なんかこう.......セルリロイドの実験台にされたとかで!?」
「......アニメの見すぎ.......。詳しい事はヴィズルナーラに奪われたか普通に忘れたかで覚えてないけど、なった時の事は覚えてる。」
「その時の私は必死にセルリアンから逃げてた。助けてくれる大人もフレンズも、誰も居なかった。皆同様に逃げていたから。」
「私はとある研究施設の一室に逃げ込んだ。その研究施設の場所は今でも覚えてるけど、本当は一般人立ち入り禁止だった。」
アクジキが話し始める。
「暗い部屋に息を潜めてセルリアンが前を通り過ぎるのを待った。でも......セルリアンは私を見つけて袋小路の部屋の中に入ってきた。」
ちょうど、僕やイエイヌさん達が『リサ』から隠れた時のような感じかもしれない。
「私は泣きながら後ずさった。すると手にセルリロイド注射器が当たった。小さかった私が何故セルリロイド注射器を知ってたのかは覚えてないけど、そこはセルリロイド研究施設の支部だったんだ。」
「そのまま半狂乱になりながら、自分に注射器を刺した。.......そして、追ってきてたセルリアンを倒した。その時パニックになっていた私は父さんの言葉を思い出して、セルリアンを食べた。」
「......私は小さい頃イヌに噛まれて以来、動物が怖かった。でも、父さんの事情でここに来て動物が好きになった。......だからこそ.........お肉を食べたくなかった。」
「......父さんの事は覚えてないけど、その言葉は覚えてる。『生きる事は汚れる事だ。』私達はそういった摂理の上で生きてるって。私はセルリアンに勝った。だから食べようって思った。そしたら、色んなものを奪われた時のフレンズ達の映像が流れ込んできたんだ。そいつがかつて奪っていたもの。」
「......それが許せなくて。セルリアンを食い散らかしてやろう、と思った。......確か、他に何か目的があったはずなんだけど......それはヴィズルナーラに奪われてしまった。」
「.......覚えてるのはそこまで。別に実験台にされたとかそんなのではないよ。」
「......そっか。」
ボクは写真集を閉じた。
~~~~~~~~数日後~~~~~~~~~
「いやー.......まさか本当に女の子の姿になった動物さん達が居るなんて。驚きだよ。」
「そっか。ヒューゴは初めてフレンズを見るもんね。可愛い子ばっかりだよね。推しとかいるの?」
ヒューゴは、キュルルと草原に向かっていた。
「僕の推しはキュルルくんだけだよ。ふふ」
アクジキの話によると、ヴィルヘルム家はヒューゴが亡くなった後にジャパリパークに移住したそうだから、ヒューゴはフレンズを見るのは初めてなのだ。
「着いたね。はじめよっか。」
キュルルは、以前ジャパリ・ギンザで発動した『黒王形態』を意図的に出せるように日々練習していた。実母さんと時々繋がる時があるのだが、意味深なことを言ってすぐ消えてしまうのだ。
「..........女王。実母さん。実母さん。力を貸してください。近々『エデン』を倒す予定なのです。」
「......ッ!!!!」
全身に力を込めるが、発現しない。あの時以降『黒王形態』になれたことはない。女王である実母さんの力だから当然と言えば当然なのだが.......。あの力を使えればかなり戦力になれるのに......。
「.......ダメかぁー.......。うーん、じゃあ次は。」
『ファニー・ボンバー』の『地獄へ道連れ』を防いだ時の"女王のバリア"。これは何度も成功した。
「...ッ!!『女王のバリア』!!こうか!!よし!!ヒューゴ、攻撃して!!」
ボクの周りには透明で虹色のバリアが張られる。足元からは黒いセルリウムがほとばしっている。
「行くよ!!キュルルくん!!」
『キャサリン』とヒューゴは二人で『女王のバリア』に攻撃する。鋭い金属音が鳴り響く。
ガンッ!!ギンッ!!バァンっ!!
「ぐっ....うう!!」
10秒。20秒。経過する。もう、限界だ。
「あああ!!もう無理だ!!....ヒューゴ、何秒!?」
「36秒!確かに長くなってる!」
『女王のバリア』の継続時間を、反復練習によって長めようとしていたのだ。初めは10秒も持たなかったが、練習を初めて一週間。成果は出ているようだ。
「おっと、キュルルくん。僕から見て右斜め58mに同種の気配がする。セルリアンだね。まっすぐこっちに向かってくる。」
「すごいなぁ、ヒューゴの索敵能力は。ボク全く分からなかったや。」
「.......お出ましだね。そこまで強くはなさそうだ」
掃除機のような形をした僕らと同じくらいの大きさのセルリアンが現れた。
「じゃ、倒そうか」
「うんッ!!」
~~~~~~~数日後~~~~~~~~~
『エデン』討伐作戦実行日。かばんさんや皆は完治していた。沢山のフレンズが集まっていた。みんな覚悟を決めた顔をしている。前に立つのはボクだ。
「......行きましょう。作戦、開始です!!」
「「「「「おーーーーーー!!」」」」」
『あ、あな、あなた、おおよげまして?、そ、そらはと、ととととべるんですの??じぃーーーーっ。そ、そそそさのまままっまままっすぐいけ!』
十一話に続く。
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