九話 朝焼けに立つ/『黒王』

「.........ここは............。」


キュルルは『モノ』の殴打の出血多量により心臓が停止、そのまま命を失った。暗く、どこまでも広い空間_________。気付けばそこに居た。


「........地獄でも、天国でもない。ここは確か、僕が初めてセルリロイド注射を打った時の______________!!!!!」


『我ガ子ヨ』


やはり。


『愛シキ 我ガ子ヨ』


「セルリアンの女王........!!」


「我ガ子ヨ オ前ハ 負ケル コノ地ノ 記憶ヘト 還ル。モハヤ未来ハ 無ク。哀レナ。」


「ボクは人間だ。我が子呼ばわりしないでよ.......もう、寝るところなんだから。もうすぐできっとカラカルに会えるんだよ。」


「......オ前ガココデ 倒レレバ コノ星ハ エデンニヨッテ 枯レ果テル。ソシテ ソノ エデンモ 斬リ捨テラレル。均衡者ノ 手二ヨッテ。」


「......うるさいなあ!!だって勝てるわけないじゃないか!!かばんさんもアクジキもオイナリサマも皆もやられた!!もううんざりなんだよ......。セルリロイドとか、セルリアンとか、エデンとか。ボクはもう寝たいんだよ。思い出してよ、ボクはただの人間だ!フレンズさんほど強くもなく、セルリアンのように冷酷でもない、!!」


地面を拳で叩き、キュルルは嘆く。


「ソレハ オ前ノ 本心デハナイ オ前ハ カバンヲ 助ケタイト 思ッテイル。」


「.......でもボクは、もう死んだ。.......あんたがボクの母さんだとしても、ボクを生き返らせる事なんて出来やしないでしょ?」


「哀レナ 我ガ子 コッチ二 オイデ。オカエリ。オカエリ。」


女王が座り、キュルルと目線を合わせる。手を広げて手招きをする。


「.......もう.......どうでもいいや。ただいま、母さん。」


キュルルが女王の胸に飛び込んだその時、再び星の記憶が流れ込んできた。そこには、何故か正体不明の見た事も無いと戦っている『モノ』と、『モノ』と共に戦う先程のS級セルリアン達の姿が見えた。


夢惨劇むざんげき。』『あがッ......!!くっそ!!てめぇ!!斬りやがったな!!』『鵜像霧像うぞうむぞう。』『ちっ......どれが本体だ。全部本体か。お前ら!!光線と鏡に注意しろ!!』『乱光華らんこうげ。』『くっ!光線だ!てめぇら避けろ!!』『幻誤楼げんごろう。』『鏡が.....ッ!!ぐっ!!あああああああ!!』


状況はさっぱり分からないが驚愕した。ボクの命を奪った『モノ』や、その他強力なセルリアン達が纏めて倒されていた。たった一体の正体不明のによって。


「.......オ前ハ 我ガ子。ソシテ 次期ノ『黒王』。ヒトト フレンズト 同調スル事ヲ選ンダ 黒ノ 我ガ子。ココデ 倒レテハ ヒトモ フレンズモ セルリアンモ 尽ク...........。」


女王は、キュルルをぎゅっと抱き締めた。そして、耳元に口を近づけ冷ややかに言った。


『三分。身体ヲ貸セ。』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『モノ』は振り返った。そこには、朝焼けをバックに、先程のキュルルが息を吹き返しているではないか。しかも_______________


『.............。』


キュルルの持つ、白紙のスケッチブックのような色の触腕ではなく。真っ黒の触腕が身体から出ており、肌の色まで黒いセルリウムに染まっている。髪は白色に変色し、虹色の角が生えている。そして何より。セルリアンと同様に少し宙に浮いている。


『(くっ......何故だ.......こんな小さなガキに圧倒されるのは.....!しかし、よく分かんねぇ力を付けたとはいえ小僧は小僧。それに生き返ったばかり......!!)』


『もう一度吹っ飛べ!!ガキィイイイ!!』


『モノ』は両腕から生えた四本の手槌を大きく振りかぶって、『キュルル』に突撃した。


.......ばぁあんッ!!!!


『身ノ程ヲ 知レ。』


『がッ......!!あ、あが......!!!つ、槌が......!!!!』


結果、『黒王』のデコピンによって。四本の手槌は簡単に破壊された。千本鳥威でさえ破壊出来なかった槌を。


丁度、アクジキが目を覚ました。


「(......か、かばんは......どうなって.....。............え。何、アイツは。)」



『我ハ黒王。命ズ_________』


「ダイアウルフ、これは......!?」


「セルリアン達が.......!!あいつに.....!!」


セルリアン達は、まるでイタズラが見つかった時の子供のように皆、下を向いていた。


【_____________"静止セヨ"。】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「な、なんや......セルリアン達が急に止まったで!ピタリと!!」


「こ、これは......?ついに我の"オーラ"が.....!?」


裏山に居た増援のセルリアンと。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「(と、止まっ......てる。あの、セルリアン達が!中にはS級も残ってるのに.....!アイツは......まさか....?)」


街に残っていたセルリアン。"全て"の動きが停止していた。


『(.......う、動けねぇ.......!!動いたら.....!!なんだ、この恐怖は........!!?)』


『黒王』は、再び口を開いた。


【________________"同調セヨ"。】


「せ、セルリアン達が.......!!」


S級は基本的に皆紫色だが、その他はそうではない。街に残っていたセルリアンが、S級やその他問わず、『モノ』を除き全て。


黒く変色し始めた。


その時、裏山からセルリアンの大群が現れた。しかし、皆。........黒に染まっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「待つのです!!」


「追うですよ!!」


目の前の自分達を無視し、いきなり黒く変色したセルリアン達は皆、狂ったように街に降りていく。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『お、オイ!!やめろ!!てめぇら!!!目を覚ましやがれ!!オイ!!やめ!!やめろおおおおおおおおおお.......!!!!』


裏山から来たセルリアン達も、街に残っていたセルリアンも、フレンズには目も暮れず一心に『モノ』を攻撃した。


『モノ』とはいえ、残っていた400体近くのセルリアンに総攻撃されれば塵も残らず。セルリウムの塊へと還っていった。


セルリアン達が、あくまで視線は下にしながら、ひれ伏すように『黒王』の方へ向く。


【_________________"絶望セヨ"。】


『黒王』は街に所狭しと集まったセルリアン達へ向けて両腕を上げた。


「あっ!アレ!!えっっ!?アレは!?!?」

裏山から降りてきたニホンオオカミが叫ぶ。


「女王........に.........とっても似てるわね。」

続いてトキ。


_________するとセルリアン達の身体が皆、5m程宙に浮き上がった。そして、『黒王』は音を立てて手を合わせた。


『『『『『!!!!!!!』』』』』


バジュッ!!!バキャキャキャッ!!グヂャッぐぢゃぢゃ!!バギギギ.....!!!グヂャッ!!グギッ!!!


『『『『『!!、...!!◆>…◆』』』』』


.......セルリアン達が圧縮され"球体"になっていく。圧縮の際に出る汁や断末魔、セルリアンの独特の叫び声等が聞こえていた。


「うっ!!ううっ!!あ、アレはなんなのですか......!!恐ろしい......!!」


「き、気持ち悪いッス......!!セルリアン達が集められて球にされてるッス.......!!」


「あ、あるまーしゃん.......」


「セ、センちゃん!見ちゃダメだよ!!」


「ううっ......。この光景はなかなか.......」


裏山からセルリアン達を追って降りてきたフレンズ達が皆、セルリアンの球体が縮まっていく様子に独自のリアクションをしていたが、起こっていたのは一同に阿鼻叫喚だった。


.......やがて、400体居たセルリアン達が一つになった球体は直径5cmほどにまで小さくなった。コロリとその玉が地面に落下した。


『........三分。身体ハ返ス。オ前ヲ取リ込ンダ時ノ データヲ使イ 組織ノ修復モ 全テ終ワラセタ。』


「........もう........こんな大きい借りが出来ちゃったら、ボク今後、実母かあさんに逆らえないじゃないか.......」


『母ハ強シ。我ヲ母二持ッタ事ヲ 誇リ二 思ウガ良イ。』


「うん.......でも、ありがとう。そうだね。最強の実母さんを誇りに思う事にするよ。ボクは、セルリアンから産まれた忌み子なんかじゃない.........。」


黒く変色していた肌が戻っていく。生えていた角も消えてゆく。髪に、色が戻る。.......『黒王』から、「キュルル」に戻っていく。


「.........終わった。」


セルリアンの球体を手にした。オレンジ色の夜明けの光が街を包んでいた。






「うぐっ......!!あがっ.....!!」


『モノ』を倒した事により、かばんとアクジキに輝きが戻った。身体の傷は治らないが。


「か、かばん!動かないで!研究所まで連れてい.....がッ!!!」


アクジキがかばんに駆け寄ろうとするが、折れた肋骨や腕はやはり、数千年生きているセルリロイドにとっても厳しいものだった。そのままかばんの近くに倒れ伏す。


「......ひゅー......キミも満身創痍じゃない.....ていうか素顔、初めて見たけどキミ女の子だったんだ......。可愛らしい顔だね。お人形さんみたい。」


アクジキが顔を赤らめた。


「そこの......えっと、ヒトと!!かばん!!大丈夫か!!」


ダイアウルフが駆け寄ってくる。


「......うーんと?お前は誰だ?なんて呼べばいいんだ?」


ダイアウルフは、金色の髪をした見覚えのない少女に困惑していた。


「.......今は.......『アクジキ』.......。」


「ああああ!!すまんすまん!見覚えが無かったものでつい......しかしお前はセルリアンでは無かったのか?」


「やー.......ダイアちゃん。キミは本当に元気だね......。私もう死にかけだよ......」


「.......かばんさん!!!」


続いてキュルルが全速力で走ってくる。


「......あー!ちょっと待って!抱き締めたいけど今抱き締めたら私死ぬ!ストップ!」


きゅきゅきゅー!と音を立ててキュルルは急ブレーキを踏んだ。


「おお!坊主!.......私は見ていたぞ。お前、本当にセルリアンだったとはな。しかも強い。つがいに影響されたのか?」


ダイアウルフさんがニヤリとしながらボクに目線を合わせる。ちょっと。なんか誤解してるよ。


「ち、違いますって......!ヒューゴはつがいじゃないです!」



「.......えッッッッッ!?!?!?!?」


『アクジキ』が、倒れた身体を跳ね上がらせてボクの肩を引っつかむ。



「........今!!!ヒューゴって言った!?キュルル!!今ヒューゴって言った!?!?」


「い、言ったけど.........?な、何か.......?」


切羽詰まった様子で問い詰められる。何か地雷を踏んでしまったのだろうか。



「ヒューゴと会ったことがあるの!?今はどこにいる!?」


見た事も無い剣幕でまくし立てられる。


「ど、どこかは分からないけど......さっきまであっちの草原でボクと一緒にセルリアンを倒してた、よ........?ヒューゴの知り合い?」


『アクジキ』がボクから手を離す。ダイアウルフさんも、かばんさんも、ボクも皆アクジキを不思議そうに見る。



「........ヒューゴは............。」





「.......私の弟だ。ヒューゴ・ヴィルヘルム。でも.............。」



衝撃の事実が伝えられる。嘘だろう。ヒューゴがアクジキの.........弟?......しかし、金色の髪と、整った顔立ちは両者とも確かに似ている。



「.........ヒューゴは10歳の時に、死んだはず。母さんが運転する車に乗って、サッカースクールに行く途中だった。」


アクジキが、ぽとぽとと話し始める。皆が神妙な顔付きで見る。ヒューゴが、サッカースクールに行くまでの記憶しかなかったのは..........。


「.......対向車の大型トラックの居眠り運転で、母さんとヒューゴは即死した。千年以上も昔だけど、私もその日だけは忘れない。会いたいと願っても、会えなかった。」


「たい?たいこうしゃ.....?いねむり......?うーんと?」


かばんさんでさえ分からないワードが出てくる。もちろん僕も分からない。たいこうしゃってなんだ?


「........だから、だから......あの子と会いたい!!.......ヒューゴは今、何処にいる!?」


『アクジキ』は、泣いていた。


.......セルリアンを襲い、それを喰べる。フレンズすらも襲って食べ、姿を真似する、冷酷非道な人型セルリアン。


『アクジキ』は話に尾ひれが付き背びれが付き、フレンズの間ではこう語られる事が多かった。ボクでさえ、クールで感情を出す事が少ない、どちらかと言うとセルリアンに近いヒトだと思っていた。


でも........違った。


ここに居るのは、明らかに大事な人を失い、悲しみに嘆くヒトだった。


「「「おーーーい!!!」」」


裏山から降りてきていたフレンズ達が駆け寄ってくる。


「お前たち!よくやったのです!!ここに倒れているフレンズ達は私たちが安全な所まで運ぶです!」


博士がフレンズを引き連れてやってくる。セルリアンを全て倒し皆に輝きは戻ったものの、街には沢山のフレンズ達が戦闘不能になっていたのだ。


「.......そうだな。とりあえず私が『アクジキ』を運ぼう。ダイアウルフはかばんを運んでくれ。」


いつの間にかそばに居たキングコブラさんが言う。


「任せろ。かばん、大丈夫か?」


かばんさんの身体はダイアウルフさんにひょいとお姫様抱っこされる。


「うーんと......とりあえずフレンズさんにお姫様抱っこされて幸せ..................」


そう言いながらかばんさんは気絶した。相変わらず凄い人だ。かなりの重症なのにこれが言えるなんて。ダイアウルフさんはそのまま走り去っていった。


「.....あっ!えっと、アクジキ。後で絶対に教えるから。ヒューゴくんのこと!」


「.....キュルル!!今すぐ、今すぐ知りたい!!」


その時、ボクのポケットからコロリと何かが落ちた。


「あっ、セルリアン玉。」


何となくポケットに入れていた、さっき実母さんが握り潰したセルリアン達を圧縮した玉だ。


「.......!!!」


「あ、ちょ!暴れるな。傷が深まる!」


アクジキが血相を変え、キングコブラから離れる。そしてそのまま、セルリアン玉をぱくっと食べてしまう。


「あっ!!食べちゃった!?まあ、ボクがそれ持ってても意味ないから良いんだけど.....」


「......そうか、セルリアン達を潰した玉か。食べてしまったのか?お前はセルリアンを食べるからな、奴らは美味いのか?」


「............................................................。」


アクジキは、数秒間フリーズしていた。その間に、重症のアニマルガールを裏山から来たアニマルガールが次から次へと運んでいた。


「..........そうか。そう、だったのか。........キュルル。研究所に行く。来て。マズい事が起こり始めてる。」


「えっ?え??ちょっ!!」


アクジキはそのまま走り去っていった。傷は恐らく、セルリアン達の玉により回復したのだろう。


「.......行ってしまったな。」


もはや街にはボクとキングコブラさんしか残っていなかった。日はもう、高くなっていた。


「......そうですね。」


「......運んでやろうか?」


「......じゃあせっかくだから...お願いします..」


キュルルは女王の再生により無傷だったが、せっかくなのでキングコブラの背中におぶってもらった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「えー、はい、フレンズのみなさん。ここに居る美少女はあの噂の人型セルリアン『アクジキ』です。」


ざわざわ。


少しアクジキが顔を赤くする。


ジャパリ・ギンザの大戦後、フレンズ達が研究所に集められていた。その中でどうしてもアクジキが言いたいことがあるというのでかばんさんがこの場を設けたのだ。ボクも何故か集会の前、アクジキの横に立たされている。


「では『アクジキ』さん、どうぞ。」


かばんさんにマイクを持たされる『アクジキ』。緊張しているみたいだ。


「.......皆も知ってる通り、私はセルリアンを食べる。特異な性質なんだ。」


フレンズ達も、かばんさんも、皆驚いていた。そうか。アクジキ.......が、セルリアンを食べていたのはそんな理由があったのか。


「それと......私はフレンズに化けたりしないし、フレンズを襲ったこともない。.....の私がフレンズに話し掛けても怖がられるだけ。そう思ったから、私はセルリアンを狩り続けた。フレンズ達を出来るだけ守った。」


......フレンズ達が静まる。『アクジキ』に目の前で助けられたと証言するフレンズは、確かに一定数居た。


「......本題に入るけど、さっき私の横にいるキュルルが多数のセルリアンを握り潰して、球体にした。」


ギクッ。

えっ。アレはボクじゃなくて実母さんが.......


フレンズ達が今までにないほどざわめく。アレをしたのはキュルルだったのか、怖い、など。


「えっと!それ自体は問題じゃない!......その球を私がさっき食べた。......そしたら、セルリアン達の記憶が流れ込んできた。」


「でも、問題があった。それは今この地に降りてきてる『エデン』の事。アイツは"何者か"に洗脳されてる。"何者か"が何かは分からない。」


「その次に流れ込んできたのは、『モノ』の記憶だった。かばんですらも勝てなかった『モノ』。アイツは『エデン』に命令される形で、『とある』に何回も挑んでいた。で、何回も負けて殺されていた。同種同士で殺し合いをしてるんだ。」


女王と一つになった時に、ボクも確かにその記憶を見た。謎のバラバラに斬り捨てられる『モノ』や他のセルリアンの姿を。


「えっ!ちょっと待って!じゃあ私が戦った『モノ』は!?」


かばんさんが我慢出来ず発言する。


「.....『モノ』やその他のセルリアンは同じ星に居るなら『エデン』によって何回も再生するらしい。多分奴らは、今もどこかで再生してる。」


フレンズ達は明らかに絶望している。......S級のセルリアンが同一個体が複数居ないのは、そういう理由が.......。S級の紫色のセルリアン達は、全て『エデンの使徒』であり『エデン』だったのか。


「次に『エデン』が私達を襲う理由は、自身のパワーアップの為だ。そもそも彼らは元々宇宙に住んでいるが、この星に目をつけて侵略しようとした。今から何千年も昔、まずは自身の末端を隕石という形でこの地に落とした。」


「パークに元々居たS級達は落とされた末端から生まれた。で、今回は本格的に侵略しようとして『エデン』本体が来た。だけど、"何者か"に洗脳された。そして『とある』と同種争いをさせられ続けている。」


........あれ、おかしいな。ボクがセルリロイドになった研究施設に置いていた資料では確か「黒王に再現されたたった一人の人類を我が物にするために現れた」とか書いてたような。


かばんさんが口を開く。


「『エデン』は、その『とあるセルリアン』に何回挑んでも勝てなかったから、私達の輝きを狙ってパワーアップを図ってる.....ってこと?」


「その通り。アイツが"奴"と言っていたのはその『とあるセルリアン』の事。実は私もその『とあるセルリアン』と戦った事がある。......結果的に逃げきれたが、殺されかけた。記憶を大部分奪われた。そのせいで、自分が何をするべきだったか忘れてしまった。」


確かに、ボクがアクジキにセルリロイド修行をつけてもらった時に言っていた。インビジブル・リッパーと似た性質を持つ、あいつは仇だと。あのセルリアンの事か。思わず、口を開く。


「『とあるセルリアン』の名前は.............?」



フレンズ達がアクジキを見つめる。



「...............『ヴィズルナーラ』。私が知っている中で、間違いなく最強のセルリアン。そこで恐らく"何者か"はタイミング良く飛来した『エデン』を洗脳し、『エデン』VS『ヴィズルナーラ』の構図を作った。」


キュルルは、女王から流れてきた星の記憶の中で見た『ヴィズルナーラ』の姿を思い出した。


真っ白の中に少し青みがある男性の身体に、真っ黒で腰まである長い毛。手が四本あり、それぞれの手に短剣、円盤、法螺貝、花を持っているその姿を。女王と配色が逆転したような、その姿を。




『......ワ、ワレワレは、か、かかか賢いノデ。ちょ、チョット!道ノまんなか、まんなかでたち、どま、どまってるとあ、あぶ、あぶなたなないでしょうが!』



十話に続く。




























































































































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