八話 ジャパリ・ギンザ襲撃事件/『その三』
「.......くっそ!!ダメだ!!"槌"が硬い!!アクジキ、あれなんとかならない!?」
『ナッテタラ既二ヤッテル!!攻撃ヲ緩メナイデッ!!』
アクジキは様々な物を試した。『モノ』の腕の槌を切り落とす為に刃を。あるいは硬度勝負でハンマーを。爆弾に至るまで試した。
......だが、『モノ』の手槌は傷一つ付かないのだった。まさに攻守一体。最強の盾であり最強の槌だった。そもそも、体捌きのスピードもかばんと同等だった。
「ぬおおおおおおおッッ.....!!!!!」
『ふんっ!!フンッッ!!おおおおお!!』
相変わらずかばんと『モノ』は至近距離の打ち合いをし、かばんが離れた瞬間に『アクジキ』が触腕を叩き込む。
__________その時、だった。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!!
ジャパリ・ギンザから少し出た草原で、大爆発が起きた。何百メートルも離れたここまでも、吹っ飛ばされそうになるほどの爆風が伝わってきた。
『.......マジか。おいおいマジか。やられちまったか。』
『モノ』はセルリアン同士のネットワークにより、『ファニー・ボンバー』が死亡した事を知った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「(..............これで、いい...........。)」
ファニー・ボンバーの死亡時の大爆発の直前、キュルルに入っているセルリウムが死を予感し、この爆発を防ぐ手立てを"星の記憶"から探した。
______そして、キュルルに提示した。
『____________アンタのバリア、面白いわよねー。力比べにも採用されてるし』
『きめた。これをセーバリアとよぶ______』
カラカル。
脳と密接に繋がったセルリウムが生存本能により、いわゆる火事場の馬鹿力を発揮した。覗き見たセーバリアーの構造を一瞬で解析、過去から再現。それを咄嗟にキュルルの本能に送り込み、それを受け取ったキュルルは『"女王式"セーバリア』を発動したのだ。
キュルルの方も、眠っている女王の血が死の予感により叩き起こされ、バリアをより強固な物に本能的に進化させたのだ。
そして、ヒューゴがキュルルに駆け寄り、『キャサリン』が二人を守るように覆いかぶさった。
その間僅か、3.4秒。
コンマ零秒後に、爆弾は起爆した。
.......だが、『女王のバリア』は破られた。しかし、正面から受ければ即死する程の爆風や飛び散る固体のセルリウムの勢いを九割程は殺す事が出来た。『キャサリン』が二人に覆いかぶさっていたのもあり、キュルルは爆風の圧力により片方の耳の鼓膜が破れ、肋骨の骨折、その他全身に重症を負ったが、ヒューゴとキュルルは一命は取り留めた。
『キャサリン』は、右半身と顔面全て、それから左脚が消し飛んでいた_________。いくら『女王のバリア』により勢いが殺されたとはいえ、爆心地との距離はたったの1メートル。正面から貰えば影すら残らない程の爆発だったのだ。
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『むんッッッ!!!!』
「.......ぐあッッ!!!」
『カバンッ!!』
かばんが、吹き飛ばされる。
『.....しかし、本当にお前はやる。打ち合う拳が通常の耐久度をしているなら既にお前は粉々になっているはずだが、そうならない。』
『何故ならお前は、手槌と拳とが当たる瞬間、真正面から打ち合うように見えているがその実全て俺の手槌の勢いを受け流している。』
『モノ』の解説は正しかった。かばんはマトモに打ち合うフリをしながら、全神経を集中させ手槌を受け流して時間を稼いでいた。ここにいる全てのフレンズが逃げ終えれば、なあなあで戦火を鎮められると考えたのだ。
「......何を....言ってるんだか......。私は本気で戦ってる。.....なんて。ハッタリはもう通用しないか。」
『見れば分かる。お前は強者だが本気の出し方を知らない。何故なら70%の力でも解決出来てしまう事が殆どだから。そうだろう?』
『今も、俺を倒すよりも奴らを逃がす事を優先している。言葉上手のハッタリと、"人間的"な覚悟。お前の30%はそれが埋めている。』
かばんが、下を向く。
「......ああ、そうかもね。言われてみれば、そうだったかもしれないな。本気の出し方、いつしか忘れちゃったかもね........」
「......でもさ。久しぶりでね、怖いんだよ。本気を出す事自体がね。」
『......はっ。本気でも俺に叶わないかもしれないからか?』
かばんが上を向く。
「......ふっ。僕の本気は自分を制御できなくなるから!なんてカッコイイこと言えたら良かったけど、現実はお前の言う通りだよ!!僕はお前が怖くてたまらない!!」
「本気を出して負ける。本気を出さずに負ける。どっちも怖いよ!いいか、『モノ』!!僕はこれまでもこれからも、セルリアンが怖くない時はない!!」
「......記憶を奪って。大切なものを奪って。時には命さえ奪う!そんなお前達が怖くて仕方ないよ!!今日という最悪の日も、セルリアンに呑まれたあの日も、旧友がセルリアンに奪われたあの日も!!永く僕を苦しめ続けるんだ!!」
「.....だけど、そんな恐怖に怯えながら生きるのはもうごめんだ。お前のようなセルリアンがこのジャパリパークに足を着けて生きている事すら寒気がする。このまま戦火が鎮まっても、お前は沢山のフレンズさんを恐怖に陥れるんだろう。だからこそ______________
_______僕は、本気でいく。ガムシャラでも不細工でも、お前に一矢報いるよ。」
『_____________ビーストモード・獄獣。』
かばんの目と身体が、虹色の軌跡を描いた。......拳が、発火しているように"見える"。
周囲の大気を震わせる程の並々ならぬ覚悟。『モノ』も『アクジキ』も気圧された。
『(アレガ、本気ノカバン____。腕相撲ノ時ハ、ビーストモード、ドコロカ.......!?)』
『.......面白ぇ。今までは70%どころか、50%ありゃあいいとこだったか?』
《.....知ってる?ヒトは、セルリアンよりもヒトを殺めた数が多いんだよ。同種殺しの天才、それが僕達だ。お前らなんかより最悪で極悪で非道で邪悪で、かつて地球という争いが耐えない地獄の星の支配者だった獣の真の姿を見せてやる。》
かばんは『モノ』を睨みつけた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「......ヒューゴ......生きてる......?ボクはなんとか......」
キュルルがゆっくりと立ち上がりながらヒューゴの方を向く。
「......ヒューゴ!?ヒューゴ!?だ、大丈夫!?それは生きてるの!?」
「うん、なんとかね.......。つくづく僕は、人間じゃないみたいだ.......。多分こんな傷、数時間で治る。そんな気がする。母さんも同じだよ、心配しないで」
ヒューゴもキャサリンと同様に頭部と、下半身全てが無くなっていた。一体どこから発音しているんだと思いつつも、どこからも血は出ていなかった。ただ無くなっているだけ。
「.......本当はね、キュルルくん。分かってるんだ。"輝き"ってなんなのか。僕や母さんも多分、ここでキュルルくんとお喋りしてたらスグ治るんだと思う。僕が"ここに居たい"って、"キミと喋って楽しい"って、そう思うことは立派な輝きだから。」
ヒューゴが言葉を続ける。
「......でもね、これは未来予知。街の方がピンチだ。今、総大将同士が大喧嘩してる。で、キュルルくん側の総大将が負ける。」
「なっ......それはか、かばんさん!?そ、そんな.......まさか!かばんさんが?!」
キュルルがヒューゴの傍に膝を着く。
「......僕がここに元から居たのは、キミが吹き飛ばされて飛んでいく未来予知が見えていたからだよ......。僕の事はどうでもいい。キュルルくん、今すぐ街に向かうんだ。」
.......そうか。忘れがちだけどヒューゴはセルリアン。セルリアンは無時間を生きているそうだから、今も幾億通りの未来を見ているのかもしれない。
「.......分かった。身体中痛いけど、皆を助けなきゃ。」
キュルルはゆっくり立ち上がり、ヒューゴとキャサリンを木の幹に寄りかからせる。
「......うん。いっぱい暴れてきてね。それから、お母さんの言葉はしっかり聞くんだよ。母は強し。僕の母さんだってそうだ。」
「......?う、うん......?」
疑問に思いながらも、キュルルはその場を後にした。
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『ハッ!ハハッ!!ははっは!!まさか錬金術まで使い始めるとは!!"奴"には及ばねえがコイツはとんだバケモンだ!!お前の輝きは欲しいなァ!!』
《セルリウムの構造を僕が完璧に理解していれば、お前に触れるだけで勝てたんだけどね。まだまだ勉強不足だったみたいだ。》
かばんは手を打ち合わせて、錬金術によりアスファルトの地面を鋭い刃のように掘り起こした。それを『モノ』が避ける。
『倒スッ!!』
間髪入れずにアクジキが触腕とセル兵器化させた腕を入れる。しかし、それを"手槌"によって防がれる。
『おっとと!!甘いなァ!!』
そのままカウンターのように、アクジキは"手槌"による攻撃を正面から受けてしまう。防御した両腕の骨と肋骨が、音を立てて折れた。
『グアアッッッ!!!!』
《ここ......だッ!!!!》
"手槌"がアクジキを攻撃していた為、かばんの拳が、初めて『モノ』の腹にクリーンヒットする。
『がっ......ッ!!はあッ........!!!』
《ぶっ飛べぇえええええッッ!!!!》
......グググッ!!ばあぁあああぁん!!!
『グ........ヤッタ!!』
『モノ』の身体は吹き飛び、アスファルトの地面を水切りのように跳ねながらも、なんとか起き上がり体勢を立て直す。殴られた腹に少しヒビが入っている。
『......ッ......はっ、、しかし、お前本当に何故錬金術が使える?過去の文献でも読んだのか?』
《........驚かないでよ?》
『.......?』
それは、アクジキにとっても理解不能だった。いくら物理法則を無視するビーストモードのヒトのアニマルガールとはいえ、何故かばんが錬金術を使えるのか。しかも、この錬金術は、どこかで見たような。
手のひらを打ち合わせ、地面に付ける。
これは。私がまだ人間だった時代に見たアニメの____
《.......昔ね。....図書館を整理してた時に、遺されていた「鋼鉄の錬金術師」という古いアニメを見たんだよ。だから使えるのさ。》
『(.......!?ヤハリ!!ソンナ馬鹿ナ!!)』
『......は、はぁ!?なんだそりゃあ!?意味が分からねぇ!!全くもって道理が通ってねえだろうが!!』
「(よし。ハッタリは通った。私自身も何でこんな術が使えるのか分からないさ!だが信じさえしてくれればそれでいい.......!)」
かばんが中腰になり、腕を身体の少し横、手のひら同士に空間を開けて向かい合わせる。
『(.......コノ、構エハ........嘘.......ソンナ事マデ?本当二?)』
アクジキは、まだ人間だった時代、太古の昔に見たアニメの主人公の必殺技の構えをかばんに重ねて見ていた。
『......なんだその構えは。また何かやる気か。』
《見てれば分かるさ。この技はとても強力でね。ええっと、まず気合いを入れる!そして手のひら同士でエネルギーを反復させる!僕の場合はプラズムか!!》
《______________________________プ
_______________________ラ
_____________ズ
____厶________________________!!》
『.......これは......何か.......ッ!!』
かばんの身体が発光していく。少し空間のある手のひら同士の間から、虹色の光が漏れ出ていく。そこには光る、丸い球体があった。『モノ』の方に手のひらを向ける。逃げ場を失った強いプラズムは波動になり、エネルギーとなり、閃光を瞬かせながら『モノ』に突撃していく。
《__波ァーーーーーーーーッッッ!!!!》
『.......ぐおわッッッ.......!!!!』
『モノ』は咄嗟に"手槌"でガードする。頭部や上半身を主に。しかし、ガードするということは同時に視界が無くなる事を意味していた。
《......捕まえた。》
かめは......『プラズム波』はただの光るハッタリだったのだ。『モノ』がガードしているうちに、着ている黒い上着を脱ぎ『モノ』の頭部に被せ、自分もそこに覆いかぶさった。外から見ると肩車のような体勢だった。
『ぐあっ!!なッ!!!やめろ!!離れやがれ!!!ちくしょう!!アレはハッタリか、てめぇ!!』
《ははっ、こうやって頭に体ごと引っ付いちゃえばお前の手槌だって怖くないなあ。お前はヒトを再現している。だから弱点はきっと頭部だろう。手槌で守っていたのは常に頭部だった。》
『モノ』が、頭に身体ごと引っ付いているかばんを引き剥がすように暴れる。手が"槌"のようになっているせいで、かばんを引っ張ることも出来ない。外から見ていた『アクジキ』はその卑怯すぎる戦術に心底感動していた。
『ちくしょう!!やめろ!!頭から離れやがれ!!気持ち悪いぞお前!!』
《頭をぶっ飛ばせば良い。そうでしょ?だからね、君の顔にまとわりついてる僕の上着を既に........》
『モノ』は、無いはずの鳥肌が立つような、ぞわっとする気持ちを味わっていた。
《錬金術で爆弾に変えておいたよ。ああ、僕の身体でこうやって蓋しないと、君が離れちゃうでしょ?気持ち悪がらないでよ、ごめんね?》
『お、おいやめろ!!身体で蓋をしてるんならお前まで重症では済まんだろう!!やめろ!!やめておけ!!おい!!!』
『カ、カバン!!ヤメ......ガハッ!!』
上着の形をした爆弾が、揺れ始める。
《.......アクジキ、ごめんね。......キュルルくんの事はよろしく頼むね。フレンズさん達はみんな良い子だ。協力してあげて。.......あと、もし良ければ。"かばん"という、最高の名前を付けてもらえた、ヒトのアニマルガールがこの地に存在していたことも、覚えてて。そうすればきっと、また出会えるからさ。》
『オイ!!お前離れろ!!!!オイ........!!!』
《......じゃあね。キミとは短い時間だったけど。........元気で。........サーバルちゃん、ごめんね.......》
『かばーーーーーーーーーん!!!!!!」
刹那、『モノ』の頭部から大爆発が巻き起こる。
ドッ.......カァアアアアアアアアーン!!!!!!
_________爆風は、そこに居たもの全てを吹き飛ばした。『アクジキ』も、『モノ』も、ボロ切れのようになったかばんの身体も。
「(かば........ん........威力......つよ......すぎ.......)」
『アクジキ』は意識を失った。
「......_______________________。」
_________かばんは、安らかな顔をしていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「何だッ!!今の爆発は!!やばいっ!!急げ!!急げ!!」
キュルルは疾走する。もうじき明け始める夜に向かって。濃厚な死の匂いに向かって。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『はぁっ.....はぁっ.........!!ぐばぁッ......!!ぉがッ......!!』
かばんの予想通り、『モノ』は頭部が弱点だった。しかし、一つ誤算があった。
『.......げぼっ!がああ!!吹っ飛ばされた頭!!上半身を!!下半身のセルリウムを使って変換再生!!ぐっ!!このままお前の死体に残る輝きを.......!!!』
『モノ』は、まるで怪談てけてけのように上半身のみでゆっくりとかばんに近寄った。それを止められる者は居ない。
『はあああーーーー.......はああああーーーー......!!!はああ!?』
そのままかばんの身体に"槌"を置き、
『し、信じらんねぇ!!あんな事言っておきながらこいつまだ生きてやがる!!.......しかし頂くぞ!!お前の輝きをッッ!!』
まずは身体の再生が優先。かばんとアクジキの輝きを......................貪った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
街に着いたキュルルは、見てしまった。
「はぁッ......はぁッ.......はぁ.......!!!ッッッ.......!!!!!!!!」
「か.........かばんさんッ!!!!!!アクジキッッ!!!!!!!!」
『はは......小僧。今、全てが終わった所だ。』
かばんと、アクジキ。二人の輝きが吸収され、腕、もとい"手槌"が四本に進化している『モノ』を。完全に身体が完治し、2本の足で地面に立っている『モノ』を。
「あああああ!!!かばんさあああああああん!!!!!アクジキイイイイイイイ!!!『モノ』!!お前ふざけるなあああああああ!!!」
キュルルは叫んだ。
『今から、コイツらを始末する所だ。信じられないことにコイツらはまだ生きている。小僧、止めてみるか?』
言われるも前に、白い触腕を出し、飛びかかっていた。
『甘過ぎる。かばんと言ったか、コイツの一割にも満たない程の実力だなァ。』
オイナリサマの千本鳥威、かばんの大爆発でも壊れなかった"手槌"は、今や四本。もはや誰の目にもキュルルの勝ち目は無かった。
『吹っ飛べ!!』
「ぐああああッッッッッ!!!!!」
飛んでいる身体に二本の"手槌"が叩き込まれる。思わずセルリウムでガードしたが、それでも身体は吹き飛んだ。
地面に身体が着地すると、すぐさま飛びかかってくる『モノ』が見えた。横たわった身体に馬乗りにされてしまう。
『甘いんだよ!!お前は!!中途半端に俺らの力を取り込みやがって!!!それで自分が少しでも強くなったつもりだったか!?』
四本の手槌の攻撃がキュルルを襲う。咄嗟にセルリウムでガードする。
『酔いしれたよなァ!!その力に!!お前は自分の力を過信したんだよ!!だからこうして負ける!!自分が力を持ったとでも思っていたのか!?ええ!?』
左右の手槌で交互に殴られる。
「ぐっ!!ぐっっっ!!ぐぅッ!!!」
セルリウムガードが、もうーーーーーー。
バキャッ。
.......そして、キュルルの顔面に手槌がクリーンヒットした。もはや防ぐ事を忘れたキュルルの手が、びくんと跳ねる。
ゴブッ。
次に腹。
バキュッ。
次に顔。
ゴブッ。
次に腹。
.......既に頭蓋骨は複雑に破壊され、内臓の損傷は取り返しのつかないレベルにまで行っていた。肺に肋骨が突き刺さっていた。
『.......お前みたいな野郎が一番不愉快だ!!中途半端に力を付けただけですぐつけ上がるような野郎が!!付け焼き刃はホンモノに敵わねえンだ!!思い知りやがれ!!!!』
______なんだよ。やっぱ弱いじゃん、ボク。
______というか勝てるわけないよ。腕多すぎなんだよ。
______でもこれで_____終わるんだな______。
______カラカル、ごめんね。ボクは結局、弱いままだったよ。すぐ、そっちに行くから________その時は_________________
『.......消え失せろッッ!!!!』
.....バキャンッ........。
一際大きく振りかぶり、キュルルの顔面に"手槌"が叩き込まれた。
キュルルは、カラカルに再び会える事を願いながら意識と、生命を、手放した..............。
.......この地に産まれてから数えて、たったの10年という短い生命は、ここで事切れてしまった。
『.........やっと逝きやがったか。小僧が。.......さてと、かばんと.........それから、アクジキ?だったか?を始末するか。しかし、これで"奴"に勝てる可能性が少しは増えたか。』
セルリアンと戦っていた周りのフレンズ達にも、ジワジワと戦力差が現れてきていた。もはや残っていたのは_________。
「ふんっ!!!ダイアウルフ!!そっちだ!!」
「ああ任せろ!!キングコブラ!!」
『残っているのはたったの二人か。しかし奴らはかばんや"千本鳥威"の狐程ではないだろうが強力だ。少しは戦力の足しになるだろう______________』
ずざっ。
もはや戦いの喧騒は失われ、静寂すらも訪れていたこの地に、それは大きく響いた。
『(なんだ........。なぜ、俺の後ろから衣擦れ音がする。確かに、あの小僧は息の根を止めたはず。絶対に確認した。)』
『(し、しかし。なんだ。この_____________背後から来る威圧感は!!これはまるで紫王のエデン様のような___________________!!そんな!!まさか!!......あのガキが!?)』
『..............胎動セヨ。我ガ子ヨ。』
『モノ』は、背筋が凍るように恐ろしい、同種の声を聞いた。
九話に続く。
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