七話 ジャパリ・ギンザ襲撃事件/『その二』
『ちぃっ.....!!セルネットワークを見ても、さっきから援軍が妙な連中に妨害されてるしよ......!!くそがっ!!』
ジャパリ・ギンザ裏山。なんとその数1216体のセルリアンが待機していたのだ。しかし、そこには現地集合の、たった四人の妨害部隊が居た。
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『倒ス。』
ザシュッ.......ぱっかーん!!
「ていっ!!やあっ!!!」
ぱっかーん!!
「うおおおおおおおおおあおあ!!!!!」
ばっかーん!!
「ふぁーーーーーーはっはっはっは!!!『アクジキ』すら仲間になった我らに、もはや敵などない!!ハクトウワシよ。妨害工作、任された!!」
アクジキ、オーストラリアデビル、タスマニアデビル、ブラックバックは、ラッキービーストを介してハクトウワシから通信を傍受していた。
『たまたまアナタ達が居てくれて良かったわ!!さっき博士と助手にも応援を頼んでおいたわ!きっと仲間を連れてすぐ来るはずよ!!』
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「.......(これでなんとか戦況は五分。ハクトウワシさんや博士と助手による奴らの援軍の妨害具合にもよるけど......。)」
しかし、オイナリサマの覚悟によりかなりの数のセルリアンが減ったとはいえ、アニマルガールからしてみればそれでも1000体程のセルリアンと戦っている。戦闘不能になったフレンズも居たのに加え、『モノ』と近い戦闘力を持つセルリアンも中には居るのだ。ジャパリ・ギンザに居るフレンズ達には疲労の色が浮かんでいた。
「.........(皆疲れている。この状態では恐らく.....『モノ』を倒せる子は居ない。......正直勝てるかは分からないけど、これは僕が行くしか無いな.......)」
かばんは、覚悟を決めた。
「やあ。キミがここに居るセルリアンの親玉でしょ?」
ゆっくりとかばんが、歩いていく。
『......お前もそのようだな。奴らにする指示や、単体の戦闘能力、それに加え戦況を俯瞰する目.....明らかにお前は常軌を逸している。一体、今までどんな修羅場をくぐってきた?』
「......はっ。何を言ってるんだか。私はフレンズさん達の親玉なんて器じゃないよ」
かばんの目は、あの巨大セルリアンに飲まれた時のように。しかし、あの時よりも決意に満ちており。口元に、笑みを携え.......胸に提げている、旧友との写真を______
「ただ、たった一人の息子と、この地の未来を守らなくちゃいけないの。私は_______お母さんだからね。」
___________握った。
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「ふんっ。ふんっっ。すぅーーー......はぁああああ..........っ。こっちだ。着いてこい。」
『カカカカカ。』
結界が破られた事により、キングコブラは『モノ』に近い戦闘力を持つS級セルリアン『憑喪』を近くの岩場まで誘導していた。
『クカカカカ。ヒュッ。ヒュヒュっ。』
『憑喪』は、160cm程の球体関節人形に、白塗りの能面を被ったような見た目をしていた。能面の口が開き、そこから液体の毒を吐く。それを危険と判断したキングコブラの独断だった。
そして、誘導したもう一つの目的。
「......ふっ、かばんの命令ならば、王として頑張らなくてはいけない。ビーストモードを解放しよう」
キングコブラの目が妖しく光った。尻尾が巨大化していく。
『クカ、カカカ、カ.......?』
「......私のビーストモードは少々危険でな。一対一でしか使えない。味方を巻き込む可能性があるからな。」
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『落ち込まないでよ、キミは結局フレンズさんを傷つけなかったじゃないか』
『でも......皆私を怖がっていた。』
『まあまあ、それにさ。キミのお陰で《ビーストモード》の普遍化、フレンズさん達への普及が出来たんだから。これはアニマルガールにとって大きな進歩だよ!』
『ビーストモード......?かばん、それは?』
『キミだけが使えた技だ。野生解放よりも更に動物的特徴を増長させ身体の強化を図る。そして野生解放と違うのは、ビーストモードはリスクも伴うが物理法則を無視する事だ。』
『ぶつりほう.....?んん?』
『簡単に言うと、爬虫類のフレンズさんなら"壁や天井"に立てたり、UMAの子なら透明になる子もいる。僕ならば拳が火を纏うんだよ?要は普通じゃありえない事が出来るようになるって事さ。』
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「がッ!!ぐぅ......っ!!」
『ハッハッハッハッハッハ!!』
ドッカァーーーーン!!!!
キュルルは、S級の『ファニー・ボンバー』と戦っていた。セルリウム性の爆弾のような卵を産み、その卵を笑っているように聞こえる特殊な周波の音により爆破させる。飛び散ったセルリウムからは、小さなセルリアンがまた生まれる。
「ぐぅっ......!!この小さなセルリアンを倒して爆発を防ぎながらコイツと戦うのは......!!まだ完全にこの能力を物に出来てないっていうのに!!」
その時、すぐ目の前に。
一際大きい、セルリウム爆弾が産み落とされた。
「(あっ........)」
『ハッハッハッハッハッハッハ!!!!』
空気が振動する。
耳鳴りがする。
.......ドッッッッ........カアアアアアーーーーーーン!!!!!!!!
.............。
「(...........想像......以上だ........強.....すぎる.......。)」
キュルルは百メートル近くも吹っ飛ばされた。直前にセルリウムでガードしたとはいえ、爆風は防げなかった。ジャパリ・ギンザから半分追い出される形で、草原地帯に着地する。
「ぐあっ......はぁ......っはぁ......っぐっ.......」
しかし、『ファニー・ボンバー』は吹っ飛ばされた僕を追いかけてきている。このまま草原に寝転がっていたいが、そうもいかないらしい。
「.......あの形、どこかで見たなあ。ええと......そうだ、確か『太陽の塔』って言ったっけ?アレにそっくりだね。アイツ。」
聞き覚えがある声が上からして、見上げるとそこには。
「ひゅ、ヒューゴ!!!なんでここに!?」
ガバッと立ち上がってヒューゴを見る。相変わらず『キャサリン』も横に居た。
「キミを、助けに来たんだ。」
顎を手でつままれる。まあ、この時くらいいいか。
「......助かるよ、ヒューゴ。アイツを二人で倒そう。」
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「ぐっ、......しかしなかなか、数が多いな!!」
「ひゅー......はー......声が枯れてきた......」
「タスマニアデビルさん!大丈夫!?」
『気ヲ抜カナイデッ!!ソコ行ッタ!!』
裏山で戦っていた四人も、疲れ始めていた。そもそも裏山にすら1000体ものセルリアンが居るのだ。フィールドが広い分逃げながら戦えるとはいえ、四人の兵力では到底削りきれない。しかし、そこにアニマルガールの増援が現れた。
「はああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」
ばっかーーーん!!
「あ、アナタは.......!」
「遅くなったね、皆。よく耐えてくれた」
暗い夜の裏山に、アムールトラと、博士助手。その他40人程の増援が来たのだ。
「お前ら、よく耐えたのです。ここからは私達に任せるです」
「まっかせてください!!この天才探偵アミメキリンがセルリアンなんて粉砕しますよ!!」
「わおーーーんといっちゃうよ!!ささっと片付けて、街の方に手伝いに行こうっ!」
「ええ、お掃除は得意ですから!ブブブ~っ♪とセルリアンを掃除しちゃいましょう!」
「な、汝ら........!!よし!!『アクジキ』とフレンズ、今こそ手を合わせる時!!」
先程まで横に居たはずのアクジキと手を繋ごうとブラックバックが手を伸ばす。しかし、その手は虚空を切る事になった。
「な、アレ......?!『アクジキ』!?」
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『.....(多分、アレダケノフレンズガ居タラ増援ハ潰セル。問題ハ街。結界ガ消エタトハイエ、戦力ガ足リナイハズ。)』
『アクジキ』は独自判断により裏山をフレンズ達に任せてジャパリ・ギンザの方に向かっていた。
『(アノ強イ輝キ......街二、化ケ物ガ居ル。急ガナクテハ)』
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ガンッ!!ゴンッ!!ズンッ!!
「だあああああああッ!!!」
『ッ.....らぁっっっ!!!!』
ドゴンッッ!!
『モノ』とかばんの至近距離での、超スピードの槌と拳の打ち合い。もはやそれは、数千年前の人類同士が行っていた「喧嘩」に近いものがあった。拳を打つかばん。防ぐ『モノ』。脚で蹴るかばん。それをはじく『モノ』。はじかれた衝撃で、少し距離が離れた。
『.....しかしやはり、お前も中々やる。俺とこの距離で打ち合える奴はそう居ない。』
「.....お前もね。その反則みたいに硬い槌は何かな?そのせいで拳がお前に届かない。」
相変わらずビル街では数え切れない程のセルリアンとフレンズが戦っていた。
『....ハッ、お前に言う義理はない。そもそも俺自身すらも、何故か分からないのだ』
「(あの槌は硬い......拳が痺れてる......。ダメだ、コイツは強すぎる。せめて時間を稼いで、他のフレンズさんに行かせないように.....)」
その時だった。ジェットエンジンのような音が空の方から聞こえた。周りに居た者ら全てが、上空を向いた。
「.....あれは.......。」
黄金色のジェットエンジンと、その軌道。それを腰から生やした者が。
『.......?』
モノに。
『......おいっ!!おま.....!!』
......ズゥウウウウウウウンッッッッ!!!!
突撃した。そのまま、拉致するかのように遠くの方へ行く。ビルに幾度も叩き付け、そのまま貫通する。
貫通力が弱まり、元いた場所から100mほど離れたビルの壁に『モノ』が埋まる。
『フゥ...........。コレデモ倒セナイカ。』
腰から出ているジェットエンジンを引っ込めて地面に降り立った人物は『アクジキ』だった。
「き、キミは!!どうしてここに!?」
かばんがアクジキに駆け寄りながら言う。同じビル街でも、フレンズ達の主な戦場とは少し離れた場所に来た。
『遠クカラモ見エタ。......コイツ、ヤバイ。確実二仕留メル。協力シテ。』
『......ってえなあ.......今度はなんだあ?中途半端にオレらの力を身体に混ぜたまがいもんかぁ?ったく......。』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はあああああああ~~~~~~...........っ」
街から少し離れた岩場、ビーストモードを解放したキングコブラは半径30m程の猛毒の煙幕を吐いた。これでは味方を巻き込んでしまうのは必然だった。
『カカ、クク?』
ビーストモードで吐く大きな猛毒の煙幕は『憑喪』の身体を包み込む。これだけで通常のセルリアンならば溶解している。しかし相手は『モノ』に近い戦闘力を持つS級の『憑喪』。運が悪く『憑喪』も毒を使うため、毒のダメージはゼロに近かった。
しかし、咄嗟に視界を奪われた『憑喪』は、セルリアンが持ちうる通常の視界から輝きを探知するサーモグラフィーのような視界に切り替えた。
「.......分かっていたさ、お前に毒が効かないことはな。」
『憑喪』は困惑した。身体の動きが鈍い。毒のダメージはないはずなのに。
「お前が包まれているその煙は粘性だ。液体にかなり近い気体。更に、物体に触れると粒子が固体に変化する特殊な毒だ。身体が地面と貼り付くだろう。」
毒の煙幕から逃げようとするが、『憑喪』の身体がガタを起こしたように倒れ伏す。
「お前の厄介な動きをする球体関節の機能低下を狙った。内部まで入り込んで個体になれば動きを鈍く出来ると思ったが、予想以上だったな。身体の中に砂利が入っているような気分だろう。」
輝きを探知するサーモグラフィーの視界で、キングコブラの横に大きい蛇のような形に何かが光っていた。
「決め手はあった。が、この技は発動まで少々時間が掛かるからな。お前のような強力すぎる獲物を毒で弱らせてから使うんだ。」
その大蛇が、大きくなっていく。既にキングコブラの身長を遥かに越し、全長は20m程になっていた。ビーストモードを発動させた上での、巨大な蛇のプラズム具現だった。
その蛇が、口を開けた。
『《これも慈悲だ》______________』
『______________《王の一吞み。》』
.......バクンッッッッッッッッ!!!!!
その蛇が煙の中に突進し、『憑喪』を丸呑みした。.......
.......毒の煙が晴れていく。そこに、『憑喪』が居た欠片すら遺っていなかった。
「.......ふぅ。.....厄介なセルリアンだった。が、街に戻らなくては。」
_____________S級の『憑喪』、死亡。
残るS級セルリアンは、28体。
『モノ』に近い戦闘力を持つセルリアンは、残り一体。その一体は_____________
__________『ファニー・ボンバー』だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
.....ドッカァーーーーン!!!!
「ぐあッ!!!」
『ハッハッハッハッハッハ!!!!』
『『『.........!』』』
「キュルルくん!!後ろに小型!!行って母さん!」
ヒューゴが、『キャサリン』を使役する。
.......バァンッ!!
『キャサリン』がフライパンを振りかぶって小型を破砕する。
「あ、ああ、助かった。ありがとう」
「......キュルルくん、キミの能力で奴を倒せる方法はあるかい?」
ヒューゴが『キャサリン』を上手く使役しながら小型を処理していく。その中で僕に質問をする。
「.......あるには、ある.....。だけど、イメージに時間が掛かるんだ........。」
キュルルは、卵を産んでいる『ファニー・ボンバー』の下半身を切り落とすイメージを考えていた。
「.....分かった。僕と母さんで小型を処理しながら、キミを守る。爆風も母さんが防いでくれる。その間に、キミはイメージを完成させるんだ。」
『ハッハッハッハッハッハ!!!!』
爆弾が、来た。
「『母さん』、『守って!!』」
......ドガァーーーーンッッ!!!!
......『キャサリン』は我が子を守る母のように、ヒューゴとキュルルに覆いかぶさり守っていた。『キャサリン』の背が大部分消滅した。
「あっ......っ....!!」
「構わなくていい!!キミはそのままイメージを続けて!!僕と母さんが守るから!!」
ヒューゴの、こんなに覚悟に満ちた顔は初めてかもしれない。
「......わかった。ボクが絶対に奴を倒すよ。」
「(問題は卵を産む下半身だ。アイツの下半身を機能不可にするには.......。ハンマーで叩く。あるいは、切り落とす。......しかし、アイツは巨大だからさっき使った長刀は使えない。)」
『ファニー・ボンバー』の全長は5m程もあった。もちろん胴体もそれ相応に太い。
「(......切り落とすのは無理か。.....いや、切り落とさないと、どの道勝ち目はない。もっと大きな、更に大きな.....大剣を_________。)」
イメージが完成した時のキュルルの手には、巨大なセルリウム性の大剣が握られていた。
「........よし。これなら。ヒューゴ!!行くよ!!小型は任せるっ!!」
地面を蹴って、走り出す。
「『母さん』、『纏って』!!行くんだ、キュルルくん!!」
『キャサリン』が液化し、キュルルの周りに装甲のようにまとわりついた。
『ハッハッハッハッハ........!!』
嗤い声のような特殊な音波によって刺激された爆弾が目の前で爆発するが、装甲はビクともしない。行ける。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
キュルルは大剣を携えて走る。『ファニー・ボンバー』との距離は3メートル。そして、大剣は『ファニー・ボンバー』の下半身と上半身の繋ぎ目に___________横切りに。
「だああああああああああぁぁ!!!!!!」
......ザシュンッ!!!
_____________クリーンヒットした。
『ハッ.......ハッハハッハ!!!』
しかし、その大剣は数センチ、食いこんだだけであった。
「......くっ.....!!キュルルくんっ!!作戦は失敗か!?一回退こう!!」
無念のような表情を浮かべるヒューゴ。安心してよ。元々、これで決める予定じゃあ無かったから!!
「いや!!これでいい!!!これでいいんだよ、ヒューゴ!!!元々剣なんて使えるはずがないからアテにしてなかったさ!!でも少し刺さった!!これでいいんだ!!!」
キュルルはセルリロイドとはいえ、ただの少年。大剣なんて扱い慣れているはずがない。しかし、キュルルはそれを見越していた。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」
__________その時には既にキュルルの脚が、ジェットエンジンの先にハンマーが着いたような形に変形していた。イメージは、完成していたのだ。
「(あ、脚!?そうか!!腕の三倍の力は持つと言われている、脚で_____________!!!)」
「.......だっりゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
「いっけええええええええええええええ!!!!!!キュルルくん!!!!!」
『.........グ!!!!!』
キュルルのジェットエンジンとハンマーの着いた脚は、凄まじい勢いの回し蹴りにより中途半端に刺さった大剣を深々と踵で蹴った。力は伝えられ、大剣は為す術もなく『ファニー・ボンバー』に突き刺さっていく。
ガンッッッ!!!!!
...グッ!
.....ググッ!!
......グググッ!!!
.......ググググッ!!!!バッシャアアアアアアア!!!!
そして大剣は、『ファニー・ボンバー』の下半身を切り落とした。
「....うおおおおおおおおおおお!!!!!キュルルくん!!!!!!!!!!!!」
『.........グオーーーーーッ........ハッハッハハッハッハッ....グオッ、グエッ』
浮いている上半身と下半身がボトリと地面に落下した。
「......よしっ!!成功した!!」
『キャサリン』の装甲が剥がれ、元の姿に戻る。
「キュルルくん!!やった!!流石はキュルル君だ!!!これで奴は爆弾を産めなくなった!!僕たちの勝ちだ!!」
「やったね!!ヒューゴのおかげだよ!!.......」
『......ガッハッハッハッ!!グオッ!!グオッ!!グエエエッ!!グエエエエッ.....』
......いずれ、こいつは死ぬんだろうな。
........身体をジタバタさせて、苦しんでいるのだろう。それはそうだ、上半身と下半身がバラバラになったのだから。いくらセルリアンといえど生きていられる訳が無い。しかし___________
___________しかし、なんだ__________コイツを見ていると浮かんでくる、この、胸がザワつくような感覚は。
『ガッガッガッ!!グオッ!!ハッハッハッハッハッハ!!ハッハッハッハッハッハ!!!........ガーーーーッ!!!』
______図書館に置いてあった、「面白都市伝説!」という本で見た事がある。嘘か誠かは分からないが、その本によると"ゴキブリ"という生物は、死ぬ間際に卵を産むらしい。それも___________________
...............ゴロリ。
その時________ファニー・ボンバーの切り離された下半身から。僕の体よりも大きな。僕を百メートル近く吹っ飛ばし、この草原まで追放した爆弾よりも、何倍も巨大な。"目"が沢山着いた卵の、爆弾が______________。
『ぁあ。』
____________________産み落とされた。
『.......ハッハッハッハッハッハハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!!!!』
ぞわっ。
汗が吹き出る。
_____嗤い声で空気が、振動する。
_____爆弾が、揺れ始める。
_____動きが、スローに見える。
『______アナタ、キュルルちゃんって言うのね!』『危険極まりない溝が出来ています!』『これも、旅のいい思い出となりましょう!』『家を探していて________』
_________これが___________走馬灯__________。
今までで一番濃く、冷たい『死』の予感。
「________キ___ ュ ___ル___ ル___く___』
ヒューゴが、僕の方に走ってきていた。
『_____________
今まで嗤ったような音しか出さなかったこいつが、言葉を。いや、そんなこと、かんがえる、じかんも、無___________________
___..........キィーーーーーーン...............!!!
........ドッッッッ...........!!!!!
........カアアァァァァーーーーーン!!!
ファニー・ボンバーが死ぬ間際に発動する技、『地獄へ道連れ』。爆弾は着火した。
八話に続く。
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