二話 壊れゆく世界/『リサ』

かばんが起きたのは20分後だった。


「......ぐっ、うっ....!!はッ!!キュルル君ッ!?」


呼び掛けても、応えるのは直に沈む夕陽と、どこに吹くか分からない風ばかりだった。


「......まずい、まずいまずいッ!!まずすぎるッ!!私じゃキュルルくんの匂いを追えない!!イエイヌちゃんを連れてこないと!!」


かばんはイエイヌがいる研究所に向かって全力疾走する。


「(まずいぞ.....!!最悪だ!!キュルル君の始末だけが目的なら僕が気絶してる間にやれたはず!! 拉致されたということはおそらく.......!! 急げ!!)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ここは.......」


ボクが再び目を覚ましたのは、薄暗い研究施設のような所だった。そこの部屋にポツンとある椅子に座らされていた。よく分からない瓶や注射器が転がっており、かばんさんの研究所で見たような電源のついたパソコン?も置いてある。


ギィィ....と、一つだけ部屋に存在する年季の入ったドアが開く。廊下から蛍光灯の光が漏れて差し込んでくる。


『オハヨウ』


アクジキが妙な箱と、ボトルに入った透明色の液体。それから比較的綺麗なハンカチを持って現れる。


「アクジッ!あぐッ!!」


更に自分が拘束されているのにも、今気が付いた。


『本当二......コノ時代二キミガ現レルナンテ.....セルリアンノ未来予知モタマニハアテニナル』


ゆっくりとアクジキが近付いてくる。ボトルを開け、ハンカチに謎の液体を浸した。恐らく臭いから推測するに、液体はアルコールだ。


「何を言ってるのか分かんないけど、未来予知?どういうこと?」


『セルリアンハ無時間を生キテル。幾億通リノ結末、時間二意識ヲ移動サセテル。ダカラコソ、私モ基本的ニハコノ時間ノコノ意識二イルケド、時々未来ヤ過去二意識ガ飛ブ。其レガセルリアンノ未来予知。」


「......どういう.....」


『折角、君ト出会エタカラ長話シタイケド、今ハ時間ガ無サスギル。申シ訳ナイ』


アクジキが箱から注射器を取り出した。中の液体は......黒い。そして、うねっている。.......目まである気がする。


「ひ、ひいぅッ!!!??」


『デモ、分カッテ欲シイ。私ハ見た。恐ろしい未来予知を。だからキミはこの力を、"セルリロイド"の力を制御しなくてはいけない」


アクジキが纏っていた仮面を解いた。腰まで伸びている綺麗な金色の髪が解放された。鼻も高く、整った顔をしていた。あの恐ろしい仮面の中にコレが隠れているなんて想像も出来ない。仮面が外れると普通の声に戻ったが、声もいつもからは想像出来ないほど可愛らしかった。


しかしそんな風貌でも僕の頭を掴み、アルコールに浸したハンカチを首の後ろに押し当て、拭った。消毒しているのだ。ぞわりとした感触が走る。


「おっ、お女の子ッ!?いやっそれよりも!!セルリロイドの力ってなに!!ボクを一体どうする気ッ!?」


頭を固定されながら後ろにいるアクジキに精一杯目を向けながら質問するが、答えは返って来ない。


悪い予感がする。鉄のように冷たい椅子にじんわりと汗が滲む。首の後ろから寒気がする。暴れてみようにも、アクジキから出ているセルリウムの拘束はボクに一切の行動を許してくれない。


「今は詳しく説明している時間が無い。君を追ってもうすぐやってくるんだ、生身でセルリロイドよりずっと強いバケモノが......」


アクジキは少し注射器を押して、中の液体がちゃんと出るかどうかのテストをした。そして、ボクの首の後ろを手でつまみ、もう片方の手でゆっくりと注射器を奥まで刺した。脊髄にまで届いたような気がした。


余りの恐怖に、声は出せなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「セルリロイド!?つまりどういうことです!?あっ!ここ右です!!」


「セルリロイドは、ヒトにセルリウムを見事適合させた奇跡的な存在だ!!アニマルガールはサンドスターが邪魔してセルリロイドにはなれないけどね!!」


かばんは、サーバルとイエイヌを連れて拉致されたキュルルを追っていた。既に日は落ちきり、夜になっている。ひゅうひゅうと吹く風が自分達を急かしているようで。森の中を抜け、平原を抜け、街のような場所に出た。


「みゃー!!それはヤバいよ!!助けないと!!」


「うんッ!!セルリロイドはセルリアンの力を使うことが出来るけど、そのほとんどが適合出来ずその内セルリアン化してしまうんだ!!遺された資料にはそう記してあった!!だから止めないといけない!」


「あの『アクジキ』って人もセルリロイドなんですか!?ここを左ですっ!!」


「ああ恐らくねッ!!古代人だからボクたちよりも何千歳も年上だよ!くっそ!!耐えてくれよキュルル君ッ!!」


真っ暗ながらも月明かりに照らされた、今は使われていない中華街のような場所を疾走する。看板には『ジャパリ夜市』と書かれてあった。様々な建物が右に左に乱立しており、ジャパリ夜市はかなりややこしい迷路のような立地になっていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



________星。


宇宙。


白く青い四本の腕。


火を持つ小さい頃のかばんさん?


目から噴き出すセルリウム。


探検....隊?


ルー...ラー...?


火が着いている紙飛行機.............


水の音と耳鳴りがする........


ボクは........注射器を......うたれて......絵を.......目が.......視えなくなって........



「..........あああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」


悪い夢のようなものを何十時間も見ていたような気がする。気分が悪く吐きそうになって、仕方なくフラつきながら立ち上がる。


「はぁ......はぁ......なんだ.....ここ.....どこだ.....ボクは.....アクジキに注射器を刺されて.....」


首に汗をかく。周囲を見渡すが暗く、何も無い。そしてどこまでも広い。暗くて周りが見えないのに、広い事は認識できた。その中でペタ、ペタとゆっくりとした足音がこちらに近付いてくるのが分かった。


「我ガ子ヨ」


「誰ッ!?....お、お前は!!!」


「愛シキ 我ガ子ヨ」


かばんさんに昔見せてもらった、ジャパリパークの過去資料の中で見た存在が現れる。そして、僕はどうやらコイツから産まれたそうだった。


「セルリアンの女、女王!!なんでここにっ!?いや、そもそもお前はずっと昔に倒されたはずじゃ......」


「如何ニモ 我ハ母 オ前ヲ コノ時代二産ミ落トシタ者」


「.....僕の母さんはかばんさんだけだ!暖かいご飯も帰る場所もかばんさんが用意してくれたんだ!」


どこまでも暗い空間に声を響かせる。熱は全身に回り、頭もくらくらしてくる。


「我が子ヨ 目覚メヨ 時間ガナイ オマエハ 暴走シテイル オ前ハ コノチカラヲ制御シ 黒王ト ナルノダ」


「何を......言ってるんだよ!!わけわかんないよ!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「あそこです!!あの建物からキュルルさんの匂いがします!!」


「あそこか!!ありがとう!!待っててよキュルル君ッ!!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うるさいなあ!!女王!!お前は本当にうるさいよ!!嫌な事をネチネチと!!僕はもう眠いんだよ!!寝させてよ!!」


「起キヨ 元ノ時間へ 帰レ」


「でも起きた時にはもう帰る場所は無かったんだよ!!ボクが見てたのは漠然とした"帰りたい"という想いだけ!!酷い話じゃないか!!リーシャもそう思うでしょ!?」


「リーシャって誰.....?誰だ....?ボクは何を.....」


「ソノ記憶ハ 今使ウ記憶デハナイ オ前ノ 記憶デハ ナイノダカラ」


「だって!!本当に.....申し訳ない、許してくれ。.......今日は晴れてるわよ、いい天気。何して遊ぼうか?視えないから分からないんだもん』


『ダメだ!その人体変換技術はまだ実用的ではない!キミはそもそもパークの医者であって研究者ではないだろう!わあ、見える、見えるよ!』


「...ダメ ナノカ?我ガ系譜ヲ チカラヲ 受ケ継グ事ガ出来ナイ?我ガ子ハ セルリウムノ禁忌二踏ミ入ッタ 数々ノ人類ノヨウニ 星ノ記憶二 押シ潰サレル?」


「ボクは セル ワタシは 何 なの 変 記憶 が 混ざッ」


『ドール、お勉強の時間ですわよ!』『ジャパリまつり?面白そう!参加したいなあ~』『アナタ、泳げまして?』『来たわね愚民』『セルリアンだ!逃げろ~!』『私のホテルが......』『キミ面白いなあ!』『......思い出した......私には........妹が居たんだ。』『私はサーバル!この辺は私の縄張りなの』『......ッキュルル君!!!起きろッ!!!私だッ!!!キミの母さんだ!!!』『我ガ子ヨ オマエハ コチラニ来ルナ オマエハ 人類ノ コノ星ノ 希望 奴ラノ 侵略ヲ 退ケル 希望』


『......!!」


「ああああああああああああああ!!!!」


少年は、この星が見ていた、あるいは"今から起こるであろう"記憶を大量に見ていた。何十、何百、何千、何万、何億もの記憶を。"誰か"の楽しい記憶、"誰か"の恐ろしい記憶、"誰か"の悲しい記憶、"誰か"の怒りの記憶.......この星が憶えている記憶を。この星が見る予定の未来の記憶を。


「.......あ、ああ!!あああああああああああああああ!!!さーばるぅあああ!!!!やめてぇえええええええ!!!いだい!!!いだいよおおおおおお!!!ボクはみんなを襲うつもりじゃなかったんだよおおおおおおおおおおおおおぉぉぉお!!!!!!違うんだよおおおおおおおおおおおお!!!!」


.......セルリアンという存在は無時間を生きている。アクジキの言葉が蘇る。自分に投与されたセルリウムを介してが大量に頭の中に流れ込んでくる。しかし、セルリアンの本質はここからだった。セルリアンは、無限の世界線、時間、記憶に意識を移動させているという本質は。


「ああああああああああ!!!!!かばんさん!!!!押し潰したくないよぉおおお!!!!逃げて!!逃げてぇぇぇぇぇ!!!」


それから流れ込む記憶は残酷で。幾億ものジャパリパークの出来事を"セルリアン視点"から追体験していた。もちろん破砕される時の痛みも、アニマルガールを攻撃し、全てを奪う時の気持ちも_____。


「ぎぃああああああああああああああ!!!!ぼくのからだにぃ!!!!なにかがはいっでぇえええ!!!!やめでぇええ!!!寄生しないでぇえええええぇええ!!!!!ああああああああ!!白ぐなるぅううううううううう!!!!!!!」


"無限の記憶をセルリアン視点から追体験し続ける"のが本質のセルリアンに身体が変化していく最中、は我が子を見捨てなかった。


『ねえ!!キュルルくん!!起きたらさ!!いっぱい褒めてあげるよ!!!またあの時みたいに笑ってよ!!起きて!!!起きなさい!!!探検隊隊長になるんだろ!!こんな所でくたばってちゃダメだ!!起きるんだ!!キュルルくん!!!』


「あ、ああああああああ!!!いやああああああああ!!!あーどうるぶさん!!!逃げてぇ!!!あああああああああああああああああああ!!!!!!!ごめんなさい!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいい!!!!!!」


『我ガ子ヨ 目覚メヨ オ前ハ 黒王二 ナルノダ ココデ 倒レテハ コノ星二 未来ハ無イ コノ星ハ 蹂躙サレルノミ』


「........う、ああああああ......母さんんん......」


『......でも、ここでコイツに全てを奪われて、何もかも思い出せなくなるのはもっと怖い!!待っててみんな!!私が助けに行くから!!』


「.......アクジキ?」


少年は、幾億も飛び交い、現れては消えて混じり合う記憶の中でたった一つ、"現在"の記憶を選び取った。


"現在"から、母親が呼んでいる________。



「ああっ。」

意識は、浮上した。


「あああああああ.........。」


"こっち"に意識が戻った時に___ボクの背中と、腕からは.......


真っ白の、巨大な鉛筆のような形のセルリウムの触腕が湧き出ていた。そして、その触腕を.......かばんさんが受け切っていた。


「.......あ、ああ、ああああああああああ!!!!!」


「.......おかえり、キュルル君。よく、戻ってきた」


全身が出血し、傷だらけになりながらもかばんさんは笑顔だった。意識を失って、セルリアンになりかけて暴れるボクを......"こっち"に呼び戻してくれたのだ.......


「母さん...........。」


ボクから湧き出ていたセルリウム触腕は、既に消滅していた。代わりに、人間の証である涙が湧き出て止まらなかった。


.......アクジキは既に立ち去ったのか居なくなっていた。


「キュルルちゃん!!」

「キュルルさん!!」


「.......かばんさん......ボクは......みんなにまた迷惑をかけて........ごめんなさい......」


かばんさんの胸に倒れ込む。全身の力をセルリウムに抜かれてしまったのか力が入らない。


「いいんだよ.....キミのせいじゃないし、それに愛しの我が子が帰ってきただけで、こんな傷軽いものさ」


かばんさんは僕を肩で支えながら微笑む。サーバルもイエイヌさんも、何が起こってるのか分からないながらも、ハッピーエンドになりそうな予感を感じ取り微笑んでいる。


「身体が.....動きません.....少し、疲れました.......」


ボクもつられて微笑んだ。......しかし、ハッピーエンドになるにはあまりにも早すぎた。サーバルが、耳をピクピクと動かしているのが朧気になった視界に捉えられた。


「.....あ、かばんちゃん!みんな!!セルリアンが来るよ!!この家の外にいる!!」


皆がハッとした表情を浮かべる。イエイヌさんが続いて薄暗い部屋のドアをバンと開け、鼻をすんすんと動かす。


「あああっ!!来てます!!この施設に入ってきました!!そこまで大型ではないですが普通とは違う妙な臭いがします!!」


「あっ!こっち来るよ!!もう一番近くの角を曲がったよ!!.....何このセルリアン、気持ち悪い!!変な音が聞こえる!!喋ってるみたい!!」


ヒトにも感じ取れる程の距離まで近付いてきていた。特に動けないボクを担いでこの薄暗い部屋から出る時間も余裕も無く、、、


「隠れようっ!!不意を突けそうなら突いて倒す!」


かばんさんが指揮した。



........バキャッ!!


.......ボクたちは、おおよそ15m四方程のこの部屋の、隅に積まれてあった医療用ベッドの山の奥に隠れていた。


『リ........ア.........サ........リ........サ.......ィ......サ.......リ.......リ.......リ......シ.......ア.......』


........一つしか無いドアを壊し、セルリアンが入ってきた。驚いたのはその姿だった。普通のセルリアンよりも圧倒的に醜悪なその姿。うにゅうにゅ、ぐにょぐにょと動く、2m程の水色の塊が、地面を這って動いていた。その塊に、セルリアンの特徴である"目"が幾つも現れては消え、現れては消える。


更に驚愕したのは、セルリアンは特定の個体は気味の悪い音を出すことがある。しかし、この個体は明らかに音ではなく言葉を喋っているのだ。


『リ.........シ......ァ.......リ......ィ.......サ.......リ......』


横でサーバルとイエイヌが恐怖に震えていた。かばんさんですらも、目を見開いて面食らっているようだった。


観察を続けていると、唐突にそいつが塊から触腕を伸ばし、床に転がっていた注射器を粉砕した。それから、先程までボクが座らされていた椅子も執拗に攻撃し、破壊した。


『サ........リ.........サ........シ........ア...............リ.......リ.......ン......ノ............................ス.......ケ.......グ........』


うにゅうにゅ、ぐにょぐにょと再び歩を進め、この薄暗い部屋から出ていった。........余りの恐怖に、この場にいる誰もがしばらくの間声も出せなかった。


「.......もう大丈夫みたい、どっか行っちゃったよ」


初めに声を出したのはサーバルだった。

耳をピクピクと動かしながら、ぎこちない笑顔を作っていた。


「.......なんだったんだ、アイツは.....。」


かばんさんがベッドの山から出た。それに続いて皆もベッドの山から脱出した。


「あれ?今気付いたけどこのパソコン電源ついてる」


かばんさんが、机の上にあったパソコンに目をやった。ボクがここに拉致された時から確か電源は付いていたが、、、


「みゃみゃっ!!これ!!」


ボクはイエイヌさんにおぶられていたが、サーバルとかばんさんが小走りでパソコンを覗き込んだ。


「......うん、セルリアンの資料だね。これは」


そこには様々なセルリアンの情報が載っていた。見たことのないセルリアンもいた。


「しかもこれはS級以上のセルリアンの情報ばかりじゃないか.......なんて貴重なんだ、こんなデータが残ってるなんて」


かばんさんがマウスをスクロールしながら呟く。


「『デスバルーン』『リサ』『レイニーデイ』『エデン』『D-TYPE』『ファニー・ボンバー』『リキッドセル』『インビジブル・リッパー』『オワイ』........。何でこんな資料がここに........」


薄暗い部屋でパソコンの光を覗き込んでいると、なんだか眠くなってきてしまった。しかしその眠気は元気なサーバルやイエイヌさんにかき消された。


「ねぇねぇかばんちゃん!S級って何なの?」


サーバルが少し跳ねながらかばんさんに問う。


「S級は、強い上に複数個体が確認されず色は紫統一の珍しい個体なんだ。ほら、『シビレ』とか『ファング』とかはパーク中探せばいくらでも出てくるでしょ?」


かばんさんがため息を吐きながら言う。


「.......でもさ、そもそもこの資料、最終更新日が今から15年前なんだけど......テキストの内容がちょっと意味不明だし時系列が矛盾してるんだ。例えばこの『リサ』多分さっき部屋に来た奴はこいつだ。」


後ろから覗き込むと、確かに先程の醜い肉塊のような姿が写真とテキストで載っていた。


「こいつは水色だからS級セルリアンじゃないみたいだけど......『壊れないため討伐が不可能。人類が滅んだ時、我が子に対する強烈な後悔や懺悔を持ったままセルリアンに変化した哀れな元人間。自分の手で全てを終わらせようとしている。』.......。」


何か違和感を感じ、かばんさんの読み上げを更に注意して聞く。「人類が滅亡した」事を、一体誰が書けるんだろう?


「ほら、この『エデン』なんて特にさ.......」


かばんさんがテキストを読み上げる。『エデン』は、写真を見ると巨大な提灯のような形をしていた。


「『紫の世界に知識を与えた紫王。ジャパリパークを人類が居ない天国にすることが目的。パークの人類を絶滅させた後宇宙に帰ったが、セルリウムによって現れた、たった一人の人類を我が物にする為にこの地に舞い戻った。』...........これってさ、明らかに........」


かばんさんがこっちを向いた。


背筋が凍る気持ちがした。


ドオオオォオオオオオオオン!!!!!!!



「みゃみゃっ!!何!?外で何かが!!」


爆音が聞こえた。隕石でも落下したのかと思った。四人が顔を見合わせながら、外に向かった。僕はイエイヌさんにおぶられたままだけど。


「何かが......何かがおかしい......!!何かが起きてる!!このパークで!!」


廊下を走り、既に壊れている両開きの自動ドアをくぐりながら外に出た。今は誰も使用していない元中華街のような場所に出た。ここに連れてこられた時には気絶していたので分からなかったが、看板には『ジャパリ夜市』と書いてある。


明かりもつかない真っ暗な夜だったが、空には明らかにおかしな発光体がデカデカと浮かんでいた。


「アイツは................。」


皆が、呆然としていた。紫色の巨大な提灯のようなその姿。そのスケールは、全長がおよそ地上100mを越そうとしている。


「.......『エデン』..............」


誰の口からか、そのセルリアンの名が口に出た。ジャパリパークが崩壊し始める音が、聞こえた気がした。




『じぃーーーーーっ。。。。わ、われわれは、か、かしこいの、ので、クスクス。こ、ここはじゃぱりぱ くだ よ わたし はさーば る このへ わたしの わたしの わた なわばり なの』



三話に続く。










































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