第2話 「一人称」

『女子が 僕って言うの、痛いからやめな?』

「は?」

登校早々、クラスの男子の第一声。

前から気が合わなそうだな、と思っていた

空気の読めない隣の席の奴からだ。

『なんか最近 ネット?とか

ヲタク共の間で

流行ってんだろ?ボクっ娘?だっけ?』

「ぼくっこ … ? ヲタク … ?」

訳が … 分からない …

なんでそれを わざわざ 僕に言うんだ …

『ま , 痛いから やめとけって 話 。 』

「は , はぁ … 」

『おーい 早く行くぜ ~ 』

『はーい 今行くぜ ~ そんじゃーな』

僕の気持ちなんか気にせず

どっか行きやがった…


僕 … なんで女に生まれて来たんだろう…

別に女として生まれてきたく無かった。

…最近そう思うだけかもしれない…


生まれた時から女の子で ,

ちっちゃい頃も女の子。

普通に人形遊びして , スカート履いて ,

髪も伸ばして…

自分が女の子だって自覚していた。


でも 最近 … といっても 昔の…

12歳ぐらいからだろうか…

今は中2だから…2年前の事かな…


同級生の女の子と , 修学旅行先の旅館で

恋バナをしていた。

勿論他の女の子は好きな男子とか、

イケメンな男の子の話をする。

だけど , 僕だけは 違った 。

可愛い女の子とか , 好きになった女の子とか ,

女の子の話ばっかり。

僕は … 別に 女の子同士の恋なんて

変だとか , そんなこと気にしてなかった 。

それが 普通 だと思って 生きてた 。

それなのに …

『女の子を好きになるなんておかしい』

『男みたいで気持ち悪い』『変態』

っていう 悪口を 浴びせられただけだった。


女の子同士が恋しちゃいけないって

誰が決めたんだろうか。

昔からの固定観念が全く変わっていない。


その頃から … おかしいと思っていた 。

なぜ制服では

強制的にスカートを履かなければならないのか。

“女子”だから?

女の子は男の子にだけしか恋ができないのも

“女子” だから?

それともそれが “当たり前”だから?

スカートとかワンピースとか、

可愛らしい洋服を着ないと行けないのも

“女子” だから? それが “常識” なのか?

明日も明後日もスカートを履いて ,

嫌でもピンクの洋服を着せられる。

男らしい格好をすりゃぁ

『もう少し可愛い格好をしなさい。

“女” なんだから 。 』

と 両親に 言われる 。

それに 自分の事を “僕” と言えば

『僕なんて ,

可愛らしくない一人称を使わないで』

じゃぁ 自分の事は なんて呼べばいいんだよ !!

女の子しか好きになれないのに

男に恋しなきゃいけない?

ズボン履いて , 男の子みたいに格好良い 服着て ,

髪も 短く 切ってみて ,

自分なりにお洒落 してみたい 。

なのに ,

“女の子” なんだから かわいい服着て,

“女の子” なんだから 髪は伸ばしなさい … ?

それは 女になりたくも無い 男に

無理矢理 女装をしろって 言ってるのと 同じだ !

ずーっと , ずっと

“女” という 性別に 縛られてきた

女になんて 生まれたく なかった !!

ずっと縛られて身動き出来なくて ,

“女”なんだから って ずっと言われてきた !

もう うんざり なんだ っっ !!!!!

もう 嫌だ ! あああ !

僕は … 僕は 何をすればいいんだよ !

人の 自由も 性別に縛られるのか !

性別 , 一人称 , 服 , 髪型 まで

全部 僕の 好きには できない …

こんな 長い ロングヘアも 邪魔ったら邪魔 …

僕には … 僕には 何もさせてくれないのか …

『… 凪 ? 』

もう嫌だ … なんで 生まれてきたんだろ …

『凪 ! ね , 聞いてるの ? 』

死にたい… こんな ゴミみたいな 固定観念 を

持った 社会から 消えてしまいたい …

『凪ったら ! 』

「わっ ?! 」

な , なっちゃん…ぜ , 全然 気づかなかった …

『…大丈夫 … ? ボーッと 立ってたけど …』

「う , うん … ちょっと 考え事 してた … 」

『大丈夫 なら いいや …

ほら , 朝の会 あと1分で始まるよ 』

「 あ , うん … 」

本当は 大丈夫 なんかじゃない 。

死にたいぐらいに辛いんだよ … ?


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