僕はボクっ娘なんかじゃない
朔
第1話 「性別」
この頃、何かが可笑しい…
と、思うのは僕だけかもしれない。
他の皆は、
僕の事をどう思っているのだろう。
気持ち悪い?気色悪い?
そんな事、どうだっていいんだよ。
今の僕には…。
今…僕にはそんな事気にしちゃいられない
程に莫大な悩みを持っているんだよ…。
…僕と言っても、僕は女だが。
そんな事を、まだ寝惚けている頭で
バスに揺られ 考えている。
現在朝の7時20分。
いつも通り、学校へバスに乗って行く時間。
平凡な日々、平凡な自分、平凡な街。
窓からビルが立ち並ぶ街を眺める…
「はぁ …」
小さくため息をつく。
自分の口から溢れ出たため息。
この心のモヤは…何時消えるのだろう…
~学校~
「おはよ … ! 」
『…』
何時もだ。挨拶しても無視。
返しても『…よ。』って、
周りの騒音にかき消される小さな声。
皆そうなんだよ…
『おはよ ~ ! 』
「…あ、おはよ、なっちゃん…」
この子は親友の
かっちゃんじゃあの有名な太鼓ゲームの…
なんでもない。男っぽくなるから
なっちゃんって呼んでる…。
いつも挨拶をしてくれるのはなっちゃんだけ
『なんかテンション低いねぇ…
「ちょっとね…」
そう…僕は凪…男の様な、女のような。
そういうよく分からん名前…。
『どーせまた挨拶返してくれなかったとか
そーゆー奴でしょ?そんな事で
落ち込んでどーすんの…』
「図星、図星だから…。」
なっちゃんは僕とは正反対の子だ。
黒くて艶のある、長い髪をポニテにして ,
朝 , 元気に挨拶してくれて
男の子の様に力の強い明るい子…
『さ、早く教室行こ』
「あ、うん…」
なっちゃんは 僕の手を強く引いて
階段を登っていく。
『おはようごさまいまーす』
先生が教室に入ってくる
おはようございます、と言う
みんなの声が、教室中に響く。
僕には挨拶なんか返してくれないのに。
みんな提出物を出して、
仲良い子と喋ってたりする。
…1時間目から体育だから
僕も着替えに行かなきゃな…
『凪 ~ 早く行こ ~ ! 』
「…わかった」
そう言って2人は廊下に出て
女子更衣室へと向かう。
…僕は本当に嫌なんだ。
なんなら男子更衣室に入って着替えたい…
…女の子の自分が女の子の着替えを見る…
一見普通かもしれないけど、
僕にとっては苦痛でしかない。
凄く心臓がバクバク言う…
見てられない。見たくはない。
だからいつも更衣室の隅っこで着替える…
『いつまで
更衣室のドアの前に突っ立ってんの?』
「あ、ごめん…でもさ…」
言いかけたけど、
言ったら言ったで面倒臭いから
床を見ながら更衣室に入る。
ずっとジャージで居たい。
スカートなんて似合わない。
机に
似合わない…じゃなくて嫌だ。
何だか気持ち悪い…
もう本当に男の子になりたい。
それなら女子の着替えを見ずに済むし、
一日中ズボンでいられる。
…中学生で性転換なんて出来るのだろうか…
近頃は男子と話してた方が楽しい。
女子と話してると自分が変態に思えて来る。
時折なっちゃんに抱きつかれるけど…
心臓がバクバクして止まらなくなる。
『なにドキドキしてんの?
女子同士なのにさ…』
と言われ, 少しムッとしてしまう。
「僕だって …
好きでドキドキしてる訳じゃないんだよ…」
そう返すが聞く耳持たずだ。
~昼休み~
僕はさっき , 男になりたいと考えた。
…だが , やっぱり性根は女…
外で遊ぼうにも , 体力と力が無い。
教室で本を読むか、絵を描くか、
その二択だ…
なっちゃんに引っ張り出されるのは
例外として…
『ね , 折り紙しよ ~』
活発ななっちゃんが珍しい…
折り紙だなんて…
まぁ , なっちゃんは1時間もあれば
千羽鶴折れるぐらい
折り紙上手だからな …
『できた ~ ! 』(回想)
「…………」
折り紙は…好きだけど得意ではない…
「………」
『折り方間違えてるよ』
「知ってる…」
僕の机に2人で座り…
狭いが折り紙をしている …
『…こうだよ』
「…どうだよ…」
『こうだってば』
「だからどうだよ ! 」
『もういい!知らない!』
「が , ガキかよ …」
『…』
「…」
『…ごめんね?』
「許す」
会話してると大体はこうなる…。
…なっちゃんは
運動も勉強も図工もできるのだ…
…それに比べて僕は…
勉強は辛うじて…折り紙…
運動は期待しないでくれ…
前だって…
『凪は運動音痴!略してウンチ!』
「そ , そりゃねーだろ ! 」
と言う会話をしたぐらいだ…
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