第3話 2022年3月23日
最近、なんとなく変な感じがする。というのも、何も考えず行動してしまう時が多いのだ。例えば、こんなことがあった。林間学校の時、私は教師に写真を撮るぞと呼ばれているのに、フラフラとどこかへ歩き出してしまったそうだ。教師に肩を叩かれ、「写真をとるぞ」と言われた。それでハッとした時のことも、それ以前の観光した時のことも覚えているのに、それ以前のフラフラしていた時の記憶だけスッポリと抜け落ちているのだ。なんらかの病気でもあるのだろうか…。考えすぎか。
さて、私は今隣町に来ている。暇だったので、近いのに行けていないというこの隣町に冒険しに来た訳だ。この冒険の記録を付けながら歩いている。町の名は初米(はじまい)という。塾の送迎時に、自動車で通る町だ。初米町は元々商業都市であった。というのも、大手企業の工場があるのだが、そこの労働者達をターゲットにした店(居酒屋やスナック等)が立ち並び、非常に繁盛していたそうだ。そこにバブル景気が来て、町は県でも有数の商業都市になったそう。しかし、バブル崩壊とともに企業は倒産し、店は次々にシャッターを降ろした。その後は新興宗教団体の拠点になったり、連続失踪事件が起きたりして、結局、県有数の商業都市は、一気に寂れた町となった。色とりどりのネオンで鮮やかに輝いていた白い壁は、今やひび割れ、黒ずんでいる。大通りに立ち並ぶ店はほとんどシャッターをおろし、降りていない店もいくつかあったが、そのような店のガラスは、基本的にはひび割れ、店内にはガラクタが転がっていた。
さて、私がこの町に来たのは冒険だと言ったが、このシャッター街を見てまわるるのは、ただの観光だ。それでは満足しないので、私はその町の小高い山に登ることにした。標高はそれほど高くなく、日帰りで来れるところだったので、勇気を出して登ってみることにしたのだ。
道路を登ること数十分、ようやく寂れた案内標識が見えてきた。
『筈×(文字が薄れて読めない)山山頂 筈割城×』
恐らくこの山、筈割山(はずわりやま)山頂にある筈割城跡のことを指しているのだろう。この山の山頂には、昔城があったらしい。詳しいことは知らないので、それもついでに調べてみることにした。
しばらく山を登っている。非常にでこぼこしており、歩きにくい。
気づけば洞窟の前にいた。
またあれか。無意識か。そう思いながら立ち去ろうとするが、どうにも洞窟の中が気になってしょうがない。洞窟の縦幅は、私の背丈(162cm)と同じくらいであった。横幅は約1mであった。洞窟はその口をぽっかりと開け、黒々とした闇を私に見せている。
おおおおおおおおおおお
という不気味な風の音を響かせながら。
私は、3月だというのに異様に汗臭い洞窟の中に来ていた。気づけば私は、念の為持ってきていた懐中電灯をつけ、洞窟の探索をしていた。謎の石像があった。石像は台形の台座(こちらも石で造られている)に載せられていたが、特筆すべきはその像の見た目である。アメーバ状にうねうねしており、かついくつもの凹凸がある。そのアメーバは四方に体?を伸ばしているのだが、その中心には穴が空いている。その穴の周りには歯の様なものがあった。中学生の私にも、これがすごい発見であることはわかる!今すぐ帰って報告しに行こう。もしかしたら、憧れのランドルフ氏から、何か言ってもらえるかもしれない。直接会えるかも!?とりあえず、出口を目指すことにした。
××××××××××(解読不能の文字らしきものが綴られている)
またもや記憶がない。最近、記憶を失う頻度が増えている気がする。嫌な夢を思い出した。理由は覚えてないが、停電していた時に見た夢だった気がする。永遠と暗闇を歩き続ける、シンプルなのに怖い夢だ。今は夢か?違う。この記録を書いている今は夢ではない。ではなぜ、一向に出口につかないのだろう。何故だ。そもそも、入ってきた時の記憶がないのだ。落ち着け、大丈夫だ。このノートを見つけた人、絶対に筈割山の××××××××××
××××××××××
×××××
××××××××
私は、扉の前にいる、その扉には、あのアメーバが大きく刻まれている。私は、行くしかないのだ。それが、使命。運命。私は、行く。歩き続けるのだ。例え腕が、頭が、足が切断されようと、永遠に。
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後日、この記録が書かれたノートが筈割山中腹にて発見された。これを書いたと思われる少年は行方不明となった。ノートが発見された現場には、ノートの他に靴、リュックサックが置いてあった。リュックサックには財布が入っていたが、特に現金などが抜かれた様子はなかった。靴にはどちらも足首が入っており、鑑定の結果、少年の足首だと判明した。不思議なことに、周りに血痕などは一切なかった。警察は、少年の捜索とともに、誘拐の方向でも調査をすすめている。この少年の知らせを聞き、ノートを読んだランドルフ氏は「非常に残念だ。像の実物さえ見つけられれば、世紀の発見となっただろうに。少年の安全を祈る。」とコメントしている。
少年の体験 中下 @nakatayama
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