第2話 2017年9月17日

人間は、本能的に暗闇を怖がるらしい。なんでも、人類が狩猟をしていた頃から、洞窟や夜などの闇には、危険な動物が潜んでいる可能性がかなり高いからだそうだ。その太古に植え付けられた恐怖感、危機感、が現在に至るまで我々人類にも影響を及ぼしているわけだ。さて、2017年9月17日現在、12歳の私も例によって、眼前に悠々と広がる闇に恐怖を覚えている。ここは自宅だ。例の台風により停電してしまった為、電気はつかない。月は雲に隠され、雨音が静かになっている。落ち着け。ここから部屋までは、たかが数メートル…いや、1mもないだろう。4〜5歩で着く距離だ。私は深呼吸をし、意を決してその闇に飛び込んだ。

なんだ、なんなのだ、何故、何故なのだ。何故どれだけ歩いても部屋につかないのだ。床の感覚は変わっていない。いつもと同じ木製の床だ。待て、本当にいつもと同じなのか?今見ているこの真っ黒な景色は絶対に偽物だ。もし「いつもと同じ」ならとっくに部屋に着いているだろう。そんな明らかに異常な空間の床が「いつもと同じ」?そんなはずがない。ありえない。一体俺はどうすれば良いのだ。戻るか?進むか?

私は、進むことにした。

どれくらい歩いただろうか。足の裏がじぃんと痺れ始めてきたあたりで、俺は一つの結論にたどり着いた。そうだ、これは夢だ。永遠に続く暗黒回廊も、この足の痛みも、全て夢だ。夢なら、この世界は俺の思い通りって訳だ!魔法は使えるだろうか。いや、使えるのだ!そう信じることが大事なのだ!俺は強く念じ、手から炎が出せるか試して見た。

…何も起きなかった。

かなり疲れているのだろう。少し寝ようか。そうして俺はその場で眠りについた。どれくらい寝ていたのだろうか。朝起きると、全てが元通りだった。世界は太陽の光に照らせれていた。なんて眩しく、そして美しいのだろう!どうやら全部夢だったようだ。日付を見ると、2017年9月18日だった。恐らく部屋に戻る途中で寝てしまったのだろう。全部元通りになって良かった。青いカーテンも、茶色いカーペットも、石の床も、全て元通りだ。今日は一日中休もう。幸い今日明日は三連休で休みだ。ゆっくり寝るぞー!

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