第15話 脈打つ本
部屋の整理をしていたら、いつの間にか床に本が落ちていた。
赤地に無数の青い線が入った装丁をしたその本の裏表紙にはとてもリアルな心臓が描かれていて、どことなく脈打っているように見える。
こんな本持ってたっけ?
昨夜ライター仲間の木村さんが我が家に来ていたので、その時に置いて帰ってしまったのかもしれない。
後で連絡しようと思いつつ、私は興味本位で本を開き、冒頭を読んでみた。
『この本を最後まで読まれた方は安全の為に別の方に読ませてください』
木村の奴、わざとか。
薄く怒りがこみ上げてくると同時に、本を持つ手に妙な脈動を感じる。
私は本を閉じると、他の不要品と一緒にリサイクルショップに持ち込んだ。1円で売れた。
数日後、木村さんからL**Eにメッセージが入った。
とても元気の良い文体で『本置いていったんだけど読んだ?』と訊かれたので『売った』とだけ返しておいた。
その後、木村さんは特に何事も無く元気に過ごしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます