第13話 祈る人

同居人の秋沢圭佑は、学生時代に一度だけ心霊写真を撮ったことがあるらしい。


隠れキリシタンの処刑場だったことで知られる公園の中で、友人との肝試し中にインスタントカメラを用いて撮ったというその写真には、本来公園の最奥にある宗教弾圧の様子を描いた石碑が左斜め前のアングルから映るハズだった。


それが現像してみると、石碑の前に白い横長の塊が写り込んでいたのだという。


塊とやらは石碑の真ん前に鎮座するように写っており、その姿は白いベールを被り跪いて祈りを捧げる人のように見えたそうな。


圭佑はこの写真を見た瞬間に罪悪感が沸き起こり、写真を近所の寺に持ち込み炊き上げてもらったとか。


「"心霊スポット"って言うと軽く聞こえるけど、誰かの人生が幕を閉じた場所でもあるんだよね」


圭佑が切なげにそう話す。


私は『幽霊』と呼ばれるものが、かつては私達と同じように物を思い、信条を持ち、社会生活を営んでいた人間だったんだとしみじみ思った。

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