第9話 ファミレスの女
同居人の秋沢圭佑から聞いた話。
圭佑が仕事帰りによく利用しているファミレスに、どの時間に行っても必ず同じ席についている女性客がいるそうだ。
その女性は2人がけの席─壁側と通路側で向かい合わせになった席の、通路側にいつも腰掛けており、何を注文するでもなくただジッと壁を見つめているそうだ。
一度だけ出勤前にファミレスを訪れた時も女性は同じ席におり、圭佑は初め幽霊の類かと思ったが、それにしては不自然な点があった。
というのが、女性の机にはカトラリーをまとめたケースとお冷が置いてあり、周囲の席をあてがわれた客が怪訝そうな顔でチラチラと彼女を見ていたのだ。
そんな中でも女性は微動だにせず、ただひたすらに壁を見つめている。
彼女はいつまであそこに座っているのか。気になった圭佑はファミレスに友人を複数連れて、食事や雑談で長居をしながら女性を観察してみようと考えているらしい。
そういうわけなので協力してもらえないか。そう圭佑から持ちかけられた私だが、私は何よりもまず圭佑が仕事帰りにファミレスへ行っていることについて驚き言及した。
「何食べたんですかねぇ」
「珈琲飲んだだけだよ…あ、でも時々ゴボウの唐揚げ頼んじゃった。食べたくなっちゃうんだよね、あそこの」
「どぉ〜りで最近帰りが遅えなぁと思ったよ。ていうかちょっとお太りになってません?」
「…初郎君もいい勝負じゃない?」
「そんなこと無いと思いますけど〜!オラ腹出せ、見てやる!」
「そっちが腹出さんかいコラ!」
「何だとこのガキャー!」
「やったるわーい!」
この後、散々相撲のようなプロレスのような争いを繰り広げた私達は疲れ果ててしまい、何の話をしていたのかわからなくなるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます