第3話 白い扉
僕は聞きたかったことを口にする
「そもそも僕は君を知らない
なんで僕を助けようとしてくれるの?」
少女は応える
「あなたは猫を助けてくれたからよ。
あの猫は私の大切な猫さんなの。
だからあなたは私の命の恩人ってこと。」
少し疑問に思う
「猫を助けたからって君の命の恩人にはならないのでは?」
少女は少し辛そうだった
「猫さんは私そのものなの。猫さんが死んでしまえば私は死んでしまう」
僕は驚きを隠せなかった
「猫が君とつながっているの?」
少女は頷く
「メインワールドでは特殊な猫さんたちがいるの
その猫さんと契約を結んだものだけがパラレルワールドの世界を移動できる
契約を結ぶためには命を共有することが条件なの
猫さんは自由で拘束することも禁じられている
契約を結んだ猫さんがどこのパラレルワールドにいるかだけは
契約した本人もわかるけど、その世界で何をしているかは把握できない。
その猫さんが死を悟った時だけ契約者に現在地が伝わる仕組みにはなっているの、
猫さんが死を悟ってすぐそのまま死んだら契約者も死んでしまう
猫さんがもしも死を悟っても死なないケースもある
今回みたいに誰かに助けられたり偶然死を回避できたりすることもある
私と契約を結んだ猫さんが死を悟って私に猫さんの現在地が伝わったとき
急いで駆け付けた、その時にはあなたに猫さんは抱えられていた
猫さんはすぐ私のもとに近寄ってきてこの方に恩義があると私に伝えた
猫さんの命の恩人は私の命の恩人ってこと」
僕はあまりの不思議な話に理解がついていかない
「猫と契約したことによっていつ自分がしぬかわからないってことなの?」
少女は当たり前だという顔をしていた
「人は猫さんと契約していなくてもいつ死ぬかなんてわからないよ
あなただって現にいきなり倒れて余命を告げられたのよ?
明日が来るなんて誰もわからない
確実に明日が来るなんてことはないのよ
多くのパラレルワールドを見てきたけど
本当にいろいろなことが起きるの
当たり前は奇跡なの」
確かにそうだ
僕も現に倒れてしまったし、いつなにがあるかはわからない
もしも彼女が言ったようにこのパラレルワールドの世界で僕の
病にかからない道を見つけることはできるかもしれない
でも、見つけたとしてもその次の日事故に合ったり
通り魔に刺されることだってある
当たり前にくる明日は本当に奇跡なのかもしれない
僕は病にかかったとき日常のありがたさを本当に強く感じた
僕は元気なことがどれだけ幸せか
健康で生きられるだけでどれだけありがたいか強く感じた
僕だって彼女が欲しいと思ったこともあった
成績も悪いし彼女もできない、バスケだってうまくいかない。
もう人生なんて、生きたくないなんて思ってた
不満ばかり探してた
でも今は違う
健康なだけで幸せだって今は思える
朝母の朝食を食べ笑いあえた今日がとても幸せな日に感じた
家族と笑い合えるだけでうれしくて仕方ない
僕はそれなのに元のパラレルワールドの世界では
ストレスを毎日ため親に当たり、傷つけて本当にバカだったんだと思う
不満なんて考えていたらきりがないのに
今に満足しないで甘えていた
生きている、それだけで十分なくらいに幸せなことで
ストレスを持って不満を持てること自体健康だからこそもてる悩みなんだって思う
彼女は口をまた開く
「生きていることに感謝はしないといけない
でもね、だからそれで満足して終わるのも私は違うと思うの」
僕の考えていたことを読み取ったかのように少女が言う
「どういうこと?
今に満足して生きていればストレスも減って幸せなんじゃないの?」
彼女は少し笑う
「ありがたいことに甘えて成長できるのにしないのは
もったいないなって思ってしまうし、生きたくてたまらないのに
生きられなかった人の為にも頑張りたいと私は思う
満足しないのは幸せになれないは違うと私は思う
満足いかないから人は頑張ってもっと幸せをつかもうとする
そしてつかんだとき本当によかったと、幸せだと思えるんだと思う
今に感謝は必要だけど完全に満足はしないでいいって私は思ってる
あくまで私の考え方よ
今が楽しければいいって人の考えを変えろなんて思わない
あなたがもし今に満足しているなら上を目指せとは言わない
あなたの生き方はあなたの自由だから」
そうか、無理に僕も自分を満足させようとしていたところがあったかもしれない
生きていることは感謝している、でももっと幸せを求めてもいいんだ・・・
少女は笑顔で言った
「幸せが何かなんてわからないし
ストレスがたまるとか不満があるとかは考えたって
誰かに言ったってきりがないて思う
人は今のありがたみに自然と慣れちゃう
今は満足できてても時間が経てばありがたみを忘れて
満足できなくなる人が多い
たまに今に満足し続けれる人もいるけどね
めったにいないと思う
後ろ向いて、立ち止まってちゃ幸せなんてすぐ見えなくなる
だから私は前向いて前に進んでみる
とりあえず前に動いてみるの
不満なんて言ってる暇あるなら私は進みたい
あなたや誰かの幸せの手助けや自分の幸せのためになにかしたいの
だから命を懸けてでも猫さんと私は契約したの」
そう言いながら彼女は僕の手を引いて学校の中に連れて行ってくれた
僕はなんて言い返せばいいのかわからなかった
僕はどうしたらいいのか答えをだせずにいた
歩きながら僕は口を開く
「僕は前に進むのが怖いよ、また病にかかるのかもって
希望をもてなくなりそうだ、すでに僕は壁にぶつかっている気がする」
前に進むことは幸せを追うことでもっと幸せになることができる
可能性はある、でも同時に不安というストレスもついてくる
壁にぶつかる
僕は希望を持ってうまくいかなかったとき絶望しそうだ
まだ少し希望を持つこと、前に進むことを恐れている
彼女が言う
「ここが私たちの教室よ・・・」
彼女は扉を開けず扉の前で立ち止まって続ける
「前に進むのは怖いと思う
でもね、怖がってたってなにもかわらない
失敗で終わることなんてこの世にはないと私は思ってる
成功するまですれば失敗で終わることなんてない
失敗しないと成功はないように失敗は
成功の過程に必要なものだから失敗なんて恐れる必要ない
だからそもそも失敗なんてないと思ってる
だから壁にぶつかることを恐れないで
ぶつかるのは進んでいる証拠
自信もって
進むことをやめなければいつか乗り越えられる
あなたの生きる道を探しましょう
見つけることがきっとできる
希望は捨てないで、絶望なんてないよ」
彼女が扉のボタンを押した
自動ドアが開く
彼女のその前向きさに僕は背中を押された気がした
そして恐れていて進むことを怖がっていた僕は
歩みだした
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