第2話 悲しい瞳

二話


僕は母に問いかける

「母さんなんでこのカレンダー去年のなの?」


母は何を言っているのかと言わんばかりに口を開く

「槐なにばかなこといってんの、今年のカレンダーよ?」


時代が戻っている?そんな馬鹿なことが・・・

でも僕は病室にいたはずなのに家にいるし、病気で倒れていたのに・・・

何があったんだ。


窓の世界は知らない世界だ、


母が呆れたように言う

「なにおどおどしているの?いい加減に学校に行かないと遅刻するよ?」


少し焦ったように答える

「え?学校?場所ってどこ?」


驚いて少し声が大きくなる母

「ほんと頭でも打ったの?学校の場所分からないって重症なんじゃ・・・」


そういわれても時代はずれてるし外の景色は違うし学校の場所が変わってる

確率だってある。僕は学校に行ってどうしたらいいんだろう


とりあえず行くしかない


母に背中を押され急ぎ足で家を飛び出した今日は雪が降るからと

マフラーを母に渡された


ビルが立ち並び田舎の景色はどこにもない

見覚えのない道ばかりで学校に着けるのかすらわからない


同じ制服の学生の後を追うことにした

しかし僕と同じ制服の学生はボードのようなものに乗って宙を浮いる

はやい速度で移動していて追いつけない

同じ制服の人は相当多いから道が分からないことはないが

次々と追い抜かされる、走っている僕をみて、なんで走ってんだ?と言わんばかりの顔をしている学生たちをみて少し恥ずかしさを感じる


青蘭高校と書いてある門の前までたどり着いたが

自分の知っている古い青蘭高校とは打って変わって豪邸のようになっていた


建物を間違えたのかとさえ思った


学生が次々と入っていく

入る際に指に着けたリングをかざして門をくぐっている

そんなもの僕はもっていない


どうしたらいいかわからずうろうろしていたら

先生らしき女性が話しかけてくる


「ここで何をしているの、早く登校しなさい」


僕は慌てて答える

「僕はみんなが持っているリングをもっていません、どうしたらいいですか」


驚いたように女性が言う

「ゼロリング忘れる子なんているのね、あれがないとなにもできないのに(笑)」


僕は問いかける

「ゼロリングってなんですか?」


先生は少し怒っていた

「なにをふざけているの?ゼロリングがわからないなんて(笑)

幼稚園児でもそんな質問しないわよ?」


すると同級生くらいの少女が走ってくるのが見えた

「先生!教頭先生が探してましたよ?」


先生は少しめんどくさそうに学校に戻りながら言った

「教えてくれてありがとう」


先生は僕に向きなおした

「あなたも早く学校に戻りなさい

リングは出席確認でかざしてるだけだからそのまま正門から入りなさい」


そういうと先生はさっと行ってしまった


少女が話しかけてくる

「槐、驚いたでしょ?」


よく見たら僕の病室で、迎えに来たよと言って病室から僕を連れ出した少女だった


「驚いたって君は僕の状況が理解でいているの?」


少女は笑って答える

「だって私がこのパラレルワールドにあなたを連れてきたのよ?

あなたは、病室で寝ていたはずが、過去の世界に戻ってきていた、でもそこは自分の知っている過去ではない、見覚えのないことが多すぎるて混乱している状況よね?」


僕は図星だった

パラレルワールドという単語はあまり聞きなれていなかった・・・

「うん、カレンダーが一年前になってたり母親が若返っていたりして

過去に来たのかと思ったらやたらと機械化が進んでいて・・・

人や車が飛んでるし田舎町が都会になっているしで、わけがわからい

そもそもパラレルワールドって?」


少女は改まった様子で口を開く

「この世界はあなたの知らないIFの世界、

例えばあなたが朝ご飯を食べたとする、でもその世界と同時に違う世界ができる

その世界ではあなたが朝ご飯を食べていないただそれだけの違いのIFの世界が存在する、そんな何でもないような小さな出来事の複数のパターンの世界が存在する

あなたが生きていた世界もパラレルワールドの世界の一つ


探せばあなたが男性ではなく女性に生まれているパラレルワールドもあるはず

探すことなんてほぼ不可能だけどね。

でもあまりにもパラレルワールドがありすぎて一度違うパラレルワールドに移動すると元の世界には戻れない

他のパラレルワールドに移動ならできるけどね」

少女が淡々と説明しているが、僕には訳が分からない

あまりに非現実的すぎて受け入れがたい・・・


少女は話を続ける

「パラレルワールドを移動するのはいいけどたまにパラレルワールドの境目に落ちてしまうことがあるの、暗闇で戻ってこれる人はなかなかいないから気を付けないといけない、パラレルワールドを移動できるのはパラレルワールドのメインワールドにいたことがあるひとだけなの、私はメインワールドから旅をしていて君を見つけたの」


理解が難しい・・・

「メインワールドってなに?」


彼女が答える

「パラレルワールドはそもそも一つの世界から始まった、メインワールドは一番初めの世界、IFが存在する前のスタート地点、パラレルワールドが枝分かれする前に大本の世界があるの

その世界が色々な選択肢で枝分かれして複数のパラレルワールドができていく

メインワールドはもしもが起きる前の世界ってイメージかな

言葉で説明するのは難しいね、少しずつ分かってくると思う

だからあまり気にしないで」


確かに難しい・・・

僕は混乱してしまう


僕は問う

「僕をなぜ違う世界のパラレルワールドに連れてきたの?」


彼女は少し悲しそうに答える

「パラレルワールドでは過去に選択したことで

次の選択肢以外に変えられない未来がセットでできる

例えばあなたが薬では治らない毒を飲むことを選んだらセットで死んでしまう確率があがる、過去に選んだ選択が未来に影響してくる


あなたのいたパラレルワールドではあなたは余命3か月の病にかかった、

それは過去に起きた分岐で、すでに決まっていたことなの

そのままあなたは死んでしまう、、、でも他のパラレルワールドの世界では

あなたがその病に侵されない世界が存在するの

なぜかというとあなたが病にかかる前に原因があるから、過去であなたが病にかからない選択さえすれば病にかからないで生きられるの

複数のパラレルワールドの中にはその世界が存在する


その原因はあなたが生まれた時点なのかもしれないしあなたが生まれた後にしたことが原因かもしれない、そしてあなたのまだ生きている過去の世界のパラレルワールドに行ってその原因を突き止めるの

そしてあなたの知っているパラレルワールド以外のパラレルワールドで生きるための選択をしてその世界で生きていくの」


僕は訳が分からなくなる

「僕の知ってるパラレルワールド以外で原因なんて探せるの?」


少し不安そうに言う少女

「原因を探せる保証はないけど、探せる確率はある、過去の世界にならそのヒントがあると思って過去の世界のパラレルワールドにあなたを連れ出したの

この世界の未来でまたあなたが病にかかる確率も大きい、この世界であなたが病にかからないために原因を探してこの世界で生きる道を探そう」


少女の言っていることはとても前向きなはずなのに

目が少し悲しそうに見えたのは僕だけだったのかもしれない・・・


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