白い空

@yurikawa07

第1話 涙の雫

高校2年の冬、僕は突然倒れた・・・



名前は白石槐




僕は倍率の高い青蘭高校に入学した

でも僕の成績はいつも下から数えた方が早かった


部活もバスケをしていたが2年になってもベンチだった

友達はいたが、多くはなかった



そんな僕は高校から帰宅すると行き場のないストレスを

家族に向けていた


優しい父と母に声をかけられれば暴言をはき捨てる


高校3年の夏僕はようやく3年で選ばれたバスケのレギュラーから外され

テストも最下位から10番内と最悪の成績で、ストレスがたまり母と喧嘩し、

母をすごい勢いで突き飛ばした

母は怪我はしなかったが一歩間違えれば

頭を角にぶつけてしまうとこだった


汗が額を流れる、大切な母に僕は手を挙げてしまった

痛そうにしている母をみて心が痛んだ


それでも僕は謝ることなく自分の部屋に行き一人涙を流した


大切な人を大切にできない

素直になれないそんな自分が腹立たしくて仕方なかった


そしてまた暴言を吐く毎日が続いた


反省しても治らない僕は家族を傷つける

自分を好きにはなれなかった


そんなある高校2年の冬、いってらっしゃいと言ってくれた母を無視して

登校している途中めまいがし、自転車から転落した。


そして目を覚ますと僕は病室で寝ていた

両親は涙を流している


医師が僕に病名を伝えた


意識がもうろうとしていて病名は聞き取れなかったが

あと余命3か月ということははっきりと聞き取れた


優しい家族を傷つけてきた僕に

神様から罰があたったかのように思えた


自分が悪いのかもしれないと思いながらも生きることを諦めきれなかった


家族に親孝行もできず、自分の夢もかなえられなかった

夢・・・意識がもうろうとしていてその夢が何だったのかさえおもいだせない


思い出せないことに違和感を覚えた

夢があった

それだけははっきり覚えている

でも思い出せない



母と父が大きな粒の涙を流しながら僕の手を握る


僕は指にさえ力が入らず両親の手さえ握り返すことができなかった

家族に八つ当たりをしていたどうしようもない僕を

優しく包み込んでくれる家族のありがたみを肌で感じた

ありがとう、素直に今なら言えるそう思ったのに、声さえ出ない


余命3か月と聞いたのにもう僕は今にも死にそうな恐怖を感じていた


家族に謝りたかった感謝を伝えたかった

両親の握ってくれる手を握り返してありがとうと言いたかった


僕は眠くなってしまった。目をゆっくりと閉じる


すると小さな水たまりに一滴の雫が落ちるような音がした


目を覚ますと小学生くらいの女の子が泣いていた

見知らぬ子が病室で僕を見て泣いている・・・


どうして泣いているのか声をかけたくても声がでない

女の子は僕の手をとり


「お兄ちゃん・・・」


そう泣きながら言った


僕はこの子に見覚えが本当にない

でも僕のために泣いてくれている

それはわかった

僕はこんな小さな女の子を悲しませるようなことをしてしまったのか

悲しさで僕の胸がいっぱいになる


そしてまた眠気が僕を襲う

次は死んでしまうのか

もう目は覚ませないのか

そんなことを考えながら目を閉じる


いっときして両親の喜ぶ声が聞こえた

両親は手を合わせて満面の笑みで泣きながら喜んでいた

父が嬉しそうに僕に話しかける

順調に回復に向かっているとのことだった

でも僕は自分の体のことぐらいわかっていた

回復しているのは今だけで、死に向かっていることに・・・

それでもこんなにも喜んでくれている両親を見て心が温まった


両親がまた僕の手を握る

次は僕の指にも力が入り握り返すことができた

両親がまた笑顔になる、それが嬉しくて仕方なかった

そして僕は口を開く

震えた声でゆっくりと伝える


「今まで傷つけてごめん、本当は心から感謝してるんだ。

僕は、お母さんとお父さんの子に生まれてきて幸せだよ。

ありがとう。」


僕は涙を流しながら死を覚悟した

両親も涙をながしていることに心が痛んだ


そして、回復していたはずの僕の心臓がとまりかけていることに

気付いた医師も急変に驚いた顔をしたのが見える


僕に電気ショックを与える

それを見て母が叫ぶ


「お願い死なないで」


父も叫ぶ


「生きてくれ」


僕はなぜ意識が少しあるのか不思議だった

心臓はとまっているはずなのに・・・

その後すぐ酸素がなくなったのか僕は意識を失った・・・


余命3か月どころか僕はすぐに死んでしまった



はずだった・・・





また水たまりに一滴の雫のようなものが落ちる音が聞こえた


僕はまた目を覚ました。死んでいないことが不思議だった

眼を開けると高校生くらいの少女が泣きながら僕をみている


また知らない子が泣いている

僕が目を覚ましたことに気付いて涙をふき取り笑顔になる少女

僕の手を握り彼女は一言つぶやく


「迎えに来たよ」


少女はまだ少し涙が流れたまま笑顔でそう言って寝ている僕を起こす


そして


「ついてきて」


そう彼女に手を引かれる。動くはずのない僕の体は動いた

ベットから降り、歩けた、そして病室を出て階段を駆け下りる


少し駆け足をしながら彼女は僕の手をひく

病人とは思えないほど体が軽かった


すると僕の登校通路の長い坂道にきた


そして彼女は僕の手を離し口を開く


「私はあなたに命を助けられたの」


僕には全く覚えがなかった


彼女がまた口を開く


「たすけてくれてありがとう」


そう彼女が言うと白い雪が降ってきた

つい僕は空を見上げる、たくさんの雪がゆっくりと降ってくる

僕には空が白く見えた


僕は、なぜか涙が自然と流れる


そして涙を拭い彼女の方を向きなおし僕は応える


「ごめんなさい、僕はあなたがだれかもわからない、

何の話かもわからない」


彼女がにっこりと笑う


「あなたが助けた猫のことは覚えてる?」


僕は不思議でたまらなかった


「え。なんで知ってるの・・・」


確かに僕は倒れる前に小さな白い猫が車に引かれそうなのを

間一髪でたすけたことがあった

助けた場所は確かにこの坂道だった

しかし人は周りにいなかったしその猫はそのあと

さっと姿を消した目撃されていることなんてないと思っていた


彼女が僕の手を握る


僕は立ったまま眠気に襲われた

僕はそのまま気を失った・・・






目を覚ましたら僕は自分の部屋のベットに寝ていた・・・


制服はかけられ、目覚ましが鳴る、

2階の僕の部屋まで1階の母の声が聞こえてくる



「早く学校いきなさい!まだ寝てるの?」


僕は訳が分からず起き上がった

部屋のドアをあけようとしたらドアが自動であいた


僕の部屋のドアはこんな高性能ではなかった、普通にドアノブを回すタイプだったはずだ・・・


階段はエスカレーターになっている

状況に頭が追い付かない


1階に下り窓の先を見ると

ビルなんて一軒もなかった外の景色が高層ビルばかりになっていた

そして車が空を飛んでいたり人が

スケボーのようなものにのって飛んでいた


驚きすぎて声がでない

母のもとに駆け寄る


母は若返っていた

母の隣にあったカレンダーが目に入る2020/2/2

僕の生きていた時代の日付は2021/2/2

僕の知っている時代の日付より一年もずれていた・・・







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