第3話 神の気まぐれ



「・・・・・ん?」


気づくと私は真っ白な世界にいた。


「よく帰ってきたな。これに着替えろ」


一体何処から現れたのか、人間の風貌で2頭身の生物が、スーツを手渡してきた。


「どうした。まだ時差ボケしているのか?あと100年したら神様のところに行くぞ。準備しろ」


その生物は一方的にそう言い残すと、また突然姿を消した。



それから少しして。体感にして30分ほど。

気づくと巨大な翁の前にいた。


「主が派遣された者か?」

「はい。左様でございます」


翁の問いに対して、自分でもびっくりするほどすんなりと言葉が出た。

直感的に、この巨大な翁が神様であることを悟ったのだ。


「では頼む」

「かしこまりました」


神様の頼みが報告であることを瞬時に察し、報告書としてまとめておいた封筒をとりだす。



「・・・以上です」

「ふむ。どうやら上出来のようじゃな」


神様は満足そうに頷いている。


「『ちきゅう』の方はどうじゃ?」

「そちらについては私が」


例の如く何処からか湧いて出てきた2頭身の生物が、空中でまんまるの手を上下させる。


すると、何もないところに映像が映し出された。


「これは?」

「ちきゅうの様子です」


映像はいくつかの画面に区切られており、一方の画面に映る子どもは贅沢な料理を前に満面の笑みを浮かべ、一方の画面の子どもは清潔とはいえない衣服に身を包んで川の水を汲んでいた。


「何故こうも差があるのだ?」

「いくつもの理由が複雑に絡み合った結果とも言えますが、単なる設計ミスとも言えます」

「どういうことじゃ?」


2頭身の意味深な発言に、神様は興味深そうに尋ねる。


「搭載した感情が多すぎたのかもしれません。相反する感情に板挟みになって苦しんだ者。感情の整理ができず精神を病んだ者。歪んだ愛を持った者。その他にも多くの事例が確認できました」

「そうか。豊かな感情が心を乏しくさせるとは。皮肉なものじゃの」

「『人間は常に矛盾を抱えているところが面白い』と言っていたのは神様ではないですか」

「そういえば、そう設計したのもワシじゃったな」


そう言って笑う神様。立派な髭が上下に揺れる。


「それで、如何なさいますか?」


2頭身の生物が、改めて神様に問う。


「そうじゃの・・・」


スーツ姿の私も、固唾を飲んで見守る。


神様の前で2つの球体が回る。

片方は時計回りに、もう片方は反時計回りに。


明日が来ると信じて疑わない者たちを乗せて。


「よし。βは終了じゃ」


神様が重い腰をゆっくりとあげる。


「それではお決めになったのですね?」

「ああ。正式な『地球』は・・・」


私は気づくと手を合わせていた。

もったいぶる神様の沈黙に、思わず力が入る。


「」


神様の言葉に合わせて、片方の球体が動きを止めた。


それがどちらであったのか。

私は伝えることができない。


何故なら、それは神の決定だから。

何者でもない神は唯一であり、無二であり。


それ故に絶対なのだから。

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