第8話インフルエンザ
「ふぅ…」
冬も近づきオフィスも冷える中、私は佐藤からきた最後の仕事を片付けた。
現在、6時30分。
うん。帰れなかった。
クッソ…佐藤にはいい焼肉奢ってもらわないと割りに合わないな…
とりあえず終わった仕事を佐藤に渡しに行く。
佐藤は無様にも燃え尽きた様子で天を仰いでいた。
「おい、佐藤生き返れ〜。頼まれてた分終わらせたぞ〜」
「……あり…がと……そこに…置い…といて…」
「了解。」
そういうと私は終わらせた仕事を佐藤のデスクに置く。
改めて見るとすごい量だな…やっぱり私すごいわ。
「佐藤。」
「ん?」
「焼肉、期待してるから。」
「ん……」
佐藤は疲れ切っていて「ん」としか反応してこない。
「佐藤?ちょっと大丈夫か?顔が赤いぞ。」
「んー……ちょっとしんどいけど多分大丈夫。この仕事も早く終わらせないと…」
そう言ってまたパソコンを起動させようとする佐藤。
明らかに様子がおかしい。ふらついていて目も虚ろになっている。明らかに風邪をひいているようだ。
「佐藤、ちょっと失礼。」
そう言って私は佐藤のおでこに手を当てる。
「あっつ!?!?」
彼のおでこは普段体温が高い私にもわかるくらい熱かった。
「おい、佐藤。風邪ひいててしんどいだろ。」
「ん……しんどいね…」
「わたしができる限り佐藤の仕事をしとくから、今から病院に行きなさい。」
「でも……手伝ってもらってばっかりで申し訳ないし……」
「焼肉でチャラにしてやるから。ほら、早く!」
そう言うと私は佐藤のコートを掴み、会社の車の鍵を取る。
「ほら!行くよ!」
「どこに……?」
「病院って言ったでしょ!」
「あぁ……そうだった……」
ダメだ。佐藤は疲れと風邪で頭が回っていないようだ。
オフィスを出て、会社の駐車場に向かう。
佐藤は私におぶられ、しんどそうに唸っていた。
「シートベルトして!最寄りの病院なんてこの時間やってないから市立病院に行くよ。」
「……ん」
そう言うと私は病院に向かって車を走らせた。
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私たちは市立病院に着いてすぐに先生の元に呼ばれた。
「うーん…これからインフルエンザも流行りますし、念のため検査をしましょう。」
「はぁ…わかりました。」
佐藤は40,3度と高熱を出したので、先生からもらった氷を額に当てていた。
「大丈夫?どうせ体なんかどうでもいい!力尽きるまで仕事だ!って思ってたんでしょ。」
「ははは。やっぱりバレてたか。まぁ、次は気をつけるよ。」
そんな会話をししているうちにまた、私たちの名前が呼ばれた。
佐藤を引っ張り、先生の元へ向かう。
「結果なんですが…インフルエンザですねあなたたち。」
「…は?私もですか?」
「はい。軽いですがあなたもです。」
「マジですか…」
「マジですね」
会社とか仕事どうすんの…まぁ、配信はたくさんできるけれども…
「一週間くらい休んだ方がいいですね。薬は出しておきます。それではお大事に。」
「ありがとうございました。」
そう言って私たちは病院を後にした。
にしてもインフルかぁ…ここ数年なってなかったからすっかり存在を忘れていた。
それよりも佐藤だ。物凄くぐったりとしていてまともに料理とかできそうにない。
「佐藤?どうする?家に送るけど料理とか難しかったらうちに泊まっていく?」
「……頼んでいいか?」
「うん。任せな。」
まぁ、看病するのは私じゃなくて美琴なんだけどね。
とりあえず家に帰ってから相談しよ。
そう思い、咲は家へと車を走らせるのだった。
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