第7話残業地獄(※佐藤くん視点)
やばい。仕事が終わらない。
猛烈に焦る俺の目の前には大量の紙がこれでもかと言うほど積んである。終わる気がしない。
山本達に手伝って貰ったのだが、それでもこの量は俺を殺せる。
対角線上の山本はどんどん仕事の量を減らしているようだ。すまねえ山本……今度焼肉……は金があったらな……
「おい、佐藤」
不意に部長に声をかけられた。
「はい!」
俺は慌てて部長のデスクに向かう。嫌な予感しかしない。
「お前、あの仕事どのくらいで終わる?」
「3日くらいっすね…」
「そうか。3日ねぇ…5日分くらい渡したんだけどな。」
しまった…地雷踏んだ…もう嫌…
「余裕あるっぽいからこっちの仕事も頼むわ。〆切5日後な。あと俺もう上がるからあとは任せたぞ。」
あ、終わったこれ。もうやめようかなここ。つか、なんで部下を置いて上司が先に帰るんだよ。
「わかりました…」
渋々承諾してトボトボと自分のデスクに戻る。
「ふぅ…どうしよ…」
うちの部署は『ロイスト』の中で最もブラックと言われている部署なのだ。
残業などいつものことなのだが今回は特にひどい…
追加分の仕事を受けとり、デスクに戻る。
明らかに5日分の仕事量じゃない紙の山を見て唖然としていた。
なんで俺はこんなに仕事せんといけんの……帰って寝たい……枕に顔を埋めて爆睡したい……
俺はこの会社にある程度貢献してるつもりだけど会社からは慈悲のかけらも受け取ったことがない……この恩知らずが。滅べこんなブラック企業。
エナドリを補給して、もくもくと作業を続ける。
もう日はとっくの前に沈み、月光がオフィス照らしていた。
オフィスにはタイピングの音と残業社員のうめき声しか聞こえなかった。
「やっと……3日分……終わった……4時間に……して……やっと……これの……後……2倍以上……」
でも明らかに後5倍は残ってるんだよなぁ……あのクソ上司……許すまじ……!
そんなことを思いながらチラリと山本の方を見る。
彼女はもうそろそろ終わるのか少しだけ顔色がよかった。
もうちょい渡そうかなぁ……でも流石にこれ以上は申し訳ないしなぁ……
そんなことを考えつつ、スマホを起動させる。
ん?んん?んんんんん???
スマホの液晶には5:30の字が映されていた。
え?もう5:30!?は?嘘でしょ?今日もクソ上司から仕事がくるのに?夢でしょ?ねえ?誰か夢だと言ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
俺は一人絶望しながら天を仰いでいた。
そんなことをしてもどうにもならないというのは分かっているが、体がつい動いてしまう。
周りから見たら残業のしすぎでぶっ壊れた哀れな佐藤さんとしか見られなかったのは言うまでもない……
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