第27話 前から来る奴はヤバい

シエンside 5


 あの聖女に説明しろと言われたが、元々リラには俺の体質について話すつもりだった。そうしなければ、リラの側に居られないだろう?


 何故か、冒険者ギルドで話すことになったのだが、俺は出来ればリラの作った料理が食べたいな。


 俺の体質について一通りの説明をした。これで納得し、俺を受け入れてくれるであろうと思ったが、リラから返ってきた言葉は全く別のことだった。


「質問なんだが、シエンが話した内容だと、別に私でなくてもいいよな。」


 なんで、俺の話を聞いてそんな言葉が出てくるんだ?リラではなくては意味がないのに。そもそもだ。なんでリラは俺が番だとわからないんだ?人族だからか?それだと、オリビアの番であるあの男も分からないってことになるが、そうではないみたいだし、あの聖女が何かしているのか? 


 あの聖女、リラに番だと言っては駄目って言っていたが、キツすぎるだろ?リラに説明できないじゃないか。番だから一緒に居たいって。


 リラがいきなり立ち上がり俺に向かって


「話が終わったなら、私は帰る。結論は私でなくても大丈夫ということだった。」


 待ってくれ。俺はリラの腕を取って、書類に向かっている男の元に行く。同じ人族ならわかるんじゃないのか?


「なんで分からないんだ。」


「何の話だ。主語を言え。」


 タバコを吹かし、眉間にシワを寄せながら人族の男に言われた。いや、番のことを言っていけないと言われているのに。


「言うなって言われているから、分かってもらうことができない。」


 人族の男にため息を吐かれた。なんだよ。


「わからないものはわからない。そういうモノらしい。お前、あの問題児になんて言われた?」


「想いを押し付けるようなことはするな。言わなければならないことがあるのではないのか、と。」


「その言わなければならないことは言ったのか?」


「俺がこうなっている理由を話した。」


「で?」


「終わり。」


 人族の男は新たにタバコを取り出し、火をつけて一吸いしてから煙を吐き出しながら言う。


「お前バカだろ。隔離されて育てられたにしても程があるだろ。リオンに聞け、俺は関わらん。リラ。お前はもう帰れ。」


 大兄に?アレ以上何を聞くのだ?




 リラの仕事を邪魔をしてはいけないとオリビアに言われていたので、リラが依頼を受けにギルドに来るまで待ち、依頼先の家まで一緒に行くことにする。

 しかし、


「なんで、今日もその短い服なんだ?」


 あの制服とリラが言い張っている短い服をまた着ていた。駄目だろ。


「何か問題でも?シエンには関係ないよな。私は今から配達に行くから、付いて来るなよ。」


 問題だ!それに付いて行くし。あのサブマスターって言う人族の許可はもらったからな。


 やはり、俺の不運が効力を発揮してしまった。まさか、道が陥没するとは・・・そう言えば、この事をリラに説明するのを忘れていたな。

 俺のステータスについて説明をすれば、リラは信じられないという感じだった。普通はそんな反応だろうな。


 しかし、地下に落ちてから異様な気配を感じている。リラの背後からよくわからない物が近寄って来た。何だアレは?騎士?しかし、中身があるように思えない。そもそも頭があるところに何も無い。その後ろからも同じような鎧が存在していた。

 リラを抱え一本道を駆ける。

 あれらの強さは一体一体がSクラス級だ。あんなの相手にできるはずないだろ。あれは魔物か?あんな魔物聞いたことないぞ?鎧が魔物?

 しかし、ここはなんだ?あちらこちらから、Sクラス級の気配がする。この国の中心と言っていい王都にこんなモノが存在していいのか?


「シエン。そこの分かれ道を右に曲がれ。」


 リラに言われ右の道に入る。


「『土の障壁!』」


 リラの機転であの鎧共の足止めはできたが、あまり持たないだろう。しかし、左側の壁が崩れ、出てきたのが首が3つある犬?駄目だ。コイツもSクラスだ。今の俺では勝てない。それに加え、進行方向も塞がれてしまったな。しかし、まだ進行方向の蛇の方が勝ち目があるか。


 リラを抱え直し、片腕を龍化させ、一撃をくらわし、そのまま走り出す。大分走ったところで、前からすごい勢いでこちらにやってくる強大な力の塊を感じ、思わず足を止めてしまった。

 前から来るやつはヤバい!後ろの三首の犬よりヤバい。

 リラが俺から降りようとしているが、どちらも勝てる要素がない。俺が躊躇していると前方から来ている奴がここにたどり着いてしまった。あれは・・・俺の視界からその者が消えたかと思えば、後ろから気配がし、振り返れば、Sクラス級の力を持った三首の犬がその者の足元に倒れていた。


 あの聖女の側にいた豹獣人の男だった。やはり彼らは強い。Sクラス級の魔物を一撃か。

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