第12話 寝落ちしてしまった
私は疲れ切った体を起こして、歩き出す。隣で心配そうな顔をしているヤツがいるが絶対に許さん。
寮から校舎に向かって行く学生と逆の方向に向かい学園を後にし、列車に乗って西教会前で降りる。そして、一軒の屋敷の前にたどり着いた。隣のシエンの顔色がかなり悪い。ここに来る途中で何処かに行かないかと期待をしてみたが、付いてきた。西第二層門をくぐった辺りから顔色が悪くなり、今では青ざめている。
私はそれを無視して扉のドアノッカーを鳴らす。少し待つと、赤い髪のケモミミイケメンが出てきてくれた。
「リラちゃんじゃないか。朝早くからどうしたんだ?」
「リオンさんいますか?」
「ん?シェリーじゃなくてリオンなのか?」
「ええ、リオンさんです。」
私の後ろの外套を被ったシエンがガタガタ震えだした。ケモミミイケメンは後ろの人物に目をやり、私を見て中に入って来るように言った。
ケモミミイケメンについて部屋に入っていくとエプロン姿の聖女様が出迎えてくれた。美人は何を着ても似合うな。
「朝早くにすみません。用が済めば直ぐに帰りますので」
「酷い顔をしていますが、どうしたのですか?」
聖女様に心配そうに聞かれましたが、それは後で話します。先にリオンさんに言って置かなければ
「色々ありまして、リオンさんにお願いがあるのですが?」
「ん?私にか?」
ダイニングテーブルの席に着いていた黒髪に金色の目をしたリオンさんが私を見ました。言われてみればどことなくシエンに似ているように思えます。リオンさんは鬼ババァと同じく額に鬼の角が二本生えていますが・・・。
私は後ろのガタガタ震えている物体を指しながら
「これ、国に帰してもらえません?」
「シエンか。」
リオンさんは呆れたような目をしながらシエンを見ている。
「これのせいで散々な目に遭っているのです。とても、酷い被害を被っているのです。ですので、国に帰してもらえません?」
「シエン。少し話をしようか。」
そう言ってリオンさんはガタガタ震えているシエンを連れて部屋を出ていった。はぁ。これで私の日常が戻ってくるはずだ。
「朝早くからお邪魔しました。」
私はそう言って屋敷を後にしようとすれば、聖女様からお声がかかり
「朝食がまだなら、食べていきませんか?」
「まだですが、お昼の販売の準備をしなければならないので帰ります。」
しかし、エルフのイケメンに背中を押され、ダイニングテーブルの席に座らされてしまった。聖女様の作った食事を私が食べていいのだろうか。リオンさんがいないけど食べ始めていいのか?
聖女様は私の前にネコとクマの顔の形をしたおにぎりを置いてくれた。私はキャラ弁を喜ぶような子供じゃないのに・・・。懐かしい。
「いや、母の弁当はここまで可愛い顔じゃなかったな。」
福笑いかっていうぐらい位置がずれた顔だったな。
私はポツポツとここ3日程あったことを聖女様に話をしていた。ダンジョンの話になると『え?パンドラボックスコースに行ったの?』と言われてしまった。パンドラ?何処に希望があったのか全くもってわからないのだが
そして、私の記憶はここで途切れた。
リラが寝落ちした一室で・・・
「彼女、寝ちゃったね。」
銀髪の竜人はリラがテーブルの上で突っ伏して寝ている姿を微笑みながら見ている。
「いや、夜通しダンジョンで魔物と戦っていたら流石に疲れるだろ。」
赤髪の狼獣人がリラを抱えて行き、ソファの上に寝かせている。
「聞いていた以上の運の悪さだったな。」
金髪に黒が斑に混じっている豹獣人が呆れるように言っている。
「あのダンジョンに罠ってあったのですか?以前行った時、罠なんて一つもありませんでしたよ。」
青髪のエルフが不思議そうに話している。
「そうそう、こっちが笑っちゃうぐらい悲惨だったよね。」
いきなり今までいなかったショートヘアーの黒髪に黒目の女性がダイニングテーブルでお茶を飲んでいた。
「いきなり出てくるなよ。」
狼獣人がいきなり存在している女性に突っ込んでいる。
「でもさ、あの運が悪い彼、10階層からほとんど簀巻き状態で、解放されたのがボス戦のみ、それも彼女の邪魔ばかり。駄目だよね。それも普通は発動しないようにしている罠をことごとく発動させているし、もう途中から笑うしかなかったよ。」
どうやらショートヘアーの女性はリラとシエンのダンジョン攻略を見ることができる立場の人物のようだ。
「わかっているなら手を貸してやれよ。」
「私は傍観者なので手は出しません。」
そんな話をしている中、扉が開く音がし、鬼族のリオンと首根っこを掴まれたシエンが入ってきた。
「シエンから話を聞いたが、リラが・・・だと言っている。リラはあれだろ?変革者だろ?」
皆が一斉に聖女と呼ばれている黒髪にピンクの目の女性を見た。
「初めて会ったときから、知っていましたよ。しかし、選ぶのはリラさんです。シエンさん貴方は彼女に選ばれますか?それとも捨てられますか?」
その言葉を聞いたシエンは絶望的な顔をしていた。
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