第5話 連絡員、マルコ・ピーターズの困惑

 アリアナさん、遅いなー。


 さっきから約束の時間に来ないって、催促が僕のところに来るけど、連絡員の僕に言ったところで、話を聞くことしかできない。


 個別の依頼主さんの窓口になるのが僕の役目だから仕方がないけど。


 何度もアリアナさんの通信機に連絡を試みてるけど、全く繋がらない。


 何でもきちんとしているアリアナさんにしては、珍しいことだった。


 こんな街中で、アリアナさんほどの人が誰かに何かされるとは思わないから、きっと彼女のことだ、その辺で困っている人に親切にしていて遅れているんだろう。


 自国にいた時はよくあることだった。


 アリアナさん、お人好しだからなー。


 それで、大体のことは自分で解決できちゃうから、まだ未成年なのに将来有望だよ。



「マルコさん!」



「おや、アニーさんじゃないですか。アリアナさんからの言伝があったりしますか?」


 事務所代わりに用意してもらっている家に、息を切らせてアニーさんがやってきた。


 やっぱりアリアナさんは、誰かのお手伝いでもしているのかと思っていると、切羽詰まった様子のアニーさんから言われた事は、


「姉が国外追放になって、依頼主さんのお店に行くことができません。その旨をマルコさんから各お店に伝えてもらえませんか?それから、公爵家とギルドにも伝えて下さい。それからそれから、お願いします、私にも、自国と連絡がとれる通信機を貸してください!」


「はい?」


 美人で真面目なアニーさんから一気に言われた冗談みたいな事は、僕の頭を完全に停止させていた。


 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る