第2話 新たな出会い Ⅱ
鷲見山さんが赴任してひと月後に入職日は違うけれども彼女と同じく九州より半年契約の派遣Ns1名。
正看護師の桜内 睦美……彼女こそが様々なものを経て増大しパンパンに膨れ上がったであろう私の精神的ストレスを木っ端微塵に破壊すれば、ついでとばかりに鬱を発症させる原因となった人物。
なのにこの時はまだそんな事になるとも知らず私は目一杯彼女を歓迎してしまうのである。
鷲見山さん同様最初から大人しい性格ではなく思った事をズバズバと、それはスタッフだけでなく患者さんにまで、然もその声量は病院には少しそぐわないくらいの大きいものだった。
一方生まれも育ちも京都で、ぶっちゃけ京都しか知らない私にすれば地声の大きな、ずけずけとあからさまに物を言う二人が新鮮でもありまた少し怖くも感じていた。
ただ最初から苦手意識を前面に足すのではなく、京都人らしい腹黒い奴と言われるのかもしれない。
でも少しでも相手の長所を見つけようと、また彼女達は素直過ぎる性格なのだと、と捉えていた。
まあ素直過ぎるのは
そんな桜内さんの透析看護の経験は十年。
土山さんと同じくベテランの看護師である。
多少その話し方には思う所があるにせよである。
学べるものは何でも学びたいと思ったのは嘘ではない。
そして彼女達の間に赴任してきたのがMEの武井さん。
何と驚いた事にこのN病院の出戻りさんだったのである。
凡そ今から十年前に離職し京都の北部にある透析施設で従事し、一応名義上看護部長が透析センターの師長を兼任していたのがである。
その看護部長に代わり新たな透析センター長となるべくヘッドハンティングされたらしい。
ひょろっと背は高くそしてめっちゃ身体の線が細い長身痩躯な体型で性格は何とも掴み所のない飄々とした、普通に下ネタを軽い感じでぶっ込んでくる、だけれどその下ネタはあからさまに厭らしくなくさらっと流せる感じが武井さんと言う人物である。
まあそうでなければぱこーんと気持ちよく頭を叩いていただろう。
私より3歳年上だけでなく住んでいる家も十分くらいしか離れてはいないなんちゃってご近所さん。
そこへ土山さんの気の合う三人が集まれば自然に話は盛り上がってしまうのはご愛敬。
でもだからと言って仕事を疎かにはしていない。
あくまでも仕事はきちんと、ベテランの二人からは話し易いのもあって色々とわからない事をよく教えて貰ってもいた。
そう今思えばこの時が一番私の楽しかった時間だった。
しかし楽しい事は長くは続かないものである。
最初の試練は直ぐそこに来ていたのだから……。
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