第8話  疑問 Ⅷ

 結論から言えば確かに


 

 最近は医療安全を心掛けている病院は多い。

 それ故に就業規則や看護マニュアル等はどの病院もそれなりの分厚さと内容そしてその数も一、二冊程度のモノではなかった。

 前職でもそうだった。

 透析センターへ配属された当時、少なくとも一週間はそのマニュアルを読んでからの電子カルテの操作方法や透析内にある設備の説明に救急カート内にある薬剤等の説明と確認をしていた――――筈なのに、目の前にあるだろう看護マニュアルは何故か直ぐには見つけられなかった。


 その答えは実にシンプルで簡単。


 そう私の想像した分厚くも沢山の内容をファイリングされているだろうモノとは違い、やや古びれた参考書達の中で申し訳なさそうな薄っぺらい冊子。

 それが私の探していたものだったのである。


 厚さは多分1㎝もない。

 0.5㎜もあれば御の字と言うくらいの厚さだった。

 この事実に思わず私はその冊子へ問い掛けそうになる。


『あなたは本当に?


 普通に答えられる筈はない。

 相手は紙切れなのだから当然それに話す機能がないのは十分わかっているけれどもだ。

 それでもそう訊ねたくなってしまう私の心情を是が非とも察して貰いたい!!

 そうしてやはり無言のまま手の中にある冊子を見つめれば、心の中へ不安が尚一層広がっていく。


 この中に求める手技は記載されているのだろうか。


 ぱらぱらと捲れば呆気なくも直ぐに終わってしまった。

 もう一度と時間はないが今度はゆっくりとページを捲れば――――あった!!


 輸血時の看護


 



 はあ⁉

 何が一時間毎ぉ?

 開始時や終了時、副反応についても何もなくっ、たった一行だけが記載されていた!!


 あり得ない。

 普通に考えてもこれは有り得ないでしょ。

 でも現在透析は始まっているし患者さんの貧血の値も低い。

 Drの指示のあるからと言うか、もうするの一択しかないでしょ。

 でもだからと言ってこれは余りにもお粗末且つ酷過ぎる。

 いやいやここは冷静にならなければいけないと思いつつもやはり余りの事で不安は募り、冷静さを欠いたまま輸血を行えば絶対に何か取り返しのつかないミスを犯してしまうかもしれない!!


 私は何とか心を落ち着けようと土山さんのいる方へと、ベテランの彼女ならばきっと、そう絶対に相談をすればそれに応えてくれる筈だと私は思い彼女の許へと向かった。

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