第3話  疑問 Ⅲ

 入職当時は確かにこの透析センターにも師長はいた。

 私と余り変わらない年代の、さっぱりとした感じの師長だった。


 だがその師長は主にAチーム(入院患者さん側)のリーダー業務をしていた。

 確かに朝の申し送りは師長が行っていたのだがBチームのリーダーは基本正看護師の古川さんと赤井さん、それから准看護師の藤沢さんと柿本さんがローテーションで行っていた。


 しかし私が入職した二月後に病棟へと師長は移動してしまった。

 別れの挨拶――――とは言ってもたった二ヶ月しか一緒に仕事をしてはいない。

 然もチームが違う為にほぼほぼ一緒に仕事をした記憶すらない。

 それなのに師長さんは何度も――――。


『ごめんね、何も教える事も出来なくてごめんな』


 そう言ってくれる気持ちがめっちゃ嬉しかった。

 それから怒涛の、流れ作業のロボットの様な仕事をして気が付けば今の正准看護師の逆転だった。

 

 またセンターの責任者である師長が移動をしたのである。

 当然ここの責任者となる次の師長が移動してくる若しくはセンター内の正看護師が新たに師長へ昇格するかの筈なのに何故かそのどちらもなく、暫くして代わりとばかりに看護部長が姿を現し皆の前で宣言をした。


『私が部長業務も兼ねてセンターの責任者となります。出来るだけ毎日顔を出す様にするから……』


 確かにその言葉通り看護部長はほぼ毎日センターへ来ると穿刺を行った後は時間の許す限りAチームの患者さんを数人受け持っていた。

 当然勤務表も部長が作成している。

 でもリーダー業務は――――しない。

 そうして暫くすれば柿本さんはAチームへ移動となり、Bチームはほぼほぼ藤沢さんの天下となったのである。


 大人しい性格の古川さんと少しコミュ障気味の赤井さんの二人がドンを抑えられる筈もなく、藤沢さんと同じ年代の柿本さんは優しいお母さん的な存在でやはりドンを封じ込める……前にAチームへ移動してしまった。


 混沌カオスな職場となった頃、土山さんは入職したのである。


 因みにMEの男の子達は皆20代前半の子ばかりだから当然ドンの言いつけを守る子犬かな。

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