第二話 魔力

「レディース、アーンド、ジェントルメンー!」


「うぅっ」


 耳障りな声で目を覚ます。


「ここは……?」


 薄暗い。

 目が慣れてくると広い空間だと気づく。

 しかし、限りがある。

 東京ドームの中みたいな。

 閉ざされた空間。


「会場は、古代ローマのコロッセオをイメージしてみたよ!」


「コロッセオ……?」


 聞いたことがある。

 確か殺し合いを……。


「君にはこれからゲームをしてもらいたい!」


「ゲーム?」


 楽しいものじゃ……なさそうだ。


「僕の知り合いと戦ってほしい!」


「戦い……」


 嫌な予感がする。


「君が見事勝ち抜いたら、ご褒美をあげよう」


「ご褒美って?」


 なにをくれるんだ?

 ここから出ていってくれるのか?


「シャロールちゃんを開放してあげるよ」


「は?」


 わけがわからない。

 シャロールなら、さっきまでここに……。


「これを見てご覧」


 突然スポットライトが灯った。

 その先には、檻に入れられたシャロール。


「佐藤! 助けて!」


「君が負けちゃったら、シャロールちゃんとは一生会えないよ」


「なんだと!?」


 そんなこと……!


「さて、盛り上がってきたところで始めよう!」


「おい、待て!」


 まだ心の準備が。


「第一試合の相手は……バーデラック!」


 入り口と思われる場所から、派手な煙が吹き出る。コロッセオにそんなプロレスみたいな仕掛けあるのか?

 そして、そこから白髪の性格が悪そうな人が出てきた。

 ……なんだ、もっとヤバい人が出てくるのかと思った。

 これなら勝てるんじゃ?


「ふふふ、僕が調べた限りでは、この世界でも魔法を使うには魔力がいるらしい。さらに、その中でも特別な魔法はスキルポイントを使うらしいね」


 龍人が勝手にベラベラ喋っている。

 僕は、警戒して未だバーデラックに近づけない。


「ん?」


 彼が手を掲げた。

 なんだ、何をする気だ?

 火の玉とか出すのかな?

 それはまずい。

 僕は身構えた。

 しかし、何も起きない。


「だから、彼の能力を使えば簡単に倒せるってわけ。今頃佐藤君は、魔力がなくなって動けないはずだよ。残念だったね、シャロールちゃん」


「あ、たぶん……」


「おりゃあ!!!」


 僕はなにもしてこないバーデラックの顔を思いっきりぶん殴った。

 彼はそのまま倒れ込み、動かなくなった。


「あれ?」


 龍人が困惑気味だが、楽しそうに呟いた。


「佐藤のスキルは変だからスキルポイント使わないんだよ。それに、魔法も使わないから意味ないと思う」


「そうか、そうか。なるほど」

「つまり、イルカーダの戦士みたいに戦うわけだ」


「?」


 イルカーダって?


「それじゃあ、次はイルカーダ出身の騎士団長と戦わせてあげるよ」


 バーデラックの体が消え、再び入り口から煙が出てくる。


「第二試合、ガイオンーー!!!」

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