第三話 条件

 再び煙に包まれる入り口。

 そこから出てきたのは……。


「うっ……!」


 強そう。

 筋骨隆々のマッチョだ。

 髪は金色でライオンのよう。


「勝てるかな?」


 不安だ。


「あぁ、そうだ。言い忘れていた」


 すると、龍人が思い出したかのように言う。


「武器や魔法なんかは、好きに使ってくれていいよ」


 好きに。

 だけど、そんなことしたら……。


「余裕で勝っちゃうけど、いいのか?」


「どうしてだい?」


 ええと、例えば。


「時間が止まらない」


 すると、入り口からこちらに歩みゆってくる大男の足が止まった。

 それだけじゃない。

 モクモクと湧き出ていた煙も固まっている。


「あれれ??」


 龍人は、また楽しそうに困惑している。


「これが僕の能力の一部だよ」


「あはは……これはすごい」


「で、このまま倒しちゃってもいいんだよね?」


 僕は大男の厚い胸板を軽く叩く。


「それじゃあ、面白くないな」


 龍人が呟いた。


「佐藤君、その能力を使うのはなしだ」


 そうきたか。

 それじゃあ。


「従わなかったら?」


 なんて言うかな?


「彼女を殺す」


 突然シャロールの隣に人影が現れた。

 そいつは手に持っているなにかをシャロールの頭に押し当てている。


「……わかっ……た」


 たぶんあれは龍人とかいうやつだ。

 手に持っているのは、おそらく拳銃。

 この世界で見たことはないが、僕の知識にはある。

 そして、それを持っているということは、この世界の住人じゃないな。


「いや〜、素直で助かる」


 一体こいつは何者だ?


「君の能力については調べても全く情報がなくてね。困ってたんだ」


 なし……だからかな。


「教えてくれてありがとう」

「さあ、続きを始めようか」


 嫌だな。

 始めたくない。

 だって、こんなマッチョなんだよ?

 倒せるわけない。


「なぁ、このまま僕が時間を動かさなかったら、どうする?」


 もしかしたら、ゲームを終わらせてくれるんじゃないかと思い、聞いてみた。

 いや、でもそれだとシャロールが……。


「パァン」


 乾いた銃声が聞こえた。


「くっ……!」


 一瞬頭に激痛が走る。


 ダメだ。

 意識が……。

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