第6話 おわかれ
「お世話になりました!」
「ほら、シャロールも」
「お世話になりましたー!」
ご飯だけじゃなくて、お泊りまでしちゃったんだもん。
トワさんはいつの間にか帰っちゃったみたいだけど。
あの人にもお礼したかったなー。
シエラちゃんも別れのあいさつをする。
「バイバイ! サミュエル!」
「また来るね!」
「二度と来るな」
サミュエルさんはそれだけ言って、ドアを閉めちゃった。
「あの人、すっごく怖かったな」
しばらくしてから、佐藤は私にこっそり言った。
確かに怖いけど……。
「優しいところもあるよ!」
「ね、シエラちゃん!」
「うん!」
――――――――――――――――――――
「たっだいまー!」
シエラちゃんが孤児院のドアを開けると、すぐにユーリ君が駆け寄ってきた。
「シエラ! お前、どこ行ってたんだ!」
「サミュエルのところでお泊りしてきたの!」
「それならそうと……」
ユーリ君は真剣に怒っている。
妹思いの……。
「いいお兄ちゃんだな」
「佐藤もそう思うでしょ」
「けど、僕達はもうお別れしなきゃ」
「うん……」
私は佐藤の言葉を聞いて、寂しくなってきた。
「すみません、僕達、もう帰ろうかと思います」
「シャロールちゃん、お知り合いが迎えに来てくれたのね、よかったわ」
シエラちゃんのお母さん、とっても優しい。
もし佐藤が来なくても……私はここで……。
「もっと……遊びたかったよ……」
涙が出てきちゃった。
「シャロール……」
もう帰るのに……。
佐藤を困らせちゃ……ダメなのに……。
「シャロール!」
シエラちゃんが私の名前を呼んで、側に笑顔で走ってきた。
「また遊ぼう!」
「また?」
「うん! 私、待ってるよ!」
「ありがとう……」
私は涙で顔をぐしゃぐしゃにしたまま、孤児院を出た。
――――――――――――――――――――
「名残惜しいのはわかってる……」
孤児院を出て、長い間黙って山の中を歩いていたが、佐藤が話し始めた。
「でも……僕達は元の世界に帰らなきゃいけないんだよ」
「うん……」
「そろそろ……」
「わ! なにあれ!」
森の薄暗がりに光るお花がある。
「すごいな、これ」
こんなの初めて見た。
「これ、持って帰ろうよ」
「ああ、お土産だ」
このお花を飾って、シエラちゃんのことを思い出そう。
私は心の中でそう決めた。
「それじゃあ僕と手をつないでくれ、シャロール」
「手を?」
なにするんだろ?
「絶対離すなよ〜」
なんか前にもこんなやり取りしたよね。
「元の世界に帰れ……」
「うわ!」
その時、私は後ろからなにかに体を引っ張られて佐藤と手を離してしまった。
「ない!」
そう言い残して、佐藤は突然消えてしまった。
……私を残して。
「え?」
私は振り向いて、なにが起こったのかを……。
「シャロールちゃん、ごめんね~」
「こんなに貴重な……かわいい女の子をみすみす帰すわけにはいかなかったのよ〜」
そこにいたのは、トワさんだった。
――――――――――――――――――――
「あれ、シャロールがいない」
手をつないでたはずなんだけど……。
「なんだって!?」
管理人はすごい剣幕で怒っている。
「君に頼んだ僕が馬鹿だったよ!」
そんなこと言われても……。
「もういい! 僕が行ってくる!」
「あ……」
消えちゃった。
行ったのかな?
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