闇の雨−5

「二度と来るな!」

 強引に押し込められたエレベーターが閉じる寸前の哀しい顔に、急ぎ『開』ボタンを押そうとして。

 ―――やめた。


 幼馴染みかれらから事情を聞いてないのか?

 そんな事など気付きもしないくらいに。

 浮かれていた。

 完全に。


 確かに届けは受理された。

 だが、それだけだ。

 自身の足で歩み始めたわけではない。

 すべてが半端な今のままでは、自身を貫く真面目なあなたは受け入れてはくれまい。


 地に足を着けたら改めて逢いに来よう。


 あの優しい笑顔で待っていてくれると信じて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る