闇の雨−4
気が付けば春が訪れていた。
分厚いコートはトレンチやジャケットに変わり、夕暮れはゆっくりと進んでいく。
ここ一週間。
ひとりきりで甘味を頬張り、約束通り陽が落ちる頃にエレベーターに乗る日々が続いている。
再会した頃に比べたら突き刺さる冷気も無くなり、空気も随分和らいできたのに。
(寂しいなぁ、迷惑だったのかな……)
でも今日はあなたが来るまで待つつもりでいる。
離婚届は呆気なく受理された。
あの労力は一体何だったのかと愕然とする程に。
感情のすれ違いは諍いのみを生み、ひびが入った関係はやがて深い溝となって修復の道を断つ。
それがあの縁の運命だったのだ。
(思えば、随分と遠回りしちゃったなぁ……)
ここにきて、胸の奥底にしまい込んだ想いがふつふつと湧き上がる。
狡い奴だと非難されるかも知れない。
それでも今は、長い闇を漸く走り抜けて温かな光に包まれる喜びに浸らせて欲しい。
一息ついて宵の明星に左手を伸ばす。
薄く残る指輪の跡は時が消してくれるはずだ。
これで、綺麗な星空の下でいつまでも話すことが出来る。だから、今まで躊躇ってきたあなたのすべてを教えて欲しい。
今日からは隣に座って温もりを感じたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます